毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます

愛徳らぴ

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38.ブレアナのお願い

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 兵士に案内されてやって来た控室に、私とブレアナは二人残された。
 決闘後の挨拶に手間取っているらしく、オスリック殿下たちが戻って来るまではもう少し時間がかかるという話だ。
 この時間にブレアナにオスリック殿下の目を治してもらえないか話してみよう。
 けれど、私が口を開くよりも先にブレアナが話し出す。

「私、セラフィン様にお話しなければならないことがあるんですの」

 可憐なブレアナは、珍しく真剣な眼差しだ。

「――オスリック様は治癒能力者を探していらっしゃいます」
「っ!」

 私が話そうとした内容と同じ!
 突然のことで私は返事ができないでいた。

「その様子ですと、セラフィン様はすでにご存じのようですね。そしてその治癒能力者というのは私のことなのです」
「そ、そう……」

 前世の情報がある私はブレアナが治癒能力者であると知っていたけれど、事情を話すわけにはいかないので曖昧に返事する。

「私はオスリック様の妻になれば、オスリック様の望む治療をすると約束します。ですからどうか、セラフィン様からオスリック様に話を通してください」
「え……」

 オスリック殿下の妻に……誰が? ブレアナが?

「オスリック様がセラフィン様を大切にされていることは知っています。ですので、セラフィン様から話してくだされば、オスリック様もきっと納得」
「ちょ、ちょっと待ってくださいブレアナ様。殿下の妻への推薦などという出過ぎたまねは、とてもではないですが私にはできません」
「そんなことありませんわ。セラフィン様を妻にと考えているオスリック殿下ですもの。セラフィン様直々にお伝えになれば、必ず考えを変えてくださいます。あ、もしかして私が治癒能力者というのが信じられませんか?」

 強引に話を進めるブレアナの圧に負けて、少しずつ後ずさる。

「確かセラフィン様も同じ毒で苦しまれてますわよね。それを取り除いて差し上げます」
「な、なにを……」

 今のブレアナの言葉で、さっき彼女が言っていた『オスリック様に毒の心配はありませんが』が聞き間違いでなかったことを理解する。
 理由は分からないけど、ブレアナはオスリック殿下が毒に侵されて今なおその後遺症に悩んでいることを知っているようね。
 ブレアナは私の前で両手を組み祈り始める。
 光の粒が視認できるようになり、それが私の周りに集まって来ていた。

「なに、これ……」

 不思議なことに危険な感じは一切しない。温かい光が私の体を覆い隠し、やがて影のようなものを私の中から引きずり出して消えていった。

「これで、セラフィン様の解毒は完了です。ね、信じていただけるかしら?」

 まるで喉に布でも詰められてるみたいに、ブレアナへの返事ができない。
 ブレアナは小さくて可愛くて、誰からも愛されるような子なのに……なのに私は、初めて彼女のことを怖いと感じた。
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