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12話

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「早く夕暮れまでに絶対に探すよ!」

「何でそんなに必死なのよ!?」

「ロイ君はそんなにお仕置きが嫌なのですか?」

 2人は僕に疑問符を浮かべている。

「僕が嫌というか──レラとフィアは絶対に後悔すると思うよ? 僕は耐えられるけど、2人はしばらく大変な事になる……」

「「大袈裟な……」」

 知らないというのは幸せな事だと思う。

 僕は『感覚操作』があるから乗り切れるだろう。

【視覚】があるならもあるはずだ。

 だけど、この2人は数日間ダメになるかもしれない。

 僕が最初の頃、でお仕置きされた時は本当に最悪だった……。

「今頑張らないと2人とも絶対後悔するからね!」

 出来れば僕も遠慮したい……。



 僕達は街の外に出て探し始める。

 何気に出るのは初めてだな……地理感全くないわ……迷わないようにしないとだな……後、一応武器は渡されているものの、魔物にも気をつけないとね。

「マンドレイクだっけ? どこにあるかわかるの?」

「こんな所にあるんですか?」

 レラとフィアが僕に聞いてくるけど、正直言って──

 全く街の外に出た事が無いから分からない!

 だから無難な返事をする──

「母さんは出来ない事は絶対に言わない。おそらくどこかに必ずあると思う。これは試されているんだよ。冒険者として素材採取が出来るかどうかを」

 最初のハードルが高い気がするけど……普通ここは薬草でいい気がする。

 母さんにとってマンドレイクも薬草も変わらないんだろうな……薬草採取依頼の模擬訓練とか言ってたし……。

「ならやるしかないわね! 私達の実力を見せつけましょうっ!」

「そうです! 頑張りましょう!」

「とりあえず──それっぽい物があるかどうか探してみよう」

 僕達は適当に探しながら歩き出す。

 でも、普通の薬草や毒消しとかはあるのにマンドレイクは全く発見出来なかった。『鑑定』には薬草と毒消しと表示されていたから間違いないだろう。

 こういうのは常時依頼と言われる依頼書を通さなくても大丈夫な依頼で買取を常にしてくれるらしいから初心者の内は採取しながら依頼を同時にこなす方が良いと母さんが昔にチラッと言っていたな……。

 なので一応、回収はしている。


 指定された範囲内を歩き回っているけど、刻一刻とお仕置きの時間が迫って来る……。

 もうすぐ、夕暮れだ……。

 どうしよ?

 このままだと確実にお仕置きコースだ……。

 2人は経験してないから楽観的だ……。

「ここに来てからとても不思議なんですけど──どうして魔物が出てこないんですか?」

「そういえば私もまだ見た事ないわね」

「確かに……外に全然出た事ないけど、今日とかも全然遭遇しないよね。──そういえば、昔にここに来たばかりの頃にワイバーンが現れた事はあったけどね」

「「ワイバーン!?」」

「うん、僕が6歳の頃だったかな? あの時は母さんがあっという間に倒しちゃったね。」

「……さすが『聖天』の隊長……」

 フィアの言葉に僕は驚く。

 え? 母さんって『聖天』の隊長だったの?!

 世間での母さんの評価が気になる……。

「あの時のワイバーンってロイのお母さんが倒したんだ! すっごいわね! 私もやってみたいわ!」

 続いてレラも言うが──

 ……絶対無理だよ……。空飛んでる上に火の玉まで吐いてくるんだよ?

 でも、元気そうで良かった。レラはこの間、男達に絡まれたあの一件で落ち込むかと思ったけど、元気で良かった。レラはやっぱり笑顔の方がいいな。

「まぁ、僕達はそれよりも生きる術を身につけないとね? はぁ……見つからないし、もう夕暮れだから帰ろう」

 2人は頷き、来た道を帰る。

 家の前で母さん達が仁王立ちして僕達を出迎えてくれていた。

 母さんが手に持っているを見て、僕の顔は引き攣る。

「おかえり~どうだったかしら?」

「……ただいま……はい、これ……」

「うんうん、ちゃんと薬草や毒消しは採取してるわね。マンドレイクが無いわね? という事は──依頼未達成ね?」

 やはり、そういう所も見られているのか……しかし、本当にマンドレイクはこの近くにあるんだろうか?

「母さん……マンドレイクって本当にあるの? 一通り言われた範囲内は探したよ?」

「あるわよ? ほらあそこに」

 母さんが指差す方に視線を向けると確かにあった。

 確かにある事は今わかった。

 だけど、何でにあるんだよ!

「……何であんな所に?」

「これを作る為よ?」

「まさか──その中身の原料って……」

「そうよ♪ マンドレイクよ♪」

 あのの原因はマンドレイクだったのか……。

 お仕置きというのは、このマンドレイクを使って作ったの事だ。

 昔から悪戯や言う事を聞かないとこれを飲まされた。過去に数回だけ飲んだ事がある……僕はこれを飲みたくないから悪い事はしなくなった。それぐらい飲みたくない。勉強も必死だったな……。

 本当に酷い味で、味覚が破壊される。そして数日間はご飯の味がわからなくなるという効果付きだ。しかも飲んだ日は調

 僕は多少慣れているけど、2人は大変な事になるだろう……。

「さぁ、召し上がれ♪」

 笑顔の母さんからコップを3つ差し出されて各々が手に取る。

 レラとフィアの顔色は悪い。

 それもそうだろう……血のように紅く、黒いつぶつぶが所々にあるからね。

 まるで──

 血肉をすり潰したかのような飲み物だ……。

 僕はコップを口に当てて、一気に飲み干す──


 相変わらず酷い味と臭いだ。でも以前に比べると全然耐えれるな。この黒いつぶつぶも前世であったタピオカと思えば問題無いだろう。

 そして、肝心の酷い味なのだけど──『感度操作』のお陰でダメージは少ない。

 目の前には【味覚】【臭覚】は1と表示されている。【痛覚】と一緒で鈍くするか鋭くするかの調整っぽい。

【視覚】があるならば【味覚】や【臭覚】もあるだろうと思った。

『感度操作』万歳っ!

 2人には悪いけど、これも僕の力だから許してくれ!

「ロイ!? ──私も一気にいくわ!」

 僕に続いてレラも飲む。

「これ本当に飲まないとダメなんですか?」

「フィア?」

「うっ……飲みます……──!?」

 フィアはシャーリーさんの有無を言わなさない迫力に負けて飲む──

「「──!?!??!」」

 2人は声にならない声を上げる。

 うんうん、気持ちはわかるよ。しばらくは自分の口臭もキツいから臭いでも苦しむ。

 しばらくして2人は意識を失う。

「あら? ロイは普通ね? 慣れたのね。ならこれを飲みなさい」

 あまり変わらない僕を見て母さんは追加でコップを渡す。

 だ。

「これは?」

「少し濃くしたものよ? お仕置きなんだからしっかりと罰を受けて同じようにならないようにならないとね? 一蓮托生よ?」

 僕の額から冷や汗が出る。

 どう考えてもこれは毒だろう。『感度操作』を貫通して僕にダメージを与える──【直感】先生がそう告げている。

『危機察知』も反応している気がするな。

 これも1人だけ助かろうとした報いなのかもしれない……。

 レラ、フィア──

 今行(逝)くぜ──

 僕は目を瞑り一気に喉に放り込む──

 意識が遠ざかる中ふと思う──

 スキルの『毒耐性』ってこのせいなんじゃ──
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