可愛くて、健気で、エッチで、一途な幼馴染の女の子は、好きですか?~付き合いたい彼女と付き合いたくない彼の攻防戦~

三日月

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第二幕

呼び出しと元カノ

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「それでなんの用ですか?」

 昨日の出来事から一日たった昼の事。僕は先輩に呼び出しを受け、指定された場所である屋上へとやってきていた。

「ちゃんと来てくれて嬉しいわ」
「どの口が言うんだか……」

 僕は当初の予定として先輩の呼び出しを無視するつもりでいた。何せ昨日僕は、咲夜の事を激しく悲しませたのだ。そんな状況の中で流石に別の異性と会う気など当然わかない。

 にも関わらずこうして出向いたのはこなかった場合僕の恥ずかしい黒歴史……つまるところ先輩と付き合っていた時代に、彼女に囁いた甘いセリフ集を世界中に公開すると脅されてしまったからだ。

 その様な事をされれば僕は自分で、自分の事を殺してしまいかねない。それほどにまで僕にとっては当時の発言は黒歴史なのだ。

「今日は木葉さんはいないのね」
「貴方がそう指定したんじゃないですか……」

 先輩は公開しない条件として一人で来ることもして来た。だからこそこの場には僕と先輩しかいない。

 ただ昨日の件もあって僕はこのことを咲夜にはきちんと話をしているし、僕のスマホは今は彼女と通話状態にしっぱなしにしてある。

「というかあなたの手紙なんでラブレター風なんですか。そのおかげで朝から咲夜に首絞められたじゃないですか」
「だって……その方が嬉しいでしょう?」

 全く持って嬉しくはない。むしろ朝から咲夜に首を絞められている分、不幸と言える。

「それでなんの用なんですか?」
「もう……つれないわね。でもそんな雅也君も大好き」
「またそういう事言って……」
「だって事実なのだから。むしろそれ以外になんて言えばいいのかしら?」
「そんなこと僕が知るわけないじゃないですか」
「それもそうね。それなら雅也君。私の事肉奴隷にしてみない?」
「ぶっ……‼ あ、あんたいきなり何言ってんだ!?」
「ふふふ。ご馳走様。本当雅也君って初心ね。まあそこが可愛いのだけど」
「いい加減にしてください‼ 本気で帰りますよ‼」
「ごめんなさい。つい久しぶりのだからってやりすぎたわ」
「は? 何を言って……」
「気にしないで。これは関係のないことだから」

 関係のないことならば今この場で言わないで欲しい。そもそも僕としては、この後咲夜と用事があるのだ。先輩の呼び出した用が僕をからかうなんていうふざけた理由なのならばこれ以上付き合っている理由はない。

「先輩。お願いだから早く要件を言ってください。僕にはこの後用事が……」
「それって昨日のあの金髪の女の子の事よね?」
「な、何故それをあなたが……は!? まさかあなたも……」
「その通り。私も昨日雅也君の事尾行していたのよ。まあ正確には木葉さんと一緒にだけど」
「あんたがうちの咲夜にそんな事教えた元凶か‼」
「雅也君。なんだか口調がお父さんみたいよ? でもそうなると母親は私……いい。すごくいい」

 先輩は頬を赤く染め、恍惚の表情を浮かべている。人によってはその姿はエロく、扇動的にみえるだろう。でも僕の心には何ら響かないし、なんならふざけている様に見え、余計にむかつく。

「先輩。いい加減にしないとぶちますよ?」
「いいわ‼ 来て‼ 激しく私の事をなぶって‼」

 風紀委員長の前でのこの堂々たる発言……ここまでくるといっそ凄い。

 先輩の変態度はどんどん上がっている。何故そのような事になってしまったのか。それは僕にはわからない。でもこのまま放っておけば先輩はそのうちとんでもない悪影響を及ぼすかもしれない。いっその事この辺りで駆除しておくのが吉なのかもしれない。

「ああ、その汚物を見るような目……堪らないわぁ……私のあそこが濡……」
「それ以上は止めなさい」
「あう……‼ いいわ。いいわよ。もっと……もっと強く私のこ……」
「いい加減にしなさい‼ この変態‼」
「そ、その声は……」
「咲夜……来てくれたんだな……」

 屋上の入り口には仁王立ちをし、どこか怒った様子の咲夜が立っていた。どうやら僕が困っているのを察して駆けつけてくれたようだ。そう考えるとやはりスマホを通話状態にしたままにしておくのは正解だったように思う。

「な、なぜこの場に木葉さんが……」
「貴方が雅也君にセクハラしているのを私の幼馴染センサーが察知したの‼」
「馬鹿な!? そんなものが存在しているはずは……」

 先輩は案外ノリがいい。こうやって咲夜の痛い発言にも律儀に乗ってくれている。ただ腹の底ではおかしいと思っているのか、笑みを隠しきれていない。

「ふふん‼ 貴方には幼馴染がいないからわからないでしょうね‼」
「あら? そうでもないわよ?
「え、いるの!?」
「まあ……ね」

 先輩はこの時どこか寂しそうな瞳で僕の事を見つめていた。
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