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15 第二王女は悔しかっただけなのに
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「来たわね怪物姫! 皆、あんな噂は嘘だって言っていたけれど私は騙さ……れ……」
「はじめまして、フレデリカ王女殿下。バーバレラ・ドミニクです」
「私は付き添いで来ました。どうやら、私の対応が悪かったせいで彼女に迷惑がかかったようで」
応接間で待たされた私とセルゲウス様の前に、バン! と大きな音をたてて扉を開いて栗色の髪に青い瞳の……少し……いや、やめよう。大分ふくよかな女性が乗り込んできた。入室ではない、乗り込みである。
どしどしと意気揚々と近付いてきたのだが、私の姿を認識すると言葉を失ったようだ。
王室の女性は可愛く無ければいけない、という決まりは当然無いが、彼女の場合は過食による太りすぎのように思う。肌も荒れていて少し浅黒い。ふくよかながら大きな瞳をしているし、ダイエットをすれば充分可愛くなるだろう。
召し物も豪奢だ。豪奢だが……体型を分かっていて着ているのだろうか、という感じにパンパンに作られている。服飾の専門家はついているはずだから、彼女の好みなのだろう。しかし、多少はボディラインに沿わせるべきだとは思うが、これはいくらなんでもパンパンすぎる。
体型と服装で分かってしまった。彼女は『怪物姫』というあだ名を私になすりつけたかったのだろう。自分が王城から動けないストレスで、きっとこうなってしまったに違いない。
それが私の悪評を流したことを許す理由には一切ならないのだけれど、彼女はその見た目と性格を悪い物だと認識していて、それの決定打がセルゲウス様の振り方だったのだろうなと思う。
「貴女、また暴食しましたか? 私に婚約を申し込んだ時にも同じドレスだったと思いますが、その時はもう少し似合っていましたよ。短期間に食べすぎです。運動もしていない。これだけ広い王城の庭で運動をしないとはどういう事ですか。あとはシェフにワガママを言ったのか、侍女におやつを持ってこさせているのか知りませんが、食べる量を控えないと死にますよ。去年40代の若さで亡くなられたゴルベル伯爵をお忘れですか? 彼の方も運動不足と食べすぎで肥えに肥えてそのせいで大病を患い亡くなられたのです。少しは国の為、自分の為に健康に気を使って食事制限と運動をなさい。あなたの周りであなたを甘やかす人はあなたを殺そうとしているのとかわりませんよ。それとも、暴力にでも訴えて無理矢理命令しているのですか? 自殺願望のある女性と結婚する気など毛頭ない、そもそも生まれる前から婚約者がいる、と私は言いましたね。何故改善ではなく、悪くなっているのです? フレデリカ王女」
セルゲウス様の表情は氷を鍛えた剣の如く冷たく鋭く、言葉は魔物の放つ毒霧よりも辛辣だ。
が、この場合これは、忠言、だと私は思う。泣きそうな顔をしているけれど、本当に心配してくれているのが分からないのだろうか。
彼は、私が噂通りの怪物姫でも『一緒にダイエットをして~』と言うような方なのだ。本当に、心に決めた女性以外をバッサバッサと切り捨てて、その為に自分に悪評がたってもいい、と思う程の。
「そ、そんなの……う、嘘よ……領地から出てこないんだから……私と同じじゃないとおかしい……」
「彼女には夢があって、領地でしっかりと領地経営をしておりました。王宮で調べればすぐわかる事です。それもしなかったのに、勝手に彼女を同族扱いして噂を流したと? その浅慮、いい加減になさい」
さすがにそろそろ止めた方がいいかしら、と思ったのだが、その前に床にどすんと(音がした)座り込んだフレデリカ王女は声をあげて子供のように泣き出してしまった。
相対的にセルゲウス様の視線は鋭く冷たい。
予想外の方向に物事が進みすぎて、私は軽く痛んできた頭を片手で抑えた。
「はじめまして、フレデリカ王女殿下。バーバレラ・ドミニクです」
「私は付き添いで来ました。どうやら、私の対応が悪かったせいで彼女に迷惑がかかったようで」
応接間で待たされた私とセルゲウス様の前に、バン! と大きな音をたてて扉を開いて栗色の髪に青い瞳の……少し……いや、やめよう。大分ふくよかな女性が乗り込んできた。入室ではない、乗り込みである。
どしどしと意気揚々と近付いてきたのだが、私の姿を認識すると言葉を失ったようだ。
王室の女性は可愛く無ければいけない、という決まりは当然無いが、彼女の場合は過食による太りすぎのように思う。肌も荒れていて少し浅黒い。ふくよかながら大きな瞳をしているし、ダイエットをすれば充分可愛くなるだろう。
召し物も豪奢だ。豪奢だが……体型を分かっていて着ているのだろうか、という感じにパンパンに作られている。服飾の専門家はついているはずだから、彼女の好みなのだろう。しかし、多少はボディラインに沿わせるべきだとは思うが、これはいくらなんでもパンパンすぎる。
体型と服装で分かってしまった。彼女は『怪物姫』というあだ名を私になすりつけたかったのだろう。自分が王城から動けないストレスで、きっとこうなってしまったに違いない。
それが私の悪評を流したことを許す理由には一切ならないのだけれど、彼女はその見た目と性格を悪い物だと認識していて、それの決定打がセルゲウス様の振り方だったのだろうなと思う。
「貴女、また暴食しましたか? 私に婚約を申し込んだ時にも同じドレスだったと思いますが、その時はもう少し似合っていましたよ。短期間に食べすぎです。運動もしていない。これだけ広い王城の庭で運動をしないとはどういう事ですか。あとはシェフにワガママを言ったのか、侍女におやつを持ってこさせているのか知りませんが、食べる量を控えないと死にますよ。去年40代の若さで亡くなられたゴルベル伯爵をお忘れですか? 彼の方も運動不足と食べすぎで肥えに肥えてそのせいで大病を患い亡くなられたのです。少しは国の為、自分の為に健康に気を使って食事制限と運動をなさい。あなたの周りであなたを甘やかす人はあなたを殺そうとしているのとかわりませんよ。それとも、暴力にでも訴えて無理矢理命令しているのですか? 自殺願望のある女性と結婚する気など毛頭ない、そもそも生まれる前から婚約者がいる、と私は言いましたね。何故改善ではなく、悪くなっているのです? フレデリカ王女」
セルゲウス様の表情は氷を鍛えた剣の如く冷たく鋭く、言葉は魔物の放つ毒霧よりも辛辣だ。
が、この場合これは、忠言、だと私は思う。泣きそうな顔をしているけれど、本当に心配してくれているのが分からないのだろうか。
彼は、私が噂通りの怪物姫でも『一緒にダイエットをして~』と言うような方なのだ。本当に、心に決めた女性以外をバッサバッサと切り捨てて、その為に自分に悪評がたってもいい、と思う程の。
「そ、そんなの……う、嘘よ……領地から出てこないんだから……私と同じじゃないとおかしい……」
「彼女には夢があって、領地でしっかりと領地経営をしておりました。王宮で調べればすぐわかる事です。それもしなかったのに、勝手に彼女を同族扱いして噂を流したと? その浅慮、いい加減になさい」
さすがにそろそろ止めた方がいいかしら、と思ったのだが、その前に床にどすんと(音がした)座り込んだフレデリカ王女は声をあげて子供のように泣き出してしまった。
相対的にセルゲウス様の視線は鋭く冷たい。
予想外の方向に物事が進みすぎて、私は軽く痛んできた頭を片手で抑えた。
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