60 / 80
真実が明かされる日
この淫魔、返品可能ですか?
しおりを挟む
「きゃああ」
私に抱き付いていたイブちゃんが由希人くんに気がついて、私から離れて自分を抱き締めたままプルプル震えている。
「ごめんなさい……ごめんなさい………殺さないで」
一瞬で彼女の前に移動した由希人くんは人差し指をイブちゃんの額にトンと押し当てた。イブちゃんは目を見開いたまま動かなくなった。
「由希人くん!イブちゃん、キズ付けないで!悪い子じゃないの」
「ゆうきさんの精気を食べるなんて、本来なら万死に値するんですけどね。究極熟成を完成出来たのは、彼女のおかげみたいですし………ふんふん。なるほど」
由希人くんが額から指を離すと、イブちゃんは、パタンと倒れた。
由希人くんは奥の高志くんが眠っている場所へ真っ直ぐ歩いていく。
「高志くんも悪くないんだよ」
「はい、さっき彼女の記憶を大まかに読んだので、事情は掴めました」
そう、言いながら眠っている高志くんの左胸の上に手を置く。
「そんな事、出来たの?」
「はあ、最近、大量の人間の思考を確認する仕事がありまして、その時に出来るようになりました……うーん。左心房の血管と壁に異常がありますね。こっちは、初めてだから上手くいくかな」
由希人くんの手が光る。瞳を閉じて集中しているのがわかる。どれくらい、そうやっていただろう。
倒れていたイブちゃんが気がついて慌てて駆け寄ってくる。
「高志くん!」
「気が散る、黙ってて」
イブちゃんと固唾を飲んで見守っていると、ふーーーっと由希人くんが息を吐いて、置いていた手を離した。
「とりあえず、血栓は分解したし、血管と壁も魔力で補強しました。後は、彼を死なない程度に食べて何とかしなさい。その前に、究極熟成が発動するはずだから何とかなると思いますけどね。では失礼。行きましょう。ゆうきさん」
「え?このまま?高志くんが起きるまで、ついていたいよ。本当に大丈夫?」
「彼が起きたら、即、濃厚な濡れ場ですよ?見たいんですか?」
「ええ?!」
「ハイハイ、行きますよ」
手を引かれて歩いていると、海の底みたいな結界が揺れて出口が見えてくる。
私は一度、振り返って、じっと高志くんを見つめているイブちゃんに声をかけた。
「イブちゃん、またね」
彼女は弾けるように振り返って、見たこともない明るいキラキラした笑顔で頷いてくれた。
私と由希人くんはイブちゃんの結界から、外へと出た…………あり?ここは?
虹色の空、一面のベッド。えーとー。えーと。
「全く、ほぼ無事だったから、よかったものの。ぼくが丹精込めた術式の装備も全部、自ら外すなんて!ゆうきさんは、いつもめちゃくちゃです」
「ごめんなさい」
いきなり、ぐいっと引き寄せられて強く抱き締められる。
「気が気じゃなかった………!怖くて怖くて堪りませんでした」
「心配かけて………ごめんなさい」
「心配しましたよ。気配が一切、消えてしまって……そしたら……胸が急に熱くなってきて、ゆうきさんの気配が、微かに辿れるようになって…………ゆうきさん」
由希人くんは、少し腕を緩めて極上の優しい微笑を浮かべた。
「そのままのぼくを受け入れて、信じて愛してくれてありがとう」
「由希人くんも、私の事、ずっと大切に愛してくれてありがとう」
えへへ。
…………でも、ここって逃げ場無いよね。有無を言わせずって感じがするんですけど。さっきイブちゃんに抱き締められたより、ずっと危機感を感じるのは何故かしら。このドキドキは、ときめき?それとも恐怖?
「さあ、時間を忘れるくらい愛し合いましょう。ぼく、何も気にしないで全力が出せるの初めてです」
ワクワクしながら何を、とぼけた事、仰っているのでしょうか?時間も、他のものも、色々気にして!全力なんて求めて無いから!ツッコミ所が多すぎて口をパクパクさせるだけで終わってしまったじゃないの!
「動けなくなっても大丈夫です、会社への有給申請は出しておきますから」
あのー。やっぱり、この淫魔を、何処かに返品したいんですけど……………無理ですかね。
私に抱き付いていたイブちゃんが由希人くんに気がついて、私から離れて自分を抱き締めたままプルプル震えている。
「ごめんなさい……ごめんなさい………殺さないで」
一瞬で彼女の前に移動した由希人くんは人差し指をイブちゃんの額にトンと押し当てた。イブちゃんは目を見開いたまま動かなくなった。
「由希人くん!イブちゃん、キズ付けないで!悪い子じゃないの」
「ゆうきさんの精気を食べるなんて、本来なら万死に値するんですけどね。究極熟成を完成出来たのは、彼女のおかげみたいですし………ふんふん。なるほど」
由希人くんが額から指を離すと、イブちゃんは、パタンと倒れた。
由希人くんは奥の高志くんが眠っている場所へ真っ直ぐ歩いていく。
「高志くんも悪くないんだよ」
「はい、さっき彼女の記憶を大まかに読んだので、事情は掴めました」
そう、言いながら眠っている高志くんの左胸の上に手を置く。
「そんな事、出来たの?」
「はあ、最近、大量の人間の思考を確認する仕事がありまして、その時に出来るようになりました……うーん。左心房の血管と壁に異常がありますね。こっちは、初めてだから上手くいくかな」
由希人くんの手が光る。瞳を閉じて集中しているのがわかる。どれくらい、そうやっていただろう。
倒れていたイブちゃんが気がついて慌てて駆け寄ってくる。
「高志くん!」
「気が散る、黙ってて」
イブちゃんと固唾を飲んで見守っていると、ふーーーっと由希人くんが息を吐いて、置いていた手を離した。
「とりあえず、血栓は分解したし、血管と壁も魔力で補強しました。後は、彼を死なない程度に食べて何とかしなさい。その前に、究極熟成が発動するはずだから何とかなると思いますけどね。では失礼。行きましょう。ゆうきさん」
「え?このまま?高志くんが起きるまで、ついていたいよ。本当に大丈夫?」
「彼が起きたら、即、濃厚な濡れ場ですよ?見たいんですか?」
「ええ?!」
「ハイハイ、行きますよ」
手を引かれて歩いていると、海の底みたいな結界が揺れて出口が見えてくる。
私は一度、振り返って、じっと高志くんを見つめているイブちゃんに声をかけた。
「イブちゃん、またね」
彼女は弾けるように振り返って、見たこともない明るいキラキラした笑顔で頷いてくれた。
私と由希人くんはイブちゃんの結界から、外へと出た…………あり?ここは?
虹色の空、一面のベッド。えーとー。えーと。
「全く、ほぼ無事だったから、よかったものの。ぼくが丹精込めた術式の装備も全部、自ら外すなんて!ゆうきさんは、いつもめちゃくちゃです」
「ごめんなさい」
いきなり、ぐいっと引き寄せられて強く抱き締められる。
「気が気じゃなかった………!怖くて怖くて堪りませんでした」
「心配かけて………ごめんなさい」
「心配しましたよ。気配が一切、消えてしまって……そしたら……胸が急に熱くなってきて、ゆうきさんの気配が、微かに辿れるようになって…………ゆうきさん」
由希人くんは、少し腕を緩めて極上の優しい微笑を浮かべた。
「そのままのぼくを受け入れて、信じて愛してくれてありがとう」
「由希人くんも、私の事、ずっと大切に愛してくれてありがとう」
えへへ。
…………でも、ここって逃げ場無いよね。有無を言わせずって感じがするんですけど。さっきイブちゃんに抱き締められたより、ずっと危機感を感じるのは何故かしら。このドキドキは、ときめき?それとも恐怖?
「さあ、時間を忘れるくらい愛し合いましょう。ぼく、何も気にしないで全力が出せるの初めてです」
ワクワクしながら何を、とぼけた事、仰っているのでしょうか?時間も、他のものも、色々気にして!全力なんて求めて無いから!ツッコミ所が多すぎて口をパクパクさせるだけで終わってしまったじゃないの!
「動けなくなっても大丈夫です、会社への有給申請は出しておきますから」
あのー。やっぱり、この淫魔を、何処かに返品したいんですけど……………無理ですかね。
0
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる