11 / 14
11 『リッチ』
しおりを挟む
プロの顔になった全員を見渡してから、ノアは扉を開けた。
ダンジョンボス。別にノア一人でもクリアはできるが、前にそれをやろうとしたら一人でダンジョンコアを持ち去る気だろうと胸ぐらを掴まれた。
彼らにとってはこれが仕事で、収入源で、そして誇りである。ないがしろにしてはいけないと学んだ。
誰も怪我をさせたく無いが、一人で倒してしまっても意味がない。ここまではノアの『全員無事で早く帰る』という目的のために譲ってもらっていた。
ボス部屋に入ると、円形に作られた部屋の壁のあちこちで篝火が灯った。
「私は後方支援に努めますので、皆さんよろしくお願いします」
ノアの言葉には、彼らを重んじると決めた決意がのっている。これに鼓舞されない冒険者はいないだろう。ここまでノアがずっと体力を温存させてくれたのだから、その上支援魔法の効果もまだ残っている。
「おう!」
口々に彼らは呼応する。
最後の松明が止まったそこには、玉座たる椅子の上に座った巨大なリッチ……死霊の王と呼ばれる魔物がいた。
「聖属性のエンチャントを掛けます。呪い状態を弾く支援魔法を掛けました。自動回復も機能しています、飛んだら弓で落とすので叩いてください」
背後にいてもノアはノアだった。
彼らは相当経験を積んでいる冒険者だが、ノアは冒険者になる前に、気配探知の練習と称して、レイに毎日、見つかる前のダンジョン単独クリアを1年間課せられた。
あの国王陛下は中々にスパルタであり、その経験が無名のS級冒険者を、ゴールデン・ウィザードと称させるまでの実力をつけさせることになった。
ノアの的確な指示と援護で、彼らは役割を理解して展開していく。タンク役が気を練って挑発というスキルを使い、リッチが寄ってきたところを前衛職が総がかりで叩く。
一番ダメージを与えた者がヘイトを溜めて狙われるので、反対側にいたタンクが挑発を使う。
リッチはある程度のダメージを与えると上空から範囲魔法を使ってくる。
何度か挑発しては叩くを繰り返すうちに、ふわりとリッチが飛びあがろうとした。
「ガッ……?!」
ノアの早射ちがそれをさせない。
『泥の血』と判別されるまで鍛えてきた弓と剣の腕。『星の力』だけでも充分戦えるが、ノアはそれを手放したくなかった。
あっという間に露出している頭蓋骨を針鼠のようにされたリッチが落ちてくる。
前衛が全員でそれを叩いた。
勝負は決まった。
灰になったリッチの残骸から、宝石のついた宝飾品がボロボロと落ちていく。魔法効果の付いているものもあるはずだ。
「皆さんでどうぞ。私はアイテムなどは使わないので」
ノアのその言葉はある意味リッチを前にした時よりも決意がこもっていて、ここまで殆どお膳立てをした功労者を労ることもできない事に、パーティを組んだ全員が一斉にため息を吐く。
「?」
ノアだけが、よくわからない、という顔で首を傾げていた。
ダンジョンボス。別にノア一人でもクリアはできるが、前にそれをやろうとしたら一人でダンジョンコアを持ち去る気だろうと胸ぐらを掴まれた。
彼らにとってはこれが仕事で、収入源で、そして誇りである。ないがしろにしてはいけないと学んだ。
誰も怪我をさせたく無いが、一人で倒してしまっても意味がない。ここまではノアの『全員無事で早く帰る』という目的のために譲ってもらっていた。
ボス部屋に入ると、円形に作られた部屋の壁のあちこちで篝火が灯った。
「私は後方支援に努めますので、皆さんよろしくお願いします」
ノアの言葉には、彼らを重んじると決めた決意がのっている。これに鼓舞されない冒険者はいないだろう。ここまでノアがずっと体力を温存させてくれたのだから、その上支援魔法の効果もまだ残っている。
「おう!」
口々に彼らは呼応する。
最後の松明が止まったそこには、玉座たる椅子の上に座った巨大なリッチ……死霊の王と呼ばれる魔物がいた。
「聖属性のエンチャントを掛けます。呪い状態を弾く支援魔法を掛けました。自動回復も機能しています、飛んだら弓で落とすので叩いてください」
背後にいてもノアはノアだった。
彼らは相当経験を積んでいる冒険者だが、ノアは冒険者になる前に、気配探知の練習と称して、レイに毎日、見つかる前のダンジョン単独クリアを1年間課せられた。
あの国王陛下は中々にスパルタであり、その経験が無名のS級冒険者を、ゴールデン・ウィザードと称させるまでの実力をつけさせることになった。
ノアの的確な指示と援護で、彼らは役割を理解して展開していく。タンク役が気を練って挑発というスキルを使い、リッチが寄ってきたところを前衛職が総がかりで叩く。
一番ダメージを与えた者がヘイトを溜めて狙われるので、反対側にいたタンクが挑発を使う。
リッチはある程度のダメージを与えると上空から範囲魔法を使ってくる。
何度か挑発しては叩くを繰り返すうちに、ふわりとリッチが飛びあがろうとした。
「ガッ……?!」
ノアの早射ちがそれをさせない。
『泥の血』と判別されるまで鍛えてきた弓と剣の腕。『星の力』だけでも充分戦えるが、ノアはそれを手放したくなかった。
あっという間に露出している頭蓋骨を針鼠のようにされたリッチが落ちてくる。
前衛が全員でそれを叩いた。
勝負は決まった。
灰になったリッチの残骸から、宝石のついた宝飾品がボロボロと落ちていく。魔法効果の付いているものもあるはずだ。
「皆さんでどうぞ。私はアイテムなどは使わないので」
ノアのその言葉はある意味リッチを前にした時よりも決意がこもっていて、ここまで殆どお膳立てをした功労者を労ることもできない事に、パーティを組んだ全員が一斉にため息を吐く。
「?」
ノアだけが、よくわからない、という顔で首を傾げていた。
0
お気に入りに追加
825
あなたにおすすめの小説
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
【完結】化け物と言われ続けた令嬢は、追放された先で真実を知る
紫宛
ファンタジー
もぅ~無理~!!っと、書きなぐった作品なので、色々荒いです。見苦しく読みにくいかも?です。
魔力が高く、胸元に宝石を宿すティアナ
侯爵家の令嬢だったが、化け物だからという理由で婚約破棄を言い渡された。
何故ティアナが化け物と言われ始めたのか……
それは……高い魔力と胸の宝石、そして化け物に姿を変えるから。
家族にも疎まれたティアナは、追放され辿り着いた国で本当の家族と真実を知る。
※素人作品、ご都合主義、ゆるふわ設定※
転生したらスケルトンに何が?
宗太
ファンタジー
佐藤隼人(40歳)は、アニメーターとして過労をしながら死にました。病院に送られた後、死亡したことが確認されました。彼は目を覚ましました。彼はスケルトンとしてに転生が!いま、隼人はこの新しい世界で幸せな生活を送ることができますか?
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる