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第1章 学園編〜天然王子とその護衛(クラスメイト)たち

第6話 ここは学園です

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【今回の学習】
 侮辱は許せない
————————————————————— 

 先ほども言った通り、授業は普通通りと変わらない。授業は変わらないのだが……

「ちょっと開けなさいよ!」
「新しい男が来たんでしょ!」
「顔見せなさいよ!」

 ドンドンと教室のドアを叩かれる。いや、そんな優しいものじゃない。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド‼︎‼︎‼︎

 まるで太鼓の達人の連打するところみたいに叩かれる。教室が壊れないかが心配になるほどだ。
 そして、教室の外からは多くの声がする。

「本人が嫌がっていますのでお引き取りを」

 そんな多くの女子生徒の相手は恋白が1人でしてくれている。「委員長ですから私がやります」と自分から言ってくれたのだ。

「なんなのよアンタ!」
「選抜に選ばれたからって調子乗るな!」

「調子になんか乗っていません。とにかく、お引き取りを」

 罵声を気にすることなく、冷静に対応しているようだ。
 
「あれ、何……?」

 今更ながらに現状を聞く。

「もう情報が流れたなんて……。やっぱりさっき来た先生から漏れたに違いないわ」

「男が来たというだけで興奮するのに、それに加えてこのルックスが入るからねぇー」

「しかも、優しいと紳士系属性つき。これは今まで史上、熾烈な争いになりそうだよー」

「ん、」

 他の5人は何やらそれぞれ言っていた。

「お前ら呑気過ぎない?恋白を少しは手伝ってやろうという気はないの?」

「私たちが行っても邪魔になるだけだよー」

「こういうのは得意な人に任せておけばいいんだよ」

「アタシがいくと、余計炎上すると思うから……」

「ん、うるさいからヤダ」

「和奏と翠に関してはただの人任せにしか思えん。朱莉は……まあ、何かあったか知らんが強く生きろ!野々音の意見が一番ダメだろ」

 クラスメイトが一致団結してないな。このクラスは本当に大丈夫なのだろうか?
 そう思っていた時だった。

「アンタのそのいい子ちゃんぶり、イラつくのよ!」
「優秀なお姉さんに比べて出来損ないの癖にっ!」
「名家の出来損ないがっ!」

 俺が中々出ないことに腹を立てているのか、怒りの矛が次第に恋白に向く。
 これはちょっとまずいだろ……。

「アンタになんて価値がないんだからっ!」

 誰かがそう言った。
 多分、そこまで考えずに怒りに任せて言ったのだろう。
 でも、それを聞いた時、俺の中でプツリと何かが切れた。

「ちょっとアツ———」

 朱莉が何やら引き留めようとしていたが、無視して教室のドアを勢いよく開ける。

「っ……!?」

 目の前に俺が現れてか、先程まで騒がしかった雰囲気が嘘のように一気にして鎮まりかった。

「あの」

 そんな状況の中、話し始める。
 
「まだ学園に来たばかりなのでそっとして欲しいです。それと」

 小さく息を吸い、注目する女子生徒たちをギロリと睨む。
 
「恋白に罵声を浴びせる奴は許さない……」

 少し低い声を意識してそう言う。
 彼女たちは青ざめたような表情になり、廊下を駆け足で走っていった。

 罵声を浴びせられる。
 この辛さは俺が身を持って体験している。罵声に軽いだとか重いだとか関係ない。
 言われたという事実だけで辛いものだ。
 
「私が守る立場なのにすいません」

 申し訳なさそうに謝ってくる恋白。

「いやいや、俺は大した事はしてないよ。それにお互い様だろ?」

 さっきまで恋白は俺のために頑張ってくれていた。それを俺が助けるのは突然だ。
 こんなにアッサリ引き下がってくれるならもっと早く助けに行けばよかった。

「ふふっ。碧月さんは他の男性と違うのですね」

「そうか?普通だと思うが……」
 
「優しい男性は珍しいんですよ?」

 「そうなのか……」

 優しいの基準が分からんが、どうやら俺は優しい方に入るらしい。

「あと、先程の方々が言っていたことは気にしないで下さい。慣れているので。それに本当ですし」

 笑いかける恋白。
 その笑顔は偽りだ。本当は言われて悔しいし、嫌だと思う。
 
「そうか」

 でもあえて慰めるような言葉はかけない。表だけの同情は嫌だから。

「しかし、碧月さんも随分とガツンと言いましたね」

「これで諦めてくれるといいけどな」

 パラレルワールドでの男の価値がさっきの行動でちょっとだけ分かった気がした。
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