桜の生贄~殺人鬼がいる学校から脱出せよ~

桜餅

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第一章 最初の生贄

1 悪夢の始まり

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 「おーい。ユーリ!帰る前にゲーセンよろーぜ!」


 「今日も?テスト近いから勉強しないと不味いんじゃないか…」



 僕の名前は雨宮 優里あまみや ゆうり、みんなからユーリと呼ばれ何だかんだ良いようにパシリなどにされている高校二年生の17歳。テスト前にゲームセンターに向かおうとしているのが僕の友達の山口 大樹やまぐち だいき、結構な熱血馬鹿だがテスト前に勉強放棄していてもなぜかいつも上位に食い込んでいる。


 自頭が違うのかなって思う時もあるが、他人を気にしている暇はないしもっと僕も努力しないとと思う。


 「ユーリ、何か思い詰めてるみたいだけど大丈夫?」はらりと黒髪の女の子が僕の前に現れる。まるで花のような儚さと優しさを持つ彼女、桜田 有栖さくらだ ありすは僕の前に蜂蜜入りのお茶のペットボトルを置く。



 「わわ。いいの?」


 「うん。かなり疲れてそうだから今日はゆっくり休んで。」


 「あ、ありがとう!!」



 有栖はクラスの人気者だった。気配りも出来るし見た目もいいし何より全てを肯定して全てを受け入れてくれる優しさもあるし彼女の周りはとても穏やかで居心地が良い。そんな彼女だがみんなの好意を前面に受けていても鈍感なのか全く気付かないのだ。告白しようにもやんわり断られるおかげで彼女に対する好意を加速させて、更にアプローチをかける生徒もいたらしい。


 大樹は彼女とかなり親しそうに話しているのを見かけて、つい大樹は彼女が好きなのかと問いただしたことがあったが彼は保健室の先生が好きらしくて大笑いしながら恋愛的な意味での好意は否定した。


 まあでも僕みたいな冴えない男は彼女に見向きされないから諦めろと言われるしまつ…。


 家に帰ると復習予習を済ませてご飯を食べた。


 そのあとは大好きな脱出ゲーム、一応テスト前だがこれをやらなければ一日が終わらない感覚になるため寝る前に必ず一プレイを済ませてから就寝している。本来五時間かかる程度の脱出ゲームを二時間でクリア、また明日も頑張るかと目を閉じたのだった。





 目が覚めたらある場所から脱出してくださいというのは当たり前だが現実世界ではありえない。一番最悪なのは脱出要素だけではなく殺人鬼から追いかけられる要素があると100パーセント死ぬ。というか死ぬ自信しかない。



 それなのに…目が覚めたら見知らぬ学校の中に閉じ込められていたなんて笑えない状況に逆に笑いが込み上げてきた。


 僕が目を覚ました場所は3-Cの教室。取り敢えず脱出ゲームの基本探索を始めようと動き出そうとするが僕は一つの可能性を導き出す。ここが殺人鬼がいるゲームだったら完全に死んでしまうということ、だから僕は足音立てず、隠れれる場所を探しながら移動することにした。



 「ここは三階なんだ…三年生の教室、放送室、トイレしかない。放送室は鍵がかかっていて開かない…僕以外に誰かこの場所にいないのかなぁ。」



 三階のざっくり探索を終えると最初に目を覚ました3-Cの部屋に戻ってきて何か手掛かりになるものを探しに机の中や後ろのロッカーの棚の上の本や掃除用具入れの中を確認すると案の定、本の間に学校の地図が挟まっていた。


 一階には職員室、一年生の教室、トイレ、音楽室、体育館、保健室、図書室。

 二階には二年生の教室、トイレ、視聴覚室、調理室、理科室、相談室。

 三階には三年生の教室、トイレ、放送室。


 なんだか不思議な間取り図だなぁと思いながら三階でじっとしているわけにも行かず、二階へ降りてみることにした。すると見たことある後ろ姿を見つけ話しかけた。




 「大樹!」


 「ユーリ!よかった無事だったんだな!」




 大樹の様子がいつもと違っていたため僕は首を傾げた。


 「お前は会ってなかったのか…この学校には殺人鬼がいて、さっきまで追いかけられていたんだ。さっきこの階段の反対側の別の階段で女子高生がその殺人鬼に殺された…。」初めて人の死を目のあたりにした大樹の表情は暗く、いつもの冷静さを欠いていた。




 「大樹…大丈夫じゃないと思う、てか絶対にそうだけど!今は俺達が生き残る方法を考えよう…!殺人鬼の様子とか追いかけ方とか覚えてること話してほしい、対策を考察してみるよ。」



 「あ、ああ…。」




 殺人鬼は大鎌を扱う190cmぐらいの軍服を着た大男であり身体能力が高く、三階から一階まで飛び降りて来ても無傷で追いかけてくる速度も半端なかった。唯一の救いは殺人鬼は一方的ない蹂躙は好まないらしく、10秒ほど数えてから追いかけてきたらしい。最初は逃げた先で身を潜めていたが、身を潜められなかった人達は大鎌で真っ二つにされていたらしい。


 殺人鬼が現れる予兆みたいなものは足音が大きいこと。それを聞いてすぐに身を隠しながらこちらまで来たが、結局途中で隠れられないところで見つかり現在まで物を投げて視線を自分から逸らしたりしてなんとかここまで逃げ切れたみたいだ。


 「それなら大きい足音がしたらすぐに身を隠して見つかった場合は何かしら目くらましになるようなものがあればって感じかなぁ…」優里は何か目くらましになるようなものは作れないかと考える。




 「唐辛子で目くらましはどうかな?あれ目に入るとマジで失明するかってほど痛いんだよ。」


 「うわあ、お前えげつないこと考えるじゃん…でもユーリに賛成!それなら唐辛子ありそうな調理室向かおう。気をつけろよマジで逃げ遅れても俺の身体能力じゃあの殺人鬼には叶わない。」


 「わ、わかってるよ…隠れながら移動しよう。そのあとは他の階に何かないか探索を進めよう。」


 「ああ」




 目くらまし用に唐辛子を求めて二人は動き出す。


 出来るだけ足音と息を殺し辺りを警戒しながら調理室へ向かうのだった。
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