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15 夜の太陽と昼の月
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その日、伯爵以上の貴族が集められた。
王位継承権第一位を、パーシバル殿下から、全てを秘されてきたアルフォンス殿下に譲渡する宣誓をするためだ。
わたしはフォレスト侯爵家の娘ではなく、パーシバル殿下の元婚約者としてゆくすえを見届けるべく招待されていた。
末席で、王位継承権第一位の譲渡書類に殿下たちがサインするのを見守りました。
そしてふたりは硬く握手をする。
「愚かな弟ではありますが、今後はかならず兄上の役に立つ弟となります」
「必ず、お前にとっても住み良い国を作る王になるべく努力しよう」
ここには保守派も中立派も改革派もいますが、今はみないちように、その兄弟の姿に拍手を送りました。
金髪碧眼のパーシバル殿下は白に近いベージュのかすかに光沢のある服を、燻銀に深い青の瞳のアルフォンス殿下は紺に金糸の縫い取りをした服を着て。
太陽をそのまま映したようなパーシバル殿下は国王の影となり、月をそのままかたどったようなアルフォンス殿下は未来の国王として国の太陽となる。
夜の太陽と真昼の月のようなちぐはぐさ。だけれど、アルフォンス殿下にならばこの国を安心して任せられます。
まだ知り合って間もないですが、同じようにパーシバル殿下を支えるために頑張ってきた、いわば同盟者ですからね。私も家臣のひとりとして、今後はどの家に嫁いでも国のために頑張ります。
と、決意を新たにした所で末席も末席に立っていた私の方へ、アルフォンス殿下が近づいてきます。
陛下は訳知り顔で見つめていますし、パーシバル殿下もうなずいています。何に?!
そんな事を考えている間にアルフォンス殿下は私の前に跪き、わたしに対して首を垂れました。
待ってください、ここは貴方の自室ではなくて今は貴族の皆さん勢揃いのおおやけの場所ですよ。やめてください。
なんて王族の方に言えるわけないじゃないですか! 確信犯め!
「ナターシャ・フォレスト侯爵令嬢。愚弟がおこなったことを考えればこの申し出がどれだけおこがましいかは分かっている。しかし、私にはこの国の未来の国母としてあなた以上にふさわしい女性を見つけられるとは思えない。……私はずっと影に隠れて生きてきた。婚約とは言わない。まずは、交際から初めてはもらえないだろうか?」
いえ、お断りします。
なんって言えると思ってるんですか?! バカはバカで腹が立ちますけど、賢いのは賢いので腹が立ちますね。わたしの拒否権なんて拒否権のきの字もありません。
それを顔に出すようなわたしではありません。そして何より、いまいましいのは……、いままでわたしは過密スケジュールに追われて感じることのなかった恋心というものを、アルフォンス殿下にいだいているということ。
「よろこんでお受けいたします、アルフォンス殿下」
彼は顔を上げて立ち上がると、わたしの手を取って、二度めの誓いの口付けを手の甲に落としてくれました。
わたしはどうやら、どうあっても王子の婚約者になるようです。
王位継承権第一位を、パーシバル殿下から、全てを秘されてきたアルフォンス殿下に譲渡する宣誓をするためだ。
わたしはフォレスト侯爵家の娘ではなく、パーシバル殿下の元婚約者としてゆくすえを見届けるべく招待されていた。
末席で、王位継承権第一位の譲渡書類に殿下たちがサインするのを見守りました。
そしてふたりは硬く握手をする。
「愚かな弟ではありますが、今後はかならず兄上の役に立つ弟となります」
「必ず、お前にとっても住み良い国を作る王になるべく努力しよう」
ここには保守派も中立派も改革派もいますが、今はみないちように、その兄弟の姿に拍手を送りました。
金髪碧眼のパーシバル殿下は白に近いベージュのかすかに光沢のある服を、燻銀に深い青の瞳のアルフォンス殿下は紺に金糸の縫い取りをした服を着て。
太陽をそのまま映したようなパーシバル殿下は国王の影となり、月をそのままかたどったようなアルフォンス殿下は未来の国王として国の太陽となる。
夜の太陽と真昼の月のようなちぐはぐさ。だけれど、アルフォンス殿下にならばこの国を安心して任せられます。
まだ知り合って間もないですが、同じようにパーシバル殿下を支えるために頑張ってきた、いわば同盟者ですからね。私も家臣のひとりとして、今後はどの家に嫁いでも国のために頑張ります。
と、決意を新たにした所で末席も末席に立っていた私の方へ、アルフォンス殿下が近づいてきます。
陛下は訳知り顔で見つめていますし、パーシバル殿下もうなずいています。何に?!
そんな事を考えている間にアルフォンス殿下は私の前に跪き、わたしに対して首を垂れました。
待ってください、ここは貴方の自室ではなくて今は貴族の皆さん勢揃いのおおやけの場所ですよ。やめてください。
なんて王族の方に言えるわけないじゃないですか! 確信犯め!
「ナターシャ・フォレスト侯爵令嬢。愚弟がおこなったことを考えればこの申し出がどれだけおこがましいかは分かっている。しかし、私にはこの国の未来の国母としてあなた以上にふさわしい女性を見つけられるとは思えない。……私はずっと影に隠れて生きてきた。婚約とは言わない。まずは、交際から初めてはもらえないだろうか?」
いえ、お断りします。
なんって言えると思ってるんですか?! バカはバカで腹が立ちますけど、賢いのは賢いので腹が立ちますね。わたしの拒否権なんて拒否権のきの字もありません。
それを顔に出すようなわたしではありません。そして何より、いまいましいのは……、いままでわたしは過密スケジュールに追われて感じることのなかった恋心というものを、アルフォンス殿下にいだいているということ。
「よろこんでお受けいたします、アルフォンス殿下」
彼は顔を上げて立ち上がると、わたしの手を取って、二度めの誓いの口付けを手の甲に落としてくれました。
わたしはどうやら、どうあっても王子の婚約者になるようです。
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