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28.大事な話
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目が覚めるとオスリック殿下の顔が間近にあった。
「…………オスリック殿下?」
「セラフィン、目が覚めたのか」
「ここは……」
見慣れた部屋の壁が見えてやけにホッとする。長い夢を見ていたように落ち着かない気持ちがした。
オスリック殿下の手が頬を撫でる。
「半日以上眠っていたんだ。体調はどうだ?」
「……なんかちょっとだけぼんやりしますけど、苦しいとかはありません」
「そうか。それは良かった」
オスリック殿下に緊張感が見て取れた。
「何かあったのですか?」
「覚えてないのか? アンタは実家に帰る途中、城下町で拉致監禁されたんだ」
物騒な言葉に体に力が籠もる。
そうだ。私は商店街で買い物をしようとしていたところで、いきなり後ろから襲われた。
「侍女がアンタにハイタッド公爵からの手紙を届けたらしいが、確認したところそんな手紙は出していないそうだ。最初から仕組まれてたんだ」
「そ、そんな……」
恐怖が体を駆け抜けていく。
処刑が終われば絶対安全だなんて楽観視はしてなかったつもり。でもこんな風に直接的に狙われることが現実になるなんて思ってもなかった。
「侍女から誰に手紙を渡されたのかを聞いた。……アエルバートだそうだ」
オスリック殿下から告げられた犯人の名前に驚きはしなかった。
私は元々アエルバートに処刑される運命にあったのに、奇跡的に生き延びられた。ストーリーが元の筋書きに戻ろうとするなら、私を殺そうとする力が働くのも頷ける。
「セラフィン。大事な話があるんだ」
「……なんでしょうか?」
もしかして見捨てられてしまうの? いいえ、ここでオスリック殿下を責めるのは筋違いだわ。オスリック殿下の厚意があって、こうして生きていられたんだもの。その厚意が絶たれたとしても、プラスがゼロになるだけで何かが奪われるわけじゃない。
「……あの…………すまない、少し待ってくれ」
「…………」
そんなに話しにくいことなのかしら。それもそうか。解毒打ち切りとなったら近いうちに私の命は尽きることが確定する。
けれどそもそも毒の原因はアエルバートなので、オスリック殿下が苦しむことはない。
「オスリック殿下。私はどのような言葉でも受け入れます。どうかひと思いに言ってくださいませ」
「そう言ってくれると助かる」
珍しくオスリック殿下が微笑みを浮かべた。あまり表情の変わらない人だから新鮮ね。
オスリック殿下の手が私の手をぎゅっと握る。まるで勇気づけるみたいに。
この人がいたから心穏やかに過ごすことができた。この後何が待ち受けているとしても、私はオスリック殿下から与えられた優しさを忘れない。
オスリック殿下……あなたのことが大好きでした。
覚悟を決めてオスリック殿下と視線を合わせる。相変わらず眼帯をしているから右目としか合わないけど、その瞳からは充分感情が伝わってきた。
オスリック殿下が再度口を開く。
「俺の妻になってくれ」
「…………オスリック殿下?」
「セラフィン、目が覚めたのか」
「ここは……」
見慣れた部屋の壁が見えてやけにホッとする。長い夢を見ていたように落ち着かない気持ちがした。
オスリック殿下の手が頬を撫でる。
「半日以上眠っていたんだ。体調はどうだ?」
「……なんかちょっとだけぼんやりしますけど、苦しいとかはありません」
「そうか。それは良かった」
オスリック殿下に緊張感が見て取れた。
「何かあったのですか?」
「覚えてないのか? アンタは実家に帰る途中、城下町で拉致監禁されたんだ」
物騒な言葉に体に力が籠もる。
そうだ。私は商店街で買い物をしようとしていたところで、いきなり後ろから襲われた。
「侍女がアンタにハイタッド公爵からの手紙を届けたらしいが、確認したところそんな手紙は出していないそうだ。最初から仕組まれてたんだ」
「そ、そんな……」
恐怖が体を駆け抜けていく。
処刑が終われば絶対安全だなんて楽観視はしてなかったつもり。でもこんな風に直接的に狙われることが現実になるなんて思ってもなかった。
「侍女から誰に手紙を渡されたのかを聞いた。……アエルバートだそうだ」
オスリック殿下から告げられた犯人の名前に驚きはしなかった。
私は元々アエルバートに処刑される運命にあったのに、奇跡的に生き延びられた。ストーリーが元の筋書きに戻ろうとするなら、私を殺そうとする力が働くのも頷ける。
「セラフィン。大事な話があるんだ」
「……なんでしょうか?」
もしかして見捨てられてしまうの? いいえ、ここでオスリック殿下を責めるのは筋違いだわ。オスリック殿下の厚意があって、こうして生きていられたんだもの。その厚意が絶たれたとしても、プラスがゼロになるだけで何かが奪われるわけじゃない。
「……あの…………すまない、少し待ってくれ」
「…………」
そんなに話しにくいことなのかしら。それもそうか。解毒打ち切りとなったら近いうちに私の命は尽きることが確定する。
けれどそもそも毒の原因はアエルバートなので、オスリック殿下が苦しむことはない。
「オスリック殿下。私はどのような言葉でも受け入れます。どうかひと思いに言ってくださいませ」
「そう言ってくれると助かる」
珍しくオスリック殿下が微笑みを浮かべた。あまり表情の変わらない人だから新鮮ね。
オスリック殿下の手が私の手をぎゅっと握る。まるで勇気づけるみたいに。
この人がいたから心穏やかに過ごすことができた。この後何が待ち受けているとしても、私はオスリック殿下から与えられた優しさを忘れない。
オスリック殿下……あなたのことが大好きでした。
覚悟を決めてオスリック殿下と視線を合わせる。相変わらず眼帯をしているから右目としか合わないけど、その瞳からは充分感情が伝わってきた。
オスリック殿下が再度口を開く。
「俺の妻になってくれ」
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