【完結】何故か私を独占崇拝している美人の幼馴染を掻い潜って婚約したいのですが

葉桜鹿乃

文字の大きさ
上 下
17 / 20

17 最近、少し、調子がおかしい(※ジャスミン視点)

しおりを挟む
 ローラン様が帰られてから、私は風邪をこじらせて、もう暫く聞いていないフリージア様の声に思いを馳せた。

 私はフリージア様の声も大好きだけれど、話し方、仕草、穏やかな性格、見た目も、とても好き。

 まるで自分の才能になんて興味が無くて、少し世間知らずで(それは多分に私が邪魔してきたからだけれど)、でも頭は悪くない。聡い方だと思う。

 そして、思ったよりも、フリージア様は私のことを見ていたし、感情の機微には疎いようだった。

 もう2週間は会っていない。とても寂しいけれど、ローラン様が居てくれた間は、それを忘れていた。

 寂しがる必要なんてないのかもしれない。私に、ローラン様が想いを寄せてくださっているのは、もう最初から分かっていたことでもあるし。

 それを無碍にしてきた自分が少し嫌い。フリージア様のことが大好きだからと言って、私は、私に向けられる感情を無碍にしていい理由にはならない。

 今日、一生懸命私が喜ぶような話をしてくれたローラン様は、本当に優しくて、いい人だと思う。

 フリージア様だけじゃない、私の心の中にも他の人が居るスペースができてきた。

 ローラン様はとてもいい人だ。……私は、絆されているのかもしれない。バロック様を見ても感じるのは、フリージア様を傷つけないか、という気持ちなのに、ローラン様と一緒に居る時に感じたのは、安心感。

 もっと一緒に居たい、という気持ちが、私の中にもある。

 でも、一番一緒にいたくて、ずっと側で見守っていたいのはフリージア様。私の中で、彼女は本当に、一番大事なところにいる。

 でも、バロック様はずっと見ていたけれど、いい人だ。ローラン様もバロック様も、素敵な方だ。そして、フリージア様の2番目のお友達になったバロック様が、どれだけフリージア様に対して優しく接していたかを知っている。

 だから誤解を聞いた時には、少しショックだった。フリージア様に誤解させるようなことをしてしまった自分も……少しだけ鈍い、フリージア様のことも、ちょっとだけ嫌だと思ってしまった。

(こんなの、私らしくない)

 本当にそう思う。こんなの私らしくない。フリージア様のことで嫌いな部分がある私なんて、私らしくない。

 けれど、変化した。私たちは社交界に飛び込み、他の人との親交も増えた。それで見えて来るものがあるのは、おかしなことじゃない。

 どうかフリージア様が、バロック様のお気持ちを受け容れてくれますように、と思わずにはいられなかった。

 でも……、それでも、私が一番の親友で、一番フリージア様の幸せを願っている。これはきっと、矛盾しない感情のはずだ。

 あんまり考え込みたくない。はやく体力を戻して、早くフリージア様に会いに行きたい。

 喜びでいっぱいの笑顔で、声で、仕草で迎え入れられたら、私はそれが一番幸せだと思う。

 それとは別に、ローラン様にも……ちゃんと向き合わなければ。

 フリージア様が一番大事な私でも、好きでいてくれますか、と、もし告白されるようなことがあれば聞いてみよう。

 考えることがいっぱいだ。

 疲れてしまった私は、早めにベッドに入ることにした。ちゃんとご飯も食べて、元気をつけて、たくさん寝て。

 ちょっと変な調子の自分を、早く、元に戻したかった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな
恋愛
 公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。  当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。  どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

愛するひとの幸せのためなら、涙を隠して身を引いてみせる。それが女というものでございます。殿下、後生ですから私のことを忘れないでくださいませ。

石河 翠
恋愛
プリムローズは、卒業を控えた第二王子ジョシュアに学園の七不思議について尋ねられた。 七不思議には恋愛成就のお呪い的なものも含まれている。きっと好きなひとに告白するつもりなのだ。そう推測したプリムローズは、涙を隠し調査への協力を申し出た。 しかし彼が本当に調べたかったのは、卒業パーティーで王族が婚約を破棄する理由だった。断罪劇はやり返され必ず元サヤにおさまるのに、繰り返される茶番。 実は恒例の断罪劇には、とある真実が隠されていて……。 愛するひとの幸せを望み生贄になることを笑って受け入れたヒロインと、ヒロインのために途絶えた魔術を復活させた一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25663244)をお借りしております。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?

石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。 ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。 彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。 八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

処理中です...