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32話

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 さて……準備をしようと思う……。

 リリアさんの僕を見る目が怖すぎる……。

 ついでにエレノアさんも……。

 とりあえず、今の僕の状態の確認だな。

 これから戦闘になるのであれば、自分の出来る事を確認しておくのは必要だろう。

『鑑定』っと──


 名前:ロイド

 性別:男

 一般スキル:『危機察知』『気配察知Lv8』『魔力察知Lv3』『痛覚耐性』『毒耐性』『威圧耐性』『回避』『アクロバティック』『盾術Lv7』『隠蔽Lv9』『魔法耐性』『刺突耐性』『打撃耐性』『魔力操作Lv5』『剣術Lv1』『魔力譲渡』『味音痴』『臭い耐性』『挑発』

 上位スキル:『予測(極)』

 特殊スキル:『鑑定』『直感』『絶頂』『見切り』『無音』

 ユニークスキル:『感度操作』


 ……スキルレベルが上がっているな……『剣術』は全然だけど。

『味音痴』『臭い耐性』か……ついに習得したか!

 それに盾役で必須の『挑発』だ! これで僕の方へ注意を引く事が出来る!

 しかし、知らない間に『魔力譲渡』が増えている。

 何でだろ?

 魔力をエレノアさんに吸われていたからなのかな?

 一応見てみるか……これも『鑑定』っと。

『魔力譲渡』:魔力を分け与える事が出来る。触れている部分が大きい程、対象に魔力が譲渡しやすい。更に【性感度】を使用すると効果UP。

 ……なるほど。大先生を使うと効果が増すのか。

 あれが夢じゃないのなら、このスキルは必ず役に立つはずだ。

 まさしく渡りに船!

 大先生が関係してるから嫌な予感しかしないけどねッ!

 後は──

 この形見の腕輪だ。

 僕は【魔感度】の『魔素還元』を使いながら盾を顕現させる。

 夢の僕はこれを離れた場所に出せていた。

 どうやってやるんだろ?

 そんな事を思ってると声をかけられる。

「その魔力欲しい……」

 エレノアさんだ。

 この人それしか言ってないぞ?

 というか──

?」

 やっぱり『魔素還元』した魔力で確定かな?

「そう……その魔力が……気持ち良い……」

「今から出掛けるので協力してくれたら、また後であげますよ」

「わかった……協力するから……必ずもらう……」

『魔素還元』した魔力って普通とは違うんだろうか?


「ロイきゅん、どこに行くの? それに盾なんか出してどうしたの? それに何に協力するのかな?」

 そういえば、リリアさんに何をするのか伝えてなかったな……。

「──これから、救援にいきます」

「隊長達を? 確かに魔物は多いけど、問題無いと思うよ──!?」

 話している途中でリリアさんの顔が強張る。

 窓の外を見ると、魔力が膨れ上がり──結界が更に強化されたようだった。街の人もさすがに異常だと気がついたようで、冒険者や兵士達が外へ向かって走っている。

「どうやら始まったようですね。──先にフィアとレラに危険が迫っているので、そちらを先に」

 母さん達も危機的な状況だと思うけど、仮に母さん達の所へ先に向かっても帰らされるのがオチだ。夢はまだ信憑性が無い。それなら戦力を少しでも集める為にも今は2人を救出して、合流するのが先だろう。

「何でそんな事わかるの? マッサージやってもらったし、約束は守るけど──ロイきゅんは何か知ってるのかな?」

「知ってるというより、夢ですね──」

 僕は見た夢の内容を話して行く──


「……それが本当なら悪夢ね……」

「──そうですね……レラ、フィア以外が死ぬなんて悪夢です……それが本当なのか確かめたい──だから力を貸して下さい」

 僕はリリアさんに頭を下げる。

「……わかった。どうせもう隊長達の約束破ってるし、とことん付き合ってあげる! お姉さんに任せなさいっ!」

「ありがとうございます! ちなみに父さんって離れた場所に盾とか出したって聞いてるんですけど、どんな感じだったんですか?」

 母さんから聞いてたけど、どんな感じなのかは聞いてない。

「出せてたよ~。確か一気に数えきれないぐらい出して仲間を守ってたかな?」

 父さんって規格外だな……という事は離れた場所に複数枚出せることも可能なのか。

「そうなんですね!」

 なら、僕にも出来るはずだ。

 ぶっつけ本番は嫌だし、今試すか──

 腕輪にどんどん魔力を込めていく──

 ──そして、リリアさんを囲むように盾を出現させるイメージをすると──

「──!? これは!?」

 ──半透明の大きめの盾が5枚出来上がり、閉じ込める事に成功する。

「リリアさん、攻撃してみて下さい」

「──わかったわ──」

 僕の言葉通り、顕現した盾に攻撃し──パリンっと簡単に破られる音がした。

 まぁ、予想の範囲内かな。

「今度は僕に攻撃してみて下さい」

 リリアさんは頷き、そのままの勢いで目の前から消える──

 先生達は背後だと教えてくれているので、背後に盾を3枚並べて出すイメージをすると、またパリンと盾が破られる音がしたが、一番手前の盾をだけ魔力を多めに込めているせいか破られたのは外側の2枚のみだ。

「ロイきゅん……まるでカイルさんみたい……」

 僕は唖然とするリリアさんに笑顔で応える。


 この腕輪の事が少しわかった気がする。

 確かにかなりの魔力は消費されるけど、複数枚を遠距離に出す事や、強度も魔力次第で変えられる。

 これなら使い捨てで仲間を守る事も出来るはず。

「──リリアさん、僕は父さんの形見を使って──必ず皆を助け出しますっ! さぁ行きましょうっ!」

 僕達は家から出て、レラとフィアの元へ向かう──




 ◇◇◇


 しばらくして僕に異変が生じる。

「リリアさん──」

 僕の【直感】が2が危ないと告げてくる。一つは街の外、もう一つは街の中だ。

 戦闘が始まったのかもしれない。

「どうしたの?」

「戦闘が始まってるっぽいですね……二手に分かれた方がいいかも……リリアさんとエレノアさんは母さん達の所へ行ってくれませんか?」

「……嫌……私は……離れない」

「私もマンティコアの毒を受けたロイきゅんを戦闘に放り出すのは……」

 エレノアさんは離れたくないと言い、リリアさんは拒否する。

 困ったな……夢の信憑性が高まってきているから早く向かいたいんだけどな……。

 夢じゃ、師匠とユラさんは倒れていた……2人ともお腹に風穴を空けて──

 ……。

 あの師匠が守れずにだ。やっぱり向こうの方が戦力が必要かもしれない。それにリリアさんは夢では途中からこっち側に来ていた。

 満足そうな笑みを浮かべている師匠の顔は今も頭から離れない。


 師匠は──『戦いに身を置くんだ、どうせなら守って死にたいな』とよく言っていた……。

 僕の中では師匠は最高の盾使いだ。何か不測の事態が起こった?

 ユラさんを守れてないのに満面の笑みを浮かべていた師匠は……ユラさんと一緒に死ねて嬉しかったんだろうか?

 僕如きがおこがましいけど──死なせたくない……別に何が出来るかなんてわからない。

 だけど、あの夢を見た──いや、教えてくれた事に意味は必ずあるはずだ。

 僕はエレノアさんを見詰めてそう思う。

「やっぱり、2人は母さん達の所へ救援に向かって下さい。今度──エレノアさんにはいっぱい魔力あげるし、リリアさんにもまたマッサージしてあげるから──お願いします!」

「「わかった」」

 ──即答だった。
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