毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます

愛徳らぴ

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35.ブレアナは希望になり得るか

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 オスリック殿下とアエルバートの決闘が、いよいよ明日行われる。
 決闘がオスリック殿下の勝利で終われば、私は晴れて殿下の婚約者となる。けれどもし負ければ、オスリック殿下は王太子ではなくなってしまう。
 私が戦うわけではないのに緊張して、無意味に室内を行ったり来たりしていた。

「そうだわ。明日の決闘は私も見に行くことになっているのだから、どんな格好で行くか考えておかないと」

 鏡の前に座り――自分の顔を見て愕然とした。
 瞳の色が深い夜の色をしている。

「……うそ……!」

 オスリック殿下の言葉が頭の中で反響する。私にも夜空の色に変わる兆候が出ていると言っていた。
 鏡の中の私の瞳はあっという間に元の空色に戻り、まるで錯覚だったみたい。もしもオスリック殿下から説明を受けていなければ、見間違いとして片づけていただろう。
 今はまだ元の色に戻るけれど、いずれは夜空の色が定着してしまう。
 オスリック殿下は瞳の色が変わることを悪いことのように言っていたけれど、瞳が夜空色になるだけの代償で日々の解毒が不要になるのならそう悪い話ではない。
 けれど――。

『この綺麗な真昼の空の色をした瞳が別の色に変わってしまうのは惜しい』

 オスリック殿下に贈られたこの言葉だけで、胸の内に未練が生まれてしまう。
 明日の決闘後にオスリック殿下がアエルバートとわだかまりを解消し、ブレアナの力を借りることができればすべて丸く収まる……けれど。
 そもそも決闘を行う二人が決闘後に仲良くなれるかというと、なれない可能性の方がずっと高い。話し合いで分かり合えなかったから決闘するのだ。

「あ、そういえば……」

 決闘をどこで観戦することになるのかをオスリック殿下に教えてもらったところ、私はどうやら特別席で観戦することになるらしい。ブレアナも一緒だと告げられた。
 オスリック殿下としてはブレアナが一緒なのは不安だったみたいだけど、私とブレアナの両方を護衛するためには仕方なかったらしい。
 ブレアナにアエルバートの説得を頼めないかしら?

「…………いやいや」

 ブレアナには私を階段から落とした疑惑がある……。
 ……でも、私はブレアナをもう一度だけ信じてみたい。ブレアナの態度はいつも悪くなかった。
 私を心配してくれたし、気遣いもしてくれた。もしかしたら本当はいい子なのかもしれない。
 私が悪役令嬢だったから対立してしまったけど、ブレアナはヒロインなのだから性格だっていいはずなのだ。

「明日の観戦のときに話してみようかな」

 ブレアナと仲良くなれれば一歩前進。そう前向きに考えて、私は明日のために気合いを入れた。
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