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23.お父様からの手紙

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 しばらくして、私の打ち身はすっかり良くなった。オスリック殿下の持って来てくれた塗り薬のおかげかもしれない。
 それに何度か庭に出たのも良かったと感じる。階段から落ちた直後はまた似たようなことが起こるんじゃないかと不安もあったけど、不運はそう何度も続くことはなく平和に散策できた。
 今日もまた外に出てみようと考えているとき、侍女が手紙を持って部屋にやって来た。封筒にも入っていない二つ折りの簡素なものだ。

「なんだろう……」

 中を見て見ると、差出人はどうやらお父様らしい。


<セラフィンへ
 元気にしているか? 体調が良くなったのなら、一度家に顔を見せに帰って来なさい>


 そういえば療養生活を始めて以降、お父様と会ったことはない。体調もだいぶ回復したし、日帰りで王城へ戻って来れば解毒にも問題はないはず。
 行くなら早い時間の方がいい。その方が早く帰って来れるから、オスリック殿下に心配を掛けずに済む。
 すぐに着替えて準備を整え、アキムさんを捕まえて話を通す。オスリック殿下は今夜開催される軍の式典にの準備で忙しくて会うことはできなかった。でもまぁ、アキムさんに伝えておけばいずれオスリック殿下にも伝わるわけで、問題はない。
 王城勤めの侍女にもかかわらず今日は私についてくれるということで、侍女と一緒に城下町へ向かった。そこで馬車に乗り、ハイタッドの領地へ向かうことになる。

「そうだわ。せっかくだから何か買っていきましょう」

 久しぶりに家に戻るのだから、何かしらのお菓子でも買っていこう。町の商店の中には海外の珍しいお菓子を扱う店もあったはずだ。

「それでしたら、商店街の端に新しいお店が開店したので、そちらはいかがでしょうか?」
「そうなの? ちょうどいいわ。そこに行ってみましょう」

 侍女の提案に乗って、私は新しくできたという店に行ってみることにした。
 商店街の端まで来ると、人の行き来がまばらになり歩きやすくなる。ここまでついつい速足で来てしまったから、侍女とはぐれていないか確認するために振り返った。遠くに町の人たちの姿が見えるだけで、近くには誰もいない。

「あら? もしかして本当にはぐれてしまったのかしら? 困ったわ……」

 最悪買い物は諦めるにしても、馬車に乗るなら侍女は連れて行かなければならない。町娘の格好ならともかく、今日の姿で供もなしでは不審すぎる。
 一度城に戻ろうか、と考えていた矢先の出来事だった。

「……んぐっ!」

 何者かに口を塞がれ意識が遠のいていき、やがて完全に気を失った。
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