毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます

愛徳らぴ

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16.療養生活

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 処刑の日を生き延びることができた私だったけど、その日から生活は一変していた。
 夜会のときにお父様は薬をかがされて部屋に閉じ込められたらしく、後になって私が処刑されそうになったと聞いたときにはひっくり返りそうな程驚いたらしい。私を屋敷に閉じ込める勢いだったそうだけど、毒の治療が必要と説明して王城に残ることを承諾した、という話をオスリック殿下から伺った。
 王城で生活するようになって、毎日朝食後にオスリック殿下が部屋にやって来る。

「おはよう。調子はどう?」
「おはようございます。調子は……」

 良い、と言い切りたかった。けれど朝起きた後から徐々に熱が上がってきている気がして、答えに詰まる。

「うん。良くないんだね。……良かった。具合悪いのに平気と言い張った昨日に比べて成長してるよ」
「……さすがにもう自分でも理解できてますから」

 昨日、具合が悪いとなるとをされてしまうので、少し我慢してもう大丈夫と伝えた。そうしたらその日の午後には意識を失って倒れてしまったのだ。……その後はされて、こうして回復したわけだけど。迷惑を掛けたくない思いからの言葉だったけど、そのせいで余計に迷惑を掛けてしまった。

「じゃあ今日の治療を始めようか」
「……はい」

 ベッドの上で上体を起こし、そっと目を閉じる。こうしてキスを待つ時間はまだ慣れない。
 唇がくっついたかと思うと、間髪入れずに舌が口を開けとつついてくる。恋人同士のキスであればもっと時間を掛けてゆっくりと進めるはず……したことないので分からないけど。その忙しなさが、これは治療なんだと私を冷静にさせてくれる。

「もっと、舌を絡めて」

 息継ぎの合間に指示を出されて、必死でその通りにする。
 二人分の唾液が混ざり合い、こくりと喉を通って体の中に入っていった。

「……これでまた一日は平気だろう」
「あ、ありがとう、ございます」
「気にしなくていい、俺にしかできないことだしな」

 自国の王太子の唾液を啜って生命を維持しているなんて、とんでもない話だ。それなのに優しいオスリック殿下は恩着せがましく礼を求めたりもしなかった。
 私はそんなオスリック殿下にちょっと怖いと思い始めていた。
 オスリック殿下は解毒方法がないと言って私を見捨てても良かったはず。こんな風にオスリック殿下が身を削ってまで私を救う選択を取る必要はどこにもない。ただただオスリック殿下の善意の上で成り立っている。
 そうまでされて、オスリック殿下を好きにならずにいられる自信なんてない。いつかきっと私はオスリック殿下のことを好きになってしまう。
 弟王子が処刑しようとした元婚約者の私が、オスリック殿下との縁談を組まれることはまずないのに。
 それどころか、この世界で悪役令嬢の宿命を負っている私が今後も無事にいられる保証はない。
 絶対にオスリック殿下とは結ばれない。それがセラフィンの――私の人生。
 だからオスリック殿下は絶対に好きになったらダメな人。それなのにオスリック殿下が優しすぎて、気持ちがあらがえなくなりそう。
 何も気にしてなさそうなオスリック殿下を見て、温度差に寂しさを覚えた。
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