43 / 56
43話
しおりを挟む
危なかった……。
一歩間違えたら夢の時みたいになる所だった……。
でも、なんとか回避出来た。ここからは夢では見ていない。なるようになるしかない。
この状況を打破するには母さんの回復が必須だろうと思って『魔力譲渡』を使った。その時、お仕置きの意味を込めて大先生レベル5バージョンにしたんだが──
──母さんの果てる時の声でぞわぞわってなったよ……リリアさんの時は何も思わなかったのにな……やっぱり母さんに欲情してる自分が怖い。早く恋人を作ってリア充にならなければ……。
とりあえず、あの後直ぐに母さんはドラゴンに向けて横一文字に剣を振り切り──【神聖刃斬】を放った。
飛ぶ斬撃特大バージョンだ。
お陰でブレスも止んだ。
師匠も疲労が凄まじいのだろう。あまり顔色が良くないけど、いつものように話しかけてくる。
「こりゃー買い替えだな。よっと、雑魚ならこれで十分だろ。何故か隊長が全盛期以上の動きをしているが、この際その事は置いておく。ロイに何か策があるんだな? もう逃がせられないかもしれんから腹くくれよ?」
師匠の盾は使い物にならないぐらいぼろぼろになり、スペアの盾を装備している。
「当然皆と一緒に戦いますから逃げませんよ! 策はあります──師匠達にはこの場に残った魔物を1匹残らず殲滅して下さい」
「……? お前が囮にでもなるのか? そりゃー無理だろ。例え『挑発』を使っても目に見える範囲でしか効果はないぞ?」
「だから──ちゃんと策はありますから安心して下さい! それじゃあ論より証拠ですッ! いきます──『挑発』──」
僕は少し離れた場所まで移動し──
『挑発』と『感度操作』の【好感度】を1にして使用する──
10であれだけの微精霊がやってくるぐらいだ。
1なら間違いなく『挑発』の効果を底上げしてくれるはずだ。
師匠は「挑発じゃねーかよ」と言わんばかりの表情だったけど、事態の急変に気付き顔色を変える。
うぐっ……『危険察知』先生の警鐘がヤバすぎる。
周りを見渡すと──魔物は動きを止めてこちらをギロリと睨みつけていた。
それだけじゃない。兵士や冒険者も睨みつけている。
こぇよ……何で兵士さん達も親の仇を見るような顔してるんですかね……師匠達は普通なのに……。
とりあえず準備は万端──
「──そっち頼みましたねッ! じゃ──」
そして、僕は一気に駆け出す──
師匠やシャーリーさんが待つように言ってたけど無視だ! 疲弊してるから追いかけてこれないだろうしね!
それに、この戦闘は最悪討伐しなくても問題ないはず。近くの街と言ってもそんなに近いわけじゃない。直ぐに危機が訪れるわけではない。
今は皆やこの街を守る方が先決だ。
それになんとかする為の策もちゃんとある!
僕は後ろをチラリと見る。
魔物は雄叫びを上げながら、僕を必死に追いかけてきている。
これ半分以上こっちに来てね!?
予想以上の効果だよ!
これトレインって奴だよ!
でも、こんなの誰にもなすり付けられないよ!
せめての救いは大先生で疲れないから走り続けられている事ぐらいだよ!
もっと離れなければ──
────
────────
────────────
けっこう走ったけど、まだもう少し離れた方がいいかな……──いや、この辺りにしよう。
『気配察知』にこの先──人の反応がたくさんある。街はまだ遠いはずなのにな……。
「まぁ、でもここまで来たら大丈夫かな? 【盾具現化】──」
僕は魔物が散らばらないように盾で囲んでいく──
これで大丈夫っと。
ってあんまり大丈夫じゃないな……頭ががんがんする……。
アイギスってけっこう負担がかかっているんだろうか……【痛覚】を鈍くしているのにここまで痛いとは……。
まぁ、新しい必殺技出すぐらいは大丈夫かな?
「それじゃー、新必殺技のお披露目だいっ! 誰もいないけどね!」
僕は強度は無視して出せるだけの盾を上空具現化させていく──
うぅ~……頭めっちゃ痛いなッ!
後は落として重力の力で殺傷力が上がった状態でぶつけるだけだッ!
これなら広範囲に攻撃出来るし、盾を落とすだけの簡単なお仕事です!
これぞまさしく──盾の雨ッ!
着想はシャーリーさんの空から降らせていた光魔法だ。
しかし、今も空で待機している盾達……。
落ちないよ……空中に固定されてるよ……。
やっぱり操作しないとダメなのかな?
アイギスで出した盾は基本的に全部動かす事が出来る。それはつまり──盾と僕との間に魔力の繋がりがあるという事になる。
精密に操作出来るのは5枚までだけど──
盾を下に引っ張るだけなら行けるんじゃなかろうか?
一部を引き下げるように動かしてみるといけた。
良しッ!
「──行くぞッ! ──【盾の雨】ッ!」
技名はそんまんまだッ!
その名の通り、盾を勢いをつけて凄まじいスピードで落ちていく──
地面に衝突するとヅガガガガガガガガガガガガガガガッと、けたたましい音が響き渡ると同時に僕は激しい頭痛と全身の痛みにより倒れる。
なんとか首を起こして見てみると【盾の雨】が魔物に当たるとスライスされていた。
成功──だ……。
ただ、頭と体が痛すぎる。耐性や【痛覚】を飛び越えてダメージが来ている。
目も見え辛い……。
微かに見える魔力盾に自分の姿が映ると目から出血していた。
もし……かして……脳のキャパオーバー?
そうだよな……子供だしな……『感度操作』も完全に操作しきれないぐらいだしな……。
ヤバい……痛くて上手く魔力も制御出来なくなってきた──
魔力盾は霧散していく。
このまま休みたい──
だけど、『気配察知』にはまだ反応がある。
起きるんだ……。
ここで寝たら間違いなく──死ぬ。
例え武器が無くても立てッ!
母さんに啖呵を切ったんだ!
僕は気合いで起き上がる──
「──ははっ……」
目の前に一つ目の巨人──サイクロプスが何匹もズタズタになった状態でこっちにゆっくり歩いていた。
この最悪な状況を回避出来ない現状に乾いた笑いが出てしまう。
だけど、また皆に会う為に──
足掻こう──僕の全てを使い切るッ!
「──【盾の舞】ッ! くそっ……──【盾刃転】ッ!」
具現化した盾は1枚だけだった。盾を回転して【盾刃転】に切り替える──
これが今の僕の精一杯か……操作しているからか頭がガンガンする。でも、さっきの体を襲った痛みは少し引いてきている……所々皮膚が裂けて血が噴き出しているから違う痛みはあるけど……。
──ここで【性感度】大先生のレベル3だッ!
──良しッ! これなら痛みを誤魔化せれる!
僕はまだ戦えるッ!
「おらぁぁぁぁっ、かかってこいッ!」
必ず生き残るッ!
そして帰ってまた皆を守るんだッ!
迫るサイクロプスの拳に向かって【盾刃転】を放つと──
そこから僕の意識は途絶えた──
一歩間違えたら夢の時みたいになる所だった……。
でも、なんとか回避出来た。ここからは夢では見ていない。なるようになるしかない。
この状況を打破するには母さんの回復が必須だろうと思って『魔力譲渡』を使った。その時、お仕置きの意味を込めて大先生レベル5バージョンにしたんだが──
──母さんの果てる時の声でぞわぞわってなったよ……リリアさんの時は何も思わなかったのにな……やっぱり母さんに欲情してる自分が怖い。早く恋人を作ってリア充にならなければ……。
とりあえず、あの後直ぐに母さんはドラゴンに向けて横一文字に剣を振り切り──【神聖刃斬】を放った。
飛ぶ斬撃特大バージョンだ。
お陰でブレスも止んだ。
師匠も疲労が凄まじいのだろう。あまり顔色が良くないけど、いつものように話しかけてくる。
「こりゃー買い替えだな。よっと、雑魚ならこれで十分だろ。何故か隊長が全盛期以上の動きをしているが、この際その事は置いておく。ロイに何か策があるんだな? もう逃がせられないかもしれんから腹くくれよ?」
師匠の盾は使い物にならないぐらいぼろぼろになり、スペアの盾を装備している。
「当然皆と一緒に戦いますから逃げませんよ! 策はあります──師匠達にはこの場に残った魔物を1匹残らず殲滅して下さい」
「……? お前が囮にでもなるのか? そりゃー無理だろ。例え『挑発』を使っても目に見える範囲でしか効果はないぞ?」
「だから──ちゃんと策はありますから安心して下さい! それじゃあ論より証拠ですッ! いきます──『挑発』──」
僕は少し離れた場所まで移動し──
『挑発』と『感度操作』の【好感度】を1にして使用する──
10であれだけの微精霊がやってくるぐらいだ。
1なら間違いなく『挑発』の効果を底上げしてくれるはずだ。
師匠は「挑発じゃねーかよ」と言わんばかりの表情だったけど、事態の急変に気付き顔色を変える。
うぐっ……『危険察知』先生の警鐘がヤバすぎる。
周りを見渡すと──魔物は動きを止めてこちらをギロリと睨みつけていた。
それだけじゃない。兵士や冒険者も睨みつけている。
こぇよ……何で兵士さん達も親の仇を見るような顔してるんですかね……師匠達は普通なのに……。
とりあえず準備は万端──
「──そっち頼みましたねッ! じゃ──」
そして、僕は一気に駆け出す──
師匠やシャーリーさんが待つように言ってたけど無視だ! 疲弊してるから追いかけてこれないだろうしね!
それに、この戦闘は最悪討伐しなくても問題ないはず。近くの街と言ってもそんなに近いわけじゃない。直ぐに危機が訪れるわけではない。
今は皆やこの街を守る方が先決だ。
それになんとかする為の策もちゃんとある!
僕は後ろをチラリと見る。
魔物は雄叫びを上げながら、僕を必死に追いかけてきている。
これ半分以上こっちに来てね!?
予想以上の効果だよ!
これトレインって奴だよ!
でも、こんなの誰にもなすり付けられないよ!
せめての救いは大先生で疲れないから走り続けられている事ぐらいだよ!
もっと離れなければ──
────
────────
────────────
けっこう走ったけど、まだもう少し離れた方がいいかな……──いや、この辺りにしよう。
『気配察知』にこの先──人の反応がたくさんある。街はまだ遠いはずなのにな……。
「まぁ、でもここまで来たら大丈夫かな? 【盾具現化】──」
僕は魔物が散らばらないように盾で囲んでいく──
これで大丈夫っと。
ってあんまり大丈夫じゃないな……頭ががんがんする……。
アイギスってけっこう負担がかかっているんだろうか……【痛覚】を鈍くしているのにここまで痛いとは……。
まぁ、新しい必殺技出すぐらいは大丈夫かな?
「それじゃー、新必殺技のお披露目だいっ! 誰もいないけどね!」
僕は強度は無視して出せるだけの盾を上空具現化させていく──
うぅ~……頭めっちゃ痛いなッ!
後は落として重力の力で殺傷力が上がった状態でぶつけるだけだッ!
これなら広範囲に攻撃出来るし、盾を落とすだけの簡単なお仕事です!
これぞまさしく──盾の雨ッ!
着想はシャーリーさんの空から降らせていた光魔法だ。
しかし、今も空で待機している盾達……。
落ちないよ……空中に固定されてるよ……。
やっぱり操作しないとダメなのかな?
アイギスで出した盾は基本的に全部動かす事が出来る。それはつまり──盾と僕との間に魔力の繋がりがあるという事になる。
精密に操作出来るのは5枚までだけど──
盾を下に引っ張るだけなら行けるんじゃなかろうか?
一部を引き下げるように動かしてみるといけた。
良しッ!
「──行くぞッ! ──【盾の雨】ッ!」
技名はそんまんまだッ!
その名の通り、盾を勢いをつけて凄まじいスピードで落ちていく──
地面に衝突するとヅガガガガガガガガガガガガガガガッと、けたたましい音が響き渡ると同時に僕は激しい頭痛と全身の痛みにより倒れる。
なんとか首を起こして見てみると【盾の雨】が魔物に当たるとスライスされていた。
成功──だ……。
ただ、頭と体が痛すぎる。耐性や【痛覚】を飛び越えてダメージが来ている。
目も見え辛い……。
微かに見える魔力盾に自分の姿が映ると目から出血していた。
もし……かして……脳のキャパオーバー?
そうだよな……子供だしな……『感度操作』も完全に操作しきれないぐらいだしな……。
ヤバい……痛くて上手く魔力も制御出来なくなってきた──
魔力盾は霧散していく。
このまま休みたい──
だけど、『気配察知』にはまだ反応がある。
起きるんだ……。
ここで寝たら間違いなく──死ぬ。
例え武器が無くても立てッ!
母さんに啖呵を切ったんだ!
僕は気合いで起き上がる──
「──ははっ……」
目の前に一つ目の巨人──サイクロプスが何匹もズタズタになった状態でこっちにゆっくり歩いていた。
この最悪な状況を回避出来ない現状に乾いた笑いが出てしまう。
だけど、また皆に会う為に──
足掻こう──僕の全てを使い切るッ!
「──【盾の舞】ッ! くそっ……──【盾刃転】ッ!」
具現化した盾は1枚だけだった。盾を回転して【盾刃転】に切り替える──
これが今の僕の精一杯か……操作しているからか頭がガンガンする。でも、さっきの体を襲った痛みは少し引いてきている……所々皮膚が裂けて血が噴き出しているから違う痛みはあるけど……。
──ここで【性感度】大先生のレベル3だッ!
──良しッ! これなら痛みを誤魔化せれる!
僕はまだ戦えるッ!
「おらぁぁぁぁっ、かかってこいッ!」
必ず生き残るッ!
そして帰ってまた皆を守るんだッ!
迫るサイクロプスの拳に向かって【盾刃転】を放つと──
そこから僕の意識は途絶えた──
0
お気に入りに追加
1,284
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる