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13 心の中に不法侵入(※グラード視点)
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「一体、何をどうやったらこうなるんだ……」
ひねくれている、やさぐれている、とは思ったが、強い女だと思っていた。
しかし、他人と関わる事に関しての耐性があまりにも無さすぎる。これではとてもじゃないが連れて帰る事はできない。
ルシアナ嬢の抱えている過去は分からないが、とにかくベッドに寝かせ、苦し気にしている額の汗を備え付けのタオルを濡らして拭いてやる。
彼女の事を許容はできる。助ける事もできる。だが、彼女のソレは相当根深いようだ。一体彼女の過去に何があり、何でここまで拗れてしまったのだろうか。
踏み込まれる事を怖い、と思っているようには見えなかった。どちらかといえば、自分の見た目を褒めない自分を受け容れていたように思う。喜んでいたとも。
「あぁ、くそ……、仕方ねぇな」
明らかに体の異常じゃない。精神の異常だ。これを解決するには、自分が掛けられているような精神に作用する『魔法』に頼るしかない。
この国には魔導具はあっても魔法使いはそこまでいない。小さい国だ、下手な武力を持つことは危険に直結する。幸い、どの国もこの国を攻めこもうとはしていない。その旨味がないからだ。俺の国とは地続きだが、他は三方山に囲まれている。
そのお陰で平和に暮らしている。だから俺が命の心配をせずにこの国に留学に来れた。俺の国はでかい国だから、それこそ攻めたい国はその辺にゴロゴロいる。港も持っていて土地も広い、肥沃な平野に、魔石のとれる鉱山。
この小さな国はある意味足止めにもなっている。この国を落とそうとすれば俺の国が出張ってくるし、そこまでした攻め落とした後に俺の国に追撃をかけるような兵力は……残念ながらどの国にもない。
存在しているだけで俺の国を守っている……だから、この国は友好国であり、第一王子が留学してこれる国だ。
その俺が嫁をこの国からもらおうとするのは、何もおかしなことはない。だからこそ、まぁ、本気で連れ帰ろうと思っていたが……先に、ルシアナ嬢の心のわだかまりをどうにかしないと何の話も進められない。
魔法……この国では使えなくて、俺の国は魔石の鉱山のお陰か使える者が多い奇跡。
俺にも使える。弟に劣るとはいえ、そんなのはあの化け物がおかしいだけだ。
少しだけ躊躇ったが、俺はルシアナ嬢を気に入っている。少なくとも、この国では一番に。
「う……、く……!」
「待ってろ、今、楽にしてやるから」
うだうだ考えている間にもルシアナ嬢は苦し気にうめき声をあげる。
心的負荷でぶっ倒れるなんて、という思いはあるが、そこは他人の目には普通は見えない所だ。
そっと額に掌をあてる。
「わりぃな、ちょっと入るぞ……」
返事のないその言葉と同時に、青白い光がルシアナに当てた掌から漏れだした。
そのまま俺は、ベッドの上に上体を倒した。心だけ、彼女の心の中に入った証拠だった。
ひねくれている、やさぐれている、とは思ったが、強い女だと思っていた。
しかし、他人と関わる事に関しての耐性があまりにも無さすぎる。これではとてもじゃないが連れて帰る事はできない。
ルシアナ嬢の抱えている過去は分からないが、とにかくベッドに寝かせ、苦し気にしている額の汗を備え付けのタオルを濡らして拭いてやる。
彼女の事を許容はできる。助ける事もできる。だが、彼女のソレは相当根深いようだ。一体彼女の過去に何があり、何でここまで拗れてしまったのだろうか。
踏み込まれる事を怖い、と思っているようには見えなかった。どちらかといえば、自分の見た目を褒めない自分を受け容れていたように思う。喜んでいたとも。
「あぁ、くそ……、仕方ねぇな」
明らかに体の異常じゃない。精神の異常だ。これを解決するには、自分が掛けられているような精神に作用する『魔法』に頼るしかない。
この国には魔導具はあっても魔法使いはそこまでいない。小さい国だ、下手な武力を持つことは危険に直結する。幸い、どの国もこの国を攻めこもうとはしていない。その旨味がないからだ。俺の国とは地続きだが、他は三方山に囲まれている。
そのお陰で平和に暮らしている。だから俺が命の心配をせずにこの国に留学に来れた。俺の国はでかい国だから、それこそ攻めたい国はその辺にゴロゴロいる。港も持っていて土地も広い、肥沃な平野に、魔石のとれる鉱山。
この小さな国はある意味足止めにもなっている。この国を落とそうとすれば俺の国が出張ってくるし、そこまでした攻め落とした後に俺の国に追撃をかけるような兵力は……残念ながらどの国にもない。
存在しているだけで俺の国を守っている……だから、この国は友好国であり、第一王子が留学してこれる国だ。
その俺が嫁をこの国からもらおうとするのは、何もおかしなことはない。だからこそ、まぁ、本気で連れ帰ろうと思っていたが……先に、ルシアナ嬢の心のわだかまりをどうにかしないと何の話も進められない。
魔法……この国では使えなくて、俺の国は魔石の鉱山のお陰か使える者が多い奇跡。
俺にも使える。弟に劣るとはいえ、そんなのはあの化け物がおかしいだけだ。
少しだけ躊躇ったが、俺はルシアナ嬢を気に入っている。少なくとも、この国では一番に。
「う……、く……!」
「待ってろ、今、楽にしてやるから」
うだうだ考えている間にもルシアナ嬢は苦し気にうめき声をあげる。
心的負荷でぶっ倒れるなんて、という思いはあるが、そこは他人の目には普通は見えない所だ。
そっと額に掌をあてる。
「わりぃな、ちょっと入るぞ……」
返事のないその言葉と同時に、青白い光がルシアナに当てた掌から漏れだした。
そのまま俺は、ベッドの上に上体を倒した。心だけ、彼女の心の中に入った証拠だった。
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