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37.セラフィンの願い
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オスリック殿下もアエルバートも王太子と王子とは思えないくらいの戦闘能力を見せる。その激しい打ち合いに私は魅入っていた。
すごい。人間業じゃないみたい。
ひったくりを捕まえてくれたことがあるオスリック殿下だけど、普段は運動と縁があるような人には見えない。そのオスリック殿下がこうまで激しく動く姿は想像していなかった。
キィン、と甲高い音がしてオスリック殿下の剣が弾かれる。しかし大きく体勢を崩すこともなく反撃へと移った。
何回かの攻撃をギリギリのところで避けたオスリック殿下。完全に避けきれなかった一撃が、眼帯の紐を裂いた。ひらりと眼帯が地面に落ちる。
オスリック殿下の一瞬の動揺がこちらにも伝わってきた。けれどすぐに切り替えて攻撃の態勢を取ると、不思議なことに今度はアエルバートが動揺した。
オスリック殿下の凛々しい姿に胸が高鳴るのを感じる。オスリック殿下がこうして決闘することになったのは私のせいだというのに、罪悪感よりも喜びが上回ってしまう。
こんな感情抱いてはいけないのに……。
分かってはいても、オスリック殿下が本気で戦っているのが自分のためなのだと自覚すると、愛情を注ぎ込まれるみたいな気分になる。
「オスリック殿下……」
予感はあった。いつかオスリック殿下を好きになってしまうんじゃないかって。そしてそれは現実になり、気持ちは留まるところを知らずどんどん大きくなっていく。
好き。好きです。
「……負けないで」
オスリック殿下が怪我をしないで決闘が終わりますようにとか、オスリック殿下が王太子のままでいられますようにとか、そういう気持ちもあるけど、それと同じくらい婚約が認められますようにという願いが強くなる。
オスリック殿下はオスリック殿下のできることをやっている。だから私も……。
横目でブレアナの姿を盗み見る。
彼女と話して、オスリック殿下の青い瞳を治してもらえるように交渉しよう。
「きゃあ!」
「わっ!」
隣のブレアナが悲鳴を上げたせいで、私も驚いてしまった。ブレアナの視線は真っ直ぐに闘技場の中央に向けられていて、私も慌てて視線を戻す。
オスリック殿下が地面に横たわるアエルバートの頭の横に剣を突き立てている。
「――勝者、オスリック殿下!」
レフェリーは大きく手を挙げて宣言した。大きな歓声が上がる。
「やっ……た……」
オスリック殿下が勝った。これで王太子の座を譲らなくて済む。
無意識にふぅっと息を吐いた。気付かないうちに肩に力が入っていたらしい。
観客が盛り上がる中、オスリック殿下は片手をアエルバートに差し出した。その手をアエルバートは数秒見つめた後、しっかりと握り返す。アエルバートを立ち上がらせた後は、二人して互いに健闘を称えていた。
決闘しなければならないくらいに仲が悪かったはずなのに、終わってみれば険悪な雰囲気は全くない。
二人の様子に安心していると、後ろから兵士に声を掛けられる。
「お二人とも、オスリック殿下とアエルバート様のところへ案内します」
決闘後は控室に来てくれとオスリック殿下に言われていたので、私は小さく頷いて立ち上がった。
すごい。人間業じゃないみたい。
ひったくりを捕まえてくれたことがあるオスリック殿下だけど、普段は運動と縁があるような人には見えない。そのオスリック殿下がこうまで激しく動く姿は想像していなかった。
キィン、と甲高い音がしてオスリック殿下の剣が弾かれる。しかし大きく体勢を崩すこともなく反撃へと移った。
何回かの攻撃をギリギリのところで避けたオスリック殿下。完全に避けきれなかった一撃が、眼帯の紐を裂いた。ひらりと眼帯が地面に落ちる。
オスリック殿下の一瞬の動揺がこちらにも伝わってきた。けれどすぐに切り替えて攻撃の態勢を取ると、不思議なことに今度はアエルバートが動揺した。
オスリック殿下の凛々しい姿に胸が高鳴るのを感じる。オスリック殿下がこうして決闘することになったのは私のせいだというのに、罪悪感よりも喜びが上回ってしまう。
こんな感情抱いてはいけないのに……。
分かってはいても、オスリック殿下が本気で戦っているのが自分のためなのだと自覚すると、愛情を注ぎ込まれるみたいな気分になる。
「オスリック殿下……」
予感はあった。いつかオスリック殿下を好きになってしまうんじゃないかって。そしてそれは現実になり、気持ちは留まるところを知らずどんどん大きくなっていく。
好き。好きです。
「……負けないで」
オスリック殿下が怪我をしないで決闘が終わりますようにとか、オスリック殿下が王太子のままでいられますようにとか、そういう気持ちもあるけど、それと同じくらい婚約が認められますようにという願いが強くなる。
オスリック殿下はオスリック殿下のできることをやっている。だから私も……。
横目でブレアナの姿を盗み見る。
彼女と話して、オスリック殿下の青い瞳を治してもらえるように交渉しよう。
「きゃあ!」
「わっ!」
隣のブレアナが悲鳴を上げたせいで、私も驚いてしまった。ブレアナの視線は真っ直ぐに闘技場の中央に向けられていて、私も慌てて視線を戻す。
オスリック殿下が地面に横たわるアエルバートの頭の横に剣を突き立てている。
「――勝者、オスリック殿下!」
レフェリーは大きく手を挙げて宣言した。大きな歓声が上がる。
「やっ……た……」
オスリック殿下が勝った。これで王太子の座を譲らなくて済む。
無意識にふぅっと息を吐いた。気付かないうちに肩に力が入っていたらしい。
観客が盛り上がる中、オスリック殿下は片手をアエルバートに差し出した。その手をアエルバートは数秒見つめた後、しっかりと握り返す。アエルバートを立ち上がらせた後は、二人して互いに健闘を称えていた。
決闘しなければならないくらいに仲が悪かったはずなのに、終わってみれば険悪な雰囲気は全くない。
二人の様子に安心していると、後ろから兵士に声を掛けられる。
「お二人とも、オスリック殿下とアエルバート様のところへ案内します」
決闘後は控室に来てくれとオスリック殿下に言われていたので、私は小さく頷いて立ち上がった。
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