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開幕
告白と幼馴染
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「今日はとっても楽しかったね」
「そうだな」
時刻は既に夕暮れ。楽しいときは本当にあっという間で、今日咲夜と体験した出来事は僕の胸に、一生残り続けるだろう。
「あ~あ。もう一日が終わっちゃうのか~早いな~もっと一杯遊びたいな~」
「そうだな」
僕だって本当はもっと、もっと咲夜と遊んでいたいし、一緒にいたい。でも現実は残酷で、日はどんどん西へと沈んでいく。
「なぁ咲夜。最後によりたい所があるんだけどいいか?」
「勿論。何処までお供しますよ。まーくん」
咲夜はそう言いながら僕の腕に自然と自身の腕を絡ませてくる。
その際咲夜の豊満で、柔らかな胸の感触が僕の腕に伝わり、なんだか恥ずかしく、むず痒い。
「到着っと……」
「ここって……」
僕が咲夜を連れてきた場所……それは僕と咲夜が初めて出会った場所で、僕の自宅近くの公園だ。咲夜は今、この状況でこの場に連れてこられたのが予想外だったのか目を見開いて、とても驚いたような顔をしており、その反応を見るに咲夜もちゃんと覚えていてくれたようだ。
「覚えていたんだね」
「勿論だよ。だってここは私にとってとても、とても大事で、思い入れのある場所なんだもん」
胸の前で祈るように手を組む咲夜に、沈む太陽の陽が重なり、その様はまるで現世に女神が降臨したような美しさで、僕は咲夜に視線を釘付けにされる。
「まーくん?」
「綺麗だ……」
「そうだね。夕日が……」
「違う、違う。僕が言っているのは咲夜のことだよ」
「え、私……?」
「そう。咲夜。あまりの美しさにこの世に女神が降臨したのかと思ったよ」
「あ、あははは……」
咲夜はうまく言葉にできないのか顔を真っ赤に染め、指で自身の髪をいじる。その姿はとてもいじらしく、僕の胸は高鳴りを抑えられそうにない。
「咲夜。聞いて欲しいことがあるんだ」
「ひゃ、ひゃい‼」
咲夜の表情がこわばり、おかしな呼吸のリズムを刻んでおり、緊張しているのがまるわかりだ。
「そんな緊張するなよ……こっちまで緊張するだろう」
「うう……だ、だってまーくん。いつもと違ってとっても真剣な顔してるからこ、告白でもされるのかと……」
「おお、あたり、あたり。さすがだな。咲夜」
「へぇ……そう……って‼ ちょっと待って‼ 今まーくんなんて言った!?」
「だから告白するって言ったんだよ。阿呆」
「へ!? ちょ、え、待っ、待って、少し待って‼ い、一旦整理させて……」
咲夜は表情をコロコロ返す、嬉しそうな表情をしたり、悲しそうな表情をしたり、恥ずかしそうな表情をしたり、死にそうな表情をしたり。その様はまさに百面相。見ていて飽きないし、口元が自然とほころぶ。
「ふぅ……ふぅ……よし。ばっちこい‼」
「本当、咲夜って可笑しな奴だよな」
「むぅ……お、おかしくなんかないもん‼ 普通だもん‼」
咲夜の性格や容姿を普通という括りに入れるのは、どう考えても無理がある。仮に彼女が普通だとしたら世の中の女性、全員ブスということになってしまうではないか。それはいくら何でも失礼すぎる。
でも今はそんなことが大事なんじゃない。僕が今やるべきことは、咲夜に自身の抱いている気持ちを吐露することそれだけだ。
「木葉咲夜さん」
「は、はい‼」
「僕はあなたの事が好きです」
咲夜の顔にゆっくりと笑顔という名の花が開花していき、やがて満開になる。
「うん‼ わ、私も好き‼ まーくんの事大、大、大好き‼ だから私と付き合……」
「でも僕はまだ咲夜とは付き合えません」
「え……? どうして……?」
咲夜の表情はコンクリートの様に固まっており、心なしか悲しそうに見える。いや、きっと内心悲しんでいるのだろう。その事を心苦しく思いつつも僕は、言葉を止めず、自身のありったけの本音を咲夜にぶつける。
「僕はね。咲夜とは対等でいたいんだよ」
「対等……?」
「そう。対等。男女の仲ってさどちらかが妥協したり、我慢したりしているんじゃうまくいかないんだよ。そしてその二つのデメリットをなくすには二人が対等な関係じゃないといけない」
僕は今まで咲夜と付き合いたくない理由を咲夜のメンツを貶めるとか能力が釣り合っていないと思っていた。でもそれは違ったのだ。本当はただ咲夜の好意に答えるのが怖かっただけ。彼女の好意を真正面から受け止める自信が僕にはなかった。だからこそあのような理由をつけ、自分の心を誤魔化して、彼女の気持ちから逃げてきた。
でも今は違う。今は逃げないと決めた。彼女からの好意に向き合うと決めた。向き合うと決めて選んだ結果がこれだ。
僕と咲夜は明らかにつり合っていない。でもそれは能力だとか容姿とかじゃなくてその思いの違いだ。咲夜の愛の重さは、きっと僕が咲夜の事を好きという気持ちよりも遥かに強い。それは今日の咲夜の行動を見て猶更確信したし、何より考えてみればそれは当然のことなのだ。
僕は咲夜の事を異性として好きになったのはつい最近の事である。対して咲夜は、具体的な時期まではわからないが、中学生の頃の時点では好意を抱いてくれていたことはわかる。
愛の重さが釣り合っていないとどうなるかと言えば、破局の未来を迎えるということで、僕はそれを先輩との交際で学んだ。
先輩は付き合っている時も僕の事を第一に考え、自身の気持ちを押し殺し、ずっと我慢してくれていた。それはまさしく愛情の一方通行。片方の愛が過剰だともう片方の愛は潰され、対等な関係は構築されず、愛が重いほうが我慢するという状況が発生する。
我慢はやがて不満になり、先輩はあのような行動をとり、僕は傷つき、先輩も傷つくという最悪な状況を生み出した。
僕はその様な失敗二度とするわけにはいかない。だからこそ僕はまだ咲夜と付き合えない。僕の気持ちが咲夜の気持ちに追いつくその日までは……
「そんな事……」
「そんな事じゃないよ。仮にだよ。今僕と咲夜が結ばれたとしてもきっとうまくはいかない。僕はそう思う」
「違う‼ そんなことない‼ 私とまーくんならきっと今すぐでもうまくいく‼ だから……私と今すぐ付き合って……‼ 付き合ってよぉ……」
咲夜の悲痛の叫び。正直自分の行いが最低であることは自覚している。だって僕の言っていることはかなり都合のいいことなのだから。咲夜の好意に甘え、僕の心が決まるその日まで咲夜には僕に飼い殺しされて欲しいということを僕は言っているのだ。それを最低と言わずしてなんという。
でも僕はそれらすべてを踏まえた上でこの結論を出した。もしかしたら僕の今日の行いのせいで、咲夜に嫌われ、今の関係が崩れるかもしれない。でも仮にそれで崩れてしまう関係ならばきっと僕たちは付き合ったとしてもうまくいかない。それに僕は咲夜が僕の考えを、気持ちを理解してくれると信じている。
「ごめん。僕もここだけは譲るわけにはいかない」
「……………………まーくんの気持ちは分かった」
咲夜は数分の沈黙の後、そう答えてくれ、僕の胸の内にに安堵という感情が広がっていく。
「そうか。よか……」
「でも‼ 私はやっぱり今すぐ付き合いたい‼ 学校でもイチャイチャして、家でもイチャイチャして、エッチなこととかもまーくんとしたい‼」
その言葉は紛れもない咲夜の願望で、咲夜の我が儘だった。
「お、おう……そうか」
そんな咲夜の我が儘を僕は否定することもなく、素直に受け入れる。僕だけ我が儘を言って咲夜の我が儘を聞かないのは筋が通っていないし、僕としては素直にそうやって言葉に口にしてくれたことが嬉しかった。
ただ……女の子が男の子に対してエッチな事したいというのは少々どうかとは思う。
「私、今後もまーくんへのアプローチを止めないからね‼ 絶対にまーくんのその捻くれた根性を強制して見せるからね‼」
「ひ、捻くれた……」
こちらの気も知らないで随分と咲夜は好き勝手な言い草をして来た。でも頭に来る事は無く、胸には謎の高揚感が湧いていた。
「やれるもんならやってみな。まあ咲夜には無理だろうけれどな」
「ふふふ……あまり私の事舐めないほうがいいよ?」
「なん……だと……?」
「今後はもっと過激にしていくから‼ 覚悟しておいてね‼」
既に日は完全落ち、夜空に星々が広がっており、月の光を僕たちを照らす。それはまるで舞台の上で役者を照らすスポットライトの様で、この時僕たちの物語は真に始まったような気がした。
「そうだな」
時刻は既に夕暮れ。楽しいときは本当にあっという間で、今日咲夜と体験した出来事は僕の胸に、一生残り続けるだろう。
「あ~あ。もう一日が終わっちゃうのか~早いな~もっと一杯遊びたいな~」
「そうだな」
僕だって本当はもっと、もっと咲夜と遊んでいたいし、一緒にいたい。でも現実は残酷で、日はどんどん西へと沈んでいく。
「なぁ咲夜。最後によりたい所があるんだけどいいか?」
「勿論。何処までお供しますよ。まーくん」
咲夜はそう言いながら僕の腕に自然と自身の腕を絡ませてくる。
その際咲夜の豊満で、柔らかな胸の感触が僕の腕に伝わり、なんだか恥ずかしく、むず痒い。
「到着っと……」
「ここって……」
僕が咲夜を連れてきた場所……それは僕と咲夜が初めて出会った場所で、僕の自宅近くの公園だ。咲夜は今、この状況でこの場に連れてこられたのが予想外だったのか目を見開いて、とても驚いたような顔をしており、その反応を見るに咲夜もちゃんと覚えていてくれたようだ。
「覚えていたんだね」
「勿論だよ。だってここは私にとってとても、とても大事で、思い入れのある場所なんだもん」
胸の前で祈るように手を組む咲夜に、沈む太陽の陽が重なり、その様はまるで現世に女神が降臨したような美しさで、僕は咲夜に視線を釘付けにされる。
「まーくん?」
「綺麗だ……」
「そうだね。夕日が……」
「違う、違う。僕が言っているのは咲夜のことだよ」
「え、私……?」
「そう。咲夜。あまりの美しさにこの世に女神が降臨したのかと思ったよ」
「あ、あははは……」
咲夜はうまく言葉にできないのか顔を真っ赤に染め、指で自身の髪をいじる。その姿はとてもいじらしく、僕の胸は高鳴りを抑えられそうにない。
「咲夜。聞いて欲しいことがあるんだ」
「ひゃ、ひゃい‼」
咲夜の表情がこわばり、おかしな呼吸のリズムを刻んでおり、緊張しているのがまるわかりだ。
「そんな緊張するなよ……こっちまで緊張するだろう」
「うう……だ、だってまーくん。いつもと違ってとっても真剣な顔してるからこ、告白でもされるのかと……」
「おお、あたり、あたり。さすがだな。咲夜」
「へぇ……そう……って‼ ちょっと待って‼ 今まーくんなんて言った!?」
「だから告白するって言ったんだよ。阿呆」
「へ!? ちょ、え、待っ、待って、少し待って‼ い、一旦整理させて……」
咲夜は表情をコロコロ返す、嬉しそうな表情をしたり、悲しそうな表情をしたり、恥ずかしそうな表情をしたり、死にそうな表情をしたり。その様はまさに百面相。見ていて飽きないし、口元が自然とほころぶ。
「ふぅ……ふぅ……よし。ばっちこい‼」
「本当、咲夜って可笑しな奴だよな」
「むぅ……お、おかしくなんかないもん‼ 普通だもん‼」
咲夜の性格や容姿を普通という括りに入れるのは、どう考えても無理がある。仮に彼女が普通だとしたら世の中の女性、全員ブスということになってしまうではないか。それはいくら何でも失礼すぎる。
でも今はそんなことが大事なんじゃない。僕が今やるべきことは、咲夜に自身の抱いている気持ちを吐露することそれだけだ。
「木葉咲夜さん」
「は、はい‼」
「僕はあなたの事が好きです」
咲夜の顔にゆっくりと笑顔という名の花が開花していき、やがて満開になる。
「うん‼ わ、私も好き‼ まーくんの事大、大、大好き‼ だから私と付き合……」
「でも僕はまだ咲夜とは付き合えません」
「え……? どうして……?」
咲夜の表情はコンクリートの様に固まっており、心なしか悲しそうに見える。いや、きっと内心悲しんでいるのだろう。その事を心苦しく思いつつも僕は、言葉を止めず、自身のありったけの本音を咲夜にぶつける。
「僕はね。咲夜とは対等でいたいんだよ」
「対等……?」
「そう。対等。男女の仲ってさどちらかが妥協したり、我慢したりしているんじゃうまくいかないんだよ。そしてその二つのデメリットをなくすには二人が対等な関係じゃないといけない」
僕は今まで咲夜と付き合いたくない理由を咲夜のメンツを貶めるとか能力が釣り合っていないと思っていた。でもそれは違ったのだ。本当はただ咲夜の好意に答えるのが怖かっただけ。彼女の好意を真正面から受け止める自信が僕にはなかった。だからこそあのような理由をつけ、自分の心を誤魔化して、彼女の気持ちから逃げてきた。
でも今は違う。今は逃げないと決めた。彼女からの好意に向き合うと決めた。向き合うと決めて選んだ結果がこれだ。
僕と咲夜は明らかにつり合っていない。でもそれは能力だとか容姿とかじゃなくてその思いの違いだ。咲夜の愛の重さは、きっと僕が咲夜の事を好きという気持ちよりも遥かに強い。それは今日の咲夜の行動を見て猶更確信したし、何より考えてみればそれは当然のことなのだ。
僕は咲夜の事を異性として好きになったのはつい最近の事である。対して咲夜は、具体的な時期まではわからないが、中学生の頃の時点では好意を抱いてくれていたことはわかる。
愛の重さが釣り合っていないとどうなるかと言えば、破局の未来を迎えるということで、僕はそれを先輩との交際で学んだ。
先輩は付き合っている時も僕の事を第一に考え、自身の気持ちを押し殺し、ずっと我慢してくれていた。それはまさしく愛情の一方通行。片方の愛が過剰だともう片方の愛は潰され、対等な関係は構築されず、愛が重いほうが我慢するという状況が発生する。
我慢はやがて不満になり、先輩はあのような行動をとり、僕は傷つき、先輩も傷つくという最悪な状況を生み出した。
僕はその様な失敗二度とするわけにはいかない。だからこそ僕はまだ咲夜と付き合えない。僕の気持ちが咲夜の気持ちに追いつくその日までは……
「そんな事……」
「そんな事じゃないよ。仮にだよ。今僕と咲夜が結ばれたとしてもきっとうまくはいかない。僕はそう思う」
「違う‼ そんなことない‼ 私とまーくんならきっと今すぐでもうまくいく‼ だから……私と今すぐ付き合って……‼ 付き合ってよぉ……」
咲夜の悲痛の叫び。正直自分の行いが最低であることは自覚している。だって僕の言っていることはかなり都合のいいことなのだから。咲夜の好意に甘え、僕の心が決まるその日まで咲夜には僕に飼い殺しされて欲しいということを僕は言っているのだ。それを最低と言わずしてなんという。
でも僕はそれらすべてを踏まえた上でこの結論を出した。もしかしたら僕の今日の行いのせいで、咲夜に嫌われ、今の関係が崩れるかもしれない。でも仮にそれで崩れてしまう関係ならばきっと僕たちは付き合ったとしてもうまくいかない。それに僕は咲夜が僕の考えを、気持ちを理解してくれると信じている。
「ごめん。僕もここだけは譲るわけにはいかない」
「……………………まーくんの気持ちは分かった」
咲夜は数分の沈黙の後、そう答えてくれ、僕の胸の内にに安堵という感情が広がっていく。
「そうか。よか……」
「でも‼ 私はやっぱり今すぐ付き合いたい‼ 学校でもイチャイチャして、家でもイチャイチャして、エッチなこととかもまーくんとしたい‼」
その言葉は紛れもない咲夜の願望で、咲夜の我が儘だった。
「お、おう……そうか」
そんな咲夜の我が儘を僕は否定することもなく、素直に受け入れる。僕だけ我が儘を言って咲夜の我が儘を聞かないのは筋が通っていないし、僕としては素直にそうやって言葉に口にしてくれたことが嬉しかった。
ただ……女の子が男の子に対してエッチな事したいというのは少々どうかとは思う。
「私、今後もまーくんへのアプローチを止めないからね‼ 絶対にまーくんのその捻くれた根性を強制して見せるからね‼」
「ひ、捻くれた……」
こちらの気も知らないで随分と咲夜は好き勝手な言い草をして来た。でも頭に来る事は無く、胸には謎の高揚感が湧いていた。
「やれるもんならやってみな。まあ咲夜には無理だろうけれどな」
「ふふふ……あまり私の事舐めないほうがいいよ?」
「なん……だと……?」
「今後はもっと過激にしていくから‼ 覚悟しておいてね‼」
既に日は完全落ち、夜空に星々が広がっており、月の光を僕たちを照らす。それはまるで舞台の上で役者を照らすスポットライトの様で、この時僕たちの物語は真に始まったような気がした。
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