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19.ブレアナと私
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そこにいたのは予想通りブレアナだった。
「お体はもう大丈夫ですの?」
心配そうに尋ねてくるその目は丸くて可愛らしい。アエルバートが入れ込んでしまうのもうなずける。
「ええ、回復してきたので少し外に出て来たんです。ブレアナ様はどうしてここへ?」
「私はロージー様に呼ばれて来たんです」
「ロージー様に?」
ロージーというのはアエルバートの生母でこの国の第二王妃。第一王妃が十二年前に亡くなられて、第二とは名ばかりの実質王妃になっている。フルネームはロージー=アロロガシーだ。
「ですが少々早く到着しすぎてしまい、ロージー様の前の用事が終わっていらっしゃらなかったので、こちらのお庭で待たせてもらってましたの」
背後に花を背負いながらにこりと微笑んだブレアナの姿はまるで絵本に出てくる妖精のようだった。
さすがヒロイン。ものすごい可愛さ。
「ロージー様と仲が良いのですか?」
「はい、気に入っていただけているみたいなんです。私もロージー様とお話するのは楽しいので、招待されると図々しくも毎回こうして城に来ていますの」
ロージーとブレアナね。確かゲーム内で関わることはアエルバートのルートだけだったはず。やっぱりここの世界はアエルバートが攻略対象になっている世界なのか。
「セラフィン様はロージー様とお話することはないんですか?」
「私は……今までありませんね」
「あ……」
私がロージーに会ったことがないというのが何を意味するか。気にしたことはなかったけど、アエルバートの婚約者として母のロージーに気に入られていなかったという証だった。
それに気付いたブレアナが気まずい表情を浮かべ、手に持っていた扇子でサッと口元を隠した。
「それにしても今日はいいお天気ですわ。セラフィン様見てください、こちらの花とっても綺麗です」
下手ではあるものの、これはブレアナなりの気遣いだろう。
こうして話していると彼女は悪い人間のようには思えなかった。私が処刑される悪役令嬢で彼女が愛されるヒロイン。立場としては敵で、彼女がいなければ私の処刑もなかったし毒状態にもならなかったはずなのに。
一緒に花を見る時間は居心地のいいものだった。
もうそろそろロージーのところに行くとブレアナが言い出したので、私も部屋に引き上げることにする。あまり長時間外にいて具合が悪くなったら、またオスリック殿下に迷惑を掛けてしまうことになるし。
行きはアキムさんに手を引かれた階段を今度は一人で上っていく。隣に並ぶブレアナと他愛ない会話を続けながら、最後の一段に足を掛けた。
「……え」
ぐっと体が後ろに引かれた。バランスを取ろうと足場を探すけど、上手く階段を踏めずに体が傾ぐ。
「セラフィン様! きゃあ!」
何がどうなったのか。私の上にブレアナが乗るような形で、二人して階段の上から下まで落ちていった。
「お体はもう大丈夫ですの?」
心配そうに尋ねてくるその目は丸くて可愛らしい。アエルバートが入れ込んでしまうのもうなずける。
「ええ、回復してきたので少し外に出て来たんです。ブレアナ様はどうしてここへ?」
「私はロージー様に呼ばれて来たんです」
「ロージー様に?」
ロージーというのはアエルバートの生母でこの国の第二王妃。第一王妃が十二年前に亡くなられて、第二とは名ばかりの実質王妃になっている。フルネームはロージー=アロロガシーだ。
「ですが少々早く到着しすぎてしまい、ロージー様の前の用事が終わっていらっしゃらなかったので、こちらのお庭で待たせてもらってましたの」
背後に花を背負いながらにこりと微笑んだブレアナの姿はまるで絵本に出てくる妖精のようだった。
さすがヒロイン。ものすごい可愛さ。
「ロージー様と仲が良いのですか?」
「はい、気に入っていただけているみたいなんです。私もロージー様とお話するのは楽しいので、招待されると図々しくも毎回こうして城に来ていますの」
ロージーとブレアナね。確かゲーム内で関わることはアエルバートのルートだけだったはず。やっぱりここの世界はアエルバートが攻略対象になっている世界なのか。
「セラフィン様はロージー様とお話することはないんですか?」
「私は……今までありませんね」
「あ……」
私がロージーに会ったことがないというのが何を意味するか。気にしたことはなかったけど、アエルバートの婚約者として母のロージーに気に入られていなかったという証だった。
それに気付いたブレアナが気まずい表情を浮かべ、手に持っていた扇子でサッと口元を隠した。
「それにしても今日はいいお天気ですわ。セラフィン様見てください、こちらの花とっても綺麗です」
下手ではあるものの、これはブレアナなりの気遣いだろう。
こうして話していると彼女は悪い人間のようには思えなかった。私が処刑される悪役令嬢で彼女が愛されるヒロイン。立場としては敵で、彼女がいなければ私の処刑もなかったし毒状態にもならなかったはずなのに。
一緒に花を見る時間は居心地のいいものだった。
もうそろそろロージーのところに行くとブレアナが言い出したので、私も部屋に引き上げることにする。あまり長時間外にいて具合が悪くなったら、またオスリック殿下に迷惑を掛けてしまうことになるし。
行きはアキムさんに手を引かれた階段を今度は一人で上っていく。隣に並ぶブレアナと他愛ない会話を続けながら、最後の一段に足を掛けた。
「……え」
ぐっと体が後ろに引かれた。バランスを取ろうと足場を探すけど、上手く階段を踏めずに体が傾ぐ。
「セラフィン様! きゃあ!」
何がどうなったのか。私の上にブレアナが乗るような形で、二人して階段の上から下まで落ちていった。
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