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22.【Side:オスリック】初めての苦悩
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用事を終えて部屋に着き、まだ座りもしないうちにアキムが俺に報告をしてきた。
「セラフィン様が階段から落ちられました」
「……なんだって?」
解毒が不十分だったのか? それとも想定以上に筋力が落ちていた? 原因はいったいなんだ。
「彼女はどうしている?」
「背中と腕を打っていますが、意識はしっかりしています。ですが一つ気になることがあります」
「気になること?」
「はい。セラフィン様はブレアナ様と一緒にいたところ、階段を踏み外したようなのです」
「ブレアナか……」
アエルバートが夢中になっているシュレイム伯爵家の令嬢だったな。セラフィンを捨ててまで乗り換えた相手というが、いまいちパッとしないという印象がぬぐえない。
処刑のときもブレアナ、ブレアナとアエルバートは名前を出していたが、果たしてブレアナという女はどういう人物なんだろう。
「事故のときすぐに駆け寄ったところ、セラフィン様は意識がすぐに戻り、ブレアナ様はその場では気を失ったままでした。そこにアエルバート様がちょうどやって来て、セラフィン様のせいだと決めつけていました」
「なるほど。だが今回は俺もアエルバートを責められないな。俺もブレアナが何かをしたのではないかと考えている」
「……はい」
こうして報告してきたことを考えても、アキムも俺と同じくブレアナがセラフィンを階段から落としたと疑っているのだろう。
「とにかく、ブレアナには注意しないといけないな」
セラフィンの様子を確認しようと彼女の部屋を訪れる。意識はすぐに戻ったとの話だからそこまで心配していなかったが、彼女は俺が想像していたよりも元気そうだった。
頑丈なんです、と彼女は笑うが、笑いごとではないので気を付けて欲しい。
打ち身に効く薬を持ってきたので塗ってやろうとすると、彼女はなんと……目をつむってキスを待った。
……していいのか? いや、普通に考えてダメだろう。時間的に解毒は明日の朝食後で充分だ。
しかし何を考えてるんだセラフィンは……もしかして彼女も俺に気があるのか……待て、落ち着け、彼女は打ち身の治療を毒の治療と勘違いしただけで、他にはきっと何も考えていない。
なんとか正しい思考に軌道修正し、腕を出すように指示をする。
セラフィンは素直に腕を出した。それなのに一度軌道の逸れた思考は簡単に間違った方向へと進もうとする。
彼女の腕に薬を塗るのにやましい気持ちはなかった。だが次は背中だと考えた瞬間に頭の中にセラフィンの白い背中が浮かんでしまい、自分が正気でいられる自信がなくなってしまった。こんなことは生まれて初めての経験だ。
背中に塗るのは侍女に頼むよう言って、俺は逃げるように部屋に戻った。
「セラフィン様が階段から落ちられました」
「……なんだって?」
解毒が不十分だったのか? それとも想定以上に筋力が落ちていた? 原因はいったいなんだ。
「彼女はどうしている?」
「背中と腕を打っていますが、意識はしっかりしています。ですが一つ気になることがあります」
「気になること?」
「はい。セラフィン様はブレアナ様と一緒にいたところ、階段を踏み外したようなのです」
「ブレアナか……」
アエルバートが夢中になっているシュレイム伯爵家の令嬢だったな。セラフィンを捨ててまで乗り換えた相手というが、いまいちパッとしないという印象がぬぐえない。
処刑のときもブレアナ、ブレアナとアエルバートは名前を出していたが、果たしてブレアナという女はどういう人物なんだろう。
「事故のときすぐに駆け寄ったところ、セラフィン様は意識がすぐに戻り、ブレアナ様はその場では気を失ったままでした。そこにアエルバート様がちょうどやって来て、セラフィン様のせいだと決めつけていました」
「なるほど。だが今回は俺もアエルバートを責められないな。俺もブレアナが何かをしたのではないかと考えている」
「……はい」
こうして報告してきたことを考えても、アキムも俺と同じくブレアナがセラフィンを階段から落としたと疑っているのだろう。
「とにかく、ブレアナには注意しないといけないな」
セラフィンの様子を確認しようと彼女の部屋を訪れる。意識はすぐに戻ったとの話だからそこまで心配していなかったが、彼女は俺が想像していたよりも元気そうだった。
頑丈なんです、と彼女は笑うが、笑いごとではないので気を付けて欲しい。
打ち身に効く薬を持ってきたので塗ってやろうとすると、彼女はなんと……目をつむってキスを待った。
……していいのか? いや、普通に考えてダメだろう。時間的に解毒は明日の朝食後で充分だ。
しかし何を考えてるんだセラフィンは……もしかして彼女も俺に気があるのか……待て、落ち着け、彼女は打ち身の治療を毒の治療と勘違いしただけで、他にはきっと何も考えていない。
なんとか正しい思考に軌道修正し、腕を出すように指示をする。
セラフィンは素直に腕を出した。それなのに一度軌道の逸れた思考は簡単に間違った方向へと進もうとする。
彼女の腕に薬を塗るのにやましい気持ちはなかった。だが次は背中だと考えた瞬間に頭の中にセラフィンの白い背中が浮かんでしまい、自分が正気でいられる自信がなくなってしまった。こんなことは生まれて初めての経験だ。
背中に塗るのは侍女に頼むよう言って、俺は逃げるように部屋に戻った。
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