毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます

愛徳らぴ

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18.回復

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「体調がだいぶ安定してきたな。これなら普段は普通に過ごしても問題なさそうだ」

 私の体調を日々管理していたオスリック殿下にそう告げられてホッとする。これでオスリック殿下の負担が少しでも軽くなるならいいのだけど。

「とはいえ無理はいけない。毒はまだアンタの体の中にあって、放っておけば死ぬことを忘れるな」
「はい。分かりました」

 どうやら今日でベッドの上での生活とお別れできそう。ずっと安静にしてたから退屈してきたところだった。

「まずは体力の落ちた体を慣らす必要がある。庭に出る許可は出してあるから、気が向いたら行ってみるといい」
「何から何までありがとうございます」
「気にするな。手を貸したのだから最後まで面倒みるさ」

 気付かないフリをしようとしたけど、やっぱりちょっぴり胸が痛んだ。殿下にとってこうして私と接することは義務と責任によるものらしい。
 私にできることはオスリック殿下に迷惑を掛けないようにして、なるべく早く完全に解毒することだけ。

「俺はこれから予定があって少し城から離れるが、何かあったらアキムを頼ってくれ。心配はいらない、夜には帰って来る」

 そう言い残すと、オスリック殿下は部屋から出て行った。
 早速庭に出てみようと思いベッドから出る。よそ行きの華美なものではないけれど、瞳の色に合わせた空色の軽いドレスに着替えた。
 部屋を出ると、そこにちょうどアキムさんがやって来るところだった。

「こんにちは、セラフィン様」
「アキム様、こんにちは」
「様はやめてください。運よくオスリック殿下に仕えていますが、しがない男爵家の出ですので。セラフィン様にそのように呼ばれてはどういう顔をしていいか分かりません」

 前世の記憶が強いせいで爵位による上下関係がいまいちしっくりこない。けどこういう上下関係が大事だということはセラフィンの常識として頭に入っている。

「そうですか……では、アキムさん」

 アキムさんが頷いて了承するのを確認して本題に入った。

「私に何かご用でしょうか?」
「オスリック殿下が庭に出られるようにしたとおっしゃっていたので、セラフィン様が望むのでしたら外までエスコートしようと思いまして」
「それはありがたい申し出ですわ」

 王城をうろちょろしたことはなく、いつも父かアエルバートが一緒だった。庭に出て良いと言われても、真っ直ぐ庭にたどり着けるかという一抹の不安があった。
 アキムさんに案内されて、私はゆっくりと階段を下りて庭へと向かう。途中で足元を心配して手を差し出してくれたので、甘えさせてもらった。

「本日はセラフィン様に呼ばれたら何を置いても優先するようにと言われていますので、困ったことがあればいつでも呼んでください」

 庭まで連れてきてくれたアキムさんはそう言って頭を下げた。
 何もそこまで私を優先しなくても、と心の中で思ったけれど、どう考えてもオスリック殿下の指示なのでアキムさんに言ってもしょうがない。
 分かりました、と言って私は一人庭に出た。
 久しぶりの日の下は気持ちがいい。暖かな空気が庭全体に広がっている。
 カラフルな花が咲いていて、腰をかがめてそれらをじっくりと眺めた。

「まあ、セラフィン様」

 聞き覚えのある可愛らしい声が聞こえて、私は勢いよく振り向いた。
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