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第二幕
諦めと元カノ
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「私ね。実のところ雅也君と木葉さんの二人はとてもお似合いだと思っているのよ」
「……それはまたどうしてですか?」
「貴方の笑顔よ」
「笑顔?」
「そう。笑顔。雅也君気づいていないの? 貴方は木葉さんと一緒にいる時笑顔を浮かべているのよ。しかもとびきりの笑顔で、私と付き合っている時にはただの一度も浮かべてくれなかった笑顔を……」
そう言われても僕としては普段通りのつもりだし、何より咲夜といる時自分が笑顔でいる自覚すらなかった。
「それっていつからですか?」
「初めからよ。私と出会った当初からずっとあなたは木葉さんといる時は笑顔だった。とても楽しそうに笑っていた。そんなの間近で見せられて当初は嫉妬で狂いそうになったし、あの子の事が心底憎かったわ。だから雅也君と付き合えた時は本当に嬉しかった。ああ、やっと私はあの子に勝てたと思えたのよ。でも……」
「現実は違った……」
「そう。私は鼻から土台にすら立てていなかったのよ。だって雅也君。私と付き合っている頃いつも苦しそうだったもの。私がいくら笑わせようしてもピクリとも笑ってくれなかった。付き合う前は見せてくれていた笑顔も付き合ってからは一度も見せてくれなかった。だから私は焦ったんでしょうね……全く。人間焦るとダメね……」
「……すみません」
「雅也君が謝ることじゃないわ。だって悪いのは全部私だもの。私が勝手に嫉妬して、舞い上がって、焦って、自爆しただけ。貴方は何も悪くない。むしろ私の事をもっと恨んでくれてもいいのよ?」
先輩の言葉に嘘はない。彼女は今、自分の思いを、堪っていた感情を僕に吐き出してくれていた。
「恨んでならいたし、憎んでもいましたよ」
「そうよね......私はそれだけの事を......」
「でも‼︎ 今は恨んではいませんよ。だって先輩はいつも僕の事を思って行動してくれていたんですから。そんな人の事を恨むことなどできませんよ」
人間誰しも一度好きになった人間の事を嫌いになれるわけがない。例え相手がいくら酷いことをしたとしても相手だって何かしらの考えがあってその様な事をするはずなのだ。それを知ろうともしないで、相手が酷いことをしたから嫌いになる。復讐をする。その様な考え……僕は間違っていると思う。
確かに信頼していた相手に裏切られることは辛いし、悲しい。でもだからと言って相手の事を嫌いになって、憎んで、恨んで、復讐するのではやっていることはまるっきり同じではないか。むしろもっと質が悪く、陰湿で、浅ましく、醜い。そんな人間に僕はなりたくないし、そんな人間が魅力的な人間であるはずがない。
むしろ裏切られても尚、相手に復讐することなく、その事実を受け入れ、前を向いて歩いていくような人間の方が遥かにカッコいいし、僕はそんな人間になりたい。
「雅也君のそういう所。本当にカッコいいと思うし、私は堪らなく好きよ」
「……ありがとうございます」
こうやって素直に褒められるのはどうにも照れ臭い。
「だからこそ……私ではダメだと思い知らされるのだけど」
「先輩……」
「変な同情は止めて頂戴。別に私は雅也君に同情して欲しいわけじゃないの。私は雅也君を思い、ストーカーしているだけで満足だから……まあ欲を言えば愛人とかにしてくれると嬉しいのだけれど……ダメよね?」
「当たり前ですよ。そんな不誠実な真似、僕にはできません」
「それが答えよ」
「……はい?」
「雅也君は愛人を作ることを望まず、木葉さん一筋。だとしたら私はそんな二人の幸せを望むほかないじゃない」
「……」
このことに関して僕がとよかくいう資格はない。だってこの問題に関しては僕は何もできることはないのだから。
「ああ、でも雅也君から離れるつもりはないわよ。私は一生貴方のそばに居続けるともう決めているから」
「……他の男性を選ぶという選択肢はないのでしょうか?」
「そんなのあるわけないじゃない」
「どうしてですか?」
「前に言ったでしょう? 私、男が嫌いなのよ」
「……その話嘘じゃなかったんですね」
「これでも私は雅也君に対しては誠実でいるつもりよ?」
「はぁ……そうですか」
「もう少し興味を持って頂戴」
そう言われても先ほどからの先輩の言葉を聞いていると僕としては、星野さんよりもこの人の方がヤバいのではないかと本気で心配になってくる。
「先輩。一度病院行きましょう」
「どうしてそうなるのよ‼」
「先輩の話を聞いていれば誰だってそう思いますよ」
先輩の心は日に日に弱っていっている。それこそあの時僕の愛人にかるとか、なんだとほざいた時とは大違いなほどに。
「大体先輩はどうして僕にここまで入れ込んでいるんですか? 僕からすればその事が不思議で仕方ありませんよ」
「……秘密」
「おい。そこは誠実に話せよ」
「……絶対に嫌よ」
「どうして?」
「それも秘密」
「ああ、もうあなたは本当に秘密ばかりだな‼」
「ミステリアスな女性はお嫌い?」
「嫌いじゃないですけど先輩に限った話で言えば嫌いです」
「……そう」
「露骨に落ち込まないでくださいよ......」
はぁ……このままでは埒があきそうにない。こんな時は……
「先輩。どこか気分転換にいきましょう」
「え、でもそんな事したら木葉さんが……」
「ああ、それなら大丈夫です」
「まーくん呼んだ‼」
「うむ」
「ええとなんでここに木葉さんが……」
「僕が呼んでおいたんですよ。この後一緒に帰ろうと思っていたので」
まあその予定も大幅に狂う事になったけど。何なら肝心な事がまだ聞けていない。
「咲夜。この後なんだけど……」
「分かっているよ」
「流石咲夜」
「あの……」
「何をぼさっとしているんですか? 早く行きますよ」
「でも……木葉さんは……」
「私は気にしないからさっさと行く」
「……なんか不気味」
「人が折角優しくしてあげてるんだから素直にお礼しなさいよ‼」
「……嫌」
「この……‼」
「二人とも早くしないと置いていくぞ?」
「わ、分かった‼ ほら‼︎ 行くよ‼」
「……ええ」
「……それはまたどうしてですか?」
「貴方の笑顔よ」
「笑顔?」
「そう。笑顔。雅也君気づいていないの? 貴方は木葉さんと一緒にいる時笑顔を浮かべているのよ。しかもとびきりの笑顔で、私と付き合っている時にはただの一度も浮かべてくれなかった笑顔を……」
そう言われても僕としては普段通りのつもりだし、何より咲夜といる時自分が笑顔でいる自覚すらなかった。
「それっていつからですか?」
「初めからよ。私と出会った当初からずっとあなたは木葉さんといる時は笑顔だった。とても楽しそうに笑っていた。そんなの間近で見せられて当初は嫉妬で狂いそうになったし、あの子の事が心底憎かったわ。だから雅也君と付き合えた時は本当に嬉しかった。ああ、やっと私はあの子に勝てたと思えたのよ。でも……」
「現実は違った……」
「そう。私は鼻から土台にすら立てていなかったのよ。だって雅也君。私と付き合っている頃いつも苦しそうだったもの。私がいくら笑わせようしてもピクリとも笑ってくれなかった。付き合う前は見せてくれていた笑顔も付き合ってからは一度も見せてくれなかった。だから私は焦ったんでしょうね……全く。人間焦るとダメね……」
「……すみません」
「雅也君が謝ることじゃないわ。だって悪いのは全部私だもの。私が勝手に嫉妬して、舞い上がって、焦って、自爆しただけ。貴方は何も悪くない。むしろ私の事をもっと恨んでくれてもいいのよ?」
先輩の言葉に嘘はない。彼女は今、自分の思いを、堪っていた感情を僕に吐き出してくれていた。
「恨んでならいたし、憎んでもいましたよ」
「そうよね......私はそれだけの事を......」
「でも‼︎ 今は恨んではいませんよ。だって先輩はいつも僕の事を思って行動してくれていたんですから。そんな人の事を恨むことなどできませんよ」
人間誰しも一度好きになった人間の事を嫌いになれるわけがない。例え相手がいくら酷いことをしたとしても相手だって何かしらの考えがあってその様な事をするはずなのだ。それを知ろうともしないで、相手が酷いことをしたから嫌いになる。復讐をする。その様な考え……僕は間違っていると思う。
確かに信頼していた相手に裏切られることは辛いし、悲しい。でもだからと言って相手の事を嫌いになって、憎んで、恨んで、復讐するのではやっていることはまるっきり同じではないか。むしろもっと質が悪く、陰湿で、浅ましく、醜い。そんな人間に僕はなりたくないし、そんな人間が魅力的な人間であるはずがない。
むしろ裏切られても尚、相手に復讐することなく、その事実を受け入れ、前を向いて歩いていくような人間の方が遥かにカッコいいし、僕はそんな人間になりたい。
「雅也君のそういう所。本当にカッコいいと思うし、私は堪らなく好きよ」
「……ありがとうございます」
こうやって素直に褒められるのはどうにも照れ臭い。
「だからこそ……私ではダメだと思い知らされるのだけど」
「先輩……」
「変な同情は止めて頂戴。別に私は雅也君に同情して欲しいわけじゃないの。私は雅也君を思い、ストーカーしているだけで満足だから……まあ欲を言えば愛人とかにしてくれると嬉しいのだけれど……ダメよね?」
「当たり前ですよ。そんな不誠実な真似、僕にはできません」
「それが答えよ」
「……はい?」
「雅也君は愛人を作ることを望まず、木葉さん一筋。だとしたら私はそんな二人の幸せを望むほかないじゃない」
「……」
このことに関して僕がとよかくいう資格はない。だってこの問題に関しては僕は何もできることはないのだから。
「ああ、でも雅也君から離れるつもりはないわよ。私は一生貴方のそばに居続けるともう決めているから」
「……他の男性を選ぶという選択肢はないのでしょうか?」
「そんなのあるわけないじゃない」
「どうしてですか?」
「前に言ったでしょう? 私、男が嫌いなのよ」
「……その話嘘じゃなかったんですね」
「これでも私は雅也君に対しては誠実でいるつもりよ?」
「はぁ……そうですか」
「もう少し興味を持って頂戴」
そう言われても先ほどからの先輩の言葉を聞いていると僕としては、星野さんよりもこの人の方がヤバいのではないかと本気で心配になってくる。
「先輩。一度病院行きましょう」
「どうしてそうなるのよ‼」
「先輩の話を聞いていれば誰だってそう思いますよ」
先輩の心は日に日に弱っていっている。それこそあの時僕の愛人にかるとか、なんだとほざいた時とは大違いなほどに。
「大体先輩はどうして僕にここまで入れ込んでいるんですか? 僕からすればその事が不思議で仕方ありませんよ」
「……秘密」
「おい。そこは誠実に話せよ」
「……絶対に嫌よ」
「どうして?」
「それも秘密」
「ああ、もうあなたは本当に秘密ばかりだな‼」
「ミステリアスな女性はお嫌い?」
「嫌いじゃないですけど先輩に限った話で言えば嫌いです」
「……そう」
「露骨に落ち込まないでくださいよ......」
はぁ……このままでは埒があきそうにない。こんな時は……
「先輩。どこか気分転換にいきましょう」
「え、でもそんな事したら木葉さんが……」
「ああ、それなら大丈夫です」
「まーくん呼んだ‼」
「うむ」
「ええとなんでここに木葉さんが……」
「僕が呼んでおいたんですよ。この後一緒に帰ろうと思っていたので」
まあその予定も大幅に狂う事になったけど。何なら肝心な事がまだ聞けていない。
「咲夜。この後なんだけど……」
「分かっているよ」
「流石咲夜」
「あの……」
「何をぼさっとしているんですか? 早く行きますよ」
「でも……木葉さんは……」
「私は気にしないからさっさと行く」
「……なんか不気味」
「人が折角優しくしてあげてるんだから素直にお礼しなさいよ‼」
「……嫌」
「この……‼」
「二人とも早くしないと置いていくぞ?」
「わ、分かった‼ ほら‼︎ 行くよ‼」
「……ええ」
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