【完結】お花畑令嬢の逆襲〜どっこい生きてた崖の下〜

葉桜鹿乃

文字の大きさ
上 下
16 / 22

16 不審人物を捕らえられない無能ども(※シュヴァルツ視点)

しおりを挟む
 ったく捕まえられねぇだと?! 女ひとりだぞ、女! 下町のヤツにやらせたのが間違いだったか、本当に使えねぇ奴らだぜ。

 あぁっ、イラつく! せっかく順調にきてるのに……くそ。このままじゃあ婚約を早められねぇ。

 後ろ盾はもういい。婚約の話が内々に進められてからは、マリアンヌの話は途端につまらねぇものになったが、女の話なんざそんなものだ。

 もう悲しむ姿を見せるのにも飽きてきたしな。とはいえ、一応父上や兄上や貴族たち……つまり、王宮では神妙にしているがな。

 俺はそれなりに腹芸はこなす方だと思っちゃいるが、息が詰まりそうだ。本当に手がかかりやがる、殺してまで俺を苦しめるとはなぁ、リディア……。

 案外生きていたら、面白かったかもしれねぇな。いや、これは感傷だ。殺しといて感傷に浸る? ありえねぇな、自分で自分が気持ち悪いぜ。

 金の入った袋で頰を叩いて民を動かし、程々に富ませながら税を巻き上げて、貴族の奴らで金を回させて俺が好きに遊ぶ! その為に王になるんだよ、国の治世なんかはな、金で人を雇って動かしゃ済む話だ! 俺はただ! ただ贅沢して好きなことして大往生して死ぬんだよ!

 っはぁ、それでリディアを殺したのに、この喪中ってやつぁ人の気をおかしくさせる何かでもあんのかね? 本当にマリアンヌの話はつまんねぇし、後ろ盾以上の価値を感じねぇ。マリアンヌの親父の宰相と結婚してぇくれぇだわ。

 おぇ、想像したら気持ちわりぃな……ねぇわ、まだそれなら中身空っぽ脳内お花畑のマリアンヌだな。セットで宰相と中立派の貴族がついてくる。

 そのためにゃ我慢だ。我慢して、我慢して……あぁ、そうだとも、リディアと婚約が決まった時から我慢していた。

 下町で遊びはしたが、今はそれもできやしねぇ。だから鬱憤が溜まってんだ。それだけだ。

 しかしまぁ、手柄がたてられねぇならこのまま喪が明けるのを待つしかねぇか……。正規兵を動かした方がよかったか? だが、それじゃあな……、なんの咎もねぇ女だった時のリスクがたけぇ。

 俺には自分だけの力で……金で人を動かせる力があるっつーのも匂わせられねぇ。俺には人が動かせる力が、どう金を使えばいいか分かってるという、どう人を扱えばいいかわかってるという、力があるところが見せられねぇ!

 忌々しいリディア。それでいて、死んでなお俺に貢献するリディア。

 お前が死んでもまだ脳内花畑のまんまなら、お前こそが俺の幸運の神になってくれ。

 何でもいい、どんな手段でもかまわねぇから、俺に後ろ盾を、地位をよこしてくれ。

 お前が口癖のように言っていたノブレスオブリージュ。俺以上に実行できる奴がいると思うか? なぁ、どうせ天国に行っただろうリディアよ。

 お前のその完璧なまでに吐き気のするお貴族様思考で下界を見下ろして、真に国を豊かにする王は誰か。

 それは俺だと! シュヴァルツだと! 裁定をくだせよ!

「……リディア」

 俺はクソ久しぶりにあの女の名前を呼んだ。なんとなく、聞こえるんじゃねぇかと思ったが。

 クソが。これも感傷だ。

 焦るな。計画通り以上の成果は出ている。5年我慢したんだ。

 あと2ヶ月。そしたら、俺の王位継承権第一位までもう少しだ。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

【完結】ふしだらな母親の娘は、私なのでしょうか?

イチモンジ・ルル
恋愛
奪われ続けた少女に届いた未知の熱が、すべてを変える―― 「ふしだら」と汚名を着せられた母。 その罪を背負わされ、虐げられてきた少女ノンナ。幼い頃から政略結婚に縛られ、美貌も才能も奪われ、父の愛すら失った彼女。だが、ある日奪われた魔法の力を取り戻し、信じられる仲間と共に立ち上がる。 歪められた世界で、隠された真実を暴き、奪われた人生を新たな未来に変えていく。 ――これは、過去の呪縛に立ち向かい、愛と希望を掴み、自らの手で未来を切り開く少女の戦いと成長の物語―― 旧タイトル ふしだらと言われた母親の娘は、実は私ではありません 他サイトにも投稿。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

【完結】虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!

アノマロカリス
恋愛
テルナール子爵令嬢のレオナリアは、幼少の頃から両親に嫌われて自室で過ごしていた。 逆に妹のルーナリアはベタベタと甘やかされて育っていて、我儘に育っていた。 レオナリアは両親には嫌われていたが、曽祖母には好かれていた。 曽祖母からの貰い物を大事にしていたが、妹が欲しいとせがんで来られて拒否すると両親に告げ口をして大事な物をほとんど奪われていた。 レオナリアの事を不憫に思っていた曽祖母は、レオナリアに代々伝わる秘術を伝授した。 その中の秘術の1つの薬学の技術を開花させて、薬品精製で名を知られるまでになり、王室の第三王子との婚約にまでこぎつける事ができた。 それを妬んだルーナリアは捏造計画を企てて、レオナリアを陥れた。 そしてルーナリアは第三王子までもレオナリアから奪い取り、両親からは家を追い出される事になった。 だけど、レオナリアが祖母から与えられた秘術の薬学は数ある中のほんの1つに過ぎなかった。 レオナリアは追い出されてから店を構えて生計を立てて大成功を治める事になるのだけど? さて、どんなざまぁになるのでしょうか? 今回のHOTランキングは最高3位でした。 応援、有り難うございます。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

早く恋人関係になりたい ~もう二度と婚約破棄はしない

青の雀
恋愛
学園の卒業パーティで、生まれた時から決まっていた公爵令嬢サファイヤ嬢との婚約を破棄してしまった。そして、俺は、男爵令嬢オパールと婚約したが、浪費家で妃教育も投げ出すアホ女だった。国政や外交に支障をきたしていた時、サファイヤ嬢は、従兄弟マクロスと婚約し、支え、やがて従兄弟マクロスに王太子の座を奪われてしまう。俺は、廃嫡されアホ女は逃げ、平民落ちになった。 立太子の礼が終わり、剣の模範試合で、相手の剣が鳩尾に刺さった時、気を失って倒れてしまった。その時に前世の記憶を思い出してしまった。 アホ女のデマに惑わされず、今度こそ婚約者を守り抜く王太子のお話です。

死に戻り令嬢の華麗なる復讐(短編まとめ)

水無瀬流那
恋愛
「おねが、い、しにたくな、」 最後に見えたのは、それはそれは嬉しそうに笑う妹の顔だった。  そうして首を切り落とされて死んだはずの私はどうやら過去にループしてきたらしい!?  ……あぁ、このままでは愛していた婚約者と私を嵌めた妹に殺されてしまう。そんなこと、あってはなるものか。そもそも、死を回避するだけでは割に合わない。あぁ、あの二人が私に与えた苦しみを欠片でも味わわせてやりたい……っ。  復讐しなければ。私を死に追いやったあの二人に。もう二度と私の前に顔を表さなくなるような、復讐を―― ※小説家になろうでも掲載しています ※タイトル作品のほかに恋愛系の異世界もので短めのものを集めて、全部で4本分短編を掲載します

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

【完結90万pt感謝】大募集! 王太子妃候補! 貴女が未来の国母かもしれないっ!

宇水涼麻
ファンタジー
ゼルアナート王国の王都にある貴族学園の玄関前には朝から人集りができていた。 女子生徒たちが色めき立って、男子生徒たちが興味津々に見ている掲示物は、求人広告だ。 なんと求人されているのは『王太子妃候補者』 見目麗しい王太子の婚約者になれるかもしれないというのだ。 だが、王太子には眉目秀麗才色兼備の婚約者がいることは誰もが知っている。 学園全体が浮足立った状態のまま昼休みになった。 王太子であるレンエールが婚約者に詰め寄った。 求人広告の真意は?広告主は? 中世ヨーロッパ風の婚約破棄ものです。 お陰様で完結いたしました。 外伝は書いていくつもりでおります。 これからもよろしくお願いします。 表紙を変えました。お友達に描いていただいたラビオナ嬢です。 彼女が涙したシーンを思い浮かべ萌えてますwww

処理中です...