上 下
35 / 53
第二幕

呼び出しと金髪少女

しおりを挟む
「こんにちは。星野さん」
「こ、こんにちは」

 あれから一日たった授業後。僕は星野さんと前回会話をした公園で待ち合わせをしていた。

「あの、あの、今日はお誘いありがとうございます。あ、それとこれなんですけど……」

 星野さんは僕の上着を恐る恐るカバンから取り出す。その時彼女の肩は震えていた。

「あ、上着ね。ありがとう」
「い、いえ……むしろ前回はすみませんでした。勝手に帰ってしまって……」
「ううん。気にしないで。誰だって失敗はあるからさ」
「うう……すみません……」
「まあいいや。今日星野さんを呼び出したのは星野さんにがいるからなんだ」
「紹介したい人……ですか?」
「うん。そう。紹介したい人。僕は星野さんにはその人と友達になって欲しいと思っているんだ」
「ダ、ダメです‼ 私と関わると……」
「不幸になるって?」
「……はい」
「星野さん。それなら僕はどう?」
「え、えと……どういう事でしょうか?」
「僕は不幸そうに見えるってこと」
「いえ、それはまだ知り合ってから少ししかたっていませんし……」

 思ったより星野さんの中でこのことは強く根付いているらしく、どうやら知り合って二日程度では照明できないらしい。

「……そっか」
「はい。だから……」
「止めないよ」
「え、でもでも……」
「星野さんの事情なんか知ったことじゃなし、その人だって星野さんと仲良くしたいと思ってる。例え星野さんと関わって自身が不幸になったとしてもその人は絶対に君のせいにはしないよ。あの人はそう言う人だ」
「金剛さんは……その人の事を信用なさっているのですか?」
「ん? まあね。他の人よりは圧倒的に信用できるし、きっと星野さんの事も受け入れてくれるよ」
「……そうでしょうか?」
「そうだよ。大丈夫だって。星野さんは性格もいいし、何より可愛いんだから」
「か、かわ……」
「うん。可愛いよ。僕の見てきた女性の中では2、3番目には」
「1番ではないんですね……」
「ああ、まあ、1番は別枠だから……」

 僕の中で1番の美人など咲夜の事以外ありえない。それは偏に愛情補正という物があるからであって、補正抜きで見れば星野さんも咲夜にも負けてはいないだろう。まあそれでも僕は咲夜を躊躇いなく選ぶのだが。

「もしかして星野さんって僕から1番可愛いとか言われてみたかった?」
「いえ、そんなことは……」
「そう。ならよかった」

 嘘だ。星野さんは本当は僕からの評価にかなりこだわっている。それは何故なのか具体的な理由まではわからない。でも僕が考えるに彼女は僕から捨てられることを極度に恐れている。僕という理解者がいなくなれば彼女はまた一人ボッチだ。それは彼女にとって耐え難い苦痛であり、二度と味わいたくない物なのだろう。だからこその僕への電話の数だ。

 あれは自己の存在を電話によって執拗にアピールすることによって、僕の事をなんとしてでもつなぎとめようとしているのに他ならない。そこまで彼女は孤独という物を恐れ、僕に依存している。

 それに根気よく付き合っていける人間ならばいいが、生憎僕にそれはできそうにない。僕にだって生活はあるし、何より彼女をいつまでも面倒見続けると今度は咲夜が爆発する可能性がある。

 咲夜と星野さんとではその優先順位が違う。仮にどちらかしか助けることができないと言われれば僕は躊躇いなく、咲夜を選ぶ。それは咲夜が僕にとってとても大切な存在だからで、愛するべき人だからで、友人とは違うからに他ならない。

 それにこの件に関する対応策は至ってシンプルで、星野さんの依存する対象を増やしてしまえばいいだけなのだ。

 星野さんが僕に依存しているのは結局の所、孤独が怖いからであって、それを埋めてくれる人ならば誰でもいいのだ。それならば解決策は至ってシンプルで、彼女の友達を増やしてあげればいいだけ。

「さてそろそろご紹介といこうか」
「え、あ、ちょ、ま、まだ心の準備が……」
「そんなこと知りませ~ん」

 彼女の気持ちが決まるまで待っていてはそれこそ日が暮れてしまう。だからここは強引にいく必要がある。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...