まひびとがたり

パン治郎

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破天の日 その1

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 京の都の空気が、かつてないほど重苦しく感じられた。
 常に検非違使たちが見回りをしている。気軽に外出することも出来ず、市場も多くの店が取り締まられて活気を失っている。
 とはいえ、それだけならば前にもあった。大きな戦の前になると、決まって京の都の治安を維持するために警備が強化された。
 男たちが戦に出払うと鬼が跋扈するからである。
 だが、今回は少し違う。その鬼が検非違使と名乗って京の都を警備している。
 見るからに粗暴な男たちは真新しい甲冑を身に着け、大声を上げながら市街を闊歩した。視線が合っただけで罪を言い渡し、暴力を振るった。
 新たに検非違使の別当となった男が連れて来たらしい――と、都の住人はひそひそと噂話をしていた。

「セナと静乃……大丈夫かな」
 サギリは曇天を見上げてつぶやく。今にも雨が落ちてきそうだ。
 水野実真に罪が言い渡され、逃亡者となって京から逃れたことは知っている。ただ、一緒にいたはずのセナと静乃の行方はようとして知れない。
「そんなの……大丈夫に決まってるだろ。さ、もうすぐ修練だ」
 りつはそう言って修練用の紺色の装束を広げた。
「ねえ、本当にこれでいいのかな?」
「何が?」
「こんな時に舞なんか……」
「どういう意味だよ?」
「戦になりそうって時に、舞に意味なんかあるのかなって」
 りつはサギリの言葉に言い返そうとするも言葉が出て来ない。こう感じているのはサギリだけではない。他の生徒も同じである。そして、りつも。
「でも、あたしたちには舞しかない……そうだろ? そうだよな?」
 問いかけが虚しく宙に消える。
 戦は殺し合いだ。命のやり取りだ。死ぬか生きるかしかない。はたして舞など入り込むスキがあるだろうか。命を天秤にかける時に、誰が舞を気にかけてくれるだろうか――。心のどこかにそういった思いがないわけではない。
「お前たち、くだらない話をしているな」
 そこに筆頭女官の望月がやって来た。
「望月様……」
「そのような顔では舞が錆びついてしまうぞ」
「すみません」
 頭を下げる二人を見下ろし、望月は小さく息を吐く。
「その通りだ、二人とも――舞などただの遊びに過ぎぬ」
 思わぬ言葉にりつもサギリも顔を上げた。
「水や食べ物と違って舞がなくとも人は生きていける。その程度のものだ。しかし、だからこそだ――そう思わぬか?」
「だからこそ……?」
「人が人である拠り所は心だ。花を愛で、鳥の唄を聴き、風を感じ、月に魅入る。それらは時に、生き死にの前には無力かもしれない。だからこそ我ら舞人が楽しむ心を捨て去ってしまえば、いよいよこの世はむなしかろう」
 りつとサギリは謡舞寮の入門試験を思い出していた。
 技ではなく、心を見る――弓御前はそう言っていた。
「謡舞寮は何事にも縛られてはならない。そのためには心を強くする。それゆえひたむきに修練に励む。お前たちが教えてくれたことではないか」
「私たちが……?」
「舞の前ではすべてが等しい。我ら女官は、いつの間にか舞をわかったつもりでいた。人生は終わりなき修練だ。さあ、共に学ぼうではないか」
「……はい!」
 りつとサギリは厚い雲を吹き飛ばすような声で応えた。

          ※

 夜の闇のもっとも濃い頃――謡舞寮の一室に鬼童丸はいた。
 太陽を模した天冠、白綾の狩衣、薄色の袴。これら浮世の舞装束が、皓々とした月の光を受けてしっとりと輝いている。何者も寄せ付けぬほど美しい。
 鬼童丸は闇の中、片膝を立てて背中を丸め、ジッと舞装束を眺めていた。
「……ホオヅキか」
 鬼童丸が視線をわずかに横にずらす。庭先にホオヅキの姿があった。
「やはりここでしたか……お頭」
 ホオヅキは顔を覆っていた布をずらした。
 鬼童丸は傍らに置いていた濁り酒の瓶を手に取って、軽く掲げて見せた。
「飲むか? 月見酒にはいい夜だ」
 ホオヅキは答えない。鬼童丸は再び舞装束に視線を移した。
「少しは酒の肴になるかと思ったが、いざ前にするとちっとも飲む気がしねえもんだ。十年以上も探してたってのによ」
「……その歳月は……あなたと共にあった」
「ああ、初めて会った時、俺もお前も青臭ぇガキだったな。それからいろいろあったが……ま、今日まで生きてる」
「どうして……鬼をやめたんですか」
 鬼童丸はフッと短く笑った。ホオヅキは強く拳を握った。
「あの黒鬼が! どうして朝廷の犬に成り下がった! 答えろ!」
「わかっちゃいねえな――鬼だからだよ」
「ふざけるな!」
 ホオヅキは刀を抜いた。白刃が月光で煌めく。
「お頭――いや、鬼童丸。本気で戦をするつもりなのか」
「そうだと言ったら? ここで俺を殺すか?」
「この傷の疼きがやむのなら、そうさせてもらう」
「はっ、お前は鬼になりきれねえよ」
「黙れ!」
 鬼童丸は瓶から濁り酒を酒杯に注いだ。それをクイッと一気に飲み干す。
「そういやセナはどうなった? 死んだか?」
「……眠っている。目覚めるかわからない」
「そうか……醒めない夢を見ている方がいいのかもしれねえな。なあ、ホオヅキ……殺したいならそうしろ。俺はもう疲れた」
 刀を握るホオヅキの手が小刻みに震える。鬼童丸は言葉通り、まったく無防備に酒杯を傾けている。今ならたしかに斬ることが出来る。
 ホオヅキは刀を納めた。鬼童丸は初めて真っ直ぐホオヅキを見た。
「どうした、斬らんのか」
「黒鬼党が殺すのは……鬼だけだ。お前はもう鬼ではない」
 そう言ってホオヅキは闇にまぎれて去ってゆく。
 しばらく無人の庭を見ていた鬼童丸だったが、手にしていた酒を飲み干したところで、背後に向かって声をかけた。
「ホオヅキも行っちまった……笑えるだろ? ヒザ」
 居室の闇だまりから、ぬうっと人影が浮かび上がる。その輪郭は頭巾をかぶった若い女性のものだった。低い女の声がする。
「振り出しに戻っただけのこと」
「今は女の姿か……オメェ、いったい何者だ?」
 頭巾の女はフフフと妖しく笑った。
「嘘と思えば嘘になり、真と思えば真になる。誰そ彼どきに払暁を願い、彼は誰どきに宵闇を望む。薄明の鬼――朽葉くちは
「不気味なヤロウだ……いいか、ここから先は俺一人だ。邪魔するなよ」
 ヒザであった者――朽葉と名乗った女性は高らかに笑った。
「見届けよう鬼童丸。勇ましき鬼の子よ」
 そして、朽葉の姿が霧のように消えた。鬼童丸は不機嫌そうにつぶやく。
「親なんかいねえんだよ……」

          ※

「まず初めに――鈴鹿の関を破ります」
 軍議において、並み居る東国武士たちの前で上條志郎は言った。
「おお、ついに三関さんかんが……」
 猛将たちから感慨深げに声が漏れる。
 三関は彼ら東国武士にとって特別な意味合いがあった。
 三関とは――。

  美濃国(現在の岐阜県)の不破の関
  近江国(現在の滋賀県)の逢坂の関
  伊勢国(現在の三重県)の鈴鹿の関

 を、指す。
 京の都を守るために置かれた三つの巨大な関所であり、琵琶湖を迂回する経路をすべて塞いでいる。

 その理由はただ一つ――東国からの侵攻を防ぐため。

 古来より帝の支配が及んでいた畿内や西国とは違い、政情の不安定だった東国はたびたび都を脅かすことがあった。関東で乱を起こした御堂虎次郎もその一つである。
 三関の存在は、朝廷の持つ東国への不信感に他ならない。
 それを自らの手で破る時が来た。
 三関の突破は日ノ本の歴史上、誰も成し得ていない。
 志郎は諸将のざわつきが収まったところで発言を続ける。
「鈴鹿の関の守兵は三百もおりません。これは永い間、帝の威光で守られてきたからです。そのため突破自体は容易ですが、大逆無道に等しい行為です。これをお願いせねばなりません……しかし……」
 志郎が言葉を濁すと、東国武士たちが沸いた。
「水臭いではないか志郎殿! その役目、ぜひとも我らにお任せあれ!」
 すると、最上段で軍議を黙って聞いていた実真が立ち上がった。
「みなの手を汚すまでもない。先鋒は私が務める。よろしいか」
 実真の声には張りがある。諸将は誰も異論を唱えなかった。
「では次ですが、鈴鹿の関の突破後、鈴鹿山脈を速やかに通過、すると柘植ノ平つげのだいらという平原に出ますから、決戦はそこで行います。野戦に持ち込むことが最上策だと心得てください」
 そのための先行軍の編成ですが――と、志郎が言った時、実真が手で遮った。
「ダメだ。それでは負ける」
「なぜだ実真! 志郎の軍略だぞ!」
 鍛治谷が落雷のような大声を上げる。
「鈴鹿の関より向こうは東国ではない。果たしてこの中に、異国の地で戦ったことのある者はいるのか」
 誰も応えない。腕組みして聞いていた祭子が口を開く。
「何が言いたい?」
「追討軍の将・鬼童丸は、これまで戦った将とは質を異にする」
「畿内の軟弱者など恐るるに足らんわ! 違うか!」
 鍛治谷が他の諸将に同意を求めると、よく言った鍛治谷! と場が沸いた。
 だが、上條姉弟は口を閉ざし、思考を巡らせた。志郎が顔を上げる。
「なるほど、山――ですか」
「そうだ。私は鬼童丸という男をよく知っている。あの男は、畿内を縦横無尽に駆け巡り、そのすべてを裏から支配していた」
「支配だと? 朝廷はどうしたんだ」
 鍛治谷が疑問を投げる。
「山は帝の威光が届かぬ地だ。その奥深くに棲み、闇にもぐって畿内の鬼たちは生きている。鬼童丸は、畿内の鬼の首領『黒鬼』だった男だ」
 志郎が長机に広げた地図にあらためて目を通した。
「もし実真殿の言うとおりなら、ここに記されている山々はすべて敵の砦と見るべきだ……いや、これだけじゃない。この精度の地図では記されていない山々だってあるはず……そうか、敵の性質は遊撃隊による奇襲攻撃……!」
 実真は頷く。すべて理解した上で祭子が発言した。
「進軍の途中で軍列が伸びたところを襲われればひとたまりもあるまい。だが、都に往くためには、目の前の山を越えねばならん」
 祭子の言うことはもっともである。
 目的は追討軍の撃破ではない。京の都にたどり着き、幽閉されている帝を救出することである。そして、首謀者である御堂晴隆の罪を追及する。
 実真には、あくまでも帝の臣として行軍すべきだという考えがある。
 それこそが『大義』だった。
「姉上の言うとおりです。ただちに先行部隊を編制して、鈴鹿山脈を越える必要があります。そして柘植ノ平における拠点を制圧します。速度が必要ですから、ごく少数の決死隊になりますが……」
 その時だった。軍議の席に外から声が飛び込んで来た。
「敵は来ている。もう遅い」
 なんと、セナだった。猛者たちの鋭い視線を一斉に浴びても涼しい顔である。
 セナは平然と広間の中央を歩いて前に進み出た。
「なんだこの娘は! 出て行け!」
 怒号が飛んだ。セナはそれを無視して実真の前に立った。
「もう歩いて平気なのか?」
「ええ、平気。それより私が――」
「おい、娘さん。ここはお前が来る場所では」
 その時、鍛治谷がセナを軍議の部屋から出そうと後ろから接近した。するとセナは目にも止まらぬ速さで鍛治谷の背後を取り、腰刀を掠め取ると同時に身体に飛び乗った。もちろん抜き身は首に添えられている。
 鍛治谷の額に汗が流れる。セナはそのままの状態で言った。
「鬼童丸はもう目の前にいる。こんなふうに首を狙って」
 いつも落ち着き払っている志郎が、戸惑った様子で問う。
「鬼童丸が待ち伏せていると? バカな、都からここまで兵を連れて五日はかかる距離だ。あまりにも早すぎる」
「早くない。私なら一日で駆けてみせる」
 セナが嘘を言っているように見えない。志郎は目を細めた。
「……可能なのか?」
「私が鬼童丸なら、こんな重苦しい鎧なんか脱ぎ捨てて、昼も夜も眠らず山を駆け抜ける。それに、大将首を獲るだけならたくさんの兵士はいらない」
「鎧を捨てるだって? 戦の最中にか」
「斬られなければいい」
「それは……そうだが」
 身も蓋もない物言いに、さすがの志郎も黙ってしまった。上條志郎は若くして軍才を発揮し、東国でも智将として知られている。実真が東国にいた頃、そのかたわらで参謀として転戦していた。
 祭子が反論できない弟を見て高らかに笑った。
「あっはっは、お前の負けだ志郎。おいセナ、鍛治谷を放してやれ。これでも名の知れた武将だ。醜態をさらし続けると士気が下がる」
 セナは鍛治谷の巨体から飛び降り、腰刀を投げて返した。鍛治谷は抜き身を投げられて慌てるも、何とか受け取って鞘に納めた。
「なんちゅう娘だ……胆が冷えたわい」
 鍛治谷は大きな息を吐いて首をさすった。
「私が鬼童丸なら――お前はそう言ったが、ずいぶんと詳しそうだな?」
 祭子はセナにきつく問う。
「私は鬼童丸に育てられた……鬼童丸の影だったから」
 セナのその言葉に、軍議の場がどよめく。祭子もわずかに目を見開く。
 実真はしばらく瞑目していたが、意を決したように口を開く。
「この娘の言うことはすべて本当だ――セナ、なぜここに来た? 静乃と一緒におとなしくしていろと言ったはずだ」
「鬼童丸に会う」
 互いの目が真っ向から交差し、深い沈黙が訪れた。その場にいた誰もが息を呑んで実真の言葉を待つ。しばらくして、実真が視線を外した。
「鍛治谷殿、私が鈴鹿の関を突破した後、そなたは兵を率いて鈴鹿山脈を越えてくれ。志郎殿はその補佐を頼む。柘植ノ平に足がかりを得たい。兵の合流を何としても完遂させるのだ。いいな?」
「はっ」
 志郎は短く返事した。祭子が実真を見る。
「私は?」
「祭子殿は私のそばに」
「えっ……そば……?」
「何か問題が?」
「い、いや……」
 祭子はわずかに唇を噛んでそっぽを向いた。
「で、実真よ、お前はどうするんだ?」鍛治谷が問う。
「私はセナを連れて山に入り、鬼童丸を抑える」
 実真の発言に諸将たちは驚いた。
 実真は東国武士団の総大将である。それが軍列を離れて単独行動に出るなど無謀極まりない。これまでの合戦の通例から言えば前代未聞である。
 だが、実真はそんな思惑を制圧するように言い放った。
「私も畿内の軟弱者だ。敵を侮るな」
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