毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます

愛徳らぴ

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46.変わる生活

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 あの日からオスリック殿下は部屋を訪ねて来なくなった。
 当たり前のことで予想はできていたけど、それでも少し寂しい。
 空虚な日々を送っている中、侍女が手紙を持って来た。中身を確認するとお父様からだった。以前の偽手紙事件のこともあって警戒したけれど、ハイタッド家の紋章が入っていたので本物だ。


<我が最愛の娘 セラフィンへ

 キミがいない屋敷は静かで寂しくて仕方がない。
 けれど一番大事なのはセラフィンの命と健康であり、最良の治療ができるのならばと王城への滞在を認めた。
 先日オスリック殿下から連絡を受け、その治療が完了したと聞いた。
 どうだろう、そろそろ家に帰って来ないか?
 もう王城に留まる理由はないはずだろう。
 できるだけ早い返事を待っている。

 キミの幸せを願う父より>


「……お父様」

 オスリック殿下がお父様に私の完治を報せたらしい。文面から帰って来てほしいという思いが伝わってくる。
 返事は早い方がいい。お父様も待ってらっしゃるし。
 返事の内容は帰る日時を伝えるものになる。きっと迎えの馬車も出してくれる。
 その日が本当にお別れの日であり、オスリック殿下が遠い人になってしまう日だ。

「挨拶をしなくてはいけないわ。オスリック殿下だけじゃない。アキムさんにもお世話になったもの、何かお礼をしないと。それに……それに……」

 部屋でひとり虚空に向かって列挙した、王城を離れるまでにやらないといけないこと。たくさんあればあるほどいい。そうしたらさよならの日を遅らせられる。
 細かいことまで脳内で絞り出していると、コンコンコンと扉がノックされた。

「セラフィン、話がある」
「オスリック殿下⁉ 今、扉をお開けいたします」

 思わぬ訪問者に気が動転して、小走りで扉に駆け寄ってしまう。
 扉を開けるとそこには懐かしささえ覚える顔があった。オスリック殿下は入るそぶりは見せずに扉の前で話し出す。

「ハイタッド公爵から手紙が届いただろう」

 一瞬どうしてと疑問に思ったけれど、オスリック殿下がお父様に報せたのだからその返事が来る日が分かっても不思議ではない。

「ええ、届いております」
「俺の方から手紙を出しておくから、セラフィンはなにもしなくていい」
「え……」
「いや、必要な荷物はまとめておいた方がいいな。けどそれだけでいい」

 次々に投下される言葉に頭が追い付かない。
 どうして手紙を出さなくていいのかとか、どうして荷物をまとめないといけないのかとか、聞きたいことがあったのに、次にオスリック殿下が放った言葉ですべて吹き飛んでしまった。

「早馬で今日中に手紙を届ける。明日、セラフィンを迎えに来るようにとな」
「あ……明日⁉」
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