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30.いつもと違う治療
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――どうしましょう。
朝食を終えた私は、もうすぐやって来るオスリック殿下を待ちながらソワソワとしていた。
朝食後はいつも通り治療の時間。でも今までとは違って、オスリック殿下に求婚されてから初めてのこと。
これからはキスに意味が追加されてしまう。
落ち着かない状態でいると、オスリック殿下がやって来た。こちらは意識しているのに、殿下の表情は普段と変わらないものに見える。
「調子はどう?」
「き、緊張してます……」
オスリック殿下が小さく噴き出した。
「そうか。嬉しいよ。……他に気になるところがなければ治療を始めようか」
心臓が壊れそうなほど早い。すでに息が苦しくって、このままキスをしたら頭がどうにかなってしまいそう。
「心配しないで。怖いことなんて何もない。今までもそうだっただろ」
はちみつの色をした瞳に目を奪われると、自分の体が自分のものでなくなってしまったみたいに動けなくなる。
顎に手を掛けられ、スッと顔が上を向く。顔が近づいてきたのに気付いて、慌てて目を閉じた。
唇が合わさったのでいつも通りにそっと口を開く。舌が絡むのを期待していたのに、角度を変えて唇を吸われるだけでそこから先に進まない。
焦れた私がこっそり目を開くと、オスリック殿下がいたずらに成功した子供みたいな顔をして笑っていた。
「なっ……見ていたんですかっ?」
「アンタがどんな顔して俺とキスしてるのか知りたくなってな。……可愛い」
「もうっ!」
トロトロに溶け切った甘い蜜のような感情をダイレクトにぶつけられて、もういっぱいいっぱいだった。
「ははっ、悪かった」
全然悪びれもせずにオスリック殿下は再びキスをしてくる。
今度はちゃんと舌が絡み、唾液が混ざり合う。
こんな風にオスリック殿下の婚約者としてキスをしているなんて、まだ信じられない。夢でも見てる気分。けれどただの治療には不必要なくらいに長い時間舌を絡めていることで、このキスにはオスリック殿下の気持ちも含まれてるんだと感じた。
治療名目のキスを終えると、オスリック殿下は甘やかな笑顔から真面目な顔へと表情を変えた。
「これから国王陛下への報告に向かう。もう後戻りはできないが、覚悟はいいな?」
「……はい、としか言わせる気がないのでしょう?」
他のご令嬢の方が相応しいのかもしれないという引け目はまだある。それでも、オスリック殿下が私を選んでくださるというのなら、信じて付いて行こう。
「そうだ」
オスリック殿下が差し出した腕に手を掛ける。
「さあ、一緒に行こう――謁見の間へ」
朝食を終えた私は、もうすぐやって来るオスリック殿下を待ちながらソワソワとしていた。
朝食後はいつも通り治療の時間。でも今までとは違って、オスリック殿下に求婚されてから初めてのこと。
これからはキスに意味が追加されてしまう。
落ち着かない状態でいると、オスリック殿下がやって来た。こちらは意識しているのに、殿下の表情は普段と変わらないものに見える。
「調子はどう?」
「き、緊張してます……」
オスリック殿下が小さく噴き出した。
「そうか。嬉しいよ。……他に気になるところがなければ治療を始めようか」
心臓が壊れそうなほど早い。すでに息が苦しくって、このままキスをしたら頭がどうにかなってしまいそう。
「心配しないで。怖いことなんて何もない。今までもそうだっただろ」
はちみつの色をした瞳に目を奪われると、自分の体が自分のものでなくなってしまったみたいに動けなくなる。
顎に手を掛けられ、スッと顔が上を向く。顔が近づいてきたのに気付いて、慌てて目を閉じた。
唇が合わさったのでいつも通りにそっと口を開く。舌が絡むのを期待していたのに、角度を変えて唇を吸われるだけでそこから先に進まない。
焦れた私がこっそり目を開くと、オスリック殿下がいたずらに成功した子供みたいな顔をして笑っていた。
「なっ……見ていたんですかっ?」
「アンタがどんな顔して俺とキスしてるのか知りたくなってな。……可愛い」
「もうっ!」
トロトロに溶け切った甘い蜜のような感情をダイレクトにぶつけられて、もういっぱいいっぱいだった。
「ははっ、悪かった」
全然悪びれもせずにオスリック殿下は再びキスをしてくる。
今度はちゃんと舌が絡み、唾液が混ざり合う。
こんな風にオスリック殿下の婚約者としてキスをしているなんて、まだ信じられない。夢でも見てる気分。けれどただの治療には不必要なくらいに長い時間舌を絡めていることで、このキスにはオスリック殿下の気持ちも含まれてるんだと感じた。
治療名目のキスを終えると、オスリック殿下は甘やかな笑顔から真面目な顔へと表情を変えた。
「これから国王陛下への報告に向かう。もう後戻りはできないが、覚悟はいいな?」
「……はい、としか言わせる気がないのでしょう?」
他のご令嬢の方が相応しいのかもしれないという引け目はまだある。それでも、オスリック殿下が私を選んでくださるというのなら、信じて付いて行こう。
「そうだ」
オスリック殿下が差し出した腕に手を掛ける。
「さあ、一緒に行こう――謁見の間へ」
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