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15.治療方法の提案
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私はアエルバートに刺され、その毒が体に回って気を失ってしまったらしい。刺された傷自体は大きなものではなく、しばらく安静にしていれば元通りに戻るそうだ。
「でも、私が死んでいないって知ったら、アエルバート様はまた私を殺そうとするんじゃ……」
「それなら心配しなくていい。俺が処刑の中止を宣言した以上、アエルバートの権限で再び処刑をすることは不可能だ。まぁ、それ以外の」
「えっ! そんなことができるんですか⁉」
アエルバートはこの国の王子。かなりの権力を持つ。そんな彼が始めた処刑を中止することなんてできるはずがない。
「現にこうしてアンタは生きてる。それじゃ信用できないか?」
「……それはそうですけど。いったいどうやって……?」
薬師が答える前に部屋のドアがノックされた。薬師が許可を出すと、紺色の髪の見覚えのない男性が入って来る。
「目を覚まされたようですね」
「ああ、ついさっきな」
「本当に殿下がいてよかったですね。アロロガシー家の毒は門外不出で解毒薬も存在しないので、普通なら助かりませんよ」
言っている内容の意味が分からない。殿下って何? いいえ、意味は知ってるけど。
ちらりと薬師の男を見て、ある予感が頭をよぎる。
「……あの、殿下……?」
「オスリック殿下、まさかまだ説明してなかったんですか?」
「そういえばアンタの体調のことを説明しただけで自分のことは何も教えてなかったな。俺の名はオスリック=コンポード。この国の王太子だ」
「……‼」
口から「やっぱり!」という大声が飛び出していきそうだった。道理でいいキャラデザしてるわけだ。私がやったときはサブキャラ止まりだったけど、王太子という設定があったならたぶん元々攻略対象への昇格が予定されていたに決まってる。そういえばDLCで攻略対象追加って話あったし。
「王太子……だから処刑の中止ができたんですね」
王太子ならアエルバートの行動を止めることができる。この国では王太子とただの王子とで明確に差があるから。
自分の首の皮一枚つながった理由が分かり納得する。
「毒っていうのは……?」
もう一つの疑問が残っている。
私は確かに毒に侵されていた。話によると解毒薬が存在しないらしいけど。
「アキムも言ったが、アンタの体に入った毒はアロロガシー家の特殊なものだ。俺以外では解毒できない。……訂正しよう、俺でも完全には無理だ」
「あの……解毒って」
さっきも言っていた。解毒。キスされたことを思い出して、顔が熱くなる。
「俺の体液にはアロロガシー家の毒に対する抗体が含まれている。それを患者に経口投与すれば毒を抑えることができる」
「なるほど体液……」
だからキスで唾液を投与していたんだ。
「抑えられる期間はおよそ一日だ」
「えっ⁉」
今、とんでもないことを言われた気がする。
「もしかして……これからずっとアレで治療を受けないといけないんですか……」
「毒はかなりしつこく、完全に治るかどうかは分からない。投与を止めれば毒が広がっていき、アンタはアエルバートの言った通り死ぬことになる」
「ほ、他に方法はないんですか⁉」
死ぬのは嫌だ。けど、毎日この人とキスするなんて……申し訳なさすぎる。
他に方法があるならそっちを選びたい。そう思って聞いたのに、オスリック殿下は顔をしかめた。
「あるにはあるが……」
「それは……!」
期待を込めて見つめる。
「唾液ではなく尿を飲む……俺は嫌だが、飲むか?」
「殿下、それは非常に高度なプレイです」
アキムさんがこっそりとオスリック殿下にささやくのを聞きながら、私は頭まで掛布団を引き上げた。
「唾液でお願いします‼」
「でも、私が死んでいないって知ったら、アエルバート様はまた私を殺そうとするんじゃ……」
「それなら心配しなくていい。俺が処刑の中止を宣言した以上、アエルバートの権限で再び処刑をすることは不可能だ。まぁ、それ以外の」
「えっ! そんなことができるんですか⁉」
アエルバートはこの国の王子。かなりの権力を持つ。そんな彼が始めた処刑を中止することなんてできるはずがない。
「現にこうしてアンタは生きてる。それじゃ信用できないか?」
「……それはそうですけど。いったいどうやって……?」
薬師が答える前に部屋のドアがノックされた。薬師が許可を出すと、紺色の髪の見覚えのない男性が入って来る。
「目を覚まされたようですね」
「ああ、ついさっきな」
「本当に殿下がいてよかったですね。アロロガシー家の毒は門外不出で解毒薬も存在しないので、普通なら助かりませんよ」
言っている内容の意味が分からない。殿下って何? いいえ、意味は知ってるけど。
ちらりと薬師の男を見て、ある予感が頭をよぎる。
「……あの、殿下……?」
「オスリック殿下、まさかまだ説明してなかったんですか?」
「そういえばアンタの体調のことを説明しただけで自分のことは何も教えてなかったな。俺の名はオスリック=コンポード。この国の王太子だ」
「……‼」
口から「やっぱり!」という大声が飛び出していきそうだった。道理でいいキャラデザしてるわけだ。私がやったときはサブキャラ止まりだったけど、王太子という設定があったならたぶん元々攻略対象への昇格が予定されていたに決まってる。そういえばDLCで攻略対象追加って話あったし。
「王太子……だから処刑の中止ができたんですね」
王太子ならアエルバートの行動を止めることができる。この国では王太子とただの王子とで明確に差があるから。
自分の首の皮一枚つながった理由が分かり納得する。
「毒っていうのは……?」
もう一つの疑問が残っている。
私は確かに毒に侵されていた。話によると解毒薬が存在しないらしいけど。
「アキムも言ったが、アンタの体に入った毒はアロロガシー家の特殊なものだ。俺以外では解毒できない。……訂正しよう、俺でも完全には無理だ」
「あの……解毒って」
さっきも言っていた。解毒。キスされたことを思い出して、顔が熱くなる。
「俺の体液にはアロロガシー家の毒に対する抗体が含まれている。それを患者に経口投与すれば毒を抑えることができる」
「なるほど体液……」
だからキスで唾液を投与していたんだ。
「抑えられる期間はおよそ一日だ」
「えっ⁉」
今、とんでもないことを言われた気がする。
「もしかして……これからずっとアレで治療を受けないといけないんですか……」
「毒はかなりしつこく、完全に治るかどうかは分からない。投与を止めれば毒が広がっていき、アンタはアエルバートの言った通り死ぬことになる」
「ほ、他に方法はないんですか⁉」
死ぬのは嫌だ。けど、毎日この人とキスするなんて……申し訳なさすぎる。
他に方法があるならそっちを選びたい。そう思って聞いたのに、オスリック殿下は顔をしかめた。
「あるにはあるが……」
「それは……!」
期待を込めて見つめる。
「唾液ではなく尿を飲む……俺は嫌だが、飲むか?」
「殿下、それは非常に高度なプレイです」
アキムさんがこっそりとオスリック殿下にささやくのを聞きながら、私は頭まで掛布団を引き上げた。
「唾液でお願いします‼」
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