15 / 23
15 邪魔なサリバン(※???視点)
しおりを挟む
気に入らない。前代も、前々代の当主の代から気に入らないと思っていた。あのサリバン辺境伯家。国境沿いの金鉱、鉱山を独占しているあの家が。本来なら我が家に恩恵があってしかるべきなのに、山脈を丸ごと領地としているサリバンが気に食わない。
流れの裏町の男を選び、貴族に仕立ててパーティーに参加させた。女に性を売って生計を立てている男だ。生娘にそれを教え込むのも、避妊の仕方も、避妊のための煎じ薬も持たせ、何もかもローズに対してうまくやってくれた。
我が家で催したパーティーだが、その男はもう金を払って放逐した。我が家を探っても何も出てこない。
噂も流した。ローズは誘えば誰にでも股を開くと。婚約者の決まっていない、閨教育を施された貴族の子息どもは、あのローズの美貌を一晩でも手中にできると聞いて群がった。
そうだ、事実が先ではない。噂が先にあって、ローズは落ちた。
なのにモリガンの小僧めが……!
落ちた花は朽ちていくだけ、そのまま家名ごと落ちてくれればよかったものを、モリガンの所の次男が噂をものともせずにローズに交際を申し込んだ。
モリガン侯爵家は王立騎士団の家系。迂闊に手を出せば武力行使に訴えられる事もあれば、騎士団としての忠誠心の厚さもあるからこそ、王家にまで目をつけられる事もある。
一度落ちた花の評判は、花瓶にでも飾られたかのように少しずつ戻ってきている。ローズはただのあばずれだと思っている男は何人もいるだろう。それでも手を出せないのは、モリガンが清い交際をローズと続けている所にある。
こうなると、最初に避妊の仕方まで教えたのは早計だったかもしれない。長く奔放なままでいてくれればと思ったが、いっそどこの誰の子とも分からない子供を身篭らせればよかった。
口惜しい。成人したばかりの小娘、姉の方は隙が無かったが、妹の方は籠絡しやすかった。せっかくうまくいきかけていた、あのままいけばサリバンの家は爵位降格は間違いなく、隣接する我が家にあの鉱脈が任されるはずだったのに。
代々の恨みは深い。隣で金が採れるというのに、我が領土では穀物しかとれぬ。出土される金から考えて微々たる量で食糧を買い付けるサリバンめ!
辺境伯家は隣国との守りの要。領にいる間は手出しできなんだが、王都にいれば話は違う。
そうだ、うまくいっていた。全てモリガンの小僧が現れるまで。モリガンの小僧のせいで、ローズはまた美しい花としての価値を取り戻し始めている。
一生悪評はついてまわるだろう。しかし、それに負けない強さ……社交の場での強さは、ローズの母譲りだろうか。
元は隣国の王家に連なる血を持つサリバンの妻にかかれば、皇太后や王妃もある程度の助け舟を出す事も考えられる。
やはり身篭らせておけばよかった。子供というモノがあれば、永遠にローズは、サリバンは、地に落ちたままだったろうに。
口惜しい……。サリバンも、モリガンも気に喰わん!
必ずもう一度評判を、信頼を、落としてやる。
……そう、建国祭がいい。爵位を持つ者なら必ず招かれる、王侯貴族の衆人環視のもと、ローズに、サリバンに、今一度汚泥を塗ってやる。
そして、先祖代々の願い、あの鉱脈を手に入れてやる……。
流れの裏町の男を選び、貴族に仕立ててパーティーに参加させた。女に性を売って生計を立てている男だ。生娘にそれを教え込むのも、避妊の仕方も、避妊のための煎じ薬も持たせ、何もかもローズに対してうまくやってくれた。
我が家で催したパーティーだが、その男はもう金を払って放逐した。我が家を探っても何も出てこない。
噂も流した。ローズは誘えば誰にでも股を開くと。婚約者の決まっていない、閨教育を施された貴族の子息どもは、あのローズの美貌を一晩でも手中にできると聞いて群がった。
そうだ、事実が先ではない。噂が先にあって、ローズは落ちた。
なのにモリガンの小僧めが……!
落ちた花は朽ちていくだけ、そのまま家名ごと落ちてくれればよかったものを、モリガンの所の次男が噂をものともせずにローズに交際を申し込んだ。
モリガン侯爵家は王立騎士団の家系。迂闊に手を出せば武力行使に訴えられる事もあれば、騎士団としての忠誠心の厚さもあるからこそ、王家にまで目をつけられる事もある。
一度落ちた花の評判は、花瓶にでも飾られたかのように少しずつ戻ってきている。ローズはただのあばずれだと思っている男は何人もいるだろう。それでも手を出せないのは、モリガンが清い交際をローズと続けている所にある。
こうなると、最初に避妊の仕方まで教えたのは早計だったかもしれない。長く奔放なままでいてくれればと思ったが、いっそどこの誰の子とも分からない子供を身篭らせればよかった。
口惜しい。成人したばかりの小娘、姉の方は隙が無かったが、妹の方は籠絡しやすかった。せっかくうまくいきかけていた、あのままいけばサリバンの家は爵位降格は間違いなく、隣接する我が家にあの鉱脈が任されるはずだったのに。
代々の恨みは深い。隣で金が採れるというのに、我が領土では穀物しかとれぬ。出土される金から考えて微々たる量で食糧を買い付けるサリバンめ!
辺境伯家は隣国との守りの要。領にいる間は手出しできなんだが、王都にいれば話は違う。
そうだ、うまくいっていた。全てモリガンの小僧が現れるまで。モリガンの小僧のせいで、ローズはまた美しい花としての価値を取り戻し始めている。
一生悪評はついてまわるだろう。しかし、それに負けない強さ……社交の場での強さは、ローズの母譲りだろうか。
元は隣国の王家に連なる血を持つサリバンの妻にかかれば、皇太后や王妃もある程度の助け舟を出す事も考えられる。
やはり身篭らせておけばよかった。子供というモノがあれば、永遠にローズは、サリバンは、地に落ちたままだったろうに。
口惜しい……。サリバンも、モリガンも気に喰わん!
必ずもう一度評判を、信頼を、落としてやる。
……そう、建国祭がいい。爵位を持つ者なら必ず招かれる、王侯貴族の衆人環視のもと、ローズに、サリバンに、今一度汚泥を塗ってやる。
そして、先祖代々の願い、あの鉱脈を手に入れてやる……。
41
お気に入りに追加
2,530
あなたにおすすめの小説
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
(完)大好きなお姉様、なぜ?ー夫も子供も奪われた私
青空一夏
恋愛
妹が大嫌いな姉が仕組んだ身勝手な計画にまんまと引っかかった妹の不幸な結婚生活からの恋物語。ハッピーエンド保証。
中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。魔法のある世界。
【完結・全3話】不細工だと捨てられましたが、貴方の代わりに呪いを受けていました。もう代わりは辞めます。呪いの処理はご自身で!
酒本 アズサ
恋愛
「お前のような不細工な婚約者がいるなんて恥ずかしいんだよ。今頃婚約破棄の書状がお前の家に届いているだろうさ」
年頃の男女が集められた王家主催のお茶会でそう言ったのは、幼い頃からの婚約者セザール様。
確かに私は見た目がよくない、血色は悪く、肌も髪もかさついている上、目も落ちくぼんでみっともない。
だけどこれはあの日呪われたセザール様を助けたい一心で、身代わりになる魔導具を使った結果なのに。
当時は私に申し訳なさそうにしながらも感謝していたのに、時と共に忘れてしまわれたのですね。
結局婚約破棄されてしまった私は、抱き続けていた恋心と共に身代わりの魔導具も捨てます。
当然呪いは本来の標的に向かいますからね?
日に日に本来の美しさを取り戻す私とは対照的に、セザール様は……。
恩を忘れた愚かな婚約者には同情しません!
家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。
両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。
一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。
更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる