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3 社交界の華(※ローズ視点)
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最高の気分だわ。毎日のようにどこかの館で開かれる夜会、それにあわせてあつらえる幾つものドレスや装飾品。
王都に来て分かったの、私はとっても綺麗だって。あんな辺境の……田舎で終わるような人間じゃないって。私を見た殿方はみんなそう言って私を望むわ。
でも、焦る事はない。なんせ3年も王都にいるのだから。
あぁ、辺境伯領の街とは違う華やかな王都の貴族街。夜、篝火に照らされる王城の荘厳さ。私は絶対にここで一生暮らすの、初めて王都に着いた夜に決めた。ここで私は素敵な方と……そうね、公爵家か侯爵家の誰かと出会って、そこに嫁入りするのよ。
お父様は少しケチだから、一度着たドレスでも、少しずつ身分の低い方が催す夜会に、多少の手直しを加えて着ていく、という約束はしたけれど。それでも私は何十着というドレスに何組みもの宝飾品を与えられて、社交シーズンの夜はせっせとパーティーに参加したわ。
未だ良い方とは巡り会えていないけれど、成人したからお酒の味も覚えたし……これを聞いたらお父様は卒倒するでしょうけれど、殿方との交わりも覚えたわ。
夜会の主催をしている家の殿方を視線で誘えば、私をこっそり自室に招いてくださるのだもの。最初は戸惑ったわ、だけれどあの快楽は……ふふ、お姉様はまだ知らないのでしょうね。殿方に愛されて女は綺麗になっていく事を。
社交シーズンが過ぎると、私は令嬢達の輪の中に入ってお茶会に興じる。この方々とも仲良くしておかなければね。やがて私は王都で暮らすのだから、お友達は必要よ。活発な社交活動をする、それこそが良い夫人というものでしょう?
街中を散策し、次の社交シーズンに流行るドレスを調べて作り、宝飾品の流行を調べてデザインに拘って作っていく。お茶会で出遅れないように流行りのスイーツのお店も、カフェも、チェックしては手土産に持っていく。
お父様は社交シーズンが終わるたびに領地に帰られるし、お母様も着いて行く。その時にお姉様に流行りの過ぎたドレスや宝飾品を持って行ってもらうの。お姉様は私のおさがりを身に付けていればいいのよ。近隣の領主様方とのパーティーにはそれで充分でしょう?
そして、お父様とお母様が居ない間、私は沢山の殿方と恋に落ちたわ。時には何人もの方と同時に……婚約してないのだから、今のうちに沢山、未来の旦那様を喜ばせる手練手管を学んでおかないとね。
噂になったり、浮気を疑われたりした事は一度も無い。私に口裏を合わせてくれる『格下』のお友達は沢山作ったし、万が一裏切ることがあれば……。私は常に流行の最先端にいて、私がみすぼらしいと言えば皆そういってそのお友達を切り捨てる。だから皆、私に何も言わない。噂もしない。その為に作ったお友達ですもの。
そうして2年目の春終わり頃、侯爵家のパーティーでとても素敵な殿方に出会ったの。黒い髪に金の瞳のその方は王宮に勤める騎士……つまり、私が嫁ぐべき相手ではなかったけれど、恋をするには充分なお方だった。
私は薄桃色に塗った唇に笑みを浮かべてその方に声を掛けたわ。
「初めまして、私はローズ。サリバン辺境伯の娘です。お名前を伺っても?」
「……君が、あの……。失礼、レイノルズと申します。モリガン侯爵家の第二子です」
王都に来て分かったの、私はとっても綺麗だって。あんな辺境の……田舎で終わるような人間じゃないって。私を見た殿方はみんなそう言って私を望むわ。
でも、焦る事はない。なんせ3年も王都にいるのだから。
あぁ、辺境伯領の街とは違う華やかな王都の貴族街。夜、篝火に照らされる王城の荘厳さ。私は絶対にここで一生暮らすの、初めて王都に着いた夜に決めた。ここで私は素敵な方と……そうね、公爵家か侯爵家の誰かと出会って、そこに嫁入りするのよ。
お父様は少しケチだから、一度着たドレスでも、少しずつ身分の低い方が催す夜会に、多少の手直しを加えて着ていく、という約束はしたけれど。それでも私は何十着というドレスに何組みもの宝飾品を与えられて、社交シーズンの夜はせっせとパーティーに参加したわ。
未だ良い方とは巡り会えていないけれど、成人したからお酒の味も覚えたし……これを聞いたらお父様は卒倒するでしょうけれど、殿方との交わりも覚えたわ。
夜会の主催をしている家の殿方を視線で誘えば、私をこっそり自室に招いてくださるのだもの。最初は戸惑ったわ、だけれどあの快楽は……ふふ、お姉様はまだ知らないのでしょうね。殿方に愛されて女は綺麗になっていく事を。
社交シーズンが過ぎると、私は令嬢達の輪の中に入ってお茶会に興じる。この方々とも仲良くしておかなければね。やがて私は王都で暮らすのだから、お友達は必要よ。活発な社交活動をする、それこそが良い夫人というものでしょう?
街中を散策し、次の社交シーズンに流行るドレスを調べて作り、宝飾品の流行を調べてデザインに拘って作っていく。お茶会で出遅れないように流行りのスイーツのお店も、カフェも、チェックしては手土産に持っていく。
お父様は社交シーズンが終わるたびに領地に帰られるし、お母様も着いて行く。その時にお姉様に流行りの過ぎたドレスや宝飾品を持って行ってもらうの。お姉様は私のおさがりを身に付けていればいいのよ。近隣の領主様方とのパーティーにはそれで充分でしょう?
そして、お父様とお母様が居ない間、私は沢山の殿方と恋に落ちたわ。時には何人もの方と同時に……婚約してないのだから、今のうちに沢山、未来の旦那様を喜ばせる手練手管を学んでおかないとね。
噂になったり、浮気を疑われたりした事は一度も無い。私に口裏を合わせてくれる『格下』のお友達は沢山作ったし、万が一裏切ることがあれば……。私は常に流行の最先端にいて、私がみすぼらしいと言えば皆そういってそのお友達を切り捨てる。だから皆、私に何も言わない。噂もしない。その為に作ったお友達ですもの。
そうして2年目の春終わり頃、侯爵家のパーティーでとても素敵な殿方に出会ったの。黒い髪に金の瞳のその方は王宮に勤める騎士……つまり、私が嫁ぐべき相手ではなかったけれど、恋をするには充分なお方だった。
私は薄桃色に塗った唇に笑みを浮かべてその方に声を掛けたわ。
「初めまして、私はローズ。サリバン辺境伯の娘です。お名前を伺っても?」
「……君が、あの……。失礼、レイノルズと申します。モリガン侯爵家の第二子です」
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