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36話

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「【盾の舞シールドダンス】──」

 僕は半透明の五角形の盾を5枚自在に操りながら、次々と男の攻撃を防ぐだけじゃなく、たまに盾で殴打している。

「鬱陶しいッ! お前ら行けッ!」

「──【盾具現化 シールドリアリゼイション】──」

 異形の化け物が襲いかかってくるが、盾を瞬時に出現させて近寄らせない。


 今さっき技名考えたんだけど、けっこう格好良い気がするッ!

 状況は全くそんな事考えてる場合じゃないんだけどさ!

 これが僕の力かッ!

 いや、アイテムの力かッ!

『魔素還元』で余裕があるからありがたいッ!

 さすが親友の『感度操作』君だ。特に大先生の貢献が一番大きい!

 これなら気持ち良さで体調が悪くても全然動けるし、疲れないし最高だッ!

 厨二病っぽい技名を考えるぐらい余裕があるぜ!

 敵の攻撃だって、化け物は近寄らせないし、仮に男が近づいても捌いて避けれる!

 後はここから離脱するだけだな!

 僕は更に盾を出現させて足止めし、その場から去ろうとするが──

 騒ぎに駆け付けて来た野次馬が何人か集まって来た。

「──鬱陶しい──死ねっ! ──「させるかッ!」──!?」

 男は野次馬目掛けて飛ぶ斬撃を放ってきたので僕は即座に盾を出現させて防ぐ──

「逃げて下さいッ!」

 危機を感じ取った野次馬達は走り去る。

 ホッと一息吐くが拙いな──

「ちっ、厄介な。お前──今逃げようとしただろ? 逃げたらここら一帯の命は刈り取る──」

 ──やはり、僕がここから離脱するにはこいつを倒すしかないか。しかし攻撃手段がな……。

 足止めなら出来るんだけどな──

 どうしたらいいものか……。


『攻撃手段が無いなら作れば良いじゃない』

 そんな事を前世の記憶が言った気がした──

 絶対違う気がするけど、なんか偉人でそんな事言ってた人がいたな! 確かマリーなんとかさんだ!

 しかし、攻撃手段を作るにしても何を使う?

 盾でさっきからぶん殴ってるけど倒せる気がしないな……。

 盾をどう使うんだよ……ぶん投げろってか!?

 ん? 盾をぶん投げる?

 この無限に等しい盾を投げれたら凄くね?

 うん、かなり凄い気がする。この盾の角が鋭くして加速させたら完璧じゃね?

 でも、5枚しか操作するの無理なんだよな……頭ガンガンするし……それ以上は僕が持たないだろうなぁ……。【痛覚】を鈍麻させてなかったら1枚しか動かせ無い気がするしっ!

 とりあえず試すか──

「お前はここで倒す──【盾刃シールドカッター】ッ!」

 操作している盾を直線上にして加速するように放つ──

「──くっ!? ちっ、とんでもねえ使い方しやがって……」

 避けようとした男の右腕を盾で切断し、剣も弾き飛ばす事に成功する。

 良しッ! これなら倒せるッ!

「──これが僕の盾使いとしての戦い方だッ!」

 ドヤ顔になる僕!

「ったく厄介な──」

「おっと、剣は持たせないよ? これで詰みかな?」

 剣を取ろうと動き出したので【盾具現化 シールドリアリゼイション】を使って近寄らせないように盾で剣を囲む。

 男を見ると様子がおかしいかった。

「──……ゔががががああぁ──」

 もしかして第二形態とかですかね!?

 それとも、まさか自爆とかしないよね?

 周りを見渡すとゾンビ共は男と同じように次々と発狂しだしていた。

 怖いな……自爆はしなさそうだけど──放っておいたら、こいつら暴走して大惨事になりそうだ。

 剣が離れたせいなのか? 制御不能状態?

 なんか目の前の男も人型から完全に化け物の形になってるし……。

 こういうのって親玉倒したら雑魚も消えるのがお約束だよね?

『違いない?』

 そう【直感】先生が言った気がした。

 例え幻聴であっても、疑問系であっても──

 先生を信じるよっ!

 この厨二病をこじらせた僕に前世の偉人であるマリーなんとかさんも『新しい技思いついたでしょ?』と言ってる気がする!

 そう、僕は【盾刃シールドカッター】の派生技をついさっき思いついた!

 これなら僕の最大の攻撃手段になるはず──

 僕は集中する──

 使うのは『魔力操作』スキルだ。このスキルが何故関係しているのか? それはこの盾は魔力で出来ているからだ。

 5枚の盾をさせていくと──

 段々と鈍い音から鋭い音に変化していく。

 これが僕の奥の手だ。

 遠心力で切れ味を鋭くする。ただそれだけ。

 まだ魔法が使えない僕には物理でどうにかするしかない。

 盾をこんな風に使う人なんていないだろう──

 まさしく盾のだッ!

 この技がどれだけの威力があるのかわからない。これがダメなら僕が詰む──でもこれならなんとかなる気がする。

 ──!?

 ふと、目の前の化け物を見ると話していた。

「……こ、ろ、して……くれ……」

 ──こいつはレラを虐めてた奴? よく見れば被害者達であろう者達の怨嗟えんさの声も聞こえてくる。

 ……どう言い訳しようとも、これを放てばきっと僕は命を奪う事になる──それが例え魔物に成り果てた人だとしてもだ。

 ──覚悟を決めろッ!

 魔物に成れの果てた元人を見据えながら右手を引き──

「──ごめん、僕じゃ救ってあげれない──今楽にしてあげる──【盾刃転 シールドリボリューション】──」

 掛け声と共に右手を前に突き出す──

 すると回転を増した盾は僕から放たれると次々に化け物共を真っ二つにしていく──

 自分に皆を守る為だと言い聞かせて──


 しばらくすると辺りは沈黙する。親玉とか関係なく全て討伐完了だ……。


 これがという行為か……。

 命を守る為に命を殺す──

 この矛盾が僕の胸を締め付ける。


 最悪だよ……本当、最悪の気分だ……。

 これが本当に正しいのかわからないよ。


 しばらくすると倒した化け物から白い何かが出て僕に向かってくる。

『ありがとう』

 そう──の白い何かから聞こえた気がした。

 そして、白い何かは上まで昇っていき、淡い光になって消えていく。

 これは……被害者達の魂かな?

 お礼を言われたって事は少なくとも──

 この人達の心はんだろうか?

 僕のやった事は間違ってないよね?

 父さん──

 世界最高の守り手だったんだろ?

 教えてよ……って、いない人に聞いても仕方ないか──


『自信を持ちなさい』

 ──!?

 この幻想的に光輝く中、そう腕輪から聞こえた気がした。

「ははっ、ここ異世界だもんね」

 手を強く握りしめる。

「まだだ、まだ戦いは終わってない──誰も死なせない──」

 そうだ。僕はまだ大切な人達を守り切ってないッ!

 地面に刺さる吸魂剣ソウルイーターを見ながら決意を固める──
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