可愛くて、健気で、エッチで、一途な幼馴染の女の子は、好きですか?~付き合いたい彼女と付き合いたくない彼の攻防戦~

三日月

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第二幕

話し合いと金髪少女

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「うぉぉぉぉぉ……死にたいぃぃぃぃぃぃぃぃ……‼」

 僕は今現在公園で先程やったことについて絶賛後悔中だった。あの時頭が血に上ってたとは言え、あんなナンパ男まがいな事するとは思わなかったし、何よりこのことが咲夜にでもばれでもしたら僕は間違いなく嫌われる。

「あの……大丈夫ですの……?」
「え、あ、うん……気にしないで……ちょっと自己嫌悪に浸っているだけだから……」
「あの……それは私の……せいでしょうか……?」

   星野さんの表情は思いのほか暗い。彼女は何を思ってそのような表情をしているかは分からない。でも今言うべき事はわかる。

「全然違うよ。それよりもなんでそう思ったの?」
「それは……私が関わると皆になるから……」

 星野さんは自分と関わると不幸になると言った。普通に考えて人と関わるだけで不幸になるのは、明らかにおかしいし、ありえない。でも彼女の悲しそうな表情を見るに彼女が嘘をついていないのはわかる。

「うん。分かった。やっぱり君を一人にすることはできそうにないかな」
「え……それはどういう……」
「そのままの意味だけど?」
「私先程言いましたよね? 私と関わると不幸になると……」
「うん。聞いたね。それが何か?」
「な!? こ、金剛さんはご自身が不幸になるのが嫌ではないのですか‼」
「そんなの嫌に決まっているじゃん」
「なら……」
「でもさ。それって君が勝手にそう思っているだけだよね? 大体その人が幸運か不幸かは相手が決めるもんじゃない。自分で決めるもんでしょう?」
「それはあなたが知らないから……」
「ああ、知らないよ。だからこそ僕はもっと星野さんの事を知りたいし、君の言う不幸とはどういったものなのかも同時に知りたい」

 僕がそう言うと星野さんは完全に黙りこくってしまった。ただ口元だけは必死に動かそうとしており、彼女が何か反論しようとしているのはわかる。

「大体僕にはがついているからね。不幸なんかに負けないさ」
「幸福の……女神様……?」
「そ。幸福の女神」
「そんなのがこの世に存在するのですか‼」
「ああ。存在する。ただしその女神さまは人によって違うし、性別だって違う」
「わ、私にもいるのでしょうか……?」
「当然いるよ。でも幸運の女神……星野さんの場合男神だけど会うにはがあるんだ」
「条件……?」
「そ。条件。まあその条件は一つしかない」
「そ、その条件というのは……?」
「幸せになろうと努力すること」

 人は本来皆が幸せになる権利を持っているし、それは幸せになろうとするものには必ずやってくる。大体幸せなんて物は人の捉え方によって変わるのだ。他の人から見たら不幸そうに見えても本人が幸福に思っているケースなんてざらにあるし、その逆だってまた然りで、結局幸か不幸かなど人によって基準が違うのだ。

「無理です……だって……」
「そういうネガティブな発言今から禁止」
「ですが……」
「そういうのも禁止。大体星野さんは周りの事気にしすぎ。人間誰しも自分の幸福を第一に考えればいいの」
「そんな無責任な……」
「無責任で結構。それが人間って生き物だしね」
「金剛さんは優しいのか、冷たいのかよくわからない人です……」
「僕? 僕は酷い人間だよ? こうやって見ず知らずの女の子にキツイこと言うくらいには……ね」

 僕だって彼女の意識をすぐさま変えられるとは思っていないし、自分でも中々難しい事を彼女に言っている自信はある。

   でも彼女が幸せになるためには彼女の内に潜む潜在意識……自己評価の低さ、自身と関わることによって相手を不幸にすると思っている思い込み、この二点を取り除く必要がある。

「キツイ事言っている自覚はあるのですね」
「当然。人の考えや思いって何かがない限り中々変わらないものだからね」
「きっかけ……」
「そう。きっかけ」
「それは金剛さんの経験論なのでしょうか?」
「そうだね」

 僕は咲夜、先輩この二人との関わり合いでこの事を学んだ。それと同時に信念のある考えや思いは断ち切ることのできない物だということも学んだ。

 にもかかわらずこの場で言わないのは、もし僕がそう言ったら彼女が自身の思いをそう捉え、幸福になることを諦めてしまうと思うから。

 僕の見立てでは彼女の自己評価の低さは、彼女の引き起こした何かしらの要因から来ているので間違いないだろう。そして彼女はそれを受け入れてしまっている。

   内心多くの不満を抱えながらも自分が悪い、相手は悪くないと思い込み、自分で自分の事を傷つけている。その惨状は僕が先輩と付き合っている頃によく似ていたし、別れた直後の思考の狂い具合とよく似ている。

 僕は今でこそ先輩に振られたのは先輩が悪いと割り切っている。でも以前は違ったのだ。先輩に振られたのは自分の落ち度、自分が何か悪いことをしたから。だから全部自分が悪い。そう思っていたのだ。そしてそれはやがて憎しみとなり、感情の暴走を引き起こす。

 僕の見立てでは彼女は既にかなりギリギリな状況で、いつ爆発するのかわからない爆弾の様な状態だ。それはまるで昔の僕を見ているようで、そんな彼女の事を僕は放っておくことはできない。

「さて暗い話はこれくらいにして遊びに行こうか‼」
「え、ええ!? ま、待って……」
「待たないよ‼ まってたら遊ぶ時間なくなっちゃうからね‼」

 僕は星野さんの手を強引に握る。彼女はそれに恥ずかしそうにしながらも決して離そうとはしなかった。むしろ強く、強く握り返してくれた。
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