執着系男子のオムニバス【R18】

栗原さとみ

文字の大きさ
上 下
2 / 4

story.2「巨乳好きと聞いていたから私は対象外だと思っていたのにどうしてこうなった?」

しおりを挟む
──10年前の中3の三学期。
「夏羽、原君はあんたなんかタイプじゃないから。私の胸を触って『大きい』って喜んでたんだからね!男は、貧相な胸なんかより巨乳が好きって決まってるんだから。はい夏羽、残念賞ー!」
道代は、一方的にそう言い捨てて教室を出て行った。
「男は、巨乳が好き…か。」
私は自分のささやかな胸を見てため息をついた。中1の頃は、自分は成長が人より遅いのだと思っていた。けれど、1年経っても、2年経っても、私の胸は、まっ平らなままだった。多分遺伝なんだろう。
原君とは、同じ中央委員会を一緒にやったり、たまたま席が隣同士になったりして、話す機会が多かっただけだ。お互いに、有名な進学高に入学が決まっていたし、付き合うとか、そういう気持ちは全くなかった。
けれど、原君が貧乳はタイプじゃないと言っていたというのは、結構ショックだった。原君がそんな事を言う人には思えなかったし、そんな基準で人を判断するなんて信じられなくて、がっかりもした。
それ以来、私はなんとなく、異性からの胸への視線を気まずく感じるようになった。会話をしていて、ふと胸元に視線がいっているような気がすると、貧相だと思われてるんじゃないかとネガティブ思考に陥った。一緒にいる子が豊満な胸だと、見比べられて笑われているような気がしたりした。私は完全な体型コンプレックス人間になったようだった。

──あれから10年。
私は、25歳になった今も、相変わらず人に裸を見られる機会もなく、清く正しく、日々、家と会社とを往復し、日常生活を送っている。
10年間全く何もなかった訳ではない。食事に誘われたり、デートに誘われたり、稀に告白された事もあったが、エッチな雰囲気になると拒み、身体の関係を仄めかされると拒み、というのを繰り返していると、大抵、誘われなくなるか、振られて終わるかだった。
会社の飲み会には参加しても、二次会以降は徹底的に避けた。万が一、酒が入って酔いが回り、一夜の過ちなどが起きたら、もう会社に行けない。
「吉岡夏羽さんは貧乳だった」などと会社内で噂にでもなったら、この世の終わりだ。
つまり、私が処女を捨てるとしたら、ゆきずりの相手しか考えられないのだけれど、よく知りもしない相手とそうなる事など怖くてとても無理だ。犯罪に巻き込まれる可能性だってある。まぁ、つまりは、私の処女は一生守られたままになる可能性が高いという事なんだろう。

────

ある休日、私はいつも通り、自分の部屋でオンラインゲームで遊んでいた。私が今やっているのは、お料理を覚えて、レシピブックをマスターしていくゲームだ。
単純なゲームだが、仲間と協力しないと覚えられないものもあり、知り合った人と会話しながら、ミッションををクリアーしたり、協力してレシピブックを手に入れたりしているうちに、友達が増えていくので、面白くて楽しくて、気づくと休日が終わってしまう位、私はこのゲームにのめり込んでいた。
アバターのハンネは本名の夏羽を英語にして、「summer wing」で登録したが、長ったらしいので、通称ナツと呼んでもらっている。
ショートカットで中性的なアバターにしてある。胸も実物通りのペタンコ、本人に限りなく寄せたアバターの出来映えに、私はかなり満足していた。

─────

ユウキ『ナツ、ボス来てる。お料理振る舞って。』
ナツ『了解、ユウキ、コンボするね。』
ユウキ『ラジャー、満足するまで続けて。成功したらレシピ貰えるから。』
ナツ『OK』
数分後、ユウキとの振る舞いのコンボが成功して、レアアイテムとレシピブックが手に入った。
ユウキ『ナツ、お疲れ、ありがとう』
ナツ『こちらこそありがとう。ユウキもお疲れ様。いつの間にかこんな時間。お腹すいてきたから、そろそろ落ちるね。』
ユウキ『俺もそろそろ腹減ってきた。そういえばナツってどこに住んでんの?ちなみに俺は東京。と言っても、異動の希望がやっと通って、東京勤務は今月で終わりなんだけどな。』

(へぇ、ユウキは東京都民だったのか。ユウキも言ってくれたし、自分が住んでる県名くらいは言ってもいいかな。私は、年も性別も全部非公開だから、身バレもしないだろうし。)

ナツ『群馬県だよ。』
ユウキ『マジで?俺、来月から群馬県に異動』
ナツ『えええーーー!?あ、ごめん、驚き過ぎた。そんな偶然ってあるんだね。もしこっち、群馬の地元の事で何か分からない事でもあったら聞いて。まぁ、群馬県も結構広いから知らない事も多いかもだけど。』
ユウキ『ははは、そうだな、何かあったら連絡する。ありがとうな。飯食ったらまたinしろよ、お互い、土日位しかゆっくり話せないしな。』
ナツ『うん、OK。また後で。お疲れ様!』
ユウキ『お疲れ』

ユウキとは、このゲームを始めた頃の、3年位前からのアバ友で、話しやすくて、一緒に遊んでいるとつい時間を忘れてしまう程、気の合う大事なゲーム仲間だ。ユウキもプロフィールを公開していないから年は分からないが、ノリが近いので、わりと年も近いような気がしていた。

「なっちゃ~ん、ご飯よ。」
階下から母が私を呼ぶ声がしたので、「はーい」と返事をしてから夕飯を食べに階段を下りて行った。

「なっちゃん、今日もずっと二階で遊んでたわね。明日も予定はないの?1日中ゲームしたりマンガ読んだり、よく飽きないわね。」
「全然飽きない。ずっとやってられる。面白いもん。」
「お母さん、なっちゃんは家にいるのが楽しいんだ、別にいいだろう?」
そう口を挟んだのはお父さんだ。
お父さんは私に甘くて、お母さんのように「好きな人はいないの?」とか「出かける用事はないの?」とかいう面倒な事は言わず、「居たいなら家に居ればいいだろう」というスタンスだ。お父さんは、このまま私が30歳を過ぎても、変わらないでいてくれる気もする。
まあ、お母さんも、たまにそんな小言も言うけれど、言った事はすぐに忘れてしまい、今はテレビの歌番組に夢中だ。9月も残り一週間。番組が切り変わる時期だから、特別番組が多い。

そういえばユウキも異動すると言っていた。

せっかくの東京勤務から、地方に異動の希望を出すのって珍しくないのかな?と不思議に思ったが、都会にいると、案外田舎暮らしが良く見える事もあるのかとも想像できた。
(どんな人なのかな?)
私は、アバターのユウキを思い浮かべて、「群馬の何処かですれ違ったりして」と考えてみたりしながら、テレビから流れる流行りの曲を聴いていた。
思わず、夕飯のカレーライスを食べ過ぎてしまった。

「ご馳走様でした!」


────


10月になると、さすがに肌寒くなってきた。今日は、10月最初の土曜日。私は、早速朝からゲームにinして、お料理の修行を開始した。

ユウキ『おはよう、早いな』
ナツ『おはよう、ユウキも早起きだね』
ユウキ『まあな。ナツ、今日予定ある?』
ナツ『もちろんあるよ。修行たまってるし、レシピブックいっぱい欲しいから。』
ユウキ『ああ、そういう予定ね。そうだ、リアのO市のショッピングモールの事なんだけど』
ナツ『O市の?なんだ、すぐ近くじゃん、そこが何?』
ユウキ『ちょっと説明しづらくて。ナツ、今日出て来れない?』
ナツ『出て来れないって、ユウキ、もしかしてショッピングモールで会おうって言ってる?顔も知らないのに?』
ユウキ『まあ、無理って思うなら強制はしないけどな。俺は黒いシャツにグレーのチノパンでフードコートで11時に待ってるから。ナツがおじさんでも驚かないし、変な気持ちも持ってないから安心して。すっぽかされてもアバ友に変わりないからさ。』
ナツ『うーん、わかった。まだ時間はあるし、考えてみる。10時頃までinしてるから、また協力依頼するかも。いい?』
ユウキ『了解』

時々ユウキとしゃべりながらゲームのイベントを進めていると、あっと言う間に時間が迫っていた。
ユウキ『俺、そろそろ落ちる。ナツまたな、お疲れ。』
ナツ『まだ決めてないから。行かなかったらごめんなさい。お疲れ様。』

ユウキには、行くかどうか「まだ決めてない」と言ったけど、行ってみようと思っていた。

このゲームの女の子のアバターには、お色気系のアバターだったり、スタイル抜群系や、アイドル系のアバターも多く、男性アバターに大人気の人達も多い。あからさまに、出会いを求めるやり取りもよく耳にした。

けれど、その点、ユウキは、3年間純粋にゲーム仲間として私に接してくれていた。「変な気持ち」など持っていたら、とっくに狙ってきただろうし、そもそも私は凹凸のない、まっ平らな胸の、色気の欠片もないアバターだ。そんな相手との出会いを求めている筈もなく、ユウキとなら、会ったとしても大丈夫だろうという、変な自信があった。

(支度しようっと。)

私は、メンズっぽい黒の長袖のカットソーと、カーキのチノパンに着替え、補正無しでユニセックスな雰囲気に仕上がった。

(男と思われるかも知れないけど、まぁいいや)

フードコートに着くと、時計は11時ちょうど指していた。探すまでもなく、黒シャツにグレーのチノパンの、えらくイケメンの長身の男性が立っているのが目についた。
(まさかあれがユウキ?東京の人だからか、やけにイケメン過ぎない?それに脚なっが!)
その男性は、ふと顔を上げて、こちらを見ると爽やかに笑って近付いてきた。
「ナツ、来てくれたんだ?」
「へ?何で僕がナツだってわかったの?」
ユウキの顔面偏差値の高さに恐れをなして、私はつい、自分を僕と言ってしまった。
「だって、アバターまんまじゃん。」とユウキは笑う。
「そっか、」確かに私は自分に似せてアバターを作った。それに、よくよく見れば、ユウキもアバターそっくりだった。
「まぁ、アバターと本人が全然違う別人って場合も多いみたいだけどね。ナツは嘘ついていない気がしていた。すぐに分かって良かったよ。とりあえず、座って何か飲もう。」

まるで、昔からの知り合いのような気安さだ。まあ、3年の付き合いだから、そうとも言えなくはないが。
ユウキがアイスコーヒーを頼んだので、私も同じものを頼んだ。
「もうすぐお昼だから一杯だけにしておこう。ナツ、お昼に食べたいものある?」
「うーん、何がいいかな。昨日はカレーだったし、ラーメンとか?」
「へぇ、ラーメン好きなんだ?何処かオススメの店ある?」
「うん、良かったらそこで食べる?」
「うん、お昼はそこにしよう。ナツ、ここWi-Fiきてるから、少しinしない?」
「わた、…僕も言おうと思ってた!やろやろ」

ユウキはオンライン上で話したそのままの、フランクなイケメンだった。私の容姿に触れる事もなく、本名を聞いてくる事もなく、ただただ好印象を受けた。

「ユウキ、ラーメン屋はモールから出て車で行かないと行けないんだけど、わた…、僕、歩いて来てて。家から車とってきてもいいかな?」
「必要ない。俺、車で来てるから乗せて行くよ。」
「えっ?車で?東京から車で来たの?」
「いや。あっちでは電車通勤だったからね。こっちは車社会だから、借りて来たんだ。でも、東京にいる間も、運転は時々してたから安心していいよ。」
「ごめん、いいのかな。」
「もちろん、場所だけ教えて。」
「うん、ありがとう。車は何処?」
「3階。ナツ、行こう。」
あまり自然に手を握ってきたので、当たり前のようにユウキと手を繋いでいた。ユウキは私を気安い仲間のように思っているようだ。

「乗って。」そう言って助手席のドアを開けるユウキ。
「ありがとう。お邪魔します。」私は助手席に乗り込んだ。
「曲がる時、教えて。」
「うん。わかった。」

店に着くまで、ドライブは10分程度だったけれど、ユウキとの雑談はとても面白い。話題は、メジャーリーグへ行って大活躍の二刀流の選手だったり、群馬出身のバンドだったり、車で運転して行ってみたい所だったり、様々だった。

「そこの赤い看板の所に入って。」話に夢中で案内が遅れたけれど、ユウキは「了解」と言ってスムーズに駐車場に入った。

「新しくできたお店?」とユウキ。
「どうだろう? 2年位経つかな?」
店内に入ると、少し個室っぽくなっている席へ通された。
「オススメは何味?」
「やっぱり醤油かな。でも、タンメンも野菜たっぷりで美味しいよ。わた、僕、いつも交互に頼んでるんだ。今日は野菜タンメンの日だから、僕はもう決まり。」
「決めるの早いな。じゃ、俺醤油ラーメンと、餃子と半チャーハンにする。」
「プッ、ユウキも早い」
「まぁな、すいませーん?」店員を呼ぶユウキ。

そうしてそれぞれのオーダーの後、きたラーメンを食べながら、楽しいお昼を過ごした。
ユウキは、自然過ぎるし、一緒にいて楽だし、兎に角会話が楽しい。
「ユウキ、ショッピングモールの用事って何だったの?また戻る?」
「ああ、いや、実は早く着いたから、一人でチェックして、もう用事は済んだ。買いたいものは全部あったから、おいおい揃えるつもり。」
「そっか。それなら良かった。」
「この後、本屋に寄ってもいい?」
「いいけど。」
「よし、乗って。」

その後は、本屋で、仕事で使う資料等を数点購入したようだった。本屋を出ると、ボーリングしようと言ってボーリング場で2ゲーム、その後ビリヤード場で2ゲーム、カラオケを一時間という順番で遊んだ。特に道案内もしなかったけれど、運転しながら、思い付いた場所に立ち寄っているような感じで、とても自然に、いつの間にか夕食の時間になっていた。

日が短くなって、あたりはすっかり暗くなってしまった。
「夕飯も一緒に食べよう。何がいい?」
「うーん、スパゲティの気分。家ではあまり食べないから。あ、家に電話してもいい?」
「もちろんどうぞ。適当にドライブしてるから電話して遅くなるってお母さんに言っておいて。」
ユウキは音楽のボリュームを下げて、車を走らせた。
久しぶりの長時間の外出と、外食の連絡は、お母さんには嬉しい出来事だったらしく、二つ返事でOKだと笑っていた。
私にとっても、身体を動かしたり、美味しい料理を食べたり、思い切りリフレッシュできた。


────


「ユウキ、今日はありがとう。スパゲティも美味しかったし、1日めっちゃ楽しかった。」
「うん?まだ帰さないよ。夜景見に行こう。」
「夜景?僕と?」
「ふっ、ナツとだよ。他に誰と行くのさ。」
イタリアンレストランを出て、車は何処か夜景が見える場所に向かって動き出した。
「道、詳しいんだね。」
「まぁな、地元だし。」
「は?地元?!東京都民じゃないの?」
「大学から就職して、先月まで東京にいたけど、生まれも育ちも群馬だよ。」
「てっきり東京の人だと思ってたよー。」

ユウキと色々な話をして、世の中狭いもんだなと思っているうちに、車は山道に入ってきた。市内にある、小高い山で、登った事はあるが、夜、車で来るのは初めてだ。低い山の為、山頂まで来て時計を見ると、まだ夜9時ちょっと前だった。車を降りて、ユウキに手を引かれ、市内を見下ろすと、地元の夜景が拡がっていた。
「綺麗……!」
感動して、しばらく夜景に見惚れた後、ユウキの方を見ると、ユウキは優しい顔で私を見つめていた。
「ナツ」
私の頬を撫で、熱っぽく「好きだ」と唇を合わせるユウキ。
「……ユウキ?」急に甘い雰囲気を出してくるユウキに戸惑う。
「ナツは?俺の事好きじゃない?」
「ううん、好き。」
───私は、「好きじゃない?」と聞かれ、思わず好きだと答えてしまった。

ユウキは、ニコッと笑い、もう一度キスをする。徐々に深くなるキス。周りに人はいないけれど、ここは外だ。これ以上は危険だと、思わずユウキの胸を押すが、しっかりと抱き込まれて、びくとも動かない。私は、ユウキのキスにすっかり蕩けさせられてしまった。
「ナツ、車に戻ろう。」
「…うん」

助手席に座った私に、ユウキはまた口づける。舌を絡め、唇を離すと「好きだ」と愛を囁く。甘いキスに酔ってぽーっと気持ち良くなっていると、服の上から、胸を揉まれていた。
(…え?こんな薄い胸、揉んで楽しいの?)
生まれて初めての胸への愛撫で、気持ち良くなり過ぎて、お腹の奥が変にじんわりとしてきた。
「ナツ、少しドライブしていい?」
「…うん」
ユウキは、また車を走らせて、少しドライブを楽しんだ後、駐車場に車を停めた。
「ここでいいかな。ナツ降りて。」
「うん」
ユウキに手を引かれ、建物に入ると、「ナツ、どの部屋がいい?」とパネルを指した。
「どれって……。ここ、もしかして……?」
「ホテル。いっぱい遊んだし、お風呂入りたいから。ここが一番良さそう。この部屋でいいね?」
ユウキはタッチパネルに触れると、キーを取り、エレベーターへ向かった。
「ユウキはこういう所よく来るの?」
「初めてだよ。まさか親のいる自宅に、いきなりナツを連れて行けないだろう?ゆっくり二人きりで過ごしたいから。」
初めてと聞き、なんとなく安心した。けど、安心していいのかよくわからないが。

部屋に入ると、「俺、風呂沸かしながら、先にシャワー浴びてくる。冷蔵庫の飲み物でも飲んで待ってて。アルコールでもいいよ。」と言って、ユウキはバスルームへと消えた。

私は、いまだにユウキの考えていることが理解出来なかった。好きだって、キスしたり、胸を揉んだり、私とエッチしたいって事なのかな…?本当に私の事を女だって分かっているのかすら、怪しいものだが。

微アルコールのカクテルサワーを飲んであれこれ思案しているうちに、ユウキがお風呂から出てきた。
「ナツ、お風呂どうぞ。」
「うん、ありがとう。これ、いただいたよ。」

単純な私は、ジャグジー付きの最新っぽいバスルームで、ゆったり寛いでしまった。いい香りの入浴剤の入った泡風呂と、高級感のあるシャンプーリンスで、思いの外長風呂になってしまったかもしれない。

元の服を着るべきか少し迷った。
けれど、さっきシャワーを浴びたユウキがガウンで出てきたので、私も同じように、ガウンを羽織って部屋に戻った。

「ナツ、ずっと好きだった。」

ユウキは軽く唇にキスをすると、私を抱き上げてベッドに下ろした。「ナツ」「好きだ」と繰り返しながら、顔中にキスの雨を降らし、首筋や腕や指先にまで痕を残してゆく。
寝かせられ、余計に平らになった胸なのに、ユウキは熱心にふにふにと揉んでいる。甘く激しい愛撫とキスに夢中になっているうちに、ガウンと下着は剥ぎ取られ、胸を直に揉まれていた。長いキスの後、私の唇から離れて、ユウキは私の胸の先の蕾をちろりと舐めてから、ぱくりと口に含んだ。
「あぁ、あっ、」指は蜜口を探り、クチュ、ヌチュ、という淫らな音をたてる。
「ナツ、好きだ、ずっと好きだった。ナツ…」
「あっ、ユウキ…」
クチュクチュと指を蜜穴に浅く出し入れしながらの、舌と唇での胸への愛撫は、私の秘所をぐっしょりと濡らしていた。浅い刺激から、いつの間にか、太い数本の指によって掻き回され、ぬるぬるとした愛液が太ももを伝わってゆく。
「そろそろ挿入れるから、待ってて」とユウキはゴムをつけている。私は、初めて目にする男の人のアレの大きさに怯む。

(あんなに上を向いて、お臍についてしまいそうだけど、大丈夫?アレが普通なの?!)

「え?そんな…?無理では…?」
「少し痛いかもしれないけれど、いつかは受け入れて貰わないとね。夏羽。……挿入れるよ?」
ヌチュり、と先尖が挿入ってくる。
「あぁ、あっ、あっ、」
ものすごい。痛みも質量も。
「夏羽、うねって、絡みついてくる、うっ、夏羽」
「ん、ん、やぁっ、あっ、」
「くっ、いい、夏羽、」
初めはゆさゆさと浅く揺すって、そのうちに、激しく腰を打ちつけられ、ぱちゅんぱちゅんと膣内を穿たれる。ユウキの重みも、律動も、愛撫もキスも、すべて夢のように心地いい。初めてなのに、私はユウキの手によって淫らなグズグズな身体に変えられてしまったみたいだ。ずっちゅん、ずっちゅん、という淫猥な音すら、気持ち良さに拍車をかける。
「夏羽、いく、もう、出る」
「ユウキ、私も、お願い、早く、あぁっ、」

熱いものが射された感覚がお腹に広がり、ユウキが覆い被さった。

────

「やっと夏羽が俺のものになった。」おでこにちゅ、と口づけてユウキは呟いた。
「ねぇ、ユウキ。私、夏羽って名乗ったっけ?」
私は、初めてのセックスを終えたばかりで、ほてった気だるい身体を、ユウキの方に向けて尋ねた。
「いや。名乗ってないな。でも、『summer wing』が夏羽かもって、最初からずっと思ってたから、会ってすぐに分かった。全然変わってなかったし。モールまで歩いて来たってとこで確信した。」
「え?どういうこと…」
「俺の顔忘れてるの?ひどいな。同じ中学だった原侑希だよ。夏羽の事、12年想い続けてるんだぜ?俺って一途だよな。」
「原侑希って、原君?!嘘…、原君は巨乳が好きだってあの頃聞いてたのに。何で……?」
「何、そのガセネタ。巨乳なんて好きでも何でもないけど。」
「えええーーー?!そんなぁ……。原君が巨乳好きって聞いたから、今まで私……。」
「あ、あれか?名前忘れたけど、無理やり胸触らされた事あって、『デカっ』って言ったような覚えがあるな。仲良くもないやつだったし、気持ち悪いって思ったけど。」

(道代~~……、私の10年間は何だったのか……)

「それでも、侑希、そんなにカッコ良ければ、もっとスタイルのいい女の人だって選り取りみどりなんじゃない?がっかりさせちゃったんじゃないかな……。」
「夏羽は分かってないな。12年間想ってるって言っただろう?心も身体もどれだけ好きか、もう一度身体で分からせようか?」
「ひぃっ、ごめんなさい」
「まぁ、明日も抱くから。あと、毎週土日な。だから、我慢して、今日の所は日付変わる前に送ってく。俺の印象悪くなるとまずいし。」
「侑希……」
「夏羽、好きだよ。ちなみに、勤務先こっちに異動の希望を出していたのも、早く夏羽と付き合う為だから。一生逃がさないよ。覚悟して。」

いちいち「好きだ」と言いながら、キスをしたり、胸の蕾を摘まんだりしてくる侑希。
重い、重過ぎる言葉と愛を受け止め、私もキスを返し、答えた。

「侑希、私も好き。大好き。」



 ◆ 完 ◆








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

処理中です...