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21 社交界デビュー前夜、そして
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フレデリカ王女に送られたドレスは、とても美しかった。
青みがかった練り絹は光沢の具合によって水面のように青を広げ、形は定番のプリンセスラインだが、甘すぎない仕上がりだ。私の瞳の色に合わせてくれたのだろう。青を主調しながらも、強すぎないのは光沢の加減のおかげだろうか。
宝飾品は私の髪に合わせた金だったが、石を中心に繊細な細工の施されたものだった。靴も履くのがもったいなくなるような繊細なヒールだが、履いてみると安定感がある。
「フレデリカ王女……」
私は届いた贈り物に心遣いを感じて、嬉しさで彼女の名前を呼んだ。そして、このドレス姿を見たセルゲウス様の反応が……とても、楽しみになった。
明日の夜、セルゲウス様が迎えに来る。そういえば、と連鎖的に思い出した。
ハーティス伯爵令息が領地の屋敷で終身蟄居となったらしい。噂一つで怖い事だが、下手をしたら第二王女が流言流布で高位貴族を貶めたという事になりかねない事だった。第二王女の周りも洗われ、今はちゃんとしたお友達、とだけお付き合いがあるという。
その話をした時には、怖かったわ、私は自分の立場を弁えなければいけない、とフレデリカ王女は言っていたからもう大丈夫だろうけれど。
あのモラハラ男と結婚する事にならなくてよかった。
セルゲウス様はどこまで分かっていて、私と、辺境伯と公爵のままで結婚しようと言ってくれたのだろう。
「バーバレラ、起きているか?」
「はい、お父様」
考えに耽っていると、お父様がやってきた。手には何か書類を持っている。
「明日、お前は社交界デビューをする。で、だ……婚約の書類は取り交わす気だろうというのは見ていればわかる。私もお前に幸せになって欲しい。だから……、今日、お前に爵位を譲る」
「! お、お父様、それは……!」
「暫くは王都で一緒に過ごしなさい。領地の方は引退した私とお母さんに任せて、孫の顔も早く見たいしな」
「ですが……」
「これはお前が成人した時に約束したことだ。そして、ユージーン公爵は辺境伯のお前と結婚する意志らしい。それは、ちゃんと挨拶にきてくれた」
驚いた。だが、王城と屋敷を往来していた私のいない間に(秋の社交シーズンには両親は戻って来ていた)セルゲウス様がお父様に話を通すのは筋だとも思う。
「あの方は王都で仕事がある。お前も、辺境伯としてこちらでできる仕事もあるだろう。だから、書面の上だけでもと王城で手続きを済ませて、あとはお前のサインが入るだけになった」
そういって差し出された紙束を、私は大事に一枚一枚目を通した。
確かに爵位を引き継ぐ旨が記された書類だ。
「明日、夜会の前に提出する。そうすれば、お前は辺境伯令嬢ではなく、バーバレラ・ドミニク辺境伯として社交界デビューだ」
「……最初、婚約のお話を聞いたときは、たとえ実の父とて、と思ったのですが……」
そういえば、随分と帯剣していない。違う戦いを王都では続けていた。
「ありがとうございます、お父様。かならず、ドミニク領をいい領地にし、国境の守りとして立ってみせます」
「あぁ、任せたぞ。……嫁に出す気分だが、それはまだ先だな?」
「もう! お父様!」
しっかりとお父様と抱き締め合って、私は泣き笑いのような顔で、書類にサインした。
青みがかった練り絹は光沢の具合によって水面のように青を広げ、形は定番のプリンセスラインだが、甘すぎない仕上がりだ。私の瞳の色に合わせてくれたのだろう。青を主調しながらも、強すぎないのは光沢の加減のおかげだろうか。
宝飾品は私の髪に合わせた金だったが、石を中心に繊細な細工の施されたものだった。靴も履くのがもったいなくなるような繊細なヒールだが、履いてみると安定感がある。
「フレデリカ王女……」
私は届いた贈り物に心遣いを感じて、嬉しさで彼女の名前を呼んだ。そして、このドレス姿を見たセルゲウス様の反応が……とても、楽しみになった。
明日の夜、セルゲウス様が迎えに来る。そういえば、と連鎖的に思い出した。
ハーティス伯爵令息が領地の屋敷で終身蟄居となったらしい。噂一つで怖い事だが、下手をしたら第二王女が流言流布で高位貴族を貶めたという事になりかねない事だった。第二王女の周りも洗われ、今はちゃんとしたお友達、とだけお付き合いがあるという。
その話をした時には、怖かったわ、私は自分の立場を弁えなければいけない、とフレデリカ王女は言っていたからもう大丈夫だろうけれど。
あのモラハラ男と結婚する事にならなくてよかった。
セルゲウス様はどこまで分かっていて、私と、辺境伯と公爵のままで結婚しようと言ってくれたのだろう。
「バーバレラ、起きているか?」
「はい、お父様」
考えに耽っていると、お父様がやってきた。手には何か書類を持っている。
「明日、お前は社交界デビューをする。で、だ……婚約の書類は取り交わす気だろうというのは見ていればわかる。私もお前に幸せになって欲しい。だから……、今日、お前に爵位を譲る」
「! お、お父様、それは……!」
「暫くは王都で一緒に過ごしなさい。領地の方は引退した私とお母さんに任せて、孫の顔も早く見たいしな」
「ですが……」
「これはお前が成人した時に約束したことだ。そして、ユージーン公爵は辺境伯のお前と結婚する意志らしい。それは、ちゃんと挨拶にきてくれた」
驚いた。だが、王城と屋敷を往来していた私のいない間に(秋の社交シーズンには両親は戻って来ていた)セルゲウス様がお父様に話を通すのは筋だとも思う。
「あの方は王都で仕事がある。お前も、辺境伯としてこちらでできる仕事もあるだろう。だから、書面の上だけでもと王城で手続きを済ませて、あとはお前のサインが入るだけになった」
そういって差し出された紙束を、私は大事に一枚一枚目を通した。
確かに爵位を引き継ぐ旨が記された書類だ。
「明日、夜会の前に提出する。そうすれば、お前は辺境伯令嬢ではなく、バーバレラ・ドミニク辺境伯として社交界デビューだ」
「……最初、婚約のお話を聞いたときは、たとえ実の父とて、と思ったのですが……」
そういえば、随分と帯剣していない。違う戦いを王都では続けていた。
「ありがとうございます、お父様。かならず、ドミニク領をいい領地にし、国境の守りとして立ってみせます」
「あぁ、任せたぞ。……嫁に出す気分だが、それはまだ先だな?」
「もう! お父様!」
しっかりとお父様と抱き締め合って、私は泣き笑いのような顔で、書類にサインした。
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