機械の神と救世主

ローランシア

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第二章 始まりとやり直し

023 救世主と魔眼の勇者

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 翌日、俺は陛下と警備隊長に警備強化の件について相談を受け会議室に来ていた、
 話合いも一段落し、そろそろ自室に戻ろうとした時だった

≪……マスター。至急お知らせしたい事が…………≫
 え、至急!? もしかして魔物の襲撃か!?
≪いえ……少々問題が起こりそうな人物なのでご報告を≫
 問題が起こりそうな人物?
≪ローランの街に「勇者」と呼ばれる一行が入りました≫
 え、勇者? 救世主じゃなくて?
≪はい。「勇者」です≫
 勇者なら……人間の味方じゃないのか? なんで問題が起こりそうなんだ?
≪勇者の記憶を調べたところ、どうやら異世界から転移してきたらしく……その、人心を惑わす魅了系洗脳スキルのようです≫
 ……洗脳!? おい、それ…………レティシアの事を洗脳した奴じゃないだろうな……?

「洗脳」という単語でレティシアの事を思い出し過剰に反応してしまい少し語気が荒くなる

≪いえ、そうではないようです。どうも魔術の類のようですね≫
 ……男か?
≪はい。これまで、貴族の娘や王女などを洗脳し性的な玩具にしてきたようですね……≫

 マキナ? ソフィアをその洗脳にかからないように出来るか?
≪はい。もうすでに対策済みです。レティシアさんにもすでにかけてあります≫
 偉い! さすがマキナちゃん!
≪えへへ……≫
 ……あ、一応レイザーさんと隊長にもかけといてくれ
≪……なぜですか? ≫
 勇者が突然ホモに目覚めたらヤバいだろ
≪あはははははっ……!!!! もぉっ、真面目な顔して何を言うかと思えば…………。はい、わかりましたっ。ふふふっ……≫
 ……となると城の他の人や街の人が心配だな…………
≪すでにくーちゃん二万羽に大至急洗脳がかからないように対策に回ってもらって城にいる人は完了してます。
 街の方はなにぶん母数が大きいですから、対策が全ての人にいきわたるまでには時間がかかります≫
 その魔術に誰かがかかったとして解除はできるか? マキナ
≪はい。可能です。レティシアさんにかかっていた洗脳よりも大分精度が落ちますので造作もないですね≫
 ……レティシアの洗脳はマキナでも手こずる程のものだったのか
≪はい。……どうやら今から勇者の一行がこの城へ来て王へ謁見するようです≫
 ……問題が起こったらアレだし、謁見の間の手前にある控室で様子伺うか
≪はいっ≫

「陛下……。勇者と名乗る一行が謁見を申し出ているのですがどういたしましょうか?」
「……何? 勇者…………? 救世主様ではなく、勇者か? ……今日は謁見の予定はなかったはずだが」
「はい。そのようです。いえ、突然謁見を申し出てきまして……」
「……何? 予約も取らずとは、随分無礼な輩だな」
「じゃあ、私はこれで失礼します。陛下、騎士団長」
「東条様。今日はご足労ありがとうございました。大変参考になりました」
「救世主様、お疲れ様でした……今日は貴重な時間を割いていただき感謝致します」
「いえ。いつでも協力しますのでドンドン進めて行きましょう。
 ローランの警備強化期待してます。それでは失礼します」

 ドアのところで一礼し退室する

 謁見の間の手前にある控室に入る。ここは陛下へ謁見する人の順番待ちをするための部屋だが、
 そもそも普段謁見をする人自体があまりいないためほとんど使われていない

 ここならすぐ駆け付けられるだろう。
 何事もなければいいんだが……

 マキナ? モニターで謁見の間を見せてくれ

 ブォン……!

≪マスター。どうぞ≫
 ありがとう、マキナ
 マキナが漆黒のモニターを出現させ謁見の間の様子映してくれる

 謁見の間に勇者たちが案内されてくる

 玉座の前で整列し膝をつく

 勇者と思われる青い甲冑に身を包んだ銀髪のイケメンが一歩前に出て陛下とソフィアの前に跪く

「お初にお目にかかります。陛下。ソフィア姫様」

「うむ、儂が第八九代エルト国王ゾディアック・エルトだ。……勇者殿? 誰の紹介も無く予約もせず突然謁見を申し出るとは、無礼だとは思わなかったのかね…………?」
「えっ……! あ…………、も、申し訳ありません……! 陛下!」
「勇者様、初めまして。この国の第一王女の「ソフィア・エルト」です」

 ソフィアがやや困ったという表情で勇者たちに顔を向ける

 すると勇者がニチャア……という粘着質な笑顔を一瞬浮かべ、すぐに元のさわやかな笑顔に戻る

 陛下のお説教が始まる
 陛下が怒る所初めて見るけど、ですよねー……国王と謁見って最低でも事前にアポとってからするものですよねー…………
≪まあ、若干大人気ないとは思いますが、陛下のこの反応は無理はないですね≫

≪あっ、今この人、スキル「魅惑の魔眼」を発動しました≫
 ……今の気持ち悪い笑顔がそうか?
≪はい。ソフィアさんを見た瞬間に発動させるとかどんだけ手が早いんでしょうね≫
 マキナがいてくれて助かったぜ。ホント。俺の神器になってくれてありがとう、マキナ……
≪ふふっ! どういたしましてっ≫
≪……ふふふっ≫
 ん……? どうした…………?
≪この人、スキルの効果が無くて混乱してます。あの一行の脳内の言葉聞かれますか? ≫
 ああ。頼む

「……おかしい、俺のスキルは発動したはずだ。なぜこの姫は俺にすり寄ってこない…………!? 今までこんな事一度だってなかったぞ!?
 いつもなら玉座の段から駆け下りてきて、息荒く俺に抱きついて体を擦り付けながら股を俺の足にこすりつけて来るはずなのに……!? なぜこの女にはスキルが効かない!?」
「……レインの奴…………さっさとスキル使えよ……! 王城に部屋もらって早く部屋でその女の股にぶち込みてぇんだよ!」
「うっひょー!? あの乳でっけえ! 揉み心地最高だろうなぁ。早くむしゃぶりつきてぇ! 早くヤリてぇよぉ!」
「ヒヒヒ……! あの乳! 尻! 太もも! たまんねぇなあ!? 全員で中出ししてやるよぉ! 誰のガキ孕むかなぁ!?」

 ……俺さ? 男だし、自分がエロいって自覚あるけど…………、これは引くわー……
≪これでは勇者の名が泣きますねー≫
 だなぁ……これからゲームとか純粋に楽しめなくなりそう…………
≪王様に謁見するシーンでこんな事テキストに書いてあったら逆にヒットしそうですけどね≫
 ……マキナはやりたいと思うか? そんな勇者のゲーム
≪そのシーンが出た瞬間にゲーム機からディスクを取り出してフリスビーにして投げると思います≫
 フリスビーにして遊んだほうが楽しいまでありそうだ
≪間違いなくそっちのほうが楽しそうです。マスター? ……今度のお休みにやりましょうよ、フリスビー≫
 おっ、いいねえ、やるかぁ
≪やりましょうやりましょう≫

「なぁ、俺らならここの近衛は楽勝だろ……。もう面倒だしやっちまうか…………?」
「スキルはどうしたんだ?」
「なぜか効かないんだ……」
「もうめんどくせえよ。殺すか、このジジイうぜえし」
「ああ。やっちまおうぜ」

 ……おっと、こりゃまずいな。勇者の一行がここまでドクズだとは思わなかったわ
 マキナ? 行くぞ
≪はいっ≫

 俺たちは控室から走り出す

≪あの勇者顔が悪いだけじゃなく、頭も悪かったですね! ≫
 性格もどうかと思うぜ!
≪私もそう思います! ≫

 俺たちは控室から謁見の間へ走って向う

「グダグダとうるせぇジジイだなぁ!? ちょっと黙れよ……? 殺すぞ、ジジイ…………!?」
「なっ!? 何をするつもりだ!? 貴様ら!?」
「さっさと金とその女差し出しやがれ! こっちが下手にでてりゃあいい気になりやがって……舐めんなよコラァ!」
「さっきから聞いてれば偉そうに説教垂れやがって……! 俺達は世界を救う勇者だぞ!?」
「下がれ! この無礼者ども! 一同抜剣! 構え!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 その号令の元、近衛兵や騎士たちが即座に槍を構え陛下とソフィアの前に立ち謁見の間の近衛兵達が勇者を取り囲む

 俺たちが謁見の間へ入ると、騎士達が抜剣したところだった

 っ!?

 剣を抜き、陛下とソフィアの方に向ける勇者達を見た瞬間俺の中でプツリと何かが切れた

 ソフィアの前で人を殺す道具をちらつかせるんじゃねえよ……!!

 マキナ!
≪はいっ≫

 シュッ
 俺は漆黒の手甲を出現させ瞬時に勇者の持つ剣を親指と人指し指で掴みへし折る

 バキィッ……!

 俺が折った剣の刀身が謁見の間の赤絨毯の上に落ちる

 カッ…………トッ…………

「なっ!?」

 俺と同時にマキナが陛下とソフィアの間に立つ

≪マスターのご命令です。お二人は私がお守りします≫
「あ……。マキナ様っ…………」
「おぉ……。マキナ様」

「ガキが邪魔すんなよっ! 火だるまになれっ!?」
 至近距離で俺より一回り大きな火の玉を放ってくる

 俺は手甲でその火の球を片手で受け止める

 ガッ……!

「えっ……!?」

 火の玉を握り潰す

 バシュウウ……!

「っ! ソフィアの前で……! 人を殺す道具を出すんじゃねえよ!!!」

 俺は瞬時にファイアボールを撃った魔法使いに接近し殴り飛ばす

 ドゴッ……

「ガッっ!?」

 ファイアボールを出した魔法使いが俺に殴り飛ばされ謁見の間の柱に叩きつけられる
 柱からズり落ちるように柱の下に落ちる

「ぐあっ……!?」
 ダンッ……!

 ドサッ……

 ピクリとも動かなくなった魔法使いを確認しカウントする

 一……

「イルシーダっ!? おい!?」
「お前らぁ……!? ソフィアに剣を向けたな…………!? ソフィアの前で攻撃魔法を使ったな!?」

 ソフィアはなぁ……!!? 陽の当たる場所で花が咲くような笑顔で人を幸せな気持ちにできる人なんだよ!!
 陽の当たらない場所でそういう血生臭い事や泥を引き受けるのは俺の役目なんだよ……!!!!

≪……マスターがキレましたね…………。
 あの……ソフィアさん? ここから先はマスターはソフィアさんに見てほしくないと思いますが…………≫
「……いいえ、マキナ様。私は見ます。
 私だけが安全な場所にいて現実から目を背けるわけにはいきません。私は司様と同じ現実を見て生きていきたいのです」
≪……そうですか、…………そうですね。じゃあ、ソフィアさん?
 マスターがこの世界に来てから、ソフィアさんの為に積み上げてきた物を見てあげてください≫
「はい。マキナ様……」

「ちっ! ガキがイキりやがって! 死んどけよっ」

 大斧を振りかぶり突進してくる戦士らしき男
 ブンブンと振り回しながら前進して来るのをステップでかわす

「囲め囲め! 囲んで殺せ!」

 勇者が言いながら予備の剣らしいエストックを抜き、勇者と僧侶が俺の後ろに回り込みトライアングルが形成される

「……」

 激情に駆られた戦士が斧を振りかぶり振り下ろして来る

「ガキがイキリやがって死ねよっ」
「死ねぇ」

 その次の瞬間、勇者がが後ろからエストックで突きを放ってくる
 その一瞬後に僧侶が殴りかかって来ていた

 ザクッ……!
 後ろからの勇者の攻撃を寸前で回避すると、次の瞬間勇者のエストックが戦士の喉へ突き刺さり首を貫通した

「レヒュッっ!? レッ!? かはっ!? オッ! レイヒュッーーーーっレヒューーーーッ!?」
「バルディア――!?」
「あっ……!? ああああ!? ガルディア!? ガルディアーーーッ!? あああああ!? お、俺っ…………!? 俺……!」
 自分が仲間を刺してしまった事に取り乱し、勇者が剣を戦士の首からエストックを引き抜いた後取り落とす

 カシャンッ……!

 ブッシャアアアアアア

「たっ……!? たびゅけとえええええええっ!!? ゲボッっ!? ゴボッ! おおっおおお!?」
 勇者が戦士の首からエストックを抜くと同時に戦士の首からおびただしい鮮血が噴き出し、正面にいた勇者と僧侶に振りそそぐ
 戦士が大斧を手から離しその場に落とし。両手で首を抑え血を止めようと試みる

 ダンッ……

「あああああ!? バルディアーーーっ!」
 戦士の返り血を浴び青ざめた勇者が叫ぶ

 首から血を吹き出しながら屈む戦士の首に添えた手に全力の蹴りを叩き込み、戦士が大の字で倒れ動かなくなる

 ガスっ……!
 ミシッ……!

 俺の蹴りの衝撃を受け戦士の首から骨が軋む音が聞こえる

「オグッ……!?」

 ドサッ

 戦士が動かない事を確認しカウントする

 二……

「バッ! バルディア!? だっ、大丈夫だっ! すぐ治癒の魔法かけてやるからなっ?」
 そう言いながら僧侶が戦士に駆け寄る

「バルディア!!? くっ……!」
 勇者が動揺から少し立ち直ったのか、足元に落ちたエストックを拾おうと膝を折るが、
 エストックを拾う寸前に勇者の顔に跳び蹴りを叩き込み吹っ飛ばす

 ズシャアアッ……

「……」

 勇者が赤絨毯の上に鼻血をまき散らしながら倒れる

 ドガァッ

「がっ!?」

 ドサァッ……!

 勇者が赤絨毯の上に吹っ飛ばされる

 ……浅かったか

 ツカツカと倒れている勇者の元へ歩いて行き、頭を鷲掴みにして、謁見の間の柱に全力で叩きつける

「っ……!」

 ダンッ……

「がはっ……!?」

 勇者が柱からずり落ちドサッと落ちる
 柱に寄りかかるようにもたれながらうめき声を上げる

「う……うぁ…………や……や……め……」

 ……早めに意識失えよ? でないと死ぬぞ

 柱にもたれかかる勇者の頭を掴み上げ、思い切り大理石の床に叩きつける
「ぐっあ……ぁ…………!」

 ガンッ

「……」
「お”っ……!?」

 グッタリと動かなくなったのを確認しカウントする

 三……

 勇者が動かなくなった事を確認し僧侶へツカツカと歩き出す

「バルディア……!? おい! しっかりしろって! 死ぬなよ!? なぁっ!?」
 僧侶が必死に戦士の首に治癒魔法をかけていた

 僧侶を見下ろしながら声をかける

「……なぁ?」
「えっ……?」

 ドゴォッ

 一瞬呆けた顔で俺を見上げた僧侶の横っ面を思い切りぶん殴り、顔に拳がめり込み歪ませながら吹っ飛ばす
 吹っ飛ばされた僧侶が床に叩きつけられる

「がっ……!?」
 ズッシャアアア……!

「……」
 ガッ!
 ベキィッ……!

 治癒魔法をかけられていた事を考え念の為に戦士の首を足で思い切り踏みつけると
 踏みつけた時に首から骨の砕ける気持ちのいい感触と音が出る

 戦士に意識がないか確認した後、倒れている僧侶まで歩いて行く。

「ぐっ……」
 うめき声を上げながら起き上がろうとする僧侶の横腹を思い切り蹴飛ばし転がせる

 ガスッ……
 ドサッ……!

「おぐっ……っ!? うっ!? ゲボォォォ!」

 四つん這いになっている僧侶が吐しゃ物をまき散らす
 ちょうどいい位置に僧侶の頭がきたのでサッカーボールのように頭を蹴飛ばすと、僧侶は仰向けで倒れる

「がぁ……ぅっ…………」

 グッ……

 僧侶の右肘に足を乗せ体重をかけ思い切り踏み込み砕く
「あっ!? やっ……やめ…………!?」

 ミシッ……! ググ…………バキィッ!!!! ミチュッ……!

 僧侶の右腕の肘を踏み潰す音と僧侶の絶叫が謁見の間に響く

「……」

「ぐっ!? がああああああああああっ……!!!!? いっ痛ぇっ!? いてええええええ!? なっ! なんでこんな酷い事すんだよ!!!?」
 僧侶が潰された腕をかばいながら非難を浴びせてくる

「……なんで? 人殺しの道具を人に向けといてよく言えるな」

 僧侶の顔を蹴り飛ばす

 ガッ!

「ぐぶっ……!?」

 ガッ……!

 僧侶が動かなくなったようだが、念の為に腹を踏みつけ肋骨を折り意識がないか確認する

 ググッ……!! バキィッ…………

「……」

 ……よし、意識はないな

 四……
 蹴り飛ばされたのがトドメになったのか、僧侶が倒れたまま動かなくなったのを確認し最後のカウントを数える

 最初に殴り飛ばした魔法使いは一発しか殴ってなかったため、意識を魔法使いへ向けながら終了を宣言する

「……終了です」

 マキナ? こいつらの拘束頼む
≪はいっ≫

 マキナがワイヤーを出現させ勇者たちを拘束する

≪マスター? この者達の治療はどうしますか? ≫
 しなくていいよ。どうせこいつら死刑だろうし。
≪はいっ≫

 謁見の間で陛下と姫に剣を抜いたんだ殺されても文句言えないはずだ

 謁見の間の近衛兵と騎士達が青ざめながら俺を見ていた
 いや、これ本来あなた達の仕事ですよ?

「救世主様、マキナ様。ありがとうございました。おかげ様で命拾いしました……」
「お怪我はありませんか? 陛下。ソフィアも大丈夫?」
「はいっ。司様っ……マキナ様もありがとうございましたっ」
「おい。この強盗共を牢に入れておけ。裁判の後に処刑だ」
「ハッ……」

 近衛兵たちが勇者たちを立ち上げ連れて行く
 ですよねー! 陛下と姫に剣向けて殺すとまで言ったんだし間違いなく死刑ですよね!

「連行よろしくお願いします。ああ、後で牢屋に行ってワイヤー解除しますね」
「ハッ! お疲れ様でした! 救世主様! よろしくお願いします!」
 ……こりゃいよいよレティシアの件バレたら俺死刑確実だな…………
≪何があっても私がマスターをお守りするのでそうはなりませんが。
 世界と戦争する事にはなりますねー。それはそれで楽しそうですけどね≫
 さらっとすごい事言うね君!? 世界中の国と戦争するって……いやいやいや…………
≪今の私でもこの世界の文明レベルなら楽に滅ぼせますから大丈夫ですよ? ≫
 マキナって改めてすげーっておもったわ……マジで想像もつかないくらいすげぇわ…………
≪ふふふっ≫

 フンスとマキナが両手を腰に当て、胸を張りながら瞑目しながら「ふふん」と言いたげなドヤ顔になる

「司様ぁっ……!」

 たたたたたっ!

 ソフィアが駆け寄ってきて抱きついてくる、ソフィアの体が少しだけ震えていることがわかる
 抱きつきながらいつものようにスリスリと俺の胸に顔を擦り付け甘えてくる
 落ち着かせるためソフィアの頭を撫でる

 ……勇者たちが怖かったんだな?
 そりゃ怖いよなぁ、実際の戦闘なんて初めて見ただろうし
 むしろ俺が虐殺に近い惨劇を行ってたんだけど、それについてはソフィアは怖くないのかな……

「ソフィア……怖かったろう? もう大丈夫だからな」
「はいっ! はいっ……!」

「……」

 気が付くといつの間にかソフィアが俺の胸でうずめていた顔を上げじーっと見て来ていた

「ど、どうしたの? ソフィア」
「いえ……。やっぱり、司様は私の英雄ですっ…………」

 言いながら俺の胸に再び顔をうずめるソフィア

 あの? ソフィア? 陛下が目の前にいるんだけど!? お父さんの目の前なんだけど!?


「東条様? そのままソフィアを救世主様のお部屋にお持ち帰りしてくださって結構ですよ」
「……じゃあ、俺の部屋に来る?ソフィア」
「はいっ。司様っ……」
「ほっほっほ!」

 ソフィアが俺の腕を胸に挟み肩に頭を預けてくる

 ソフィアの花の咲くような笑顔を見て幸せな気持ちになり、笑みを浮かべながら俺は歩き出した────────

 が、マキナが口を開く

≪マスター。大至急お伝えしなければいけない事があります≫
 え!? 大至急!? 今度は何だ! もしかして今度こそ魔物の襲撃か!?


≪マスターの義妹の「東条さやか」さんがセレスティアで召喚されたようです────────≫
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