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4 国王陛下がお怒りです
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「父上……?」
アンドリュー殿下が怪訝な声をあげる。私も、何故いきなり書面が破かれたのか分からない。
不安な顔で国王陛下を見ると、表情を一変させていた。
「これは転写式の用紙になっている。すまなかったな、リーン……、この婚約は王室有責の婚約破棄となる」
確かに、私もアンドリュー殿下も二枚目以降の紙は読んでいなかった。
私は余りにショックが強すぎて、アンドリュー殿下はもともと表面をなぞるようなお方だから、目を通していない。
しっかりとサインが転写された紙の束を改めて渡される。私は驚いた余り淡々とそれを声に出していた。
「……婚約時の契約に違反し、時刻の遵守、及び、婚約者への不当な扱い、暴言、罵倒は品性を疑って然るべき内容であった。詳細は次の用紙に証言と共に書き連ねてある。また、『婚前の浮気は王室の特性上認められる側室を持つ行為』に含まれず、再三の警告を無視した事から廃嫡とし万一の場合にも王位継承権は発生しないとする。今後、1年間の下級騎士見習い、その後1年間の魔術師団預かりを経て、才覚無しと判断された場合は、無能として勘当する。その際持っている身分、当てられていた予算全ては没収となる。……えぇと……、そうなのですか?」
自分でもどこから何を聞いていいのか分からず、国王陛下を伺いながら首を傾げた。
目の端でアンドリュー殿下が俯き震えている。
「かせ!」
「きゃっ……?!」
音を立てて立ち上がり、私からその婚約解消の書類をひったくり、次々に紙を見て表情を険しくしていく。
私の読み上げた内容以外にも、何十枚にも渡る紙の束には婚約してからのアンドリュー殿下の契約不履行、私への不当な扱い、品行下劣に関する内容と警告の日時が仔細に記載されているらしい。
アンドリュー殿下の顔から血の気が一気に引き、青を通り越して土気色になった顔色で書類を取り落とした。
「破り捨てても構わんが、お前の廃嫡は変わらぬ。書類の控えも当然ある。お主には15の時から言い聞かせてきた、そこから2年はまだ人目を一応は憚る可愛いものだったが……、リーンに対する罵詈雑言、罵倒、不適切な対応、全て許されると思うなよ、愚息めが!」
陛下の一喝に、アンドリュー殿下が思わず足を引いて逃げ越しになる。
座っている陛下の気迫に怯むくらいなら、まだ静かに警告を受けている間に態度を改めればよかったのに……、それか、私との婚約を解消したいと申し出てくれればよかったのに。
私の無駄な3年間は返ってこない。
この男が王子だから、ご兄弟が素晴らしいから、いつかは目が覚めてくれると、好みになろうと頑張ったけれど……。
なんだか、力が抜けてしまった。私も怒っていた……悲しんでいたはずなのに、陛下の怒りに当てられて、その気持ちも冷めた。
他の人が怒っている時に自分の気持ちは落ち着くのは、なんとなく経験がある。
アンドリュー殿下は決して頭が悪いわけではない。今も何か考えているはずだ。次に何を言うのだろうと、私の死んだ魚の目が少し生き返った。漁れたての魚くらいには。
「父う……」
「黙れ」
それを許さなかったのは、クレイ王太子殿下だった。
アンドリュー殿下が怪訝な声をあげる。私も、何故いきなり書面が破かれたのか分からない。
不安な顔で国王陛下を見ると、表情を一変させていた。
「これは転写式の用紙になっている。すまなかったな、リーン……、この婚約は王室有責の婚約破棄となる」
確かに、私もアンドリュー殿下も二枚目以降の紙は読んでいなかった。
私は余りにショックが強すぎて、アンドリュー殿下はもともと表面をなぞるようなお方だから、目を通していない。
しっかりとサインが転写された紙の束を改めて渡される。私は驚いた余り淡々とそれを声に出していた。
「……婚約時の契約に違反し、時刻の遵守、及び、婚約者への不当な扱い、暴言、罵倒は品性を疑って然るべき内容であった。詳細は次の用紙に証言と共に書き連ねてある。また、『婚前の浮気は王室の特性上認められる側室を持つ行為』に含まれず、再三の警告を無視した事から廃嫡とし万一の場合にも王位継承権は発生しないとする。今後、1年間の下級騎士見習い、その後1年間の魔術師団預かりを経て、才覚無しと判断された場合は、無能として勘当する。その際持っている身分、当てられていた予算全ては没収となる。……えぇと……、そうなのですか?」
自分でもどこから何を聞いていいのか分からず、国王陛下を伺いながら首を傾げた。
目の端でアンドリュー殿下が俯き震えている。
「かせ!」
「きゃっ……?!」
音を立てて立ち上がり、私からその婚約解消の書類をひったくり、次々に紙を見て表情を険しくしていく。
私の読み上げた内容以外にも、何十枚にも渡る紙の束には婚約してからのアンドリュー殿下の契約不履行、私への不当な扱い、品行下劣に関する内容と警告の日時が仔細に記載されているらしい。
アンドリュー殿下の顔から血の気が一気に引き、青を通り越して土気色になった顔色で書類を取り落とした。
「破り捨てても構わんが、お前の廃嫡は変わらぬ。書類の控えも当然ある。お主には15の時から言い聞かせてきた、そこから2年はまだ人目を一応は憚る可愛いものだったが……、リーンに対する罵詈雑言、罵倒、不適切な対応、全て許されると思うなよ、愚息めが!」
陛下の一喝に、アンドリュー殿下が思わず足を引いて逃げ越しになる。
座っている陛下の気迫に怯むくらいなら、まだ静かに警告を受けている間に態度を改めればよかったのに……、それか、私との婚約を解消したいと申し出てくれればよかったのに。
私の無駄な3年間は返ってこない。
この男が王子だから、ご兄弟が素晴らしいから、いつかは目が覚めてくれると、好みになろうと頑張ったけれど……。
なんだか、力が抜けてしまった。私も怒っていた……悲しんでいたはずなのに、陛下の怒りに当てられて、その気持ちも冷めた。
他の人が怒っている時に自分の気持ちは落ち着くのは、なんとなく経験がある。
アンドリュー殿下は決して頭が悪いわけではない。今も何か考えているはずだ。次に何を言うのだろうと、私の死んだ魚の目が少し生き返った。漁れたての魚くらいには。
「父う……」
「黙れ」
それを許さなかったのは、クレイ王太子殿下だった。
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