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第二幕
苦手なものと金髪少女
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「ど、どうでしたか……?」
「その……なんというか……」
「ええ……そうね……」
「「うますぎて引いた……」」」
星野さんの声は綺麗な事は知っていたし、歌を歌うのが似合うと思いはしていたが、まさかここまで化けるとは思わなかった。
星野さんが歌ったのは『森のくまさん』であるにも関わらず、一瞬意識が昇天しかけてしまった。
「ひ、引いた……はは……そうですよね……私風情の歌声なんて聞くに堪えないですよね……ごめんなさい……」
「ちょっと待って!? 僕たち褒めたよね!? 後半のマイナスの所だけ取らないで‼」
「へ……? 褒めてたんですか……?」
「うん……褒めてたよ……それもめちゃくちゃ……」
「す、すみません‼ 早とちりしてしまって……」
「早とちりというには後ろの言葉がっつり聞き取ってたわよね……」
「霧羽さん。うるさいです」
どうしてこういう時余計な事をいうのか。そんなこと言ったら星野さんが萎縮して、何も言わなくなってしまうではないか。
「そう言えば霧羽さんは歌得意なんですか?」
「私? 私は……そうね。苦手ではないけれど別に上手くもないと言ったところかしらね」
「へぇ。意外ですね」
「それはどういう意味かしら?」
「霧羽さんってなんでも完璧にこなしそうな見た目していますから」
星野さんも僕と同意見の様で、首を激しく縦に振っている。
「そうでもないわよ。私だって苦手な物の一つや二つあるわ」
「ふ~ん」
「聞いてはくれないの?」
「聞いて欲しかったんですか?」
「それは……まあ……やっぱり雅也君には私の事をもっと知って欲しいし……」
なんだろう。こうまでいじらしい先輩を見るとなんか変な気分だ。こう得体の知れない気持ち悪さが身体中を張っていて、言葉に表しようがない。
「なら教えてくださいよ。霧羽さんの苦手な物。あ、星野さんも教えてくれると嬉しいかな。むしろそっちの方が気になる」
「え、わ、私ですか!?」
「雅也君。いくら何でもその対応は酷いわ。私だって傷つくのよ?」
僕にあれだけの所業をしておいてよく言う。僕はあの時先輩にされた所業、トラウマで忘れられなくなっているというのに。
「うるさいです」
「むぅ……つれないわね~そんなところも好……」
「霧羽さん?」
「え、あ、うん。なんでもないわ」
今回の作戦中先輩には僕へのアピールは全面的に禁止している。それは咲夜からのお達しということおあるが、どちらかと言えば先輩本人の為だ。
今、星野さんは僕に明らかに依存している。そんな中彼女から僕を取り上げるような存在が現れてでも見ろ。明らかに彼女は暴走し、最悪先輩は星野さんに刺されるなんてケースもあり得る。それとは違って僕が星野さんに刺されるというケースもあるが……その時はその時だ。
「それで星野さんの苦手な物って何?」
「私はその……お、お化けが苦手です」
「へぇ。お化けが苦手なんて可愛いね」
いかにもなその答えに僕の心はほっこりする。
「そ、それと人間も……」
「あ、うん……それは何となく察しているから言わなくていい……」
こうして素直に言葉にしてくれるのは嬉しいのだが、こうやって改めて人間嫌いを聞くと少々頭が痛くなる。
本当どうやったらここまで人間が嫌いになれるのか。その原因はきっと彼女は語ってくれはしないだろう。そうなると希望は敦しかおらず、彼がうまくやることを願うばかりだ。
「ちなみに私は男の人が苦手よ」
「ソウナンデスカー」
「ちょ、絶対信じてないでしょう!?」
「はい。信じてません」
「ちょっとは私の事信用して欲しいのだけれど……それは無理な願いかもしれないわね……」
先輩は少々自嘲気味にそう呟いた。彼女の中できっと先の行いが僕の予想以上に響いているのだろう。今も尚こうやってその時の後悔が現れる時がある。
「金剛雅也‼ 一曲歌います‼」
「こ、金剛さん!? い、いきなりどうしたんですか!?」
「気にするな‼ 唯の悪乗りだ‼」
本音を言ってしまえば僕は歌を歌うのはあまり好きではない。その理由は単純。僕が音痴だから。咲夜はそんな僕の歌声も好きと言ってくれるけど他の人は違う。
僕の音楽の成績は万年1。採点モードを使うといつも20点くらいしか取れない。そんな人間いるわけがないと思うかもしれないが実際こうやっているのだから仕方がない。
そんな僕がこうして自ら歌うのは先程の宣言通りの唯の悪乗りで、二人の気分を明るい物にしてあげたかったから。
僕が道化を演じることによって二人が笑ってくれるなら結構。大いに笑うがいい。何せ今回の選曲は……
「雅也君。あなた……」
「い、いぬのおまわりさん......」
高校二年生の春にこのような歌を歌う羽目になるとは思わなかったが、そんな事今はどうでもいい。
「さあ震えるがいい。僕の歌声に」
「その……なんというか……」
「ええ……そうね……」
「「うますぎて引いた……」」」
星野さんの声は綺麗な事は知っていたし、歌を歌うのが似合うと思いはしていたが、まさかここまで化けるとは思わなかった。
星野さんが歌ったのは『森のくまさん』であるにも関わらず、一瞬意識が昇天しかけてしまった。
「ひ、引いた……はは……そうですよね……私風情の歌声なんて聞くに堪えないですよね……ごめんなさい……」
「ちょっと待って!? 僕たち褒めたよね!? 後半のマイナスの所だけ取らないで‼」
「へ……? 褒めてたんですか……?」
「うん……褒めてたよ……それもめちゃくちゃ……」
「す、すみません‼ 早とちりしてしまって……」
「早とちりというには後ろの言葉がっつり聞き取ってたわよね……」
「霧羽さん。うるさいです」
どうしてこういう時余計な事をいうのか。そんなこと言ったら星野さんが萎縮して、何も言わなくなってしまうではないか。
「そう言えば霧羽さんは歌得意なんですか?」
「私? 私は……そうね。苦手ではないけれど別に上手くもないと言ったところかしらね」
「へぇ。意外ですね」
「それはどういう意味かしら?」
「霧羽さんってなんでも完璧にこなしそうな見た目していますから」
星野さんも僕と同意見の様で、首を激しく縦に振っている。
「そうでもないわよ。私だって苦手な物の一つや二つあるわ」
「ふ~ん」
「聞いてはくれないの?」
「聞いて欲しかったんですか?」
「それは……まあ……やっぱり雅也君には私の事をもっと知って欲しいし……」
なんだろう。こうまでいじらしい先輩を見るとなんか変な気分だ。こう得体の知れない気持ち悪さが身体中を張っていて、言葉に表しようがない。
「なら教えてくださいよ。霧羽さんの苦手な物。あ、星野さんも教えてくれると嬉しいかな。むしろそっちの方が気になる」
「え、わ、私ですか!?」
「雅也君。いくら何でもその対応は酷いわ。私だって傷つくのよ?」
僕にあれだけの所業をしておいてよく言う。僕はあの時先輩にされた所業、トラウマで忘れられなくなっているというのに。
「うるさいです」
「むぅ……つれないわね~そんなところも好……」
「霧羽さん?」
「え、あ、うん。なんでもないわ」
今回の作戦中先輩には僕へのアピールは全面的に禁止している。それは咲夜からのお達しということおあるが、どちらかと言えば先輩本人の為だ。
今、星野さんは僕に明らかに依存している。そんな中彼女から僕を取り上げるような存在が現れてでも見ろ。明らかに彼女は暴走し、最悪先輩は星野さんに刺されるなんてケースもあり得る。それとは違って僕が星野さんに刺されるというケースもあるが……その時はその時だ。
「それで星野さんの苦手な物って何?」
「私はその……お、お化けが苦手です」
「へぇ。お化けが苦手なんて可愛いね」
いかにもなその答えに僕の心はほっこりする。
「そ、それと人間も……」
「あ、うん……それは何となく察しているから言わなくていい……」
こうして素直に言葉にしてくれるのは嬉しいのだが、こうやって改めて人間嫌いを聞くと少々頭が痛くなる。
本当どうやったらここまで人間が嫌いになれるのか。その原因はきっと彼女は語ってくれはしないだろう。そうなると希望は敦しかおらず、彼がうまくやることを願うばかりだ。
「ちなみに私は男の人が苦手よ」
「ソウナンデスカー」
「ちょ、絶対信じてないでしょう!?」
「はい。信じてません」
「ちょっとは私の事信用して欲しいのだけれど……それは無理な願いかもしれないわね……」
先輩は少々自嘲気味にそう呟いた。彼女の中できっと先の行いが僕の予想以上に響いているのだろう。今も尚こうやってその時の後悔が現れる時がある。
「金剛雅也‼ 一曲歌います‼」
「こ、金剛さん!? い、いきなりどうしたんですか!?」
「気にするな‼ 唯の悪乗りだ‼」
本音を言ってしまえば僕は歌を歌うのはあまり好きではない。その理由は単純。僕が音痴だから。咲夜はそんな僕の歌声も好きと言ってくれるけど他の人は違う。
僕の音楽の成績は万年1。採点モードを使うといつも20点くらいしか取れない。そんな人間いるわけがないと思うかもしれないが実際こうやっているのだから仕方がない。
そんな僕がこうして自ら歌うのは先程の宣言通りの唯の悪乗りで、二人の気分を明るい物にしてあげたかったから。
僕が道化を演じることによって二人が笑ってくれるなら結構。大いに笑うがいい。何せ今回の選曲は……
「雅也君。あなた……」
「い、いぬのおまわりさん......」
高校二年生の春にこのような歌を歌う羽目になるとは思わなかったが、そんな事今はどうでもいい。
「さあ震えるがいい。僕の歌声に」
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