機械の神と救世主

ローランシア

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第三章 亡国の姫と王国の剣

036 時を停める少女と救世主

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≪……マスター。何者かがこの街全体の時間を止めたようです────≫

時間を……!?そんなデタラメな……!?
≪古の時代に封印された禁呪を用いたようですね。術者が街の中に入ったようです≫

とりあえず、こうしてても仕方ない! 行くぞマキナ!
≪はいっ≫

俺たちは席から立ちあがり警備隊の建物から飛び出ると、街の人達の動きが停まり、
いつもの街の喧騒はなく静まり返っていた

……っ!やっぱこの街全体の時間が停まってるのか……!

「姫様……、困ります。こんな事で姫様のお力を使われては……」
「はぁ~……、うるさいのう、カインは。小さい事をいちいち気にするでないわ」

 北門の方角から声が聞こえ声のする方へ走り出すと、停止した世界で唯一動く人影が見えてくる

一人は甲冑を着こみ剣を携えた短髪のイケメン騎士
もう一人は髪が腰まである銀髪ロングで、身長140センチ程の見た目小5ロリ巨乳美少女だった

「街全体の時間を停める事は小さい事ではありません。 もうここまで来れば門番に見咎められる事もないでしょう。術を解いてください」
「わかったわかった……、そう小言を言うでないわ。……ほら、解除したぞ」
「……ほっ……。大騒ぎになったらどうするんですか……。これから協力を求めようという国で問題を起こしたら協力を得られにくくなりますよ……」
「そう言うでない。私とてイタズラに時を停めたわけではないのだぞ」
「……門番に見咎められて身体検査をされるのが嫌だから、でしょう?」
「フン……。なぜ見ず知らずの男の前で肌を晒さねばならんのじゃ、私は娼婦ではないぞ。理解できぬ悪習よ」
「街に入る者が危険な物を持ち込んでいないかを検査するのは、兵の職務ですから……」

≪……私とそんなに歳も身長も変わらないのにあのおっぱい……!……殺していいですか?あの女≫
絶対ダメ!殺害動機がおっぱいとか最悪すぎだから!……それにどうやら訳ありみたいだぞ……

……とりあえず話かけてみよう

俺は少女と男に歩み寄り話しかける

「こんにちは、始めまして」
「……なんじゃ?お前は」
「……私達に何か御用でしょうか?」

あくまで時間が停まった事と自分たちは無関係を装うような表情で騎士風の男が口を開く

「私は救世主の東条 司と言います。今、時間を停めましたよね?あなたたちは一体……?」
「……っ!救世主!?東条……!?まさか……!」
「……っ!お、お前が東条だとっ!?セレスティアの街を救った英雄の……、あの東条か!?」
「はい。私が東条ですが」
「お、おい!カイン!?これはまさしく天命ぞ!我らに祖国の、父上と母上の仇を取れと天が言っておるのだ!」

急にテンションが爆上がりし、目をキラキラとさせながらカインと呼ばれた騎士風の男を見上げるロリ巨乳美少女

セレスティアを、救った……、か、そんな事になってんのか俺のした事って

「……まず、自己紹介をさせていただきます。私はガーロンド国親衛騎士団の「カイン・ハーゼン」と申します」
「どうも、東条司です」
「私はレナ……!んむっ……!?んん~~~~っ!?」
「……レナ様。身分を明かされるのはもう少しお待ちください。この場で身分を明かされるのは非常に危険だと思います」

周囲を警戒しながら少女の口をおさえ嗜める騎士

「……んぐ……」

口を押おさえられたまま少女が頷く

マキナ?この二人の事調べられるか
≪はいっ。すでにこの者達のパーソナルデータはご用意してありますっ
さすがマキナちゃん!仕事ができるね!
≪ふふふっ……≫

≪お伝えします。このだらしなく膨れ上がった水風船を胸からぶら下げている銀髪の小生意気そうなガキが……≫
ソレ完全に私情を挟んで話してるよね?情報の報告はあくまで冷静に!
≪……はぁい。レナ・ガーロンド。エルトの遥か東方に位置する国「ガーロンド王国」の第一王女で王位継承権第一位だった少女です≫
……だった?
≪一か月ほど前、破滅の王の軍勢に国を攻め落とされこのエルトに逃げ延びて来たようです≫
っ!破滅の王の軍勢にやられたのか……!

≪隣の男はカイン・ハーゼン。ガーロンド王国騎士。王女親衛隊の騎士です≫

「あの……、どこかに場所を変えてお話をさせていただきたいのですが……」

こちらをうかがうように騎士風の男が言葉を繋げる

「……込み入った話ですね?」
 わかっていたが一応確認ととる為に聞いてみる

俺のその言葉に騎士が頷く

「……わかりました。じゃあ、こちらへどうぞ。警備隊の詰め所です」

 二人を警備隊の詰め所へ案内する道中、レナという少女が騎士の男に話かける

「……のう、カイン……」
「はい、姫様」
「あの者は……本当に噂通りの強さだと思うか?私にはとてもそうは見えぬのだが」
「あの方は相当な訓練を積まれた強者である事は間違いないでしょう。体のあちらこちらに見える傷痕が修行の激しさを物語っております」
「フォドラ将軍とどちらが強いかの?」
「……私にはわかりません……」
「そこまで凄いのか……。ううむ、人は見た目ではわからぬと言うが、本当にわからぬものよの……」

警備隊詰め所に到着し中に入れてもらうよう話をつけ、レイザーさんの部屋に再び向かう

コンコン……!

「おっ?東条か!?おう!入れー!」
「はい」

ガチャ……

「失礼します」
「おお、どうしたんだいきなりいなくなってよ?便所か?……って、なんだ?後ろの奴らは」
「はい。事情をご説明します」

席に着いた後、レイザーさんがお茶を持ってくるように命じ、二人にお茶が配られた後話始める

 「……改めて自己紹介させていただきますね。私はこのエルトで召喚された救世主、東条 司です。こっちは私の神器のマキナです」
 俺はマキナに手をかざしながら自分たちの紹介する
「こちらも改めて自己紹介させていただきます。私はガーロンド国の王国騎士王女親衛騎士のカイン・ハーゼンと申します」
「ガーロンド国、第一王女の
 
「……で?どういう事だ?さっき東条がいなくなる直前、俺らは普通に話てたはずが、一瞬で東条がいなくなったんだが……」
「それは、こちらの方々が事情を知っているようですよ」
「っ!?なっ?お、お主……!私の術を見破っているのか……!?」

 少女に小声で話しかけられる

「はい。というか俺らは普通に動けましたし、先ほどの会話も全部聞かせてもらいました」
「な……、私の時間停止が、効かぬじゃと……!?」
「姫様の時間停止の禁呪が効かないですと……!?」
「……おい。何を言ってんだ?」
「姫様、これは……」
「う、うむ。しかし、この者が只者でないというのは今の話でよう分かったわ。カイン?この者達に話してみようと思うが。どうだ?」
「はい。それがよろしいかと……」
「そうか。よし……。改めて自己紹介させてもらおう。私はレナ。ガーロンド国第一王女の「レナ・ガーロンド」と言う。
……この者は私の護衛担当騎士のカイン・ハーゼンじゃ」

「ん?ガーロンド……?ガーロンドって確か……、一か月ほど前に落ちたと酒場で聞いたぜ?」
「……そうじゃ。一か月前、私の国ガーロンド国は破滅の王の軍勢に攻められ落とされた……」
「……って事は、亡命って奴か……」

レイザーさんが苦い顔をしながら手を顎に当て目を細めながら言う

「そうじゃ……。アテもなく彷徨っておったところに、
風の噂でセレスティアを救った英雄がいるとの話を聞いての……。祖国の仇を取ってもらいたくて来たんじゃ……
悔しいが……私では……っ!母上のッ……!父上のっ……無念を晴らす事ができん……っ!」

レナ王女が、両手でギュっとスカートを掴み悔し涙を浮かべながら言葉を繋げる

「……頼むッ……救世主……!いや……東条殿!私達の祖国を滅ぼしたあやつらを倒してくれ……!
その為なら私はどんなことでもする!なんでもする!」

 レナ王女が顔を伏せ唇をかみしめその言葉を言葉を絞り出す
顔から落ちた滴がポトポトと音を立てながら落ちる

「おいおい……。嬢ちゃんよ、いくら救世主つったって体は一つだぜ?東条は今「禍の者」っつー奴を追いかけてるところだ。そんな遠くの国の事にまで手が回るかよ」
「あの方」が「禍の者」だという確証を得た為、レイザーさんの興味は完全に破滅の王から「禍の者」に移ったようで、レイザーさんが渋い表情になる

「それは、わかっておる……。わかっておるんだ……!しかしっ……しかし……!そこを何とか頼むっ……!」

 この世界を救う以上は、破滅の王とも当然いずれはやりあわなきゃいけないのは確かだ。
だが、現在の状況では、よほどの事が無い限りエルトから離れるわけにいかない。
 遥ちゃんの時は緊急事態だった為、後先考えずに飛び込んだが、
もしアレが陽動で俺が不在の間にマキナの兵器を無効化する装置をエルトに仕掛けられ、
総攻撃を仕掛けられていたらと思うとゾっとする

 なんとか納得させる理由づけしなきゃな

「……それに、奴らがいつまでも滅ぼした国に居続けてるとは考えにくいです」
「……あ」
「それもそうだな。あいつらだって馬鹿じゃねえはずだ。今頃はとっとと逃げちまってるだろうな」
「……奴らを世界中で指名手配するてはずは整ってます。そう遠くない内に見つかるはずです」
「ほっ!本当か!東条殿!」
「ええ、間違いないです」
「奴らを指名手配するって話はこいつが提案したんだからな、間違いねえよ」
「……姫様。これは期待してよろしいかと」
「そっ!そうか!カインもそう思うか!」
レナ王女が目をキラキラさせながら、胸の前で握りこぶしを作りカインに振り向く



窓の外を見るといつの間にか夕暮れ時になってしまっている事に気が付く

「あの?もうそろそろ日が暮れますが、今日の宿のアテはあるんですか?」
「……いや、さっきこの街に着いたばかりでの、まだ宿の手配はおろか右も左もわからん……」
「……どこか安全に夜を過ごせる宿はありませんか?東条様」

 お姫様が物騒な街の宿で安心して眠れるとはとても思えないなぁ
 この人目を惹く容姿では男たちにいつ囲まれてもおかしくない
 
「じゃあ、私がエルトの国王に話してみますよ。この街の宿では安心して休めないでしょうし」
「……よ、よろしいですか!東条様!」
 カインが少し驚いた表情で声を上げる
「ええ、この街は物騒ですし、街の宿ではゆっくり休めないと思いますので」
「それはありがたい!ぜひ頼む!正直長旅でもう限界だったのじゃ……」
「そうでしょうね。大変な長旅だったと思います。詳しい話はまた明日にしましょうか。エルトの城にご案内しますよ」
 
 二人を安全な場所で休ませたかった為、エルト城へ向かった――――
  
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