毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます

愛徳らぴ

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27.【Side:オスリック】解毒と後悔

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 侍女に言われて奥へと目を向けると、まるで米俵のように動かず床に転がっているセラフィンの姿が目に飛び込んできた。

「セラフィン!」

 慌てて駆け寄り声を掛けるが、目を開ける気配がない。侍女と同じように手足を縛られて口に布が巻かれていたので、まずは口の布を解く。苦しそうに荒い息を吐いていた。
 手足の縄をナイフで切って抱き寄せると、その体の熱さに戦慄する。

「捕まったときにはそこまで体調が悪くはなかったのですが、時間が経つにつれてセラフィン様がぐったりし始めて……」

 涙声になりながら侍女がセラフィンの経過を説明してくれる。

「夜からこうなったのか?」

 侍女に近づいて手足を縛っている縄を切りながら聞くと、侍女はうなった。

「ずっとこの部屋の中にいたので正確な時間は分かりませんが、数時間前からセラフィン様は苦しそうでした」
「……そうか」

 おかしいな。セラフィンの体調から考えると、ちょうど今の時間帯くらいから悪化が始まる程度だと思っていたが。
 早くセラフィンの治療をしなければならない。悪いが侍女には出て行ってもらおう。

「町のどこかにアキムがいるから呼んできてくれ。動けるな?」
「はい、分かりました」

 侍女は立ち上がるとすぐに出て行ってくれた。

「さて、と」

 急いでセラフィンの状態を確認する。外傷はなく、単に高熱なだけのようだ。症状を見ると、単に毒が増しただけに見える。
 床に座って体勢を整えセラフィンを抱き上げた。そのまま唇を合わせる。高い熱とそれに伴う乾燥を感じながら、舌をねじ込んだ。
 最初にセラフィンの解毒をしたときは十数分かかった。
 角度を変え、舌を絡ませ唾液を流し込んでいく。
 死ぬなないでくれ、セラフィン。
 一度口を離して様子を見ると、セラフィンの長いまつげが震えた。ゆっくりと瞼が持ち上がる。

「セラフィ……ッ!」

 名前を呼ぼうとして、ギクリとした。心臓が嫌な脈の打ち方をする。
 彼女の空色の瞳が……濃さを増して夜空の色をしていた。俺の左目と同じ、忌まわしい夜の色だ。
 まだ意識が混濁しているらしくすぐに目は閉じられてしまった。
 俺はもう一度セラフィンに口づけた。
 俺の抗体よ、セラフィンの中に入って毒を打ち破ってくれ。彼女の中から毒を消してくれ。
 このままセラフィンの瞳までも青くなってしまったら、俺は自分の不甲斐なさを一生恥じることになる。
 油断してセラフィンを攫われる事態になってしまったことが、後悔してもしきれない。
 ……しかしたとえ夜空の瞳になってしまったとしても、まだ希望は残っている。

「セラフィン、俺はアンタを絶対に助ける。なんとしても治癒能力者を探し出してみせるからな」
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