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第4話

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またメモンの背中に乗って移動中。
今度は海を挟んだ向こう側の大陸に向かうことにした。その大陸の大半は人間が支配しているが人間同士でも対立しており、国が乱立していると見聞きする。地図を参照し現在地から一番近い国を目的地とした。
バサバサという音と共にドレッドとメモンは初めて故郷と違う地を踏んだ。
「ここはどんな所なんだろうね」
メモンはワクワクしながら上機嫌に話す。
海沿いということもあり近くに港町が見える。
「どんな魚取れるんだろうね、早く見てみようよ」魚が好物なのか口達者になるメモン。
中に入ってみると、故郷とはちがい木製の家の比率が高く、故郷と比べて温暖な気候なのが見てとれた。
しかし人々の様子は気候とは大違いでなんだかそわそわしており、なにかが起こっていることを感じさせた。港からはここから逃げ出すように荷物をまとめて船に乗る人々も見ることができた。
「なんだかここも平和って感じじゃないね……」
「そうみたいだな……」
ここは大通りで、道の左右にはたくさんの店があった。しかしながらドレッドはパンの値段を見て、異様に高いと思った。ドレッドはパンの値段程度しか今の金銭感覚を知らないけれども。
何事かが起きているのを察して近くにいる人に話を聞いた。
すると、今この国では軍部のクーデターが起きそうになっているようだ。情報のお礼として金銭を少し分け与えるともっと情報を教えてもらえた。
この国では今、傾国防止団体と名乗る奴らが政治関連施設を襲撃しようとしているのが明白な状況であるらしい。
傾国防止団体は軍部が大半を占めており、軍部が政治力や利権を増やすことが目的なのは明白だと言われていること。
属している軍部は北部に位置しているとやら。
軍部の内クーデターに反対な者は南部に集まっているとも。
北部、及び南部に2大基地があるため、そこがそれぞれの拠点となっていること。

簡単に言ってしまうと、北の基地に悪い奴らがいて、南の基地に良い奴らがいるってことだろうか。
メモンは長話なきらいなのか我慢できずに周りをうろうろしたり立ち上がってまた座ったりしている。
メモンに話を聞いといた方がいいと軽く言うと、獣人は強いから何が起きても何とかなるよ、と軽く返された。
最後に戦力的には現状維持派が弱いと聞き、ここを後にした。
「パンの値段が高いのも軍部が企業と癒着して利益を共有してるからだと言われているらしいぞ、しかもこのままだと内戦になるそうだ」
「内戦ねぇ……昔の獣人たちみたいだね」
向かう目標は南部の基地。
の、前に図書館に寄る。少しばかり調べ物をしてから行く。
「なるほど……ここにこれがあるなら……こいつの装備しているものは……これならいけるか?」
「何調べてるんだい?」
「ヒミツだ」
「……教えてくれないのかい。かなしいねえ」
嘘泣きの仕草をするメモンと図書館を後にしメモンを頼り空を飛ぶ。
故郷の地と木々の種類が違い森全体のイメージが異なっている。
基地の細かな場所の目印を聞くのを忘れていたが、それすら必要のないほどに切り開かれた土地が出現した。おそらく南部の基地だろう。
メモンに頼み基地に降り立つ。
上空から見た時、基地は森の中に円形で切り開かれたものだった。そして門は道路に繋がっている一つのみ。基地の端には川が流れていた。
守衛がいる門に近づき、話しかける。
「すみません、俺たちはよそ者ですが、あなた方の味方になりたいと今考えています。上の者と話をさせてもらえないでしょうか」
守衛は獣人を連れた変な奴に変なことを言われ困惑しているが、すぐに上にかけあってくれた。
「とりあえず、入っていいぞ」
守衛から通る許可をもらい別の兵に空いている建物の部屋に移された。
メモンは暇だからかしっぽを椅子の隙間から振り回している。
そこで少し待つと左胸にたくさんの勲章をつけたおじさんがやってきた。
「君たちかね、我々の仲間に加わりたいという者たちは」
はい、と答える。
「傾国防止団体のスパイかとも考えたが、獣人を連れていたらすぐに情報が広まるだろう。しかしそんな情報を聞いたことがないため君たちに一定の信頼をおこう」
「ありがとうございます」
メモンはずっーと頭の上まで覆うフードつきのローブを旅の時は着ているが獣人とはすぐにわかってしまう。
「いや、礼を言うのはこちらのほうだ。今は味方になってくれるのなら誰でもうれしいのだ」
「……さっそくですが、質問があります」
「ほう、なんだ?」
「大砲を扱う部隊はありますか?」
「ああ、国立記念日のパレードなどで見せているから隠す必要もない。持っているぞ」
「ならば、大砲の整備をする整備班も持っているはずですよね」
「うむ、しかし今は大砲を撃つ機会がないから少々暇を持て余しているから訓練ばかりだがな」
「その班を少しお借りしたいです」
「……?ほう、つまり、貴殿はなにかしら大砲の用意ができると?」
「うまくいけば、です」
「戦力はあればあるほどいい。大砲の整備班に加え大砲を学んだ者たちも少しつけよう。あとうちの国で大体の大砲に使われてる砲弾も運ばせる」
「お気遣いありがとうございます」
「おっと待ちたまえ、こちらからも質問がある。どうして我々の味方を?」
「……この町の、この国の市民の状態をみて、この状況は変えなければならないと感じました。だからこそこちらの味方をしにきたのです」

ドレッドとメモンは送られてきた兵たちに挨拶をする。
「俺は軍人でもないが、この国を正したい思いは同じのはずだ。頼む、俺についてきてくれ。よろしくたのむ」
一番年長者であろう者が口を開く
「俺たちは上の命令に従うだけでさぁ。よろしく」
ドレッドと握手したが、同じように手を出したメモンとは握手はしてもらえなかった。
こいつはおそらく将軍格の人に俺のやることを伝えるスパイ役かもしれない。
じゃないとすんなり味方してくれるのもおかしい。
人数が多いためメモンに飛んでいってもらうことはできないため、公共交通機関を利用することにした。木炭バスは国外に脱出する国民もいるためメモンとの飛行に比べれば天と地の差の乗りごごちだった。馬車も同じことだろう。一目で獣人と分かるメモンの側には不自然に空間が空いていて、メモンはすこし悲しそうな目をしていた。だがその隙間はドレッドが潰した。すまん、ちょっと寄るぞ、と。
ついでに運賃はドレッドが一括であった。
軍もそんなにカネが有り余ってるわけじゃないだからな、というのが年長者らしき兵の言い分だった。バスはそのまま北部の港町に着き、全員が下車した。今度は歩きで海沿いを歩く。大砲の整備班は整備用の道具も持っているため疲れの表情が早く出た。人より力のあるメモンが持てば解決するだろうがメモンはドレッド以外の人間には心をそれほど開いてはなかった。
傾国防止団体の本拠地である北部の基地付近にて、ドレッドは言った。
「ここで少し待っててくれ、大砲を持ってくる」
それを聞いた兵たちはみな首を傾げ、は?とでもいいたげだった。
ドレッドは振り向きメモンと共に空へ行き、海上へ飛び立った。

「こんなに近いところにこれがあるとはな。運が良かったぜ」
ドレッドはスキルを発動し海底に眠る軍艦を浮上させた。
「ベンバウ級装甲艦一番艦ベンバウ。嵐の中の演習中に浸水で沈んだ艦だ。陸に向かって航行していたからか陸に近くて助かったぜ」
図書館で調べた通りだった。
「一度も使われたことのない大砲、活躍させてやるよ」
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