まひびとがたり

パン治郎

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妖怪の血 その2

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 根城の前に移動すると、姫宮の女官が出迎えた。やっと来てくれた、と言わんばかりに不安そうな面持ちをしている。
「動きは?」ホオヅキが尋ねる。
「ありません」
「で、手勢とやらは?」
「それが……いないのです。前金を渡していたのですが……」
「何だと!? それを宛てにここまで来たんだぞ」
「こうなれば、私が再び出向いて鬼たちと交渉にあたります」
 姫宮の女官は意を決した様子で、姫宮が幽閉されているという木こりの棲家に行こうとした。
 が、その袖をセナがぐいと引き留める。
「私が行く」
「えっ、でも。いけません、ここは私が」
「いいから。ホオヅキ、建物の様子は? ずいぶん大きいけど」
「あれは木こり連中の宿舎だ。入り口は三つ。表一つと裏二つ。どれも見張りが一人立っている。窓はあるが締め切られている」
「上は?」
「板葺の屋根に一ヶ所、穴がある。もともと廃墟だからな、落ちんなよ」
「わかった。まず裏の見張りを仕留める。それから姫宮を助けるけど、シュウジンはオトリになって欲しい」
「中の連中をおびき出すんだね? 口笛ぐらいなら吹けるよ」
「それでいい。ホオヅキは建物のそばに身を隠してて」
「で、いつもどおり残ったのを奇襲する――と」
「そう。武器を」
 ホオヅキは積荷の中から小太刀を手渡す。セナの得意とする得物である。切って良し、刺して良し、小回りが利き、携帯もしやすい。そして最後は百発百中の投擲で相手を油断ごと突き殺す。
「やっぱり殺すのかい?」
 シュウジンは小太刀の刃の質を確かめているセナに言った。が、応えたのはホオヅキである。
「当たり前だろ。殺しに来る相手を殺さないでどうする。お前が誰だか今は目をつむるが、邪魔立てするなら話は変わるぞ」
「そっか……そうだよね」
 セナはシュウジンの表情が曇ったのを初めて見た。
「殺さないほうがいいの?」
「おい、セナ」
 シュウジンは顔を上げる。
「そんなことが出来るの?」
「危ないと判断した時は殺す。それでいい?」
「うん、いざという時は僕が助けるよ」
「チッ、ガキの遊びじゃねえんだぞ」
 ホオヅキは苦虫を噛み潰したような顔でそっぽを向いた。
 作戦通り、セナが宿舎の裏手に移動する。繁みに身を隠しながら、山猫のように音もなく接近した。
 二つある宿舎裏口の片方に、一人の見張りが姿を現している。呑気に大あくびを拵え、退屈そうに太刀をぶんぶん振りまわしていた。
 セナは宿舎の壁に張りつき、じりじりと見張りに近づく。ちょうど角を隔てたところで、セナは小さく口笛を吹いた。ピュイッと鳴った方向に、見張りは上半身ごと顔を覗かせた。
 あっ――と声をあげる間もなく、セナは見張りの顎下から脳天に向かって納刀状態の小太刀を打ち上げる。
 見張りは一瞬で気を失い、前に向かって倒れ込む。それをセナは音が立たないように受け止めた。
 まず一人――。見張りは口から泡を吹いて昏倒していた。
 続いてセナは、壁を蹴ってひと息で屋根に上がった。そのまま屋根づたいにもう一つの裏口に向かう。見張りは中にいて姿が見えない。
 ジッと息を殺して耳を澄ます。すぐ下から三人の話し声が聴こえる。
「今まで食った中で一番マズかったもんって何だ?」
「オラァ牛の尻尾だな。ずーっとクチャクチャ噛んでたら、そのうち気持ち悪くなって吐き出した」
「俺は犬を食った時だな」
「犬? じゅうぶん食えるだろが」
「俺が食った犬は丸焼きにしたもんだったが、空腹のあまりムシャムシャかぶりついてるとな、はらわたからポロッと出て来たんだよ、アレが」
「アレ?」
「俺らにもついてるアレだよ」
「たまんねぇな……で、食ったのか?」
「つい食っちまった。味なんて覚えてねぇが、あの感触は最悪だった。あんときほど股が冷えたことはねぇ。で、アンタは?」
「俺は……目玉かな」
「なるほどなぁ!」
 何が面白かったのか、野盗たちはゲラゲラ笑った。話が終わると、セナのすぐ足元に野盗の一人が立った。だが、襲うにはもう少し身体を出してもらう必要がある。そこで懐から銅銭を一枚取出し、指で弾いて草むらに落とした。
 チャリンッ、と鳴った。
「おんや? ゼニの音か?」
 野盗はまんまと外におびき出される。屈んで地面を探し始めた。
 セナは小太刀を縦に握って屋根から飛んだ。野盗のクビを目がけて。
 落下の勢いと体重をかけた一撃は、野盗の意識を身体ごと押し潰す――はずだった。
 なんと野盗はみごと銅銭を見つけ、立ち上がって息を吹きかけた。セナの一撃は空振り。野盗の目の前に着地した。目が合う。沈黙。そして。
「……にゃーん」
「お、お前のような猫がいるか!」
 セナは即座にみぞおちを鞘で突き、続けざまに顎を打って野盗を気絶させた。
「二人目……」
 そのまま草むらに身を隠すセナ。仲間たちは気付いていない。
 ふたたび屋根に上がり、ホオヅキの言っていた穴を探す。一ヶ所だけ、屋根板が朽ち落ちた場所があった。そこから中を覗き、屋根裏にうまく侵入した。
 梁の上を慎重に移動する。木こりの宿舎だけあって丈夫に作られている。
(残るは五人……そして姫宮……)
 セナは姫宮を探した。そろそろシュウジンが笛で野盗たちの注意を引くころである。はやく居場所を見つけなければならない。
 天井からでは角度がきつくて全身は見えないが、入口すぐの土間に三人の野盗の足が見える。続いて目を移すと、姫宮らしき女が板張りの間にいた。床の中央に置かれた火桶を囲むように他の野盗二人と一緒に。
 明るい朱の着物。顔を覆うほどの長い黒髪。間違いない。
 しかし、囚われているはずの姫宮は、野盗たちと一緒に木皿に盛った木の実をつまんでいる。それも、足を投げ出してゆったりした姿勢で。
(あれは……いや、まさか……)
 そのとき、宿舎の外で指笛が鳴った。シュウジンである。
「何だ!?」
「わからねえ、とにかく行くぞ!」
 野盗たちは太刀を携えて外に出た。姫宮は腰を浮かせ、辺りを見回しておろおろしている。セナは梁から降りて、一足飛びで姫宮の前に躍り出た。
「おい! お前!」
 セナは姫宮の肩を掴む。長い黒髪の隙間から現れた顔は――老婆だった。
「何者だい!?」
 皺だらけの老婆は、驚いた顔でセナを見た。濃い白粉に、濃い口紅。
 年齢とチグハグな格好が酷く不気味に感じられる。
「姫宮ってのは嘘だったのか」
 老婆はハッとして、うっすら笑った。セナの手を叩き落とす。
「はっ、嘘じゃないさ」
「何……」
「嘘だと知らずに死ねば、それは真になる」
「死ぬ? まさか、こうして誘き寄せて」
 老婆はニヤァっと笑みを浮かべた。
「どうだい姫を助ける英雄になった気分は。極上のエサだったろ?」
「くっ――」
 セナは老婆の胸を突き飛ばし、宿舎の外に駆け出した。
 その場は緊張した空気に包まれていた。太刀をかまえた五人の野盗たち、同じく太刀の切っ先を向けるホオヅキ――そして、首筋に小刀の冷たい刃を当てられているシュウジンの姿があった――下手人は誰あろう姫宮の女官である。
「シュウジン!」
 セナはとっさに小太刀を構える。野盗たちはセナにも刃を向けた。
「ずいぶん可愛らしいお仲間だな……佐門さもん。まさか生きていたとはな」
 佐門――そう呼ばれたのはホオヅキだった。
 そして、そう呼んだのは野盗の一人――右目が刀傷で潰れた隻眼の男だった。
「ホオヅキ! 何が起こってる!?」セナは叫ぶ。
「ホオヅキ? そうか、お前も鬼に成り果てたか、佐門」
 ホオヅキは顔を覆っていた布を下げた。両頬の傷があらわになる。
「その傷……よく生き残ったものだ」
「伊藤佐門は死んだ。お前こそ、男前になったようだな? 松野景平まつのかげひら
 ホオヅキと隻眼の男『景平』は互いに太刀を構え、殺気を高める。
「お前が鬼か……誰よりも武士らしかったお前が――おい、娘」
 隻眼の景平は背中越しにセナに呼びかける。
「こいつはな、かつては俺と同じ主家に仕える武士だったんだぜ? それが永現の乱でお家は二つに割れ、俺は帝派、こいつは弟皇子派になった。同僚との殺し合いはそりゃあ激しいモノだった――知ってたか?」
「知らない。どうでもいい」
 セナは隻眼の景平を睨む。景平は笑った。
「娘、お前は正しい。氏素性など些末なことだ。ここにいる連中はみな、あの乱で死んだ。武士、農民、商人……公家だって例外じゃねえ。いっぺん死んでも死にきれねぇのが鬼なのさ。お前は何者だ? 娘よ」
「セナ! いちいち相手にするな。やれ!」
 ホオヅキが少し距離を詰める。緊迫感がいっそう濃くなる。
「でも、シュウジンが」
 姫宮の女官がシュウジンの首の刃を見せつける。
「今日はツイてないねぇ」
 そこに、宿舎から姫宮姿の老婆が現れた。
「母さん! どうするの!? こいつら反抗するよ!」
 姫宮の女官が叫ぶ。老婆は鋭い目つきで場を見渡した。
「我が娘ながらまったく情けない。厄介者をいざなうとはね」
「お前が仕組んだのか」
 セナは老婆に小太刀を向けた。が、野盗の一人が立ちはだかる。
「だったら何だ? 生意気言うんじゃないよ。この世はチカラある者だけが生き延びる。本当のチカラってのは、腕っぷしじゃあない。ココさ」
 老婆は自分の頭を指差した。
 セナは奥歯を噛む。老婆の言葉は鬼童丸の言葉と似ている。根っ子を同じくするものだ。自分もまさにその信条で生きて来た。何の疑問も抱かなかった。相手を正面から殺すのも、騙して殺すのも同じことのはずだ。
 だが、この感情のゆらぎは何だ?
 弱き者は死ぬ。強き者が勝つ。それが当たり前のはずなのに――。
「景平の顔見知りってことは、元武士だね?」
「ああ。同門だ。俺ほどじゃあないが、手練れだ」
 老婆の問いに隻眼の景平は答える。
「荒事は嫌いだよ。その小僧を連れておいで、少しは時間稼ぎになるだろう」
 野盗たちが一斉に退き始めた。そこに、シュウジンがゆっくり口を開く。
「困ったな……みんな、もうやめない?」
 あまりに場違いな呑気な声調に、その場の誰もが戸惑い、動きを止めた。
 シュウジンは平静を乱さず、首筋の刃も気にしていない。
「僕がここにいる理由はね、あなた方の正体を確かめるためなんだ。もしここに本当の姫宮がいるとなれば――捨て置くわけにはいかない」
 老婆は細く描いた眉を片方だけ上げた。
「不気味なおぼっちゃんだね。何をお言いだい?」
「お婆さん、あなたが姫宮でないことは一目瞭然だ。だから、どうかみんな刃を収めて、今日という日を無かったことに出来ないかな?」
「ああっ!? 何だって? もっぺん言ってみな!」
「みんな刃を」
「そうじゃねえだろぉ? 誰がババアだってさあ!」
 老婆が懐から短刀を取り、サッと抜き放った。
「ダメだ、いけない!」シュウジンは叫ぶ。
「何がダメなんだよこの小僧!」
 そのとき、激怒したはずの老婆の顔が、一瞬で絶望に染まった。老婆の目が捉えたのは、シュウジンの首に刃を当てていた姫宮の女官の口から、鋭い矢じりが飛び出した光景だった。
「あえっ……? あえっ?」
 姫宮の女官には、口の中から突如として矢が生えたように見えていた。
 一体何が起こったのか――シュウジン以外の誰もが愕然としている。
「はぁはん、はぁはん……」
 姫宮の女官はシュウジンの首から刃を離し、よろよろと老婆に向かって二歩、三歩と近づくも、バタリと倒れて絶命した。
「いやぁぁぁぁ!!!」
 老婆が金切声をあげた。その大きく開かれた真っ赤な口のど真ん中に飛矢が突き刺さる。老婆はゴボゴボと血の泡を吹きながら、前に突っ伏した。そして娘の亡骸に向かって這って移動するも、途中で力尽きてしまった。
「よせ、ムダな殺生はしたくない」
 そう言ったシュウジンの背後の繁みから、続々と武装をした男たちが現れた。
 弓を持ち、腰巻に短刀を挿しているが、一見してただの農民である。
(凄まじい腕だ……この俺が気配に気付けなかった……)
 ホオヅキは大きな衝撃を受け、冷たい汗をかいた。
 どう考えても彼らは『鬼』ではない。厳しい修練を積み、達人の域まで武力を高めたまさに『つわもの』である。これだけの男たちに守られ、命令をも下せる存在といえば、日ノ本においては一つしかない――。
「チッ……何てもんを引き込みやがったんだ――退け! 退け!」
 隻眼の景平は他の野盗たちに号令を放った。逃げ惑う彼らに向かって、次々と矢が飛ぶ。一矢たりとも外れることなく四人を射抜き、隻眼の景平にも鋭い飛矢が向けられた――が、それをホオヅキが刀で叩き落とした。
 隻眼の景平はホオヅキを一瞥し、そのまま遁走した。
 武装した男たちは次の矢をつがえ、ホオヅキを狙う。
「よせ、その者は敵ではない」
「なれど、賊を逃がしましてございます。彼の者もまた、天下に仇なす鬼どもの一味に違いありませぬ」
 首領格の男はシュウジンの言葉にうなずかない。
「殺すなと言ったはずだ」
「姫宮を騙る鬼ども……見逃すわけにはまいりませぬ」
 弓弦がキリキリと引き絞られる。
 セナが咄嗟にホオヅキの前に飛び出し、小太刀をかまえた。
「シュウジン……これは一体」
「セナ……ごめん、こんなはずじゃ」
「娘も殺しますよ」
 首領格の男がシュウジンの耳元でささやく。が、シュウジンは応えずその場を離れ、武装集団とセナたちの間に立った。
「僕の命令が聞けないなら、帝の御名においてお前たち全員を反逆者とみなす。その罪……一族すべての命をもって償ってもらうぞ」
 氷のような声だった。セナは息をするのも忘れそうになった。
「まさか……こいつは……」
 何かに気付いたホオヅキが、少し震えた声で言った。
「第一皇子『宗人親王むねひとしんのう』――妖怪の子……次の帝だ……!」
 その時、一条の矢がビュンッと放たれた。シュウジンの顔を通り過ぎ、風を裂いてセナの眉間にまっすぐ突き進む。
「セナ!」
 シュウジンが叫ぶ。ホオヅキが前に躍り出る。
「ぐぁっ」
「ホオヅキ!」
 ホオヅキの右肩に深々と矢が突き刺さった。
「帝の御名に背く気か!」シュウジンの目がカッと見開く。
「我ら戸勘解衆とかげしゅうがお仕えするのは、日ノ本において帝のみ。宗人様ではございませぬ」
「くっ――逃げるんだ! セナ!」
 シュウジンは両手を広げ、セナたちを背後に守って再び叫んだ。
「シュウジン……!」
 セナは深手を負ったホオヅキを庇いながら、その場から逃げた。
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