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新人歓迎会は波乱の幕開け
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入社してもうすぐ1ヶ月、フロア内の新人歓迎会が開かれた。
自己紹介が終わり、近くの席の皆さんとおしゃべりしながら、アットホームな雰囲気の中、飲んだり食べたりしていた。
篠原部長は、フロアの男性で唯一の妻帯者で愛妻家として有名らしい。
パートの小川さんはアラフォーで、お子さんがまだ小学生の女の子なのだそうだ。
右隣に座る部長からは、営業の皆さんの武勇伝を色々聞けて、思わず笑ってしまった。
部長自身も、若い頃、張り切り過ぎて失敗した事が結構あったらしい。
某有名な大手運送業者から電話があり、喜び勇んで当時の上司を引き連れて契約に行くと、家族の車1台分だったとか。
まあ、今では、その運送会社全ての車両を契約して頂いているので、笑い話になったのだが…。
私は、バリバリ営業マンとして活動している姿しか見たことはないけど、皆、昔色々あって今の形ができてきたんだなぁと、納得した。
部長の向かいに座る小川さんは、隣の課長と楽しそうに話をしながら、お互い終始笑顔だ。
私には一切見せない、心を許したような課長の笑顔に、小川さんに対して、羨ましさと拗ねてしまう気持ちが芽生えてしまう。
ぷぅっとふくれてビールを煽ると、篠原部長に笑われた。
「鈴原さん、杉崎の事が気になるの?」
耳元に、内緒話をするように言われ、顔が赤らんでしまったのが自分でも分かる。
「そんなんじゃありません…!ただ、私にはすごく冷たい顔しか見せないから、どうしてだろうって思っただけです。」
内容が内容だけに、私も部長に近づいて耳うつ。
「若いねぇ。」何故か嬉しそうに呟いて、ビールを飲む部長。
(部長は意地悪だ。あんな恥ずかしい事を言わせてあの話は終わり?…もう…!)
「…私、トイレに行ってきます。」
「はい、行ってらっしゃい。」
くくっとまだ可笑しそうに笑っている。
・・・
トイレから戻ろうとすると、いつもの仏頂面の杉崎課長がいた。頭を下げて通りすぎようとすると、腕をくいっと引かれた。
「え?」
「コネ入社だから余裕なのか?浮気はまずいんじゃないか。」
「コ?…コネ…?う、浮気…?」
「感じよく振る舞って、清純そうに見せながら、男をつっているのか。会長だけじゃ足りずに。」
「は?か、課長っ…、痛いっ…」
「悪いっ、少し力が入った。鈴原大丈夫か。」
「課長、ひどいです。変な事言わないで下さい!」
課長の手を振り払って席に向かって急いだ。
どうして課長が訳の分からない事を言うのだろうか。コネとか浮気とか、全然身に覚えがない。それに会長って誰?
でも、どれをとっても尊敬する上司に言われていい言葉じゃない筈だ。
席に戻ると、さっきまで肩を震わせて笑っていた部長が、驚いた顔で言った。
「鈴原さん、どうしたの!その顔色…!」
「え?…あ、私…。」
「こりゃぁまずいな。タクシーで送るよ。待ってて。」
「部長、大丈夫です。少し休めば。」
「全然大丈夫じゃないよね。私はいつも一次会で帰ってるんだ、気にしなくていいから。」
「部長……」
ここまでの記憶はある。
問題はその後だった。
自己紹介が終わり、近くの席の皆さんとおしゃべりしながら、アットホームな雰囲気の中、飲んだり食べたりしていた。
篠原部長は、フロアの男性で唯一の妻帯者で愛妻家として有名らしい。
パートの小川さんはアラフォーで、お子さんがまだ小学生の女の子なのだそうだ。
右隣に座る部長からは、営業の皆さんの武勇伝を色々聞けて、思わず笑ってしまった。
部長自身も、若い頃、張り切り過ぎて失敗した事が結構あったらしい。
某有名な大手運送業者から電話があり、喜び勇んで当時の上司を引き連れて契約に行くと、家族の車1台分だったとか。
まあ、今では、その運送会社全ての車両を契約して頂いているので、笑い話になったのだが…。
私は、バリバリ営業マンとして活動している姿しか見たことはないけど、皆、昔色々あって今の形ができてきたんだなぁと、納得した。
部長の向かいに座る小川さんは、隣の課長と楽しそうに話をしながら、お互い終始笑顔だ。
私には一切見せない、心を許したような課長の笑顔に、小川さんに対して、羨ましさと拗ねてしまう気持ちが芽生えてしまう。
ぷぅっとふくれてビールを煽ると、篠原部長に笑われた。
「鈴原さん、杉崎の事が気になるの?」
耳元に、内緒話をするように言われ、顔が赤らんでしまったのが自分でも分かる。
「そんなんじゃありません…!ただ、私にはすごく冷たい顔しか見せないから、どうしてだろうって思っただけです。」
内容が内容だけに、私も部長に近づいて耳うつ。
「若いねぇ。」何故か嬉しそうに呟いて、ビールを飲む部長。
(部長は意地悪だ。あんな恥ずかしい事を言わせてあの話は終わり?…もう…!)
「…私、トイレに行ってきます。」
「はい、行ってらっしゃい。」
くくっとまだ可笑しそうに笑っている。
・・・
トイレから戻ろうとすると、いつもの仏頂面の杉崎課長がいた。頭を下げて通りすぎようとすると、腕をくいっと引かれた。
「え?」
「コネ入社だから余裕なのか?浮気はまずいんじゃないか。」
「コ?…コネ…?う、浮気…?」
「感じよく振る舞って、清純そうに見せながら、男をつっているのか。会長だけじゃ足りずに。」
「は?か、課長っ…、痛いっ…」
「悪いっ、少し力が入った。鈴原大丈夫か。」
「課長、ひどいです。変な事言わないで下さい!」
課長の手を振り払って席に向かって急いだ。
どうして課長が訳の分からない事を言うのだろうか。コネとか浮気とか、全然身に覚えがない。それに会長って誰?
でも、どれをとっても尊敬する上司に言われていい言葉じゃない筈だ。
席に戻ると、さっきまで肩を震わせて笑っていた部長が、驚いた顔で言った。
「鈴原さん、どうしたの!その顔色…!」
「え?…あ、私…。」
「こりゃぁまずいな。タクシーで送るよ。待ってて。」
「部長、大丈夫です。少し休めば。」
「全然大丈夫じゃないよね。私はいつも一次会で帰ってるんだ、気にしなくていいから。」
「部長……」
ここまでの記憶はある。
問題はその後だった。
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