20 / 29
第1章 学園編〜天然王子とその護衛(クラスメイト)たち
第8話 こんな梨月ちゃん、見たことないっ!
しおりを挟む
【今回の学習】
妹は成長しました(色んな意味で)
—————————————————————
「明日からも頑張らないとなー」
朝、登校してきたモノレール乗り場にいる。俺が乗るのは男性専用なので乗車する人が少ない。
だが、女性用のモノレール乗り場は間を挟んで隣にある為……
「きゃー!!あの男の子カッコいい~!」
「新しい男の子かな?」
「例の2ーwの男の子かな!」
まるで男性アイドル並みの黄色い歓声を受けていた。
入り口には俺の姿を見ようとしているのか顔を覗かせたり、無理やり入ろうとしている人もいたが、警備員のおばちゃんたちに阻止されていた。
「梨月、まだかなぁー」
朝、帰る約束をしたのでここで待っている。そのことを翠に言うと「妹さんなら安心だね」と帰っていった。
そろそろメールでも打とうとした時だった。
「八神碧月くんですか?」
背後から声を掛けられた。
振り向くとそこには黒髪の三つ編みに分厚いメガネの女の子が立っていた。顔は髪とメガネで隠れていてよくわからない。
「そうですけど……?」
そう答えると女の子の表情がパァァァと明るくなった。
「私、黒崎千里と言います」
黒崎千里……。
「あー!申請をくれた人ですか!」
勧誘申請の返信をした人だ。
「は、はい!覚えていてくれたんですね!」
俺が思い出したのが嬉しかったのか、さらに明るくなる黒崎さん。
でも、あれ断りのメールなんだよな……。
「ごめんだけど、あの勧誘の申請は断るね」
「い、いえ!私こそすいませんでした!」
ペコペコと頭を下げて謝られる。
悪い人ではなさそうだ
「ちなみに何年生?」
「あっ、えっと、2年生です」
「俺と同級生だね!」
「そ、そ、そそうなんですか……!」
朱莉たち以外にも同級生がいて良かったー。
「そういえば選抜クラスにいない人ってどこにいるの?」
「えっと、女子生徒しかいないクラスが5つくらいあって……。そこで授業を受けたりしています……!」
なるほど。つまり、毎回その5つの教室から選抜クラスの生徒が選ばれる訳か……。
「ところで学園には慣れましたか?」
「いや、それが中々慣れなくて……。色々と学んでいるところだよ」
タマちゃんが教えてくれたのはまだほんの一部らしく、残りは学園生活を通しながら覚えた方が身につくと言われた。
「そうですか。あの、良かったら学園のことについて教えましょうか?」
「えっ、いいの?」
黒崎さんは俺より長く学園にいるし、色々知っているだろう。
教えてくれるなら助かる。
「はい。ではこれから——」
黒崎さんがそう言いかけた時だった。
俺たちの間に突如、足が出てきた。
どちらかといえば黒崎さん側に出てきた足だったが、彼女はヒョイと慣れたように交わした。
「外しましたか……」
「り、梨月……!」
蹴りを入れてきたのは妹の梨月だった。
「お兄ちゃんに近づかないで下さい……」
俺の前に立ち、まるで黒崎さんから遠ざけるように守っている。
心なしか声がいつもより低い。
「ふふっ……可愛い妹さん。もう少し仲良くしましょうよ」
「誰が貴方となんて……っ」
未だに状況が飲み込めないのは俺だけだ。
「お兄ちゃん、この人とどう言う関係ですか?」
「勧誘の申請が来たから断りのメールを入れた関係?」
そう答えると梨月は「はぁ……」とため息をついた。
「勧誘の返信が返ってきたくらいで調子に乗らないで下さい」
「嫉妬かな?妹さんでも嫉妬しているの?」
黒崎さんは相変わらずニヤニヤした表情だ。
その姿がよほど気に食わないのか、梨月の眉間にしわがよる。
「いい加減にして下さい。ここで一発やってもいいんですよ?」
まるで今から喧嘩を始めるみたいに拳を構える梨月。
黒崎さんもスクールバッグを下ろし、戦闘態勢に入る。
と、止めないと……。
「梨月、ダメだ!」
何をすれば分からなかったが、とりあえず梨月を背後から抱きしめた。
「お、お、お兄ちゃん!」
梨月が他人に暴力を振るうところは見たくない。
抱きしめたいことがよほど効いたのか、固まったまま動かなくなった。
この隙に……
「黒崎さんもごめん!今日のところはこれで許して!」
一言謝り、梨月の手を引き、急いでモノレールに乗った。
◇◇◇
「話しかけられた。名前呼んでくれた……」
私、黒崎千里は今、人生最高の幸せを味わっている。
まさかの男子。しかもかなりイケメンと会話することができたから。
パラレルワールドになってから男は変わる人が多かった。自分の地位を利用してやりたい放題。女の子に優しくすることなんてしなくなった。
なのに……。
『黒崎さんもごめん!今日のところはこれで許して!』
彼は何も悪くないのに私に謝ってくれた。この対応から彼がこのパラレルワールドでは珍しい紳士な男の子と察する。
「2ーWだけ独占してずるい……」
私も一応選考テストに参加したが、今回は菫沢恋白や花咲朱莉など、優秀な生徒が珍しく受けたため、あと一歩というところで落ちてしまった。
でも、まだチャンスはある。
彼のクラスに入るためには、指名するか、勧誘するかだ。しかし、勧誘は可能性がなさそうだ。
「指名しかないかぁ……」
これから私への好感度を上げてもらって、彼に気に入られて指名してもらわなくちゃ!
今まで憂鬱だった学園生活が彼のお陰で素晴らしいものになりそうだ。
「ふふっ……八神碧月くん……待っていて下さいね」
彼の顔を思い浮かべながら笑う私であった。
妹は成長しました(色んな意味で)
—————————————————————
「明日からも頑張らないとなー」
朝、登校してきたモノレール乗り場にいる。俺が乗るのは男性専用なので乗車する人が少ない。
だが、女性用のモノレール乗り場は間を挟んで隣にある為……
「きゃー!!あの男の子カッコいい~!」
「新しい男の子かな?」
「例の2ーwの男の子かな!」
まるで男性アイドル並みの黄色い歓声を受けていた。
入り口には俺の姿を見ようとしているのか顔を覗かせたり、無理やり入ろうとしている人もいたが、警備員のおばちゃんたちに阻止されていた。
「梨月、まだかなぁー」
朝、帰る約束をしたのでここで待っている。そのことを翠に言うと「妹さんなら安心だね」と帰っていった。
そろそろメールでも打とうとした時だった。
「八神碧月くんですか?」
背後から声を掛けられた。
振り向くとそこには黒髪の三つ編みに分厚いメガネの女の子が立っていた。顔は髪とメガネで隠れていてよくわからない。
「そうですけど……?」
そう答えると女の子の表情がパァァァと明るくなった。
「私、黒崎千里と言います」
黒崎千里……。
「あー!申請をくれた人ですか!」
勧誘申請の返信をした人だ。
「は、はい!覚えていてくれたんですね!」
俺が思い出したのが嬉しかったのか、さらに明るくなる黒崎さん。
でも、あれ断りのメールなんだよな……。
「ごめんだけど、あの勧誘の申請は断るね」
「い、いえ!私こそすいませんでした!」
ペコペコと頭を下げて謝られる。
悪い人ではなさそうだ
「ちなみに何年生?」
「あっ、えっと、2年生です」
「俺と同級生だね!」
「そ、そ、そそうなんですか……!」
朱莉たち以外にも同級生がいて良かったー。
「そういえば選抜クラスにいない人ってどこにいるの?」
「えっと、女子生徒しかいないクラスが5つくらいあって……。そこで授業を受けたりしています……!」
なるほど。つまり、毎回その5つの教室から選抜クラスの生徒が選ばれる訳か……。
「ところで学園には慣れましたか?」
「いや、それが中々慣れなくて……。色々と学んでいるところだよ」
タマちゃんが教えてくれたのはまだほんの一部らしく、残りは学園生活を通しながら覚えた方が身につくと言われた。
「そうですか。あの、良かったら学園のことについて教えましょうか?」
「えっ、いいの?」
黒崎さんは俺より長く学園にいるし、色々知っているだろう。
教えてくれるなら助かる。
「はい。ではこれから——」
黒崎さんがそう言いかけた時だった。
俺たちの間に突如、足が出てきた。
どちらかといえば黒崎さん側に出てきた足だったが、彼女はヒョイと慣れたように交わした。
「外しましたか……」
「り、梨月……!」
蹴りを入れてきたのは妹の梨月だった。
「お兄ちゃんに近づかないで下さい……」
俺の前に立ち、まるで黒崎さんから遠ざけるように守っている。
心なしか声がいつもより低い。
「ふふっ……可愛い妹さん。もう少し仲良くしましょうよ」
「誰が貴方となんて……っ」
未だに状況が飲み込めないのは俺だけだ。
「お兄ちゃん、この人とどう言う関係ですか?」
「勧誘の申請が来たから断りのメールを入れた関係?」
そう答えると梨月は「はぁ……」とため息をついた。
「勧誘の返信が返ってきたくらいで調子に乗らないで下さい」
「嫉妬かな?妹さんでも嫉妬しているの?」
黒崎さんは相変わらずニヤニヤした表情だ。
その姿がよほど気に食わないのか、梨月の眉間にしわがよる。
「いい加減にして下さい。ここで一発やってもいいんですよ?」
まるで今から喧嘩を始めるみたいに拳を構える梨月。
黒崎さんもスクールバッグを下ろし、戦闘態勢に入る。
と、止めないと……。
「梨月、ダメだ!」
何をすれば分からなかったが、とりあえず梨月を背後から抱きしめた。
「お、お、お兄ちゃん!」
梨月が他人に暴力を振るうところは見たくない。
抱きしめたいことがよほど効いたのか、固まったまま動かなくなった。
この隙に……
「黒崎さんもごめん!今日のところはこれで許して!」
一言謝り、梨月の手を引き、急いでモノレールに乗った。
◇◇◇
「話しかけられた。名前呼んでくれた……」
私、黒崎千里は今、人生最高の幸せを味わっている。
まさかの男子。しかもかなりイケメンと会話することができたから。
パラレルワールドになってから男は変わる人が多かった。自分の地位を利用してやりたい放題。女の子に優しくすることなんてしなくなった。
なのに……。
『黒崎さんもごめん!今日のところはこれで許して!』
彼は何も悪くないのに私に謝ってくれた。この対応から彼がこのパラレルワールドでは珍しい紳士な男の子と察する。
「2ーWだけ独占してずるい……」
私も一応選考テストに参加したが、今回は菫沢恋白や花咲朱莉など、優秀な生徒が珍しく受けたため、あと一歩というところで落ちてしまった。
でも、まだチャンスはある。
彼のクラスに入るためには、指名するか、勧誘するかだ。しかし、勧誘は可能性がなさそうだ。
「指名しかないかぁ……」
これから私への好感度を上げてもらって、彼に気に入られて指名してもらわなくちゃ!
今まで憂鬱だった学園生活が彼のお陰で素晴らしいものになりそうだ。
「ふふっ……八神碧月くん……待っていて下さいね」
彼の顔を思い浮かべながら笑う私であった。
12
お気に入りに追加
266
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜
ミコガミヒデカズ
ファンタジー
気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。
以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。
とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、
「儂の味方になれば世界の半分をやろう」
そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。
瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る
イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。
《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。
彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。
だが、彼が次に目覚めた時。
そこは十三歳の自分だった。
処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。
これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる