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妖怪の血 その1
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帝は夢を見ていた。
春の野に遊ぶ自分の手足を。豊かな緑を踏みしめ、あたたかい風を掴み、舞い散る花びらの行方を目で追った。
その先には真昼の空に浮かぶ真円の月。見るほどに形を大きくしていったと思えば、それは自分の手足が大地から離れ、ふわりと宙に舞ったからだ。
眼下に広がる大地は砂糖菓子のように溶け崩れ、あたりは一瞬にして漆黒の闇に覆われた。
帝は目を凝らす。すべての方向に、金粉でも散りばめたようにキラキラ輝く小さな光がある。
星だ。星々だ。つまらぬ光だ。
ひときわ輝く月がいよいよ眼前に迫り、その白い光の中で何かが像をなした。
透き通るほどの純白の衣をまとった人の姿をしている。
まさしく天女だった――。
光の天女は帝に手を差し伸べる。それを取ろうと帝も手を伸ばすが、天女は慈愛に満ちた笑みを浮かべて遠ざかる。
つーっと鼻血が出た。帝は鼻を拭う。拭えば拭うほど血はあふれ、視界も真っ赤に染まり始めた。目、鼻、耳――そして全身の穴という穴から血が噴き出し、帝は血の海に溺れた。
「これがお前の望みだというのか――浮世」
そこで目が覚めた。跳ね起きると暑くもないのに顔から汗がしたたる。ここは見慣れた清涼殿の一室。振り返ると弓御前がいた。
「わしは眠っておったか……」
「ええ、うなされておりました」
「夢を見た……浮世の夢だ」
「浮世の……」
「これはどういう意味だ」
「神祇官を呼び、夢解きをさせますか?」
「いや、お前の意見が聞きたい」
「普通ならば、夢に出てくる相手というものは、夢見る者に対してその心に強き想念を抱いているものです。しかし浮世は……」
「そうだ――浮世は死んだ……わしが殺した」
帝は眠る前までそうしていたように、弓御前の膝に顔をうずめた。
「わしは謡舞寮に帰りたい……だが、謡舞寮が怖い……」
弓御前は帝の禿頭を、まるで母がそうするように優しく撫でる。
帝は弓御前の着物を強く掴み、脚の間の奥深くに顔を押し込む。
そして、さめざめと泣いた、と思えばハッと顔を上げる。
「そうじゃ弓御前。褒美をやろう。何が欲しい? 今日にも鎮西より舶来の品が届く。鸚鵡じゃ、鸚鵡をやろう」
「いいえ、結構でございます」
帝は子供のように無垢に怯えた顔をした。
「私は褒美など頂かずとも、どこにも行きませぬ」
「ああ、ああ、絶対じゃぞ弓御前……」
帝は、今度は弓御前の膝の間で嬉し涙を流した。
※
錦小路のまたの名を『具足小路』という。
ここでは具足――すなわち兜や胴当てや籠手などの甲冑を取り扱う店が、朝廷黙認のもとで並んでいることから名付けられた。
かつて盛況を見せた東西の市も今や翳りを見せ、このような私設の市場が三、五、七条大路に多く軒を連ねていた。刀剣はもちろん、解毒薬、万病円(万能薬)、目薬、膏薬などの薬類や、白粉、下げ緒、笄、帯、糸、櫛、針、綿、紙扇などの日用品の中古も出回っている。むろん入手経路はあやしい。
物が十分に足りている――という意味の『具足』も込められている。
「刀を見せて」
セナは刀剣商の露店で足を止めた。笠を目深にかぶった商人の男は、両手を開いて商品を披露する。
「はいよ、どんなものをお探しで?」
「黒い刀身……刃が木目のような模様に覆われている」
「何だそりゃぁ?」
商人は呆れた声を出し、指でちょいと笠を上げた。ホオヅキだった。
「水野実真の刀。あんなの初めて見た」
「会ったのか。どんな男だ?」
「さあ? 命令通り命は守った。でも、妖怪は殺せなかった」
「それも命令だからな」
「意味がわからない。鬼童丸は何を」
「疑問を挟むな。仮にあの場で妖怪を仕留めろと言われてお前に出来たか?」
セナは奥歯を噛む。何も言えなかった。
「お頭の計画は滞りなく進んでいる――が、アレだけは誤算だった。まさか、お前の他にも暗殺者がいたとはな」
「静乃は私とは違う」
「そうかもな」
「わかるの?」
セナは思わず声を張った。ホオヅキは少し驚き、軽く笑う。
「自分で言っておいて変なヤツだな。わかるさ。そうだな……帝が何で妖怪って呼ばれてるか、知ってるか?」
「それは……」
鬼童丸は、帝がこの日ノ本を恐怖で支配していると言っていた。
セナもその目で謡舞寮の女官が追放される場面を見た。そして、静乃を前にして無感動に言い放った『殺せ』という言葉。まるで蚊でも潰せと言わんばかりだった。
「恐怖……」
「そうだ。その核となるのが――権威だ。なぜ京の都に人や富が集まる? それは権威があるからだ。権威によって選ばれた国司はそれぞれの任国に赴き、政治を行う。それはさながら小さな王だ。そして、王は王であり続けるために、より強大な王の歓心を得ようとする」
「それが帝……」
「ああ、だから各国に散らばった国司たちは領地の富を吸い上げ、せっせと都に送るのさ。帝が何も言わずとも、その意を勝手に汲んで御所の造営を熱心に行ったりしてな。それで、最後にこう言うのさ――帝の御為でございます」
ホオヅキは売り物の太刀を手に取り、鞘から半分抜いた。
「帝ってヤツはその実体以上にチカラを持っている。その源は武力だ。帝が一声かければ何十万もの軍勢が動く――と、誰もが思っている。これが重要だ。妖怪が妖怪たるゆえんは、その見えないチカラにあるのさ」
そして――と、ホオヅキはセナの目をまっすぐ見すえた。
「妖怪を恨んでいる人間は多い……お前と違ってな」
「私と?」
「お前は空っぽだ。恨みなんてありゃしねえ。命令通り相手を殺すだけだ」
その通りだった。静乃と自分の決定的な違い。それは心だ。
謡舞寮には同じ目的でやって来た。帝を殺すこと。だが、目的は同じでも静乃にはあった恨みが、情念が、つまりは心が自分にはない。
他のみんなもそうだ。舞人になるという目的は一緒だ。りつは父親のために。サギリは貧しさから抜け出すために。
でも、自分にはあくまでも手段でしかない。帝を殺すための手段だ。
そして帝を殺しても、喜びなど何もない。そう、空っぽだ。
「鬼童丸には……恨みがあるの?」
当然の疑問だった。鬼童丸は何のために帝を殺すというのか。
「お前も聞かされただろ? 今のままじゃ諸国七道が干上がっちまう。そうなると仕事がやりにくくなる。おまんまのためさ」
「本当にそうなの? 妖怪を殺せば日ノ本が良くなるの?」
「疑うのか? お頭を?」
ホオヅキの眼光が鋭さを帯びる。
「……いや」
そのとき、血相変えて一人の女がその場に飛び込んで来た。
「そこのお方、どうか……どうかお助けください! 謝礼はいたします!」
あまりの切迫ぶりに、さすがのセナとホオヅキも面喰う。額から汗を流し、着物も乱れ、髪も散り散りになった女は、五十文ひと組の銭差し(ヒモや藁を通して束ねた銅銭)を懐からいくつか出して見せた。
セナとホオヅキは目を合わせる。
「おいおい、理由を説明してもらおうか」
「姫宮が鬼どもにさらわれたのです」
「姫宮が!?」
「ひめみやって?」セナはホオヅキに問う。
「ああ、つまり、帝の娘だ」
いつも冷静なホオヅキが、驚きを眉宇に浮かべている。
宮とは、帝に連なる一族のことである。この中から正式に宣下を受けて地位を認められれば、男ならば親王、女ならば内親王となる。
「で、どの姫宮だ? たしか今の帝に娘は三人いたはずだが……」
「そのどれでもありません」
「話が見えんな」
「わたくしがお仕えしている姫宮は、都から追われたのでございます」
姫宮の女官が語るには、すべては今の帝が帝位を巡って弟皇子と支持派閥の公家・武士たちと争った内乱――『永現の乱』に端を発している。
姫宮は帝の娘であったが、弟皇子を支持する有力公卿の子息のもとに嫁ぐことが決まっていた。そのため帝位についた直後の大粛清に巻き込まれ、北陸の地に身を隠さざるを得なかったという。
「何でまた、この時機に都に来たんだ」
「大内裏には、何度も許しを請う手紙を送っております。ですが、返事を賜ったことは一度もありません。それで……」
「直談判ってヤツか。身の危険を冒して」
「近くの村に逗留していたところを鬼どもにかどわかされ、莫大な身代金を要求されました。私だけが解放されて……」
セナとホオヅキは言葉に詰まった。自分たちもその鬼である。
それも、百鬼の王と称される愛宕の黒鬼・鬼童丸の側近中の側近。
「それで、どうしようっていうんだ?」
「もちろん助け出します。手勢を集めることにも成功しました。しかし、肝心の武器が不足しているのです……」
「助けたいのはやまやまだが、大事な商品をおいそれと全部売るわけには」
「これはほんの前金。残りは言い値をお支払いいたします。もし無事帰還が認められ、内親王宣下を受けたあかつきには、出入りの商人としてあなたをお迎えいたしますから!」
「しかしな……そんな約束があんたに」
「姫宮はいくつ?」
セナは女官に問う。その鋭い眼つきを見て、嫌な予感を覚えたホオヅキはオイオイとたしなめるも、セナは聞かない。
「十六にございます。婚儀の話は、姫宮がお生まれになってすぐだったので」
セナは顔も知らない姫宮のことを思った。年齢は近い。自分の意思も持たない赤子の時にその運命を決められ、流浪の果てに鬼の虜になった。
囚われの姫宮――なぜか、その姿に静乃が重なった。
「根城に案内して。私が行く」
「えっ、あなたが……」
「私はそのへんの鬼より十倍強い。平気」
戸惑う女官をよそに、セナは太刀などの武器をまとめた積荷を背負う。刀剣ともなるとかなりの重量になるが、セナは涼しい顔で歩き出した。
「おいセナ! 血迷ったか! それは俺のだぞ!」
「あとで返す!」
セナの声はすでに遠くに行っていた。
「アイツ返す気ないだろ……ああっ、チクショウ!」
ホオヅキはぼやきながら残りの積荷をまとめ、後を追った。
※
女官の説明によると、鬼の根城は京の都の北にある『宇多村』から少し先に行った山の麓にあるという。
打ち捨てられた木こりの棲家や、炭焼き小屋などが集まった小さな集落である。
宇多村と聞いた時、セナはホオヅキにぼそりと言った。
「ねえホオヅキ……宇多村って……」
「ああ、俺たちが支配していた村だ」
「でも、どうして」
どうして――他の鬼たちが跋扈しているのか。
「鬼童丸はこの村を見捨てたというの?」
「そんなはずあるか。宇多村は愛宕に近い。雑魚どもにデカいツラされたら示しがつかない。だからこそ俺は来た。まずは村人から情報を集める」
「ホオヅキ……」
「何だ?」
「もしこれが鬼童丸の考えだったら……?」
「ナニ言ってやがる!」
ホオヅキは思わず大きな声を張った。先導していた姫宮の女官が振り返ったので、しばし黙って声をさらに小さくする。
「お頭を疑うのか?」
セナは首を横に振る。
「そんなことない……でも、わからない……。妖怪を殺すのは日ノ本を良くして仕事をしやすくするため? じゃあ水野実真を守ったのは?」
疑問を挟むな――と、ホオヅキは言えなかった。セナの想いはわかる。
ホオヅキは、鬼童丸配下の中でもヒザと並んで最古参である。まだ青さがかすかに残る鬼童丸と、当時から老人のヒザ、あとは幾人かの流れ者だった。ホオヅキは年齢の近い鬼童丸のもとで腹心として働いた。
そのすぐ後、鬼童丸がどこからか幼いセナを拾って来た。
以来、歳の離れた奇妙な相棒として、数々の任務をこなした。
鬼童丸の命令に従えばすべてが上手く行った。気持ちのいいぐらいに策は極まり、他の鬼たちを蹴散らし、多くの村々と鬼たちをその支配下に置いた。
それがここに来て、二人して鬼童丸の思惑に足踏みするとは――。
「お頭は……前にこう言った――都に嵐が来る」
「嵐……」
セナは京の都を振り返る。異様な胸騒ぎを覚えた。
宇多村に到着すると、村の入り口になにやら人だかりが出来ていた。
「あっ――」
セナが目撃したのは、傀儡芸を披露するシュウジンの姿である。十本の指に装具をはめ、そこに張られた糸でもって木偶人形をまるで生きているかのように操作している。微笑をたたえながら。
「おおっ!」
と、歓声が上がった。木偶人形は精巧に作られた玩具の剣を振り回し、髪を振り乱し、人間がそうするように、いや、それ以上の激しさで舞っている。
それは、まぎれもなく剣舞だった。
「ほう……大したものだ」ホオヅキは感心している。
「シュウジン……」
「知ってるのか?」
セナはこくりと頷く。
「細かく口出しはしないが、あまり余計なことは」
「わかってる」
「俺は女官を連れて根城を偵察してくる。お前はここで情報収集を」
「わかった」
ホオヅキと姫宮の女官はセナと別れた。
傀儡による剣舞を披露し終えたシュウジンは、木偶人形と一緒に丁寧にお辞儀をした。村人たち観衆は手を叩き、足を踏み鳴らして芸を讃えては、それぞれの日常に戻って行った。子供たちはまだ遠巻きからシュウジンを見てはいたが。
「やあ、セナ――偶然だね」
「シュウジン、どうしてここに?」
「大学寮の課題さ。村を巡って芸を披露するのは傀儡師の原点だからね」
「原点?」
「芸を生業とする人々は自由なんだ。何も持たない。何も持たせない」
「そうなの?」
「流しの芸人は今もいるよ。でもそれは、自分の意志でなったわけじゃない。行きたい場所に行けない芸人は、囚われているのと同じさ」
セナはシュウジンの言葉の意味がよくわからず、眉間に皺を寄せた。その様子を見てシュウジンは笑う。
「ははっ、意味がわからないよね。僕だって心から理解は出来てない」
「難しい。自由は自由……違う?」
「セナ、君は素直だね。僕もそんなふうに思えたら、幸せだろうな」
「……バカにしてる?」
「滅相もない。ただ、同じ風景を見ていても、人によってはまったく違うモノが見えているってことさ」
「また難しいことを言う」
そのとき、遠巻きにシュウジンを眺めていた村の子供たちが駆け寄って来た。
「もっかいお人形さん見せて!」
「見せて見せて!」
「ああ、もちろん」
シュウジンは特製の木箱から、剣舞の木偶人形とは別の人形を取り出した。筋骨隆々の男の人形である。子供たちはその勇ましい姿に目を輝かせた。
「これは野見宿禰といって、日ノ本最強の角力(相撲)の勇士だよ」
そう言いながら、シュウジンは野見宿禰の木偶人形を子供たちの前で操って見せる。豪快な腕の振り、強力な踏ん張り。同じ木製の人形のはずが、先ほどの剣舞人形とはうって変わって肉体に重みを宿らせている。
「蛾王みたい」
「うん。彼に似せて作った」
「自分で? 全部?」
「そうだよ。木材から選んで自分で削り出した。何もかも一人でやれないと傀儡師は務まらないからね。舞人だって同じだろう? 衣装はもちろん、白粉も、紅も、手元にない時は自分で作れるようにしておかないと……違う?」
「うん、作り方は教わった。白粉は貝殻をすり潰して作る」
たしかに、謡舞寮では化粧の仕方の他にも、化粧道具の作り方を学んだ。衣装が破れた時の縫い物も、扇子の補修法も、それどころか、怪我や病気の時に効果のある薬草の種類やその煎じ方なども。
「自由でいるためには、本当の強さが必要なのさ」
「本当の強さ……」
考えてもみなかった。鬼童丸のもとで教わった強さとは、敵を殺すこと。
お前は空っぽだ――ホオヅキの言葉が不意によみがえる。
私は鬼より強い――女官にはそう言ってみせたが、何だか虚しく感じる。いくら強くとも静乃を救うことは出来ない。
「私はてんでダメだ。だって空っぽだから」
「空っぽか……」
「シュウジンは強いね」
「いいや、僕なんかただの弱虫だよ。強くなりたいと思っているだけのね」
「そうなの?」
「うん……それより、どうしてこの村に?」
セナは少し迷ってからこう言った。
「――鬼退治」
具足小路で出会った女官のことを話し、姫宮のこともすべて話した。シュウジンに安易な嘘を吐いても見抜かれると思えばこそだが、嘘を吐きたくないという気持ちもあった。どうしてだかわからない。
「姫宮ね……たしかに、ついこないだこの村に、野盗たちが来たらしい。数は七人だったかな? 何も盗らなかったそうだよ」
「何も? 狙いは最初から姫宮ってこと?」
「さあ。でも、どうしてセナが姫宮を助けるの?」
助ける義理などない。それは自分でもよくわかっている。乗りかかった船にしてはあまりに小さい。
姫宮に静乃の姿を重ねたが、姫宮を助けたところで静乃が助かるわけではない。姫宮救出を手柄に帝に直談判――という手もあるが、姫宮は帝に認められていないのだ。まず無理だろう。
「正直、わからない。ただのワガママかも」
シュウジンの傀儡を見ていた子供たちは、親に呼ばれてそれぞれの家に帰って行った。
その光景を二人で見つめる。
「実はね、私も鬼なんだ」
セナは言った。ごく自然に言葉が出た。
「そっか」
シュウジンもまた驚いた様子はなく、静かに聞いている。
「帝を暗殺しようとしているのも、私が鬼だから」
「セナが鬼なら僕は――」
シュウジンが言いかけた時、偵察中だったホオヅキが一人で戻って来た。
「根城の間取りは把握した。夜を待つ必要はなさそうだ。行くぞ」
「僕も行くよ。オトリぐらいにはなる」
その提案に、ホオヅキは顔で唯一露出している目を丸くする。
「わかった」
セナはあっさり承諾した。むろんホオヅキは慌てる。
「おい、セナ! 正気か!?」
「いいの。シュウジン、行ってくれる?」
「もちろん」
セナもシュウジンも、ホオヅキを置いて行ってしまった。ホオヅキは予想外の展開に戸惑って頭を掻きむしる。
「セナのやつ、どうしたってんだ一体!?」
そう言いながら、ホオヅキはしぶしぶ二人の後を追った。
春の野に遊ぶ自分の手足を。豊かな緑を踏みしめ、あたたかい風を掴み、舞い散る花びらの行方を目で追った。
その先には真昼の空に浮かぶ真円の月。見るほどに形を大きくしていったと思えば、それは自分の手足が大地から離れ、ふわりと宙に舞ったからだ。
眼下に広がる大地は砂糖菓子のように溶け崩れ、あたりは一瞬にして漆黒の闇に覆われた。
帝は目を凝らす。すべての方向に、金粉でも散りばめたようにキラキラ輝く小さな光がある。
星だ。星々だ。つまらぬ光だ。
ひときわ輝く月がいよいよ眼前に迫り、その白い光の中で何かが像をなした。
透き通るほどの純白の衣をまとった人の姿をしている。
まさしく天女だった――。
光の天女は帝に手を差し伸べる。それを取ろうと帝も手を伸ばすが、天女は慈愛に満ちた笑みを浮かべて遠ざかる。
つーっと鼻血が出た。帝は鼻を拭う。拭えば拭うほど血はあふれ、視界も真っ赤に染まり始めた。目、鼻、耳――そして全身の穴という穴から血が噴き出し、帝は血の海に溺れた。
「これがお前の望みだというのか――浮世」
そこで目が覚めた。跳ね起きると暑くもないのに顔から汗がしたたる。ここは見慣れた清涼殿の一室。振り返ると弓御前がいた。
「わしは眠っておったか……」
「ええ、うなされておりました」
「夢を見た……浮世の夢だ」
「浮世の……」
「これはどういう意味だ」
「神祇官を呼び、夢解きをさせますか?」
「いや、お前の意見が聞きたい」
「普通ならば、夢に出てくる相手というものは、夢見る者に対してその心に強き想念を抱いているものです。しかし浮世は……」
「そうだ――浮世は死んだ……わしが殺した」
帝は眠る前までそうしていたように、弓御前の膝に顔をうずめた。
「わしは謡舞寮に帰りたい……だが、謡舞寮が怖い……」
弓御前は帝の禿頭を、まるで母がそうするように優しく撫でる。
帝は弓御前の着物を強く掴み、脚の間の奥深くに顔を押し込む。
そして、さめざめと泣いた、と思えばハッと顔を上げる。
「そうじゃ弓御前。褒美をやろう。何が欲しい? 今日にも鎮西より舶来の品が届く。鸚鵡じゃ、鸚鵡をやろう」
「いいえ、結構でございます」
帝は子供のように無垢に怯えた顔をした。
「私は褒美など頂かずとも、どこにも行きませぬ」
「ああ、ああ、絶対じゃぞ弓御前……」
帝は、今度は弓御前の膝の間で嬉し涙を流した。
※
錦小路のまたの名を『具足小路』という。
ここでは具足――すなわち兜や胴当てや籠手などの甲冑を取り扱う店が、朝廷黙認のもとで並んでいることから名付けられた。
かつて盛況を見せた東西の市も今や翳りを見せ、このような私設の市場が三、五、七条大路に多く軒を連ねていた。刀剣はもちろん、解毒薬、万病円(万能薬)、目薬、膏薬などの薬類や、白粉、下げ緒、笄、帯、糸、櫛、針、綿、紙扇などの日用品の中古も出回っている。むろん入手経路はあやしい。
物が十分に足りている――という意味の『具足』も込められている。
「刀を見せて」
セナは刀剣商の露店で足を止めた。笠を目深にかぶった商人の男は、両手を開いて商品を披露する。
「はいよ、どんなものをお探しで?」
「黒い刀身……刃が木目のような模様に覆われている」
「何だそりゃぁ?」
商人は呆れた声を出し、指でちょいと笠を上げた。ホオヅキだった。
「水野実真の刀。あんなの初めて見た」
「会ったのか。どんな男だ?」
「さあ? 命令通り命は守った。でも、妖怪は殺せなかった」
「それも命令だからな」
「意味がわからない。鬼童丸は何を」
「疑問を挟むな。仮にあの場で妖怪を仕留めろと言われてお前に出来たか?」
セナは奥歯を噛む。何も言えなかった。
「お頭の計画は滞りなく進んでいる――が、アレだけは誤算だった。まさか、お前の他にも暗殺者がいたとはな」
「静乃は私とは違う」
「そうかもな」
「わかるの?」
セナは思わず声を張った。ホオヅキは少し驚き、軽く笑う。
「自分で言っておいて変なヤツだな。わかるさ。そうだな……帝が何で妖怪って呼ばれてるか、知ってるか?」
「それは……」
鬼童丸は、帝がこの日ノ本を恐怖で支配していると言っていた。
セナもその目で謡舞寮の女官が追放される場面を見た。そして、静乃を前にして無感動に言い放った『殺せ』という言葉。まるで蚊でも潰せと言わんばかりだった。
「恐怖……」
「そうだ。その核となるのが――権威だ。なぜ京の都に人や富が集まる? それは権威があるからだ。権威によって選ばれた国司はそれぞれの任国に赴き、政治を行う。それはさながら小さな王だ。そして、王は王であり続けるために、より強大な王の歓心を得ようとする」
「それが帝……」
「ああ、だから各国に散らばった国司たちは領地の富を吸い上げ、せっせと都に送るのさ。帝が何も言わずとも、その意を勝手に汲んで御所の造営を熱心に行ったりしてな。それで、最後にこう言うのさ――帝の御為でございます」
ホオヅキは売り物の太刀を手に取り、鞘から半分抜いた。
「帝ってヤツはその実体以上にチカラを持っている。その源は武力だ。帝が一声かければ何十万もの軍勢が動く――と、誰もが思っている。これが重要だ。妖怪が妖怪たるゆえんは、その見えないチカラにあるのさ」
そして――と、ホオヅキはセナの目をまっすぐ見すえた。
「妖怪を恨んでいる人間は多い……お前と違ってな」
「私と?」
「お前は空っぽだ。恨みなんてありゃしねえ。命令通り相手を殺すだけだ」
その通りだった。静乃と自分の決定的な違い。それは心だ。
謡舞寮には同じ目的でやって来た。帝を殺すこと。だが、目的は同じでも静乃にはあった恨みが、情念が、つまりは心が自分にはない。
他のみんなもそうだ。舞人になるという目的は一緒だ。りつは父親のために。サギリは貧しさから抜け出すために。
でも、自分にはあくまでも手段でしかない。帝を殺すための手段だ。
そして帝を殺しても、喜びなど何もない。そう、空っぽだ。
「鬼童丸には……恨みがあるの?」
当然の疑問だった。鬼童丸は何のために帝を殺すというのか。
「お前も聞かされただろ? 今のままじゃ諸国七道が干上がっちまう。そうなると仕事がやりにくくなる。おまんまのためさ」
「本当にそうなの? 妖怪を殺せば日ノ本が良くなるの?」
「疑うのか? お頭を?」
ホオヅキの眼光が鋭さを帯びる。
「……いや」
そのとき、血相変えて一人の女がその場に飛び込んで来た。
「そこのお方、どうか……どうかお助けください! 謝礼はいたします!」
あまりの切迫ぶりに、さすがのセナとホオヅキも面喰う。額から汗を流し、着物も乱れ、髪も散り散りになった女は、五十文ひと組の銭差し(ヒモや藁を通して束ねた銅銭)を懐からいくつか出して見せた。
セナとホオヅキは目を合わせる。
「おいおい、理由を説明してもらおうか」
「姫宮が鬼どもにさらわれたのです」
「姫宮が!?」
「ひめみやって?」セナはホオヅキに問う。
「ああ、つまり、帝の娘だ」
いつも冷静なホオヅキが、驚きを眉宇に浮かべている。
宮とは、帝に連なる一族のことである。この中から正式に宣下を受けて地位を認められれば、男ならば親王、女ならば内親王となる。
「で、どの姫宮だ? たしか今の帝に娘は三人いたはずだが……」
「そのどれでもありません」
「話が見えんな」
「わたくしがお仕えしている姫宮は、都から追われたのでございます」
姫宮の女官が語るには、すべては今の帝が帝位を巡って弟皇子と支持派閥の公家・武士たちと争った内乱――『永現の乱』に端を発している。
姫宮は帝の娘であったが、弟皇子を支持する有力公卿の子息のもとに嫁ぐことが決まっていた。そのため帝位についた直後の大粛清に巻き込まれ、北陸の地に身を隠さざるを得なかったという。
「何でまた、この時機に都に来たんだ」
「大内裏には、何度も許しを請う手紙を送っております。ですが、返事を賜ったことは一度もありません。それで……」
「直談判ってヤツか。身の危険を冒して」
「近くの村に逗留していたところを鬼どもにかどわかされ、莫大な身代金を要求されました。私だけが解放されて……」
セナとホオヅキは言葉に詰まった。自分たちもその鬼である。
それも、百鬼の王と称される愛宕の黒鬼・鬼童丸の側近中の側近。
「それで、どうしようっていうんだ?」
「もちろん助け出します。手勢を集めることにも成功しました。しかし、肝心の武器が不足しているのです……」
「助けたいのはやまやまだが、大事な商品をおいそれと全部売るわけには」
「これはほんの前金。残りは言い値をお支払いいたします。もし無事帰還が認められ、内親王宣下を受けたあかつきには、出入りの商人としてあなたをお迎えいたしますから!」
「しかしな……そんな約束があんたに」
「姫宮はいくつ?」
セナは女官に問う。その鋭い眼つきを見て、嫌な予感を覚えたホオヅキはオイオイとたしなめるも、セナは聞かない。
「十六にございます。婚儀の話は、姫宮がお生まれになってすぐだったので」
セナは顔も知らない姫宮のことを思った。年齢は近い。自分の意思も持たない赤子の時にその運命を決められ、流浪の果てに鬼の虜になった。
囚われの姫宮――なぜか、その姿に静乃が重なった。
「根城に案内して。私が行く」
「えっ、あなたが……」
「私はそのへんの鬼より十倍強い。平気」
戸惑う女官をよそに、セナは太刀などの武器をまとめた積荷を背負う。刀剣ともなるとかなりの重量になるが、セナは涼しい顔で歩き出した。
「おいセナ! 血迷ったか! それは俺のだぞ!」
「あとで返す!」
セナの声はすでに遠くに行っていた。
「アイツ返す気ないだろ……ああっ、チクショウ!」
ホオヅキはぼやきながら残りの積荷をまとめ、後を追った。
※
女官の説明によると、鬼の根城は京の都の北にある『宇多村』から少し先に行った山の麓にあるという。
打ち捨てられた木こりの棲家や、炭焼き小屋などが集まった小さな集落である。
宇多村と聞いた時、セナはホオヅキにぼそりと言った。
「ねえホオヅキ……宇多村って……」
「ああ、俺たちが支配していた村だ」
「でも、どうして」
どうして――他の鬼たちが跋扈しているのか。
「鬼童丸はこの村を見捨てたというの?」
「そんなはずあるか。宇多村は愛宕に近い。雑魚どもにデカいツラされたら示しがつかない。だからこそ俺は来た。まずは村人から情報を集める」
「ホオヅキ……」
「何だ?」
「もしこれが鬼童丸の考えだったら……?」
「ナニ言ってやがる!」
ホオヅキは思わず大きな声を張った。先導していた姫宮の女官が振り返ったので、しばし黙って声をさらに小さくする。
「お頭を疑うのか?」
セナは首を横に振る。
「そんなことない……でも、わからない……。妖怪を殺すのは日ノ本を良くして仕事をしやすくするため? じゃあ水野実真を守ったのは?」
疑問を挟むな――と、ホオヅキは言えなかった。セナの想いはわかる。
ホオヅキは、鬼童丸配下の中でもヒザと並んで最古参である。まだ青さがかすかに残る鬼童丸と、当時から老人のヒザ、あとは幾人かの流れ者だった。ホオヅキは年齢の近い鬼童丸のもとで腹心として働いた。
そのすぐ後、鬼童丸がどこからか幼いセナを拾って来た。
以来、歳の離れた奇妙な相棒として、数々の任務をこなした。
鬼童丸の命令に従えばすべてが上手く行った。気持ちのいいぐらいに策は極まり、他の鬼たちを蹴散らし、多くの村々と鬼たちをその支配下に置いた。
それがここに来て、二人して鬼童丸の思惑に足踏みするとは――。
「お頭は……前にこう言った――都に嵐が来る」
「嵐……」
セナは京の都を振り返る。異様な胸騒ぎを覚えた。
宇多村に到着すると、村の入り口になにやら人だかりが出来ていた。
「あっ――」
セナが目撃したのは、傀儡芸を披露するシュウジンの姿である。十本の指に装具をはめ、そこに張られた糸でもって木偶人形をまるで生きているかのように操作している。微笑をたたえながら。
「おおっ!」
と、歓声が上がった。木偶人形は精巧に作られた玩具の剣を振り回し、髪を振り乱し、人間がそうするように、いや、それ以上の激しさで舞っている。
それは、まぎれもなく剣舞だった。
「ほう……大したものだ」ホオヅキは感心している。
「シュウジン……」
「知ってるのか?」
セナはこくりと頷く。
「細かく口出しはしないが、あまり余計なことは」
「わかってる」
「俺は女官を連れて根城を偵察してくる。お前はここで情報収集を」
「わかった」
ホオヅキと姫宮の女官はセナと別れた。
傀儡による剣舞を披露し終えたシュウジンは、木偶人形と一緒に丁寧にお辞儀をした。村人たち観衆は手を叩き、足を踏み鳴らして芸を讃えては、それぞれの日常に戻って行った。子供たちはまだ遠巻きからシュウジンを見てはいたが。
「やあ、セナ――偶然だね」
「シュウジン、どうしてここに?」
「大学寮の課題さ。村を巡って芸を披露するのは傀儡師の原点だからね」
「原点?」
「芸を生業とする人々は自由なんだ。何も持たない。何も持たせない」
「そうなの?」
「流しの芸人は今もいるよ。でもそれは、自分の意志でなったわけじゃない。行きたい場所に行けない芸人は、囚われているのと同じさ」
セナはシュウジンの言葉の意味がよくわからず、眉間に皺を寄せた。その様子を見てシュウジンは笑う。
「ははっ、意味がわからないよね。僕だって心から理解は出来てない」
「難しい。自由は自由……違う?」
「セナ、君は素直だね。僕もそんなふうに思えたら、幸せだろうな」
「……バカにしてる?」
「滅相もない。ただ、同じ風景を見ていても、人によってはまったく違うモノが見えているってことさ」
「また難しいことを言う」
そのとき、遠巻きにシュウジンを眺めていた村の子供たちが駆け寄って来た。
「もっかいお人形さん見せて!」
「見せて見せて!」
「ああ、もちろん」
シュウジンは特製の木箱から、剣舞の木偶人形とは別の人形を取り出した。筋骨隆々の男の人形である。子供たちはその勇ましい姿に目を輝かせた。
「これは野見宿禰といって、日ノ本最強の角力(相撲)の勇士だよ」
そう言いながら、シュウジンは野見宿禰の木偶人形を子供たちの前で操って見せる。豪快な腕の振り、強力な踏ん張り。同じ木製の人形のはずが、先ほどの剣舞人形とはうって変わって肉体に重みを宿らせている。
「蛾王みたい」
「うん。彼に似せて作った」
「自分で? 全部?」
「そうだよ。木材から選んで自分で削り出した。何もかも一人でやれないと傀儡師は務まらないからね。舞人だって同じだろう? 衣装はもちろん、白粉も、紅も、手元にない時は自分で作れるようにしておかないと……違う?」
「うん、作り方は教わった。白粉は貝殻をすり潰して作る」
たしかに、謡舞寮では化粧の仕方の他にも、化粧道具の作り方を学んだ。衣装が破れた時の縫い物も、扇子の補修法も、それどころか、怪我や病気の時に効果のある薬草の種類やその煎じ方なども。
「自由でいるためには、本当の強さが必要なのさ」
「本当の強さ……」
考えてもみなかった。鬼童丸のもとで教わった強さとは、敵を殺すこと。
お前は空っぽだ――ホオヅキの言葉が不意によみがえる。
私は鬼より強い――女官にはそう言ってみせたが、何だか虚しく感じる。いくら強くとも静乃を救うことは出来ない。
「私はてんでダメだ。だって空っぽだから」
「空っぽか……」
「シュウジンは強いね」
「いいや、僕なんかただの弱虫だよ。強くなりたいと思っているだけのね」
「そうなの?」
「うん……それより、どうしてこの村に?」
セナは少し迷ってからこう言った。
「――鬼退治」
具足小路で出会った女官のことを話し、姫宮のこともすべて話した。シュウジンに安易な嘘を吐いても見抜かれると思えばこそだが、嘘を吐きたくないという気持ちもあった。どうしてだかわからない。
「姫宮ね……たしかに、ついこないだこの村に、野盗たちが来たらしい。数は七人だったかな? 何も盗らなかったそうだよ」
「何も? 狙いは最初から姫宮ってこと?」
「さあ。でも、どうしてセナが姫宮を助けるの?」
助ける義理などない。それは自分でもよくわかっている。乗りかかった船にしてはあまりに小さい。
姫宮に静乃の姿を重ねたが、姫宮を助けたところで静乃が助かるわけではない。姫宮救出を手柄に帝に直談判――という手もあるが、姫宮は帝に認められていないのだ。まず無理だろう。
「正直、わからない。ただのワガママかも」
シュウジンの傀儡を見ていた子供たちは、親に呼ばれてそれぞれの家に帰って行った。
その光景を二人で見つめる。
「実はね、私も鬼なんだ」
セナは言った。ごく自然に言葉が出た。
「そっか」
シュウジンもまた驚いた様子はなく、静かに聞いている。
「帝を暗殺しようとしているのも、私が鬼だから」
「セナが鬼なら僕は――」
シュウジンが言いかけた時、偵察中だったホオヅキが一人で戻って来た。
「根城の間取りは把握した。夜を待つ必要はなさそうだ。行くぞ」
「僕も行くよ。オトリぐらいにはなる」
その提案に、ホオヅキは顔で唯一露出している目を丸くする。
「わかった」
セナはあっさり承諾した。むろんホオヅキは慌てる。
「おい、セナ! 正気か!?」
「いいの。シュウジン、行ってくれる?」
「もちろん」
セナもシュウジンも、ホオヅキを置いて行ってしまった。ホオヅキは予想外の展開に戸惑って頭を掻きむしる。
「セナのやつ、どうしたってんだ一体!?」
そう言いながら、ホオヅキはしぶしぶ二人の後を追った。
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