上 下
3 / 22

3 スパニッシュオムレツとガーリックチーズトースト、野菜のポタージュにあぶりベーコン

しおりを挟む
 皮をむいて芽をナイフの角で取ったジャガイモは、小さめの角切りにして水にさらしておく。鍋でやるとより良い。少しそのままおいておいて、ブロッコリーの茎と茂った蕾に分ける。

 茎と水にさらしたジャガイモを少量の水を入れたフライパンで茹でている間に、台所にほしてあるニンニクを2つ捥いで(2欠片では足りない)皮をむき、スライスする。すりおろしてオリーブ油に浸した方がいいのだが、ゴーダチーズの下に歯ごたえを出すなら断然スライスだ。

 くつくつと沸騰してきたところでスライスが終わったので、パンをパン用の包丁で切ってスライスガーリックを乗せる。フライパンを一旦下げて、そこに網をかけて次々にパンを並べた。かまどの火はちょうどとろ火だ。準備している間に、大鍋に朝の残りの牛乳を全部注ぐ。

 ジャガイモとブロッコリーの茎を煮た水も、その牛乳の中に一緒に注ぎ、軽く火が通ったジャガイモとブロッコリーは網に上げて水切りをしておく。

 卵をボールに全部割り入れて、塩コショウで味を調え、乾燥パセリを混ぜた後、もう一つのかまどに大きなフライパンを乗せてたっぷりのオリーブオイルを入れる。残しておいたスライスニンニクもだ。

 水切りした角切りのジャガイモとブロッコリーの茎を半分、じゃっと入れて油が跳ねなくなるまで水気を飛ばし、炒めて完全に火を通す。半分油で揚げるような具合で丁度いい。こんがりと焼けたパンを順に焼き目をその油に浸していって油を吸わせて、またとろ火の網の上に戻す。40人ともなると、網の上に戻した後に軽くあぶってさっと引き上げては次のパンを焼かなければいけない。

 忙しなくパンを半分焼き終わると、フライパンの中に残った油はちょうどいい量だ。その間に牛乳が沸騰しているので、皮をむいて洗ったとうもろこしを包丁でこそげるように鍋に入れ、ブロッコリーの葉の部分も入れて煮て溶かす。

 フライパンの中に下味をつけてた卵の半分を入れて、ジャガイモとブロッコリーの茎が少し見える位で火を通し、ちょうどいい具合になるまで新しいパンを焼いておく。

 牛乳とじゃがいもとブロッコリーの風味が溶けた水で煮あがった野菜を、両手で使う巨大なマッシャーで潰してポタージュ状にし、葉物野菜は一口大にちぎって少し塩辛いくらいのドレッシングを混ぜておく。運動している人にはちょうどいい塩梅だし、非番の人はパンと一緒に食べればちょうどいい。パンには、塩気はチーズしかない。

 フライパンと焼き網の作業を繰り返すうちに、野菜はいい具合に煮溶けて黄緑のポタージュになり、サラダも出来た。ポタージュを作った残り火でゴーダチーズを溶かしてトーストの上にかけていき、その間に空いた焼き網で厚切りのベーコンを人数分行き渡るように切ったものを炙っていく。

 いい匂いが立ち込める頃、訓練を終えた、または非番で昼の時間になった騎士たちがダイニング集まって来て、私の作った料理を各自進んでテーブルに並べていく。

 スパニッシュオムレツと、ガーリックチーズトースト、それに野菜のポタージュとあぶりベーコン、野菜サラダも、私がきてからは残す人が少ないと聞いた。

 お代わりの分ももちろんあるけれど、私はそれよりも先に自分の分をしっかり確保して、ダイニングにいっぱいになった騎士たちに笑顔で告げた。

「めしあがれ!」

「いただきます!!」

 男所帯の大合唱にも慣れたものだ。其処彼処でうまい、うまい、と言われながら食べる声を聞きながら、私は素早く自分の分のご飯を食べた。彼ら程食べないが、私にはこの後、もう一つ仕事がある。

 非番以外で動いて来た騎士たちのお代わり攻撃を、素早く捌くという仕事が。

 既に、焼き網の上には残しておいたパンとベーコンが待機しているし、ポタージュもまだ半分は残っている。

 これが、毎日3回ある、私の仕事。本当に『飯炊き女』だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

【完結】聖女の妊娠で王子と婚約破棄することになりました。私の場所だった王子の隣は聖女様のものに変わるそうです。

五月ふう
恋愛
「聖女が妊娠したから、私とは婚約破棄?!冗談じゃないわよ!!」 私は10歳の時から王子アトラスの婚約者だった。立派な王妃になるために、今までずっと頑張ってきたのだ。今更婚約破棄なんて、認められるわけないのに。 「残念だがもう決まったことさ。」 アトラスはもう私を見てはいなかった。 「けど、あの聖女って、元々貴方の愛人でしょうー??!絶対におかしいわ!!」 私は絶対に認めない。なぜ私が城を追い出され、あの女が王妃になるの? まさか"聖女"に王妃の座を奪われるなんて思わなかったわーー。

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました

山田ジギタリス
恋愛
女騎士マリーゴールドには幼馴染で姉弟のように育った婚約者のマックスが居た。  でも、彼は王子の婚約破棄劇の当事者の一人となってしまい、婚約は解消されてしまう。  そこで息子のやらかしは親の責任と婚約者の父親で騎士団長のアレックスに妻にしてくれと頼む。  長いこと男やもめで女っ気のなかったアレックスはぐいぐい来るマリーゴールドに推されっぱなしだけど、先輩騎士でもあるマリーゴールドの母親は一筋縄でいかなくて。 脳筋イノシシ娘の猪突猛進劇です、 「ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった」 「なりすましヒロインの娘」 と同じ世界です。 このお話は小説家になろうにも投稿しています

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。 そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。 そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。 「エレノア殿、迎えに来ました」 「はあ?」 それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。 果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?! これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

処理中です...