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20 何故か私の親友と婚約者が独占しようとしてくるのですが
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「あら、バロック様ご機嫌うるわしゅうございます。……で、何故フリージア様のおうちに?」
「おや、ジャスミン嬢、ごきげんよう。何故も何も、婚約者の顔を見に来ただけだけれど?」
我が家のエントランスで、天使二人が何やら言い争いをしている。いや、声も論調も穏やかなのだが、内容が非常に穏やかでない。並んでいるところを見るのは絵になるのだけれど、最近はいつもこうだ。
二人とも、私の予定を聞かずに押しかけて来るようになった。大体は先に、この日は外せない、という事は言っているので、迷惑ということはないのだけれど、鉢合わせになるとこの調子なので、少し居心地が悪い。
あの後、ローラン様がジャスミン様に婚約を申し込み、晴れて二人は婚約者同士となった。
その後に知ったのだけれど、ローラン様のお屋敷とバロック様のお屋敷は隣同士で……つまり、順調にいけば、私とジャスミン様もお隣同士の関係になるようだ。
嬉しいけれど、今のこのちょっと剣呑な光景が日常生活になるかもしれないと思うと、少しだけ恐ろしい。
「あ、あの、二人とも、よかったらお茶でもどうかしら? ジャスミン様にはローラン様との様子も窺いたいわ」
「もちろん喜んで。……バロック様、もうフリージア様のご尊顔は拝見なさったでしょう?」
女同士の会話を邪魔するつもり? というばかりのジャスミン様の独占欲は、留まるところを知らないようだ。そう、お互い婚約者ができてからというもの、ジャスミン様は日々、私への信仰心を大きくしていっている。本当に独占しようとしてくるので、バロック様とのデートの日は濁してあからかじめジャスミン様にお伝えしている位だ。
バロック様はバロック様で、『悪い男』ぶりを発揮する。ジャスミン様の私への独占欲を知っていて、あえて何もない日にいきなりやって来ては、鉢合わせになるのを楽しんでいる節がある。
私の反応を見て揶揄っている時もあるくらいだ。私を玩具にしないで欲しい。
「先に来ていて誘われたのは私もだよ。私からも、ローランから耳にタコができる程聞かされているジャスミン嬢とののろけ話をフリージアにしなければならないだろう。きっと偏りが出るだろうからね、ローランが浮かばれない」
亡くなっていないのに浮かばれないとはいかがなものか、と思うのだけれど、ジャスミン様は確実にローラン様より私に会いに来ている頻度の方が高い。もしかしたら、一緒にディナーや観劇など、夜に予定を入れているのかもしれないけれど、それにしたって朝から元気に遊びにくる。
「そ、そう、そうね。ローラン様のお話を皆でしましょう! ね!」
私が苦し紛れにそういうと、天使二人がこちらを見て、彫刻のように美しい作り笑いをしている。
「何故? ローランの話が聞きたいのかい? 私よりローランの方がよくなった?」
「ジャスミン様? ローラン様はとてもいい人ですけれど、何もいない時にまで気を遣って話題にしなくてもいいんですのよ。それよりも、女性同士、流行の話でもしましょう。今度の声楽会のドレスの話もしたいですわ」
「声楽会? ねぇ、フリージア。私はまだ、その招待を受けていないと記憶しているんだけれど……」
墓穴を掘ったように思う。
本当に見目が美しくて、お互い婚約者と親友が居るのに、何故この2人は私を巡って争うのだろうか。ローラン様は完全にとばっちりだ。本当にごめんなさい。
何故か親友と婚約者が私を独占しようとしてくるのですが、これは、もしかして未来永劫、ずっとこうなのかしら。
だとしたら、どこかでローラン様も巻き込まなければ。ローラン様はジャスミン様ファーストを一生崩さないだろうから、その様子を私だって見たいし、時にはローラン様とジャスミン様の取り合いをしたい。
バロック様が、その時私を掻っ攫う気がしなくもないけれど。
「おや、ジャスミン嬢、ごきげんよう。何故も何も、婚約者の顔を見に来ただけだけれど?」
我が家のエントランスで、天使二人が何やら言い争いをしている。いや、声も論調も穏やかなのだが、内容が非常に穏やかでない。並んでいるところを見るのは絵になるのだけれど、最近はいつもこうだ。
二人とも、私の予定を聞かずに押しかけて来るようになった。大体は先に、この日は外せない、という事は言っているので、迷惑ということはないのだけれど、鉢合わせになるとこの調子なので、少し居心地が悪い。
あの後、ローラン様がジャスミン様に婚約を申し込み、晴れて二人は婚約者同士となった。
その後に知ったのだけれど、ローラン様のお屋敷とバロック様のお屋敷は隣同士で……つまり、順調にいけば、私とジャスミン様もお隣同士の関係になるようだ。
嬉しいけれど、今のこのちょっと剣呑な光景が日常生活になるかもしれないと思うと、少しだけ恐ろしい。
「あ、あの、二人とも、よかったらお茶でもどうかしら? ジャスミン様にはローラン様との様子も窺いたいわ」
「もちろん喜んで。……バロック様、もうフリージア様のご尊顔は拝見なさったでしょう?」
女同士の会話を邪魔するつもり? というばかりのジャスミン様の独占欲は、留まるところを知らないようだ。そう、お互い婚約者ができてからというもの、ジャスミン様は日々、私への信仰心を大きくしていっている。本当に独占しようとしてくるので、バロック様とのデートの日は濁してあからかじめジャスミン様にお伝えしている位だ。
バロック様はバロック様で、『悪い男』ぶりを発揮する。ジャスミン様の私への独占欲を知っていて、あえて何もない日にいきなりやって来ては、鉢合わせになるのを楽しんでいる節がある。
私の反応を見て揶揄っている時もあるくらいだ。私を玩具にしないで欲しい。
「先に来ていて誘われたのは私もだよ。私からも、ローランから耳にタコができる程聞かされているジャスミン嬢とののろけ話をフリージアにしなければならないだろう。きっと偏りが出るだろうからね、ローランが浮かばれない」
亡くなっていないのに浮かばれないとはいかがなものか、と思うのだけれど、ジャスミン様は確実にローラン様より私に会いに来ている頻度の方が高い。もしかしたら、一緒にディナーや観劇など、夜に予定を入れているのかもしれないけれど、それにしたって朝から元気に遊びにくる。
「そ、そう、そうね。ローラン様のお話を皆でしましょう! ね!」
私が苦し紛れにそういうと、天使二人がこちらを見て、彫刻のように美しい作り笑いをしている。
「何故? ローランの話が聞きたいのかい? 私よりローランの方がよくなった?」
「ジャスミン様? ローラン様はとてもいい人ですけれど、何もいない時にまで気を遣って話題にしなくてもいいんですのよ。それよりも、女性同士、流行の話でもしましょう。今度の声楽会のドレスの話もしたいですわ」
「声楽会? ねぇ、フリージア。私はまだ、その招待を受けていないと記憶しているんだけれど……」
墓穴を掘ったように思う。
本当に見目が美しくて、お互い婚約者と親友が居るのに、何故この2人は私を巡って争うのだろうか。ローラン様は完全にとばっちりだ。本当にごめんなさい。
何故か親友と婚約者が私を独占しようとしてくるのですが、これは、もしかして未来永劫、ずっとこうなのかしら。
だとしたら、どこかでローラン様も巻き込まなければ。ローラン様はジャスミン様ファーストを一生崩さないだろうから、その様子を私だって見たいし、時にはローラン様とジャスミン様の取り合いをしたい。
バロック様が、その時私を掻っ攫う気がしなくもないけれど。
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