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真実が明かされる日
青い結界の中で
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ゆうきサイド
子供の泣き声が聞こえる…………。ぼんやりとした頭に最初に浮かんだのは、それだった。
とても悲しそうな泣き声。胸が痛むから泣かないで。
…………ええと、スマホを取りに会社に戻る途中だったはず。大きな音と煙の中でフードを被った人が急に目の前に現れたんだ。
ようやく瞳が開く。周りが青い。空の青さではなくて海の中みたいな深い青。落ち着く色だ。地面は柔らかい。クッションみたいだ。拘束は無い。横になっていた身体を起こして泣き声のする方を見る。
3メートルほど離れた場所でフードを被った小さな影が、ふるふる震えている。フードの下から青みがかった銀の髪がクルクルとウェーブを描いてこぼれ出ている。
その向こう側にベッドのような形の起伏がある。そこには高校生くらいだろうか若い少年と青年の間くらいの男の子が眠っている。キチンと柔らかそうな布が掛け布団代わりに掛けてある。
ここは………何処なんだろう。多分、私をここに連れて来たのは泣いているフードの子だ。
「あの、貴女は誰?どうして泣いているの?」
フードが、ビクっと震える。
「………あたしは…………イブ。………あなたの………身につけてる……結界で…………腕が焦げ……た…痛い。たくさん……防御……してた……のに………とても……強い」
そう言って、その子はフードをぱさりと脱いだ。そこには青みがかった銀色の髪を身長よりも長く伸ばした小学生くらいの少女が涙をポロポロ零しながら白いワンピース姿でぺたんと座っていた。瞳は金色。間違いない。人間じゃない。
「………怪我したの?」
「時間が………経てば…………治る」
確かにイブと名乗る少女の細い腕には焦げた黒い跡が幾つかあって、そこから蒸気のような靄が立ち昇って少しずつ癒しているようだった。
「あの、何故、私をここに?」
「…………高志くんを………治したい………から」
「え?」
少女は立ち上がると後ろに向きなおって、縋るように男の子に抱きついた。
「あたしの………大事な………あたしの………全て。彼の為なら………出来ること………何でも……したい」
ん?似たようなタイプが私の周りに1人居るんだけど、もしかして血縁者の方ですか?
「あたし…………生まれつき………魔力が………………足りなくて………………」
どっかで聞いた事ある!その話、知ってるよ!私。
途切れ途切れに話をするイブちゃんの話を要約すると、男女逆転してるけど、コレ、ほっとんど、私と由希人くんと同じじゃない?
ただ、高志くんは生まれつき心臓が悪く、有力者の愛人の子供という複雑な家庭環境のもとに生まれていた。自分がもう永くないと知った彼は、病院に入るのを断って人里離れた別荘で、週数回、通いのお手伝いさんが来るのみで、静かに余生を送る道を選んだ。愛人だった母も既に亡くなっていたし、自ら死ぬ勇気までは無いが、特別、執着する人もない。空気の良い場所で、好きなように生きて、ある日、お手伝いさんが死体を見つけて、それでお終い。
のはずが、ある朝、散歩をしていたら、青っぽい銀色の髪の子供を見つけてしまう。その子は、グッタリしていて…………。
そこから先は、まあ、彼も、私と同じで大変だったろう。心臓が悪いのに、心臓に悪い展開に次ぐ展開だったに違いない。かなり気の毒だ。
「ある日………高志くん………大きな心臓発作………起きて………もう、ボクは駄目みたいだから、ボクが死んだら、ちゃんと他の人を食べて大人の姿になるんだよって………ボクのそばにいてくれてありがとう……あぁ、とても胸が熱い……って言って、目を閉じた………の。それで、あたし………彼の時間…………彼の心臓が止まる前…………止めた。………私も………それから………ずっと………胸が熱い」
その時、私は理解した。心に雷が落ちた気がした。
人と淫魔の間に愛はあるか?
その答えが目の前にある。
私が信じるのを怖がっていた真実が、ここにある。
私の胸が心臓が熱くなっていく。涙が止まらない。
きっと、今、由希人くんの胸も熱い。
あぁ、これが「究極熟成」
なんだ……………ただの…………純粋な両想いじゃないの。
お互いを自分より大事に想って、その気持ちを疑わず受け入れた時、それが起こる。
お互いだけがわかる。説明なんか出来ない。
「私に何が出来るの?何でも協力しちゃうよ!とにかく、大人になって、彼の心臓を何とかしたら、さっさとHしちゃいなよ!そしたら、きっと何とかなる!」
私は、腕まくりをして、由希人くんの、くれたアクセサリーを、次々に外して放り投げながら言い放った。人と淫魔の垣根も超える力だ。きっと、きっと、何とかしてくれる。
「お、お姉様…………大胆…………」
イブちゃんは、真っ赤になって振り返った。
子供の泣き声が聞こえる…………。ぼんやりとした頭に最初に浮かんだのは、それだった。
とても悲しそうな泣き声。胸が痛むから泣かないで。
…………ええと、スマホを取りに会社に戻る途中だったはず。大きな音と煙の中でフードを被った人が急に目の前に現れたんだ。
ようやく瞳が開く。周りが青い。空の青さではなくて海の中みたいな深い青。落ち着く色だ。地面は柔らかい。クッションみたいだ。拘束は無い。横になっていた身体を起こして泣き声のする方を見る。
3メートルほど離れた場所でフードを被った小さな影が、ふるふる震えている。フードの下から青みがかった銀の髪がクルクルとウェーブを描いてこぼれ出ている。
その向こう側にベッドのような形の起伏がある。そこには高校生くらいだろうか若い少年と青年の間くらいの男の子が眠っている。キチンと柔らかそうな布が掛け布団代わりに掛けてある。
ここは………何処なんだろう。多分、私をここに連れて来たのは泣いているフードの子だ。
「あの、貴女は誰?どうして泣いているの?」
フードが、ビクっと震える。
「………あたしは…………イブ。………あなたの………身につけてる……結界で…………腕が焦げ……た…痛い。たくさん……防御……してた……のに………とても……強い」
そう言って、その子はフードをぱさりと脱いだ。そこには青みがかった銀色の髪を身長よりも長く伸ばした小学生くらいの少女が涙をポロポロ零しながら白いワンピース姿でぺたんと座っていた。瞳は金色。間違いない。人間じゃない。
「………怪我したの?」
「時間が………経てば…………治る」
確かにイブと名乗る少女の細い腕には焦げた黒い跡が幾つかあって、そこから蒸気のような靄が立ち昇って少しずつ癒しているようだった。
「あの、何故、私をここに?」
「…………高志くんを………治したい………から」
「え?」
少女は立ち上がると後ろに向きなおって、縋るように男の子に抱きついた。
「あたしの………大事な………あたしの………全て。彼の為なら………出来ること………何でも……したい」
ん?似たようなタイプが私の周りに1人居るんだけど、もしかして血縁者の方ですか?
「あたし…………生まれつき………魔力が………………足りなくて………………」
どっかで聞いた事ある!その話、知ってるよ!私。
途切れ途切れに話をするイブちゃんの話を要約すると、男女逆転してるけど、コレ、ほっとんど、私と由希人くんと同じじゃない?
ただ、高志くんは生まれつき心臓が悪く、有力者の愛人の子供という複雑な家庭環境のもとに生まれていた。自分がもう永くないと知った彼は、病院に入るのを断って人里離れた別荘で、週数回、通いのお手伝いさんが来るのみで、静かに余生を送る道を選んだ。愛人だった母も既に亡くなっていたし、自ら死ぬ勇気までは無いが、特別、執着する人もない。空気の良い場所で、好きなように生きて、ある日、お手伝いさんが死体を見つけて、それでお終い。
のはずが、ある朝、散歩をしていたら、青っぽい銀色の髪の子供を見つけてしまう。その子は、グッタリしていて…………。
そこから先は、まあ、彼も、私と同じで大変だったろう。心臓が悪いのに、心臓に悪い展開に次ぐ展開だったに違いない。かなり気の毒だ。
「ある日………高志くん………大きな心臓発作………起きて………もう、ボクは駄目みたいだから、ボクが死んだら、ちゃんと他の人を食べて大人の姿になるんだよって………ボクのそばにいてくれてありがとう……あぁ、とても胸が熱い……って言って、目を閉じた………の。それで、あたし………彼の時間…………彼の心臓が止まる前…………止めた。………私も………それから………ずっと………胸が熱い」
その時、私は理解した。心に雷が落ちた気がした。
人と淫魔の間に愛はあるか?
その答えが目の前にある。
私が信じるのを怖がっていた真実が、ここにある。
私の胸が心臓が熱くなっていく。涙が止まらない。
きっと、今、由希人くんの胸も熱い。
あぁ、これが「究極熟成」
なんだ……………ただの…………純粋な両想いじゃないの。
お互いを自分より大事に想って、その気持ちを疑わず受け入れた時、それが起こる。
お互いだけがわかる。説明なんか出来ない。
「私に何が出来るの?何でも協力しちゃうよ!とにかく、大人になって、彼の心臓を何とかしたら、さっさとHしちゃいなよ!そしたら、きっと何とかなる!」
私は、腕まくりをして、由希人くんの、くれたアクセサリーを、次々に外して放り投げながら言い放った。人と淫魔の垣根も超える力だ。きっと、きっと、何とかしてくれる。
「お、お姉様…………大胆…………」
イブちゃんは、真っ赤になって振り返った。
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