【完結】婚約破棄をされたわたしは万能第一王子に溺愛されるようです

葉桜鹿乃

文字の大きさ
上 下
10 / 20

10 スイートポイズン……いや洒落にならん

しおりを挟む
「なんの御用でしょうか、フィーナ嬢」

 わたしの声は氷のように硬く冷たかったはずですが、彼女はわたしを見るなりぱっと笑顔を顔に浮かべ、次いでもうしわけなさそうに頭を下げられました。

「あのときは、ナターシャ様に大変なご無礼をはたらいてしまい、もうしわけございませんでした」

 …………えぇと、すみません。この方は頭が大丈夫ですか?

 もはやバカをこえてしまったとしか思えないのですが、わたしは二の句が告げません。

 学園では基本的に身分は関係ないということになっています。ですので、わたしも侮辱罪をのみこんで立ち去り、王家有責の婚約破棄で話をすませました。でないとパーシバル殿下のお立場が悪くなるので。どこまでもわたしは滅私奉公したのです。

 それを、いまさら、ことがすべて済んでから、そのうえ婚約を認められなかったからと、わたしに謝りに、きた?

 それで済むとお思いですか、バカも休み休み言ってくださいませ、というのを忍の一文字で耐え、深呼吸します。

「バカも休み休み言ってくださいませ」

 はい、これしか出ませんでしたね。

 泣きそうになってますが、そんなの嘘泣きなのは女のわたしにはお見通しですよ。

 彼女は手荷物の紙袋をわたしにおそるおそるさしだします。

 おぉ、これは……!

 いま王都で一番人気のポワール・ヘルメのマカロン! 貴族だろうと並ばなければ買えないという超人気店!

 しかも箱はそうとう大きいです。ふふふ、これは中身にも期待できますね。

 と、いうのを一切表情には出さずに、しかたない、というていで受け取ります。

「ナターシャ」

 そこに、わたしの後ろから手荷物を覗き込むようにアルフォンス殿下がお見えになりました。

 び、びっくりしたー! 心臓止まるかとおもいました!

 アルフォンス殿下の美丈夫っぷりに、謝罪にきたフィーナ嬢もストロベリーブロンドとそろいの色の瞳をぽうっとさせています。あわれパーシバル殿下。

「お菓子? 食べてみていい?」

「あ……」

 フィーナ嬢が何か言いかけ、その隙にアルフォンス殿下は箱を開けてマカロンを一口かじり、ご自身のハンカチに吐き出されました。

『致死量の毒でも吐き出せば』

 ふと、あの言葉がよみがえります。

 フィーナ嬢は顔面蒼白でガタガタと震えています。

「このお菓子、悪くなっているようだ。食べないほうがいいよ、ナターシャ」

「そ、それではわたくしはこれで!」

 わたしが何か言う前に、フィーナ嬢は馬車に転げるように乗り込み去っていかれました。

 さすがのわたしもサァッと身体中の血の気が引いて玄関にへたりこんでしまいます。

 わたしがお菓子をバカ食いするのは、学園でもストレスが溜まればやっていた事なので周知の事実です。

 それを知っていて、フィーナ嬢はわたしに毒をもった……。まして、家族も食べていたかもしれない。アルフォンス殿下がいなければ、わたしは……。

 わたしは、フォレスト侯爵家は、殺されかけた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

神様、来世では雑草に生まれたいのです

春先 あみ
恋愛
公爵令嬢クリスティーナは、婚約者のディスラン王子に婚約破棄を言い渡された。 これは愚かな王子が勝手に破滅する身勝手な物語。 ………… リハビリに書きました。一話完結です 誰も幸せにならない話なのでご注意ください。

婚約破棄されたら、国が滅びかけました

Nau
恋愛
「貴様には失望した!私は、シャルロッテ・グリースベルトと婚約破棄をする!そしてここにいる私の愛おしい、マリーネ・スルベリオと婚約をする!」 学園の卒業パーティーの日、婚約者の王子から突然婚約破棄された。目の前で繰り広げられている茶番に溜息を吐きつつ、無罪だと言うと王子の取り巻きで魔術師団の団長の次に実力があり天才と言われる男子生徒と騎士団長の息子にに攻撃されてしまう。絶体絶命の中、彼女を救ったのは…?

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】「幼馴染が皇子様になって迎えに来てくれた」

まほりろ
恋愛
腹違いの妹を長年に渡りいじめていた罪に問われた私は、第一王子に婚約破棄され、侯爵令嬢の身分を剥奪され、塔の最上階に閉じ込められていた。 私が腹違いの妹のマダリンをいじめたという事実はない。  私が断罪され兵士に取り押さえられたときマダリンは、第一王子のワルデマー殿下に抱きしめられにやにやと笑っていた。 私は妹にはめられたのだ。 牢屋の中で絶望していた私の前に現れたのは、幼い頃私に使えていた執事見習いのレイだった。 「迎えに来ましたよ、メリセントお嬢様」 そう言って、彼はニッコリとほほ笑んだ ※他のサイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

処理中です...