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序章
3話 この世界の現状
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【今回の学習】
パラレルワールド
————————————————————
ちなみに余談だが、母さんと花織さんは大学生時代の先輩後輩関係だったらしく、それで花織さんは未だに母さんのことを先輩と呼んでいるとか。
「まずは今の日本の現状について説明します」
土下座の一件から数分後。
花織さんが今の日本の現状について説明してくれることになった。
(落ち着け八神碧月。痩せたことはこの際、後からでいいから、このおかしな現状について理解するんだっ!)
「じゃあ始めます。今現在の日本の男女比はおよそ1万人対6000万人」
「えっ?」
開始10秒で疑問が生まれる。
男女比といったらある程度、平等なものだと思う。それが1万人対6000万人。つまり、男女比1:6000か?
「あの……。今いない男性は殺されたとか、ウイルスが蔓延して亡くなったとかじゃありませんよね?」
漫画の中にはそういった題材があるが、実際に遭遇するとゾッとする。
もし、自分がその立場だった時、この世に存在してないから。
俺の質問に花織さんは首を横に振る。
「……何故、男性が突如、居なくなったのかも何故、こうなったのかも不明。何もかもが不明。でも私たちは生きなければならない。人類滅亡を阻止するためにも」
真剣な表情で伝える花織さんからは、冗談で言っていることではないと伝わる。
「そんな……。そんな、漫画みたいな事、ある訳ないじゃないですか……」
原因不明ということは突然、男女比が1万人対6000万人になったという事になる。
「それは私たちも思ったことよ。しかし、5年の月日が経っても現状は変わらないままなの」
5年の月日?つまり、5年前に男女比がおかしくなったという事は、丁度、俺が修行し始めた時期とすれ違いで起こったということになる。
「原因不明の男性減少。解決の見通しが立たない人類はこの現状をとりあえずこう呼んでいる。———パラレルワールドと」
「パラレル、ワールド……」
パラレルワールド
ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。いわば並行世界だ。
「だから母さんが戸籍を見せても他の人は納得しなかったと……」
たとえ、男の戸籍があったとしても、このパラレルワールドでは存在しない男の方が圧倒的に多いからということか。
「あっくん……」
母さんが心配そうな目で俺を見ている。
とりあえず、今言われた事を整理しよう。
俺は今、パラレルワールドの世界にいる。そして、男女比は1万人対6000万人。
「ただ、これは日本のみの数字。世界規模となると男女比は計り知れないものになるわ」
「という事はこのパラレルワールドは世界中で起こってるんですか?」
俺の質問に花織さんはコクリと頷いた。
俺が居ない5年間の間にこんな事起きてるなんて……。
「碧月くん、心配しないで。貴方には私たちがいるから」
微笑んでくれる花織さん。
母さんは驚いて固まる俺をギュッと抱きしめてくれた。
「詳しいことはまた今度話すとしましょうか。今は混乱状態だから」
「すいません……」
とりあえず、今知った現状を受け止めないとな。
「あっくん。心配しなくても男の子なら色々と優遇してもらえるから大丈夫だよ」
ホッと一息つく俺に、抱きついたままの母さんがそう言う。
優遇?
確かに、男女比は圧倒的に男の方が少ない。ということは、男が貴重なのか?
そこまで考えた時、俺は重要なことに気づく。
だったら俺が太っていても全然問題ないよな?いじめられる心配もないよな……?
つまり……
「俺が痩せるためにした修行は全部、無駄だったということか……」
一連の話を聞きいて察し、思わず床に倒れ込む。
いじめられていることで家族に迷惑が掛からないよう修行してきたことが、逆に家族を不幸にさせていたとは……。
俺は、俺はなんて最低な人間なんだっ……。
「えーと……碧月くん?落ち込むのもそこそこにして、とりあえず政府に報告して早速補助金を貰いましょう」
「補助金?」
「男性の場合は一定額の補助金が貰えるの」
なるほど。それが母さんがさっき言っていた優遇というものか。
「お金はあっくんが自由に使っていいからね~」
「いや、まずは借金を返そう!」
銀行への借金と花織さんに借りたお金を返そう。
連絡してものの数分で政府の関係者らしい女性二人組が来た。
そして俺を見るなり固まり、母さんにひたすら土下座で謝っていた。泣きながら。
おそらく今まで申告していたのに、それを嘘だと思い、否定していたからだろう。
その土下座謝罪に対して母さんは「いいわよ~。それよりうちの息子、可愛いでしょ~♪」と過去のことを気にせず、逆に惚気ていた。
その言葉に女性二人組が泣きながらウンウンと首を縦に振ってた姿は、見てて心が痛くなった。
そしてお詫びの印として、翌日に口座に現金が振り込まれるらしい。
今日は土下座の日とでも名付けよう。
パラレルワールド
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ちなみに余談だが、母さんと花織さんは大学生時代の先輩後輩関係だったらしく、それで花織さんは未だに母さんのことを先輩と呼んでいるとか。
「まずは今の日本の現状について説明します」
土下座の一件から数分後。
花織さんが今の日本の現状について説明してくれることになった。
(落ち着け八神碧月。痩せたことはこの際、後からでいいから、このおかしな現状について理解するんだっ!)
「じゃあ始めます。今現在の日本の男女比はおよそ1万人対6000万人」
「えっ?」
開始10秒で疑問が生まれる。
男女比といったらある程度、平等なものだと思う。それが1万人対6000万人。つまり、男女比1:6000か?
「あの……。今いない男性は殺されたとか、ウイルスが蔓延して亡くなったとかじゃありませんよね?」
漫画の中にはそういった題材があるが、実際に遭遇するとゾッとする。
もし、自分がその立場だった時、この世に存在してないから。
俺の質問に花織さんは首を横に振る。
「……何故、男性が突如、居なくなったのかも何故、こうなったのかも不明。何もかもが不明。でも私たちは生きなければならない。人類滅亡を阻止するためにも」
真剣な表情で伝える花織さんからは、冗談で言っていることではないと伝わる。
「そんな……。そんな、漫画みたいな事、ある訳ないじゃないですか……」
原因不明ということは突然、男女比が1万人対6000万人になったという事になる。
「それは私たちも思ったことよ。しかし、5年の月日が経っても現状は変わらないままなの」
5年の月日?つまり、5年前に男女比がおかしくなったという事は、丁度、俺が修行し始めた時期とすれ違いで起こったということになる。
「原因不明の男性減少。解決の見通しが立たない人類はこの現状をとりあえずこう呼んでいる。———パラレルワールドと」
「パラレル、ワールド……」
パラレルワールド
ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。いわば並行世界だ。
「だから母さんが戸籍を見せても他の人は納得しなかったと……」
たとえ、男の戸籍があったとしても、このパラレルワールドでは存在しない男の方が圧倒的に多いからということか。
「あっくん……」
母さんが心配そうな目で俺を見ている。
とりあえず、今言われた事を整理しよう。
俺は今、パラレルワールドの世界にいる。そして、男女比は1万人対6000万人。
「ただ、これは日本のみの数字。世界規模となると男女比は計り知れないものになるわ」
「という事はこのパラレルワールドは世界中で起こってるんですか?」
俺の質問に花織さんはコクリと頷いた。
俺が居ない5年間の間にこんな事起きてるなんて……。
「碧月くん、心配しないで。貴方には私たちがいるから」
微笑んでくれる花織さん。
母さんは驚いて固まる俺をギュッと抱きしめてくれた。
「詳しいことはまた今度話すとしましょうか。今は混乱状態だから」
「すいません……」
とりあえず、今知った現状を受け止めないとな。
「あっくん。心配しなくても男の子なら色々と優遇してもらえるから大丈夫だよ」
ホッと一息つく俺に、抱きついたままの母さんがそう言う。
優遇?
確かに、男女比は圧倒的に男の方が少ない。ということは、男が貴重なのか?
そこまで考えた時、俺は重要なことに気づく。
だったら俺が太っていても全然問題ないよな?いじめられる心配もないよな……?
つまり……
「俺が痩せるためにした修行は全部、無駄だったということか……」
一連の話を聞きいて察し、思わず床に倒れ込む。
いじめられていることで家族に迷惑が掛からないよう修行してきたことが、逆に家族を不幸にさせていたとは……。
俺は、俺はなんて最低な人間なんだっ……。
「えーと……碧月くん?落ち込むのもそこそこにして、とりあえず政府に報告して早速補助金を貰いましょう」
「補助金?」
「男性の場合は一定額の補助金が貰えるの」
なるほど。それが母さんがさっき言っていた優遇というものか。
「お金はあっくんが自由に使っていいからね~」
「いや、まずは借金を返そう!」
銀行への借金と花織さんに借りたお金を返そう。
連絡してものの数分で政府の関係者らしい女性二人組が来た。
そして俺を見るなり固まり、母さんにひたすら土下座で謝っていた。泣きながら。
おそらく今まで申告していたのに、それを嘘だと思い、否定していたからだろう。
その土下座謝罪に対して母さんは「いいわよ~。それよりうちの息子、可愛いでしょ~♪」と過去のことを気にせず、逆に惚気ていた。
その言葉に女性二人組が泣きながらウンウンと首を縦に振ってた姿は、見てて心が痛くなった。
そしてお詫びの印として、翌日に口座に現金が振り込まれるらしい。
今日は土下座の日とでも名付けよう。
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